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071_親子の会話?

本話もそうだけど、作者の初期構想から外れた展開になる事が増えています。

作者の体調に起因するものなのか、別の理由に由るものかは判っていません。

最終的には全体の話を壊さない形で終わっているので、問題は無いのですが。


それにしても今回は疲れました。 蒼にシリアスは無理が有るのか酷い難産。

事業計画自体も、詳細の記述を省いても尚、一万文字超えのボリュームだし。

料亭三笠、店名の由来は明治の戦艦でも山の名前でもなく、単純に創業者の苗字。

苗字の由来が三笠山かも知れないけど、とにかく人の名前を由来としているのだ。


その特徴は “ 料理が美味しい ” の一言に尽きる。


此処より美味しい日本料理の店を俺は知らない。 それ程に美味しい料理を提供

してくれるお店なのだが、残念な事に出前もケータリングサービスも行ってない。


だから滅多に利用する事が無い。


「 そうかあ? ちょっと薄味過ぎると思うがなあ? 精進料理よりはマシだが?」


目の前の大男の感想は、実の所姉ちゃんや昂輝たちとも共通するものであるのだ。


・・・・・・・・・


だから滅多に利用する事が出来ないのだ。 俺の味覚は年寄りのソレに近いのだ。

年寄り並みの免疫力や体力が、味覚に何らかの影響を及ぼしていたりするのかも?


・・・・・・・・・


俺の身体って、研究材料として考えたら、そこそこ魅力溢れるモノかも知んない。


勿論、実験動物になんかなってやる気は無いが。


例えソレが、未来の病弱人間の為になろうとも。


「 それで、俺の健康を気遣って減塩料理を喰わせる為、て訳じゃあないんだろ?」


糞親父が当然の質問を掛けて来るので、鞄からノートPCを取り出して起動させる。


「 商談だって伝えてただろ?」 「 お前が俺相手に商談ってとこが謎なんだが?」


そんな疑問を口にし乍ら、渡したPC画面を確認していく糞親父の表情が変わった。


「 おま・・・コレ、全くロックも何も掛けてねえじゃないか? いいのかよ? 」

「 此処迄来て、コレを見て、この仕事を断る様な奴じゃないと思ってるからな 」

「 俺を信用してるってことか?」 「 違えよ、あんたを分析済みってだけだ 」


フンっと鼻を鳴らした後、愉快そうに口角を上げ、レポートを読み進める糞親父。

暫く掛かるだろうから、料理を食べ進める事にする。 のんびりとマイペースで。


・・・・・・・・・


糞親父はとっくに俺の五倍の量を食べ終えているし、俺がある程度食べてないと、

女将さんが次の料理を出してくれないからだ。 どういう訳だか此処の女将さん、

俺がしっかり食べているかをもの凄く気にする人なのだ。 世話焼きさんなのだ。


俺の好みを完全に把握しているし、適量を見繕ってくれるからとても助かるけど。

それだけしているのだから、きちんと食べなさいという圧を掛けてくる人なのだ。


・・・・・・・・・


なんか考えてみたら、俺の周りの大人って、割とこんな風に世話焼きさんが多い。


・・・・・・・・・


コレって、俺が病弱である事で得をしている、本当に数少ない事例かも知んない。


今も女将さんなのだ。 仲居さんではなくて、女将さんが応対してくれているのだ。

「 今日は調子がいいみたいね!」 と俺の食べた皿を見乍ら嬉しそうに話すのだ。


そう言い乍ら、頭を撫でてきたりするのだ。 子供扱いなのかな? それとも孫?


・・・・・・・・・


一応簡易とはいえ礼服を、ブラックスーツを纏っているのだけど? 七五三扱い?

少し不満気に女将さんを見るが、俺の不満は軽くスルーされている。 いい笑顔だ。


・・・・・・・・・


確かに自分でも少し幼く感じたけど、やはり俺に男物の衣装は似合わないのかな?

