068_夏には涼を脳には糖を
食欲が無い時でも食べ易いのがアイスクリーム。 暑い夏には最高かも?
カロリーも栄養価も高い素晴らしい食べ物で、冷凍庫で長期保存も可能。
野菜ジュースとセットにしたら最強コンボ? 後は鉄分と亜鉛が問題か?
という訳で、今回はアイスクリームのお話です。
学期末試験を控えての勉強会。 そこで俺は途轍もない難問に直面してしまった。
多くの選択肢の中から一つを選ぶだけなのだが、その一つを選ぶ事が難しいのだ。
過去の記憶を総動員して、正解を導き出している処なのだが・・・う~むむぅぅ。
「 なんか美倉がこんなに悩んでいる処なんて・・・初めて見た様な気がするわ 」
「 そうですね、私もちょっと記憶に無いですねぇ 」 「 私は初めてなのです!」
「 「 結果はともあれ、何事も即断即決のお姉様にしては凄く珍しい事では?
でも悩まれているお顔がとても愛らしいです。 ホント、堪りません 」 」
「 まさか美倉先輩にこんな一面があったとは⁉ あぁ、やはり先輩は奥が深い 」
「 あの・・・皆さん? 美倉先輩が何を悩んでいるのかを判って話してます? 」
「 ・・・ちょっ・と・ゎかる・ゕも? ゎたしも・悩んだ・ゕら 」
なんか外野が五月蠅い。 俺が悩んだら駄目なのか? 俺だって普通に悩むぞ?
何といっても思春期だからな! 恐らくだけど? 関係無いかも知んないけど?
・・・こんなに悩んだのは、いつぶりになるだろうか? そう思い始めていた時に
エレベーターの起動音が ” ポーン ”と鳴った。 起動音といったが機械音ではない。
専用エレベーターが起動した事を、昂輝たちが戻って来た事を知らせる電子音だ。
・・・結局俺は、昂輝たちが戻るまでに、答えに辿り着く事が出来なかったのだ。
◇ ◇ ◇
「 お前が好きなアイスクリームのフレーバー?? それを何で俺に聞くんだ?」
「 いや、自分じゃ判断が難しいから、第三者の客観的意見を聞こうと思って?」
七月初めとは思えない糞暑さの中、伊藤と一緒にアイスを買いに行かされ、戻って
いきなりに蒼からアホな質問を受けることになった。 相変わらず奇天烈な奴だ。
「 チョコとