ドラゴンの年
Song
When I am dead, my dearest,
Sing no sad songs for me;
Plant thou no roses at my head,
Nor shady cypress tree:
Be the green grass above me
With showers and dewdrops wet;
And if thou wilt, remember,
And if thou wilt, forget.
I shall not see the shadows,
I shall not feel the rain;
I shall not hear the nightingale
Sing on, as if in pain:
And dreaming through the twilight
That doth not rise nor set,
Haply I may remember,
And haply may forget.
歌
私が死ぬ時、いとしい人、
悲しい歌を口にしないで、
陰る松や、さす薔薇も
墓前に植えてはいけません。
雨露注ぎ大地が湿り
草木が私を覆うでしょう。
思い出す日も、
わするる日も。
木陰を見ることも
雨に打たるることも、
松から歌う小鳥の歌も
感じることは無いでしょう。
ただ落ちぬ夕日と
昇らぬ朝日を夢見るものに、
思い出す日も、
わするる日も。
***
リュスラーナの踵がさみしい音を立てて着地した。
かつて〈花の都〉と呼ばれた静謐な祈りの村には人の気配がほとんどない。
いたとしても、それぞれの家で静かにそのときを待っているだけだろう。
この静けさこそがリュスラーナがここを後にして何十年も経ってしまったという証明なのだろうか。
彼女は息を詰めてそっと歩んだ。
人が決して近寄ることのない大きな木の洞を覗き込んで、風がまだ生きているのを確認すると、魔女はそっとその中に体を滑り込ませた。
お気に入りのスカートが千切れてしまわないように、きちんと魔法で保護したあとでだが。
暗くて長い滑り台からするりと降り立つと、金色に輝く地下世界が広がった。
その中央には、うろこがびっしりと生えそろった小高い丘があった。
海賊、山賊がいるならば喜んで泳ぎたがるであろう財宝の中心へ、リュスラーナは躊躇なく歩んだ。
もちろん、丘が動いて長い首を擡げ、四枚の大きな翼を広げても驚かなかった。
その拍子に金銀財宝が音を立てて流れ落ちる。
大きなドラゴンは真っ赤な瞳でリュスラーナを捉えた。
鼻から熱風がぶわりと溢れ、ドラゴンは首をそっと魔女へ差し出した。
彼女もそれを優しく抱きとめた。
「ママ。久しぶりね」
母親はいとおしげに鼻をすりつけた。
「〈ヨウル〉に出て来なさいってパパが手紙をくれたの。それでどうしても会いたくなって、来ちゃった。お土産もあるのよ。パパが来るまでこうしていていいかしら」
ドラゴンは何も言わず、また姿勢を変えた。
四肢を投げ出して懐に招いているようだったので、娘はそこへ背中を預けた。
母のぬくもりにまどろんでいると、リュスラーナの耳に男の声が聞こえた。
「グウィネヴィア、リュスラーナ」
少女に戻った気分で魔女はわくわくしながら、けだるい目覚めを楽しんだ。
せっかくの〈ヨウル〉なんだもの。
家族で一緒に。
父を待つ娘の手にはジンジャーブレッドの包みがあった。