体形が原因なのかな? 少し華奢過ぎるもん? 五十嵐よりも華奢なくらいだし。


姉ちゃんだって『 やっぱりこうなっちゃうわね 』としか言ってくんなかったし。


・・・・・・・・・


「 お前がそんな格好しても可愛いだけなんだよ 」 PC画面から目を離すことなく、

黙々と食べていた糞親父が久しぶりに言葉を発した。 一通り目を通したのだろう。


・・・可愛いだけ。 か。


言葉の意味は多分同じなんだろうけども、糞親父に云われたら無性に腹が立った。

理由は解からない。 解からなかったけど、睨み付けてやろうとしたら目が合った。


自分が俺に何を云ったのか覚えてもいないし、興味も無い。 そんな目をしていた。

こいつの関心はただひとつ。 『 コレは正気なのか?』と問われている気がした。


・・・糞親父が見せる予想通りの反応に、今日の成功を確信した。

そして密議の始まりを感じた女将さんは、静かに部屋を後にした。




   ◇ ◇ ◇




「 四菱の主だったメーカーだけでなく、四井や邦友、鷹田のグループ企業まで。

  製造業ばかりをこれだけ纏めて買収しようなんざ、正気の沙汰じゃねえだろ?」


糞親父が在り来たりな意見を主張してくるが、間違いなく本意では無いので無視。


「 下らん企業買収が前提ならそうだが、そんな事に何の意味があるんだよ?

  利益の追求が大切ってのは解かるが、肝心なのは求める利益が何なのか?

  目先の小銭の追求なんて、素人投資家や金融屋みたいな事は言わんだろ?」


そう云い乍ら、俺は更にもう一台のノートPCを鞄から取り出しては起動させる。


「 さっきのは買収計画。 そしてこっちが今日の本題、買収企業の成長計画だ。

  ただこっちはボリュームがさっきとは比較にならんから、目を通すだけでも

  二日は掛かるぞ。 最初の、触りの処だけでも確認し乍ら、話を聞いてくれ 」


「 お前・・・『 コレを見て断る様な奴じゃないと思ってる 』ってのは嘘かよ⁉」


PCを受け取り乍ら、細かなツッコミを入れて来る糞親父。 顔が笑ってんだよな!


「 もう面倒だから、お互い腹の探り合いは無しにしようぜ! 時間の無駄だろ?」

「 いいじゃねえか、やっと顔を合わせてくれた可愛い娘との会話を楽しんでもよ」

「 誰が娘だ⁉」 「 はいはい、解かったよ、解かったからさっさと話を進めろや 」


何だろうな? こいつ? いや、こうやって自分のペースに巻き込むのがこいつの

やり方だって、母ちゃんから重々注意されてるけどな。 こいつの女の口説き方は

相手を怒らせて、宥めてを繰り返し乍ら、いつの間にか距離を縮めては押し倒す!


その押し倒すタイミングが絶妙過ぎて、怒る事が出来なくなってしまうのだとか?


・・・その辺りがイマイチよく解からんのだが、とにかく母ちゃんからは天然もの

の女の敵だから、絶対にひとりでは会うなと注意されていたのが、目の前の大男。


・・・・・・・・・


姉ちゃんが注意されるのは解かるけど・・・何で男の俺迄一緒に注意されたのか?


アノ時は、酒でこいつの理性が職務放棄していたのだ。 こいつも反省したのだ。


もう俺の前で、てか母ちゃんたちの前でも一切酒を口にしないと約束して、それを

律儀に守っているのだから、間違っても俺が押し倒される様な事は無い筈なのだ。


・・・・・・・・・


無い筈・・・だよな? 一応確認してみる? した方がいいかな?


「 買収企業の成長戦略を話す前に、一応確認しとくぞ! 念の為だぞ?

  ・・・あんたさ、まさか今の俺に、情欲を覚えたりはしてないよな?」


うん、まさかのまさかだ。 そんな馬鹿な事、いくらこいつでもあり得ない筈だ!


