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19.逢引?

 

 王都にある俺の土地。

 時間はお昼過ぎ。



「ほんと無駄に広いわね」

「ほっとけ」


 だが確かに無駄に広い。

 家というか小屋すらも建ててない。

 本当にただの空き地にしか見えない。

 そんなど真ん中に、野宿用のセットを取り出した。

 本当に簡単なテントやテーブルや椅子。

 調理器具や食材を幾つか。



「宿に泊まるなら今だぞ」

「え、何か言った?」


 普通なら嫌そうな顔をするのにフウカの目はどこか楽しそうだった。

 そういえばナナイの村で借りた小屋に対してもフウカは何も言わなかったな。



「あ、でも流石にお風呂はどうするの? まさか噂に聞く箱風呂?」

「な訳ないだろ。どこか風呂屋に行くに決まってんだろ」


「あ、そう…」


 なんで残念がるんだ!

 箱風呂って、簡単な箱を用意して温めたお湯を入れるだけの、ナナイの村にあった風呂場よりも雑な風呂だぞ。

 それを女の子が入りたいとか…こいつ本当に貴族なのか?



「…箱風呂に入りたいのか?」

「え、あ、私は別に…なんだっていいのよ。箱風呂しかないなら仕方ないじゃない。我慢して入るわよ」


 我慢する程なら入らなくていいだろ。

 ここは王都だぞ。

 風呂屋が幾つあると思ってんだ。



「外から見られるんだぞ、いいのかよ?」

「それならシートを用意して箱を覆えばなんとかなるわよ。後、簡単な着替えが出来る場所を隣に作ってそこもシートで覆えば大丈夫よ」


 なんで必死なんだよ。

 それも即答。

 こいつ絶対普段から考えてたな。



「半年間も滞在するんだぞ。もっとちゃんとしっかりした方がよくないか?」

「あら、いいじゃない。これぞ冒険者って感じで」


「寝所はどうする気だ? あのテントに2人は寝れないぞ、交代で使うのか?」

「大丈夫。実は私もテントと寝袋持ってるの。こういう事もあろうかと」


 どんだけ野宿したかったんだ。

 フウカはワクワクしながら収納魔術からそれらを取り出した。

 ったく、豪邸建てる前にマジでこの調子だと家まで建てかねないな。


 しかしバラバラのテントをフウカは上手く組み立てられずにいた。



「ちょっとイフト」

「何?」


「私が料理作るから、貴方私のテント立てなさいよ」

「おまっ、ふざけんな。それくらい組み立ててから収納魔術に入れとけよ」


「し、仕方ないでしょ! 家では甘やかされてきたし、庭でテントなんて組み立ててたらお父様失神するわよ。このテントだってなんとか手に入れたんだから」

「おまっ、それでよく王都滞在を許可してもらえたな」


「……ない」

「え?」


「え〜と、その……許しては貰えてないの…その、無理矢理家を飛び出したっていうか…」

「は?」


「てへ」

「てへ、じゃねーよ! お前それ絶対面倒な事になるパターンだろ!」


「しょ、しょうがないでしょ! どうしても王国に来たかったのよ! でもお父様全然許してくれないんだもん!」

「もん、じゃねーよ!」


 俺は項垂れた。

 何故こうも最近は面倒事に巻き込まれるのだろうか?

 ここ何年かは大人しく波風も立たず穏やかに過ごせていたのに。

 まるでこの世界には神様がいて、俺に試練を与えるが如く厄介事を持ってくる。



「流石に帝国が関与してきたら俺は庇えないからな。アイリスさんにも迷惑はかけたくないし」

「わ、分かってるわよ」


「もう他にはないよな?」

「え?」


「厄介事だよ。もう他にはないよな?」

「え〜と、多分ないと、思う…」


 多分って…

 不安でしょうがない。



 ♢



 夜

 結局、簡易風呂も簡易更衣場も俺が作った。

 おまけにフウカのテントも組み立てた。フウカのテントは豪華で無駄にデカかった。

 これだから金持ちは。こんなの王都の外に立てたら魔物だけじゃなく野党からも襲われるだろ。

 マジで危機感ゼロだな。

 しかし、フウカの作る飯は美味かった。料理は本当に上手だった。



 俺達は焚き火の火だけ残して、そのままお互いのテントで寝る事にした。



「ねぇイフト、もう寝た?」

「ん…まだ起きてる」


 なんだ、寝れないのか?

 だから宿にすれば良かったのに。

 俺もフカフカのベッドで寝たい。

 てか眠い…



「ねえイフトって好きな子とかいるの?」

「昨日話したけど⁉︎」


 こいつどんだけ寝る気無いんだ!



「あれ変ね? 帝国の学院の子達が、泊まりの時はこの話が定番で盛り上がるって」

「どんな定番だよ、いいから早く寝ろって」


「なら今好きな子とかいないの?」

「っ……はぁ、いる訳ないだろ。俺冒険者だぞ。学院に通ってるならともかく、そもそも女の子の知り合いとかいないし」


「そう、いないのね」

「? なんだよ、そういうフウカにはいるのかよ?」


「私? 言っとくけど私かなり…」

「はいはい、モテるんだろ。だからその中にいい奴とかいないのかよ?」


「……」

「おい黙んなよ、そっちから振ってきたんだろ」


「……すぅすぅ」

「て、寝んのかよ!」


 はぁ。

 マジでなんなんだ。

 ……。

 くそ!

 ちょっと気になるじゃんか!

 もういい!

 俺も寝るぞ!




 ♢



 ?時間後



 ん?

 誰か近づいてくる。ここには俺の結界魔法『火鈴』が…

 あ!

 しまった…フウカを入れる際に解いたんだった。張り直すのを忘れてた。

 くそ!

 こうなったら先手必勝で…!



「誰だ!」


 俺は火鬼丸を手に取りテントから飛び出した。



「君、ここは空き地じゃなくて私有地だよ。若干15才の最年少でSランクになった…って君、イフト君か?」

「あ、はい…俺がイフトです」


 王都の見回りの兵士のおじさんだった。

 焚き火があり様子を見に来たそうだ。



「いや〜普段はここ何もないから変だな〜って思ったんだ」

「すみません、事情があって今日から暫くここで野宿する事になって…」


「まぁここは君の土地だから好きにしていいさ。ただ寝る時は焚き火は消しといて欲しいな。一応ここ王都だからさ」

「はい、すみません…」


 すると、フウカも起きてきた。



「うるさいわね…何よイフト、まだ寝れないの……?」


 眠そうにしながら。

 眠いなら寝てろ。



「あ、ああ〜そういう事か!」


 何が?

 兵士のおじさんはポンと手を叩いた。



「15才は一応成人だからね。別に咎めたりはしないけどさ…」

「?」


「その、あれだ…逢引するならちゃんとした所でしなさい。誰かに見られたら君が困るだろ?」

「……」



「逢引じゃねーよ!!」


 俺の悲痛な叫びは夜の空に消えていった。

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