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18.新コンビ

 

 クラン『王者の剣』本拠地

 クランリーダー・アイリス執務室



「っ、お前は本当に面倒事に巻き込まれるな」

「笑い事じゃないっすよリーダー」


 毒竜討伐時の経緯をアイリスさんに全部話した。

 テーブルを挟んで対面に座るアイリスさんは必死に笑いを堪えていた。

 そして、俺の隣にはフウカがお行儀よく座っていた。



「それで、君がフウカ殿か?」

「はい。半年程王都を拠点に滞在するつもりです。もしアイリス様がよろしければ、こちらのクランでお世話になりたく思います」


「礼儀正しいお嬢様だな、スロッカスの沼地に1人で赴くからどの様な人物かと思ったが…」

「猫被ってるだけっす」


 フウカは笑顔を崩さず姿勢を変えずに足を蹴ってきた。



「痛っ」

「どうかなさいましたか? オホホホ」


 この女は…



「…2人は随分仲が良いようだな」

「「よくありません!」」


「息ピッタシだな」

「「……」」



「ふむ。フウカ殿の滞在中にお世話する者を考えていたがどうしたものか?」

「ザックでいいんじゃないっすか?」


「バカを言え。アレのせいで『王者の剣のメンバー全員がこんなクランか』とか思われたらどうする気だ」

「……」


 何も言い返せなかった。

 ザックの普段の行いのせいでこれ以上の推薦が出来なかった。



「それでしたら私はイフト様で構いませんわ」


 イフト様…?

 こいつ…



「ふむ。しかしイフトはSランクになり…その、お恥ずかしい話…我がクランには戦力を割く余裕がないのです。Sランクの依頼はその、フウカ殿には少々…」

「大丈夫です、自分1人の身くらいは守って見せます」

「いや、スロッカスの沼地で死にかけてたろ?」


 同じとこを蹴られた。



「と、とっておきがあるのです。それを使う前にイフト様に助けられただけの事なのです」

「ふーむ、そうだな。ならイフトに任せるか」


「は? いやいや、まだSランクの依頼受けたことすらないのに護衛しながらとか無理ですって」

「しかし他に任せられる者もおらん。エルドには現在例の任務に就いてもらっている。ニャコナは私の近辺で動いてもらっているから、他にはおらん」


「いや、他にもBランクの奴とかいるでしょ」

「Aランクならともかく、まだ育成中の奴らに貴人の護衛は任せられん。帝国とは友好関係を築いているとはいえ、何かあれば外交問題に発展するかもしれないのだぞ」


「ならそのAランク、に…」

「うちには今Aランクはおらん」


 言いながら気づいた。

 そうだった。

 俺しかいなかった。

 その俺も先程正式にSランクになったのだ。



「……分かりましたよ。俺がフウカの面倒見たらいいんすね。どうなっても知りませんよ」

「ふむ。イフトは歳は若いですし面倒事に巻き込まれる体質ですが、強さだけは一級品です」

「オホホホ、そうですね。頼りにしてますわイフト様」


 こいつ…!