「 今さっきまでは無かったが、そう云われたらむくむくと湧き上がって来たな。

  しかし心配は無用。 力ずくで迫る気等無い! きちんと愛人にしてからだ 」


・・・えっ? 空耳なのかな? あいじん?


・・・今、こいつ、あ(・)い(・)じ(・)ん(・)って、言ったような?


「 というわけで、まぁアレだ。 俺の愛人に成らんか? 大事にしてやるぞ? 」


空耳でも気のせいでも無かった。 こいつは、俺を愛人にするとか言いやがった!

しかもその目がマジだ! こいつは本気で俺を愛人にしたいとか思っていやがる!


・・・ホント、なんでこうなるんだろう? なんで愛人なんて話になるんだろう?


・・・・・・・・・


愛人か? 予想外の展開だな? 話を振ったのが失敗だったのか? 俺が悪いの?


・・・・・・・・・


でもまぁこれはこれで、大収穫かも知んないのだ。 いいネタが入手出来たかも?


・・・・・・それにしても、本当に予想外過ぎる展開だな。


姉ちゃんが持たせてくれた、ICレコーダーが役立つ事になるとは思ってなかった。

ひょっとしてコレを予想した? なんて考えていたら、何故か世界が傾き始めた。




   ◇ ◇ ◇




「 蒼ちゃん、本当に大丈夫なのかい?」 女将さんが心配そうに俺を見ている。


情けない事に俺は倒れた。 というか、座って居られなくなった。 理由は多分

だけど糞親父の一言で、張りつめていた何かが切れたから? うん、そんな感じ。


・・・・・・・・・


色々気合を入れて臨んだ会談だったけど、この色ボケの一言で全てが吹っ飛んだ。


憤りやら情けなさやら様々なものに、頭の中で整理していたものが押し流されて、

何処かに行ってしまったのだ。 そうなった上で、集中力迄が途切れてしまった。


その結果強い疲労感だけが残る事となった。 だからへたり込んでしまったのだ。

だから用意して貰った布団で、女将さんの看護付きで、休ませて貰っているのだ。


・・・本当に情けない。


母ちゃんからあれ程注意されていたのに、糞親父のペースに巻き込まれて、集中を

途切れさせる事になった。 集中が途切れただけで一気に疲労に押し潰されるのだ。


・・・・・・・・・


母ちゃんが危険だと云った『 本人でも無意識のうちに相手を疲弊させる交渉術 』

ソレがこいつの武器だと判っていた筈なのに、まんまと術中にハマってしまった。


男でも女でも、疲れて妥協点を引き下げざるを得なくなる、天然物の交渉術の前に

俺は妥協を強いられる処か・・・交渉の継続すらも出来なくなってしまったのだ。

やはり何をするにも、重要なのは健康と体力なんだと。 そう思わざるを得ない。


・・・思っても栓無き事だけど。


全く、本当に情けなくて堪らない。 俺は何をする為に此処に臨んだというのだ?


