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プロローグ

本来1番最初に持ってこないといけない話を投稿するの忘れてました。

割込投稿しても良かったのですが、このままでいきます。

プロローグ、エピソード0です。

 

 人も獣も寄り付かない極寒の地。

 そこには1つの研究施設があった。

 そこではとある研究が行われていた。


『妖精計画』


 人を妖精へと変える狂気の研究。

 対象は10歳以下の子供達。

 世界中の孤児や奴隷、親に売られた子ら。

 研究が始まり幾星霜…

 その日、最初の運命が動き出した。



 ♢



「入りなさい」


 研究員は無感情にそう言うと、男の子をとある部屋に入るよう促した。

 男の子は研究員に言われるがまま、抗う様子もなく部屋へと入る。


「今日から君達と共に暮らす、被験体ナンバー7891だ。自己紹介は…勝手にするといい」


 研究員はそう言い放つと扉を閉め、出られないよう外からロックし、その場から立ち去っていった。



 ♢



「……」


 男の子は無言のまま室内を見回した。

 そこには自分を含めて男女20人の子供がいた。

 誰も口を開こうとしない中、とある女の子が先程入ってきた男の子へと近づいてきた。


「わたし7776、よろしくね」


 彼女は長い黒髪を靡かせてニコリと満面の笑みで彼へ挨拶するのであった。


「えっと…ナンバーは忘れた。よろしく」

「ふふっ、さっき言われたのにもう忘れたの?」


 彼女はクスリと笑った。

 彼は少しだけ照れ臭そうに頬を赤らめた。


「だって数字が多すぎて覚えられないよ」

「確かに、私はまだ覚えやすいけどね」



 これが、俺と彼女との出会いだった。



 ♢



 彼女と出会って1年がたった。

 施設での実験はそれほど苦ではなかった。

 適度な食事に適度な運動、簡単なテストに、日々の体調管理。

 あと、食後に出る変なカプセルを飲まされるだけだった。



 ♢



 更に半年が経つと変化が表れた。

 黒髪だった髪に赤い髪が生え出した。

 血を被ったような髪を見た時は流石に狂いそうになった。

 そこから20人部屋から別の部屋へと移された。



「久しぶり」

「あ、うん」


 彼女、ナンバー7776と会うのは半年ぶりだった。

 彼女の綺麗だった黒髪は、今は桃色だ。

 一瞬誰か分からなかったが、笑顔で直ぐに彼女だと気づけた。

 どうやら髪色が変わると部屋を移されるみたいだ。

 部屋の中を見渡すと、他に3人いた。

 3人とも知っている。

 俺よりも先にあの部屋を出た者達だ。


 薬の量が増えた。



 ♢



 更に1年が経った。

 俺以降この部屋に来た者はいない。

 そして2人いなくなった。

 今は彼女ともう1人を入れて、3人だけで毎日を過ごしている。



「あれから誰も来ないね」

「そうだね」


 どうやら彼女も同じ事を考えていたようだ。


 ガチャ


 研究員が部屋へと入ってくると、もう1人を連れて行った。

 もう1人はそれから戻って来ることはなかった。



「ねぇ、知ってる?」

「ん?」


「10才までに変化がない子は外に捨てられるって噂」

「いや、知らない」


「私がテスト受ける時、最近見たことない子たちと一緒に受けてるんだけど、その子たちが言ってたの」

「へぇ」


 俺たち以外にも子供がいることすら知らなかった。



「何グループかに分かれてるみたい」

「そうなんだ」


 彼女の黒かった瞳は、右目だけ青色になってる。

 髪に続いて今度は瞳。

 これが変化なのだろう。

 そして変化が表れなかった者は捨てられるって訳だ。あくまで噂だけど。


 最近、少し右目が痛い。



 ♢



 半年が経った。

 今は俺1人だ。

 彼女は両目が青色になるとどこかへ連れて行かれた。

 最近は見たことない子たちと一緒にテストを受けている。

 髪色もバラバラで、皆右目の色が違う。

 俺の右目は赤い。

 髪色と同じで血のように赤い。


 最近は左目も痛くなってきた。



 ♢



 数日後

 久しぶりに別の子が部屋に入ってきた。

 もちろん知ってる子だ。

 彼は俺よりも少し年下だと思う。

 彼の髪は黄色で右目は緑色。

 俺や彼女によく懐いてくれていたので、久しぶりに退屈しないですみそうだ。


 数日後

 左目も赤くなったので、また部屋を移ることになった。



 ♢



「ウソ、彼と話したの?」

「うん、数日だけだったけど楽しかったよ」


 また彼女と再会した。

 彼女はナンバーの他にコードネームが与えられていた。


 ナンバー7776、コードネーム『桃姫』。


 それが彼女の呼び名となった。

 彼女は魔法が使える様になっていた。

 風を操る魔法。

 そよ風程度だが、これがどれ程凄いことか今の俺には分からなかった。

 また彼女と2人きりの部屋。

 他に2人いたらしいが俺と入れ替わりで出て行ったようだ。

 2人は魔法を使えなかったし、コードネームもなかったそうだ。

 彼女もまた部屋が替わるらしい。


 それまでは沢山話そうと思う。



 ♢



 4ヶ月後。

 俺も魔法を使える様になった。

 火の魔法だ。

 指先から僅かに灯る程度の火。

 俺にもコードネームが与えられた。