 はぁ、本当に面倒な事になった。



「はぁ…。それじゃあ暫くはザックとのコンビも解消ですね」

「ふむ、とっくに解消させている。あいつは今別の奴と組ませている。悪いがお前はどんどんSランクの依頼を受けろ。それがお前への取り敢えずの指示だ。それと…」


「フウカのお世話っすね」

「半年間。そうだな…ノルマは、Sランクの依頼を最低5件はこなしつつフウカ殿をBランクにしろ。それが出来たら2人でSランク任務を2件こなせ。やり方はお前に任せる」


 フウカをBランクにして、Sランクの依頼を2人でこなせ、か。

 アイリスさんの意図が読めてきた。


「了解っす」

「……」


 俺とフウカは執務室を後にした。



 ♢



 取り敢えずザックに渡すものを渡しておこう。

 毒竜の肝なんかいつまでも持っておきたくない。

 それよりも先程からフウカは黙りだった。

 ようやく喋ったかと思ったら妙にオドオドしていた。



「そ、その…迷惑だった?」

「ん…まぁなんとなくそうなる気はしてたし、別に大丈夫だよ。それよりSランクの依頼受けるけど本当に大丈夫か?」


 どうやらノリで俺をからかってはいたが、いざ本当に俺にお世話されるとなると気が引けてきたのだろう。

 案外、可愛いところもある。



「ええ、私だって帝国の学院でそれなりに鍛えてるし大丈夫よ」

「毒竜に追われてたのに?」


「あ、あれは! ちょっと油断してたのよ!」

「まぁしょうがない。アイリスさんの命令は絶対だし、そんな気にするな」


「だ、誰が気にしてなんか…!」

「まぁなんかあったら守ってやるよ。フウカも王国でなんて死にたくないだろ?」


 フウカは立ち止まった。

 なにやら慌てふためいている。



「い、言ったわね。だったらちゃんと半年間守りなさいよ」

「おう。新米Sランクだけど任せろって。いざとなったら転移で逃げるし」


「そこは最後までカッコつけなさいよ」

「え? なんて?」


 最後だけ小声で聞き取れなかった。



「なんでもないわ!」

「なに怒ってんだ?」


 フウカは行き先も知らないのに俺の先頭を歩いた。

 さてと、それじゃあ毒竜の肝をザックに渡したら泊まる所を探さないとな。



 ♢



 いつも借りてた宿屋



「おいおいイフト! なんだお前、いつの間にこんな可愛い子と知り合ったんだ! お前も案外隅に置けねーなー」


 ザックの脇腹に肘打ちした。



「おごっ! な、なんだ…照れてるのか?」

「そんな調子だからいつまで経ってもBランクに上がれないんだろ」


「いやいやお前に毒竜の肝もらったし、これでミラさんに再度猛アタック出来るぜ! ミラさんが彼女になってくれたらあっという間に俺もSランクだぜ!」

「はいはい」



「毒竜の肝をプレゼントなさるのですか? あまり女性が喜ぶ物とは思いませんが…」

「ああ、それはね…ゴニョゴニョ」


 フウカはキョトンした顔で尋ねてきた。

 それに対してザックはフウカに耳打ちして答えた。

 俺はため息を吐いた。

 本当にザックは最低だ。

 女の子になんて話をする気だ。

 案の定、フウカは顔を真っ赤にさせた。



「そ、それは…へぇ〜そ、そうなんですね…あ、いや私は…その…」


 フウカはどうやら混乱したようだ。

 どうせザックの下品な話を聞いたのだろう。



「それで、どうするんだ?」

「何が?」


「フウカちゃんだよ。こんなボロ宿に俺ら3人で泊まれるわけないだろ? 俺が出て行くのは構わないが、確か他に空き部屋なかったろ」

「ああ、俺とザックが出ていけばいいだろ。俺は自分の土地があるからそこで野宿するよ」


「ぷぷ。王都に自分の土地があるのに野宿って、流石イフトだぜ」

「うるせー、豪邸建ててもお前は呼ばないからな」


「あら、それなら私もイフト様と一緒に野宿しますわ。ザック様はどうぞそのままここで寝泊まりして下さい」

「は?」


 いやいや。

 お嬢様、あんた何考えてんだ。



「俺は毎夜飲み歩くだけだから別に構わねーけど…」

「いえいえ、冒険者は体が資本です。キチンとした所でお休みしなければなりません」


「それなら俺は?」

「イフト様は私の護衛でしょ? 私は野宿に興味があるのでそれに付き合って下さいな」


 フウカは満面の笑みでニコリと笑った。

 こいつ、俺が困るのを見て楽しんでやがる。



「それにイフト様の料理は下手くそなのでワタクシ心配で堪りませんわ。もし体でも壊したらと思うと…」

「いやいや、王都にいるなら別に飯なんて店で食えば…」


「それではいつまで経っても家は建てられませんよ。節約するところは節約しなければ」

「……」


 もう何も言い返せなかった。

 いや、言い返すのに疲れた。



「おいおいイフト。お前尻に敷かれてどうする。天下のSランク様だろ」

「お前にだけは言われたくねーよ、55点」


 ザックは即死した。



「本当にいいのか? なんなら高い宿探すけど…」

「ええ。本当に野宿に興味があるから構わないわ」


「はぁ…後で後悔するなよ」

「ええ」


 床に倒れてるザックを置いて俺とフウカは宿を出た。

 ついでに宿も俺だけ清算した。

 確かにフウカに言われた事ももっともだ。

 これからは節約してバリバリSランク任務こなして、稼いで、早く豪邸を建てよう。


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