・・・・・・・・・


まぁ気にしても仕方ないか。 必要な事は全て、糞親父が見ているPCの中にある。


ソレを見るだけで、こいつなら理解出来ると考えた内容に重要項目を纏めたのだ。

最悪に備えて俺が居なくても止まることが無い様に、十分に手を打っていたのだ。


だからこんなに力を入れて、今日の会談に臨む必要は無かったのだ。

俺の身体を知るこいつ相手なら、PCを渡すだけでも済んだ事なのだ。


・・・それでも俺は交渉に臨んだ。


結局俺はソレを披露したかっただけなのだ。 子供の様な自己顕示欲に駆られて。

誰もが一目を置く糞親父に対して高説を垂れ、能力を誇示したかっただけなのだ。


・・・・・・・・・


KAGUYA ばかりが注目される現状で、テストで百点を取る以外に取柄の無い美倉蒼

としては、はっきりと判る形で、誰かにアイデンティティを主張したかったのだ。


・・・本当に子供じみた自己顕示欲の発露。 全く以って、馬鹿馬鹿しい限りだ。

自分がここ迄馬鹿だったとは思っていなかった。 隠し様もないため息が漏れる。


「 落ち込むこたぁねえぞ、身体が弱いのはお前の責任じゃねえし、そんな身体

  でもお前はコレだけのモノを考え、纏め上げたんだ。 目一杯誇ってもいい 」


糞親父が PC 画面を食い入るように見つめ乍ら言って来る。 どうやら夢中な様だ。


その身体が弱い俺を疲れさせたのは誰なんだ! と思いもしたが嬉しくもあった。


・・・・・・・・・


いや、正直に言おう。 嬉しくて堪らない。 それが俺の本心だ。


女将の咎める様な視線を無視して、一心に PC 画面に見入るこいつの姿が、俺には

嬉しくて堪らないのだ。 こいつを夢中にさせているという事実が喜ばしいのだ。

こいつのせいで醜態を晒す事になったのに、それでも俺は嬉しくて堪らないのだ。


・・・・・・・・・


見事に術中に嵌められたという思いはある。 それなのに嬉しくて堪らないのだ。


財界人としては珍しく嘘を言わない。 容易に赤心を晒すこいつに褒められる事は

それ程迄に、俺にとっては嬉しい事なのだ。 やはり俺の対人スキルは相当に低い。

対人交渉でも重要になって来るのは、話術や知識ではなく気力と体力なのだから。


感情に呑み込まれない為の気力と、気力を支える事になる体力が重要になるのだ。


話術と知識をぶつけ合い、気力を削り合った結果に、多くの気力を残した方が勝つ

のが対人交渉というものなのだ。 話術や知識なんか当然過ぎて武器にならんのだ。


論破した方が勝つ! ・・・なんて簡単な、子供の遊びとは違うのだ。


・・・・・・・・・


それなのに俺は、自身の体力不足を補う為に、膨大な量のデータ提示と論理の集中

投下とで、交渉の場を乗り切れると、乗り切ろう等と浅はかな考えで臨んだのだ。


用意した知識と戦術だけで、俺の体力不足をカバー出来る等と自惚れていたのだ。

相手が海千山千の怪物である事を承知し乍らに、好意的な筈だと勝手に期待して。


・・・確かに好意的ではあったけど、それでも想定外の言動を予見すべきだった。


こいつを父親として、そして社会人として、とことん非常識な奴だと想定すべき

だったのだ。 俺が周囲の大人ばかりを参考にした結果、こいつを甘く見ていた。


ここ迄どうしようもないレベルの、色ボケが存在するとは思っていなかったのだ。

自分の息子を愛人にと望む様な父親が、この世に存在するとは思えなかったのだ。


・・・・・・・・・


うん、負けた言い訳はもう十分だな。 我乍ら潔くない性分だと思う。

負けず嫌いは原動力にもなるが、負けた時は大きなブレーキにもなる。


・・・コレは諸刃の剣だからな。 ホント、取り扱い注意な代物だわ。


冷静に負けを認めて・・・と。


交渉で、倒れた時点で、俺の負け。 素直に認めて、明日を見るべし。




   ◇ ◇ ◇




「 大体のとこは読めば判る筈だが、今、この場で確認しときたい事とかあるか?」


起き上がるのも面倒だし、ふらついたらカッコ悪いので、寝たままで話し掛ける。


「 買収の規模を考えたら十二支総出が必要だと思うがな、美倉が入ってないぞ?」

「 うちは御蔵を呑み込む事を決めたからな・・・手が足りないから仕方ないのよ」