 ナンバー7891、コードネーム『鬼髪』


 おにがみ、と読むらしい。

 かつてこの世界に存在した鬼と呼ばれた一族。

 彼らは真紅の体で、地獄の業火を操ったとされたそうだ。

 だからだそうだ。


 今俺のいる部屋には2人の子がいる。

 よく知ってる黄色の髪の男の子と、初めてみる青髪の女の子だ。

 2人は面白そうに何度も俺に火の魔法を見せてとせがんでくる。


 俺は得意気に何度も火を見せてあげた。

 あと数日で俺も部屋を移る。

 それまでは少しでも2人を楽しませたいと思う。



 ♢



「やぁ…元気だった…かい…」

「っ!?」


 部屋を移ると俺は驚愕した。

 桃姫はベッドに横たわり動こうとしなかった。

 あの、太陽の様な笑顔が今は痛々しく見える。

 桃姫は背中が痛くて動けないそうだ。

 夜、かは分からないが就寝時間、彼女は苦しそうにしながら必死で呻き声を堪えていた。

 多分俺に心配かけたくないからだろう。

 俺は布団の中で必死に耳を抑えた。



 ♢



 数日後

 彼女は嘘の様に元気に過ごしている。



「本当に大丈夫だってば、君は心配性だなぁ」


 俺なんかの心配を他所に彼女はケラケラと笑っている。

 俺は彼女が死ぬんじゃないかと本当に心配だった。


 彼女に名前が与えられた。

 名前は『トウカ』

 凄くピッタリだと思った。



「そうかなぁ? なんか恥ずかしいんだよなぁ」


 彼女は少し不満そうな少し嬉しそうな、そんな感じだった。

 でも俺は何故か自分の事の様に嬉しかった。



 ♢



 数ヶ月後

 俺は背中の激痛で死にそうだった。

 トウカは必死に俺を励ましてくれている。

 黄髪の男の子『雷獣』、青髪の女の子『氷鶴』も昨日この部屋に移って来て、いまは俺を励ましてくれてる。


 死にたくない。

 死にたくない。

 死にたくない。

 死にたくない。


 俺はそれだけを考えていた。



 ♢



 数日後

 ウソの様に背中の痛みが無くなった。

 寧ろ体が軽くさえ感じる。

 大勢の研究員が見てる中、俺は別室で健康チェックを受けている。

 調べたデータを見ながら研究員たちは沢山議論していた。


 数分後

 研究員たちは結論を出したのだろう。

 一斉に俺を見ると、俺は一瞬体が硬直した。

 しかし、彼らは歓声を挙げながら拍手をするのだった。

 中には俺に握手を求める者もいた。

「続けて2人も成功するとは」だの、「ようやく我らの研究が実り出した」だの、「まだ最終…がある」だの、好き勝手に話していた。

 そして、俺にも名前が与えられた。


 火そのものとまで言われている伝説の妖精『イフリート』。

 そのイフリートからとって、『イフト』と名付けられた。



 ♢



「最近テストないね」

「そうだね」


 トウカと俺は、テストがなければ薬もない。

 毎日の健康チェックくらいで、それも数分で終わる。

 毎日、暇を持て余していた。

 喋る時間が増えた。



「あ〜あ、暇だなぁ」


 トウカは空中を浮遊していた。

 風魔法で自身の体を浮かしてるそうだ。

 なんて羨ましい魔法だろう。

 俺はと言うと…



「へぇ、君は面白い事してるね」

「そう?」


「だって指から指へ火を移動させて…まるで生きてるみたい」

「暇、だからね」


 手遊びみたく、火を動かしていた。

 火の形を変えたり、大きくしたりと、自在に動かして遊んでいた。

 それしか、することがないのだ。



「君の火、凄く綺麗だね」

「そう?」


「うん、たまに黄色かったり青かったりしてるよ」

「意識した事なかったな」


 色か…

 そういえば、皆んなの様々な色の髪や瞳は見てると凄く綺麗だと思ったことはあった。

 ちょっと意識してみようか。



「わ、凄い!」

「おお、結構出来るもんだな」


 火の色を変えてみた。

 青や黄、緑に白、黒や橙、紫に桃色と。



「あれ? 赤色は?」

「普段やってるだろ」


「あれは普通の火の色だよ、君の髪や瞳みたいな赤が見たいな」

「…あんま、赤色って好きじゃない」


 俺は赤色の火を出すのを拒否した。



「え〜ケチ」

「血、みたいで好きじゃないんだ」


「私は好きだよ」

「え?」


「君が……ううん。君の燃えるような真っ赤な髪も、宝石みたいな綺麗な瞳も私は好きだよ」

「俺は…」



 ガチャン


 部屋の扉が開くと研究員が入って来た。

 なんか色々と説明すると、最後のテストだとかなんとか言ってトウカを連れ出した。



「じゃ後で赤色の火を見せてよ」

「え?」


「約束だよ」

「う、うん」


 トウカの笑顔に負けて、俺はつい約束してしまった。

 太陽みたいに眩しいトウカ。

 ああ、そうか。


 俺は、トウカが好きなんだ。



「じゃ、ちょっと行ってきます」

「うん、後でね」





 それが、トウカの最後の笑顔だった。




 ♢




 数時間後



 俺はボロ布を纏い、燃え盛る研究所を見下ろしていた。


「トウカ…トウカ…うぅ……ごめん…ごめんよ…」

「俺……行くよ……いつか……必ず……」

「きっと……」



 猛吹雪の中、研究所を後にすると、極寒の大地をただひたすらに歩いた。

 ただひたすらに……

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