当然だろう疑問に即答する。 初耳だろうが、ある程度は予想もしていただろう。


「 お前、俺たちの財務状況は無視なのか? いくら成功確率が高いといっても、

  これだけ長期戦が予想される事業に、予備費なく臨む事なんか絶対出来んぞ!」

「 後の方に少し、別フォルダに詳細を入れてるけど、税金で補填を考えている。

  表向きは地方の再生と国内産業の強化事業だ。 それなりの額を確保出来る 」


俺の言葉に糞親父は、一瞬だが呆れた表情を見せる。 政治家や官僚といった連中

は直ぐ保身に走るから、当てにはするな!と考えているのだろう。 無理も無いが。


・・・・・・・・・


糞親父位になると連中から散々集(たか)られたり、無理難題を押付けられたりしただろう

から嫌いになるのも当然だろう。 それでも有名税と割り切って、上手に付き合う

しかない相手なのだ。 付き合っていく中で上手い利用法を考えるべき相手なのだ。


それが政治家や官僚との正しい付き合い方なのだ。


二枚舌や三枚舌は当たり前。 いざとなったら肉親すらも切捨てる酷薄さが彼らの

身上なのだ。 政治家や官僚とはそういう人種。 そうでなければいけない人種。

いや大マジな話で。 それが潰れる事が許されない立場の人間というものなのだ。


人だとは思わず、そういうシステムなんだと割り切って付き合うべき相手なのだ。


「 厳密には人であり、システムでもある。 そんな人種が政治家と官僚だよ。

  堕落して、システムとして機能しなくなったポンコツも居るだろうけどね?

  そんなのは菓(・)子(・)とかゲ(・)ー(・)ム(・)とかを与えて、好きに遊ばせておけばいいのよ 」


「 お前・・・本当に高校生か? ちょっとばかり、擦(す)れ過ぎてやしないか? 」


俺の言葉に呆れた様に返す糞親父。 呆れる程に変だろうか? 女将さんを確認。


「 蒼ちゃんは物知りだねぇ 」 微笑ましいモノを見る様な笑顔で俺を見ている。


・・・子供が精一杯に、背伸びをしていると思われているのかも?


「 昔からそうだったけどよ、お前、中身と外見のギャップが益々拡がってるぞ 」


糞親父の言葉に、今朝、家を出る前の姿見に映った自分の姿を思い返す事にする。


・・・・・・・・・


うん、確かに微妙だ。 というか、お昼寝モードの体勢で口にする言葉ではない。

団扇を扇ぐ女将さんが、学芸会の発表を見守る保護者になるのも無理は無いかも。


・・・・・・・・・はぁ。


この顔は何処迄も祟って来るんだよなぁ。


何でこいつと母ちゃんが、アレした結果の成果物がこんなことになってるんだろ?

強面系のイケメンと姐御系の美人からなら、姉ちゃん風に生まれるのが普通だろ?


それが何でこんな顔に生まれて来たんだ?


・・・・・・・・・


ムカついて来たから、糞親父に枕を投げ付けてやる! ポイッ!


    (  ふわぁぁぁぁぁ ~  ぽふ!  )


力なく飛んで行った羽根枕は、左手一本で軽く受け止められた。




   ◇ ◇ ◇




とんでもないモノを見せられている。 文字を追う毎(ごと)にその思いが確信へと変わる。


こいつは本当に凄いモノを押付けて来た。


PC 画面上に映されるテキストに、今迄読んだ全ての本やレポートを超える驚きと

昂奮を覚えさせられている。 これが若干 17歳の小僧が纏めたモノだというのだ。


目の前で力なく横たわる麗人。 俺の息子か娘か、本気で判別に困る病弱な子供。

KAGUYA という極上の女として巷を騒がせている、蒼の本質がコレだというのか?


・・・・・・・・・


色恋に初心(うぶ)という一点を除けば恐ろしい程に切れる上、女離れした体力を有する

秋帆との間に生まれた二人の子供は、二人揃ってとんでもなく優秀な子供だった。


上の茜は親以上だと確信出来る行動力と組織力を、学生の身で既に証明している。

一部ではサブカル会の女王とか呼ばれている様だが、それは外面だけに過ぎない。


茜の本当に凄い処は、秋帆から受け継いだ MSS という組織を日本最強の諜報機関

に育て上げた事だ。 民間人に何でそんな事が出来るんだよ? おかしいだろ??


・・・多分は秋帆と蒼、二人の子供じみた悪ノリが加味された結果だろうけどな。


・・・・・・・・・


何にしても茜は、異常とも思えるレベルで優秀な子供だ。 しかも極めていい女。


今、二番目に愛人にしたいと思っている女が、我が長女である茜だ。

・・・周りは揃って非難するが、父娘相姦ってそんなに駄目な事か?


神話の世界じゃ当たり前の話だし、歴史上でも割とあった事なのに?

遺伝子上の問題なんかは、繰り返さなければ回避可能な事なんだし?


・・・まぁいい、それは一旦置いとくとしてだ。


一番目、今一番に愛人にしたいと思ってしまった女が、我が次女である蒼だ。

一応戸籍上は男だ。 でも、どう見ても女だから、女と考えても問題は無い。


以前のうっかりでの抱き心地が、完全に女を抱いた時のソレであるので女なのだ。


・・・話が逸れた。 いや、逸れ過ぎた。 問題はこいつの器でなく中身の方だ。


美術品の様な容姿でも、抱き心地のいいしなやかな肢体でもない。 頭蓋に入った

知識と高度な計算力が産み出す判断力。 それにより産み出される数々の施策案。


学生時代の修行も含めれば、30年以上実務に携わって来た俺が驚かされた提案書。

間違いない! こいつは秋帆や茜を超える化け物だ! まだ学生の身で在り乍ら。




   ◇ ◇ ◇




こいつが本格的なエリート育成機関設立の為に、働いている事は聞かされていた。

国が企図している知識の寡占化の反対を往く、国にとっては本当に有益な事業だ。


今現在国の実権を有している指導者層(ポンコツ)からすれば、迷惑極まりない行為だろうが。


だが程度の低い指導者に付き合っていては、国そのものが傾く事になってしまう。

最早バカ殿でも許される様な、江戸期日本の様な甘く緩い世界には戻れないのだ。


・・・・・・・・・


もし現代の世でそんな暴挙を罷り通せば、一般大衆は他国の奴隷と化してしまう。

一般大衆から教育の機会を奪い、地位の保全を図るという事はそういう事なのだ。


だから二世三世の盆暗共が、いくら眉を顰める事になろうとも、こいつの事業は

絶対に推し進めるべきなのだ。 国が教育費を削るのなら事業家が代りを果たす。


コレは社会の必然、事業に必要な人材を事業家が育てるのは当然の事だったのだ。


だからこいつからその為の資金提供を求められた時は、俺を含め十二支の誰もが、

最大限応じるつもりだったし、資金提供を求めて来るものだとばかり思っていた。


それが違った。 事業計画案の提示だった。 純益の10パーセントを対価とした。

純益の10パーセントを、事業が続く限り払い続ける事を対価とした計画案だった。


ソレを売り込んで来やがったのだ。


・・・・・・・・・


事業というものは、手を拡げるだけで、投資するだけで利益が増える様な、そんな

簡単なものではない。 膨大な投資を生かすも殺すも、全て事業計画次第なのだ。


だから優れた事業計画の場合だと、10パーセント程度のマージンなら高くはない。

寧ろ安いと言えるかも知れない。 実際に田辺の吸収では純益の10パーセントの

他に、一時金として1000億をこいつは要求し、その満額を一括で手に入れたのだ。


今回の事業規模は、田辺の時の 100倍を超えるという、途轍もないモノだ。


だから真剣に読まざるを得ない。 一字一句見落とす事の無い様に、集中して読み

進める必要がある。 だから判った。 この事業計画の企図する処が理解出来た。



こいつは・・・俺の娘は、とんでもない事を考えていやがった!


これは、民間の企業グループが手掛けるレベルの仕事じゃねえ。


完全に、国家が主導すべき、国家レベルの巨大プロジェクトだ。




   ◇ ◇ ◇




日本は農業と製造業、そして海運業の三本柱で未来を造るべきなのだと俺は思う。

国土、国情、気象等様々な条件を鑑みれば、それが最上の選択と考えられるのだ。


・・・尤も、それらの実現は、前途多難としか言えないのだが。 それも極めて。


未だに水や食料の問題よりも、エネルギーや温暖化問題の方が重要だとメディアに

認識させられている様に、問題が隠し切れなくなる迄は、商業主義に振り回される

のが、理性を失った資本主義の本質であり現実なのだ。 だから前途多難なのだ。


だけど、前途多難だからといっても、手をこまねいて居る理由にはならないのだ。


打てる手は打っておくべきなのだ。 という訳で俺は製造業を選んだ。 製造業を

選んだ理由は緊急性が最も高いからだ。 町工場の崩壊前に動く必要があるからだ。


その上多くのメーカーが、グループの上層や銀行からの圧力で、事業の大幅な縮小

を迫られているという、アホ勿体無い事情迄あったからだ。 ホント、アホだわ。


資産の時代からモノの時代へと、変わりつつある現状に気付いてないのだろうか?

これからは、優れたモノを作(・)れ(・)る(・)技(・)術(・)の時代が来る事に気付いてないのだろうか?


・・・・・・・・・


マネーゲームの終焉が近付いている事に、彼らは本当に気付いてないのだろうか?


・・・まぁ、それらは、結果的には望ましい結果に繋がる事になったのだけどね。

それら冷遇措置のおかげで、企業の再編成に取り組む事が容易になったのだから。


という事で、企業買収は予想以上にスムーズに話が進み、駒が揃う目途が立った。


国内産業の強化という、行政府が喜びそうな演目に必要な駒を揃えたら、次の作業

は地方の再生と地域経済の活性化という、行政府が更に喜びそうな演目の開始だ。


別に特別な事はしない。 でっかい工場をあちこちに建設して、そのついでに防災

を意識した都市開発も行って、インフラを更新してと・・・いずれ必要になる事を

この際纏めて行えば効率化出来るから、トータルコストを抑える事も可能になる。


開発地域を派手に潤わせ乍らも、国や自治体の出費を最小限に抑える事が出来る。


それでも天文学的な投資になるけど、全て国内向けの投資だから直接的に経済の

活性化にも繋がるのだ。 日本企業や行政の投資で日本人を潤わせるのだから、

決して無駄遣いにはならないし、行政からの補助金だって十分期待出来るのだ。


行政だって外国企業に補助金を出すよりも、日本企業に補助金を出したいのだ。


・・・・・・・・・


つまり、纏めたらこんな事になるかな?


産業の国内回帰と強い企業の育成。 ついでに地方の再生と都市への集中緩和。

ついでに加えて災害に強い都市計画の実践と、古くなった各種インフラの更新。

それらを纏めて行う事で出費を抑え乍も、十分過ぎる投資による経済の活性化。


・・・・・・・・・


あっ! それと、忘れちゃならないのは、日本の財産ともいえる町工場の存続。

最後におまけで、十二支が不得手としていた製造業の強化? そんなとこかな?


・・・大体そんな感じ?


・・・・・・・・・


「 ・・・おい! 」 「 何だよ? 」


「 大体そんな感じ? ・・・じゃねえよ! お前、何処まで先走った⁉ 」


「 買収の話は済ませているし、ファイルに名前の在る政治家や役人には

  話を通してる。 そんで承認も貰った。 後は実際に動き始めるだけ 」


「 何だとぉ! おまっ、それじゃあ俺らは端から選択肢なんかねえだろうが!」


俺の言葉に糞親父が目を丸くして声を荒げる。 わはは、溜飲が下がる思いだ。

そして云ってやるのだ。 決定的な一言で、ムカつく大男を黙らせてやるのだ。


「 だから最初に云ったろ? 分析済みだって? この仕事を断る様な盆暗は

  十二支には居ねえんだよ。 断れねえだけの計画を立てたんだよ。 やる

  しか無いんだよ。 ソレが ” 社会を豊かに ” をモットーとする十二支だろ?」


「 うっ、確かに・・・だからって、俺らに一言も無く決める事は問題だろうが!」


・・・子供かよ! ぐだぐだと下らねえ事をほざきやがって! そんじゃ止めだ。


「 あんただって判ってるだろ? こんだけの事業だと直ぐに横槍が入って来る

  事くらいは? 心当たりなんか幾らでもあるだろ? そんな詰まらん連中に?

  だから連中の調査が終わらないうちに、大枠を決めておく必要があるんだよ。

  強引に旗を振る奴が必要なんだよ! だったら、俺が旗を振るのは当然だろ?」




   ◇ ◇ ◇




今日の会談は微妙な結果に終わった。 先ず糞親父に振り回されて倒れたから、

マイナス50点。 後は概ね想定通りに、残りの作業を押付ける事が出来たので、

100点満点で50点。 それにICレコーダーを高値で売り付ける事が出来たので、

20点追加して70点。 俺からしたら不満しか残らない数字だ。 商談に於いて

満点は逆にNGだと解かってはいても、糞親父の前で醜態を晒した事が恨めしい。


・・・・・・・・・


ハイヤーから降りた俺は、そんな、浮かない顔をしていたのだと思う。


『 何かされたの⁉ 』 ・・・姉ちゃんに余計な心配をさせてしまった。


仕事の話は判り切っているだろうから、仕事以外であった事を伝える事にする。

特に何も無かったという事実を隠さず伝える事で、姉ちゃんを安心させる為に。


「 愛人になれと云われて、布団に入って、そしたら益々拡がってるなんて

  云われて・・・なんか、むっちゃムカついたから枕を投げ付けてやった!」




何故だか完全武装した一個小隊が現われた。



士官姿にコスプレした姉ちゃんも現われた。



『 打っ殺してやる!!!』 猛る姉ちゃんを押し止める事でその日は終わった。




翌日は、予想通りに寝込む事になった。

滅多・・・無い:例え美味しくても、外食って煩わしいですからね。

        食べる為に態々外に出ようなんて思えませんよね?


女と考えても :流石に問題しかない気がします。 元隆思考は理解不能です。


俺の娘は   :だから違うって! ホント、この親父ときたら訳が解からん。


農業と製造業 :大量生産には不向きですが、高付加価値 & 高品質な製品には

        向いています。 農業では野菜や果物で証明済み。 製造業も

        職人気質が産み出す商品という意味でのサブカル文化によって

        証明されていますし、過去に日本の家電が世界を席巻した事実

        でも証明済みです。 今の家電業界の衰退は目先の利益に目が

        眩んだ似非投資家や銀行がメーカーに開発費を制限させたから。

        面白い商品を開発させなかった結果なのだから衰退も当然です。

        家電は衰退したけど、企業向けの加工機や工作機等は強いです。

        家電に近いけど、開発費が潤沢だったゲーム機なんかも強いし。




   ◇ ◇ ◇




自分の子供をレイプした挙句に愛人にしようとする鬼畜、久喜元隆にはモデルが

存在します。 作者の高校時代の友人(の友人)で、頻繁に作者の尻を撫でては

『 なぁ、ヤラせろよ 』と迫って来た変態 A。 返答は勿論拳とかエルボーとか。

そんなAは美人と結婚して娘を作り、自分好みに育て上げては愛人にするという

狂った夢を周囲に語っていました。 作者の知る範囲では実現していませんが。


ところで変態親父元隆ですが、作者はそれ程嫌いではありません。 下半身こそ

ケダモノとはいえ、獣化の責任は取ろうとするし、下半身以外は真面(まとも)だからです。

下半身がだらしない上に生活能力も無くて、家族を思い遣る事も無かったという、

とことん自己中心的な屑野郎だった、作者の父親よりは百倍以上はマシですから。


ちなみにですが、本話で初期構想外の展開は蒼が父親の愛人発言で倒れた事です。

本来なら蒼がブチ切れて暴れる筈だったのですが、暴れる事が出来ませんでした。

気力・体力共に順調に、というか作者の予想以上に弱体化が進んでいる模様です。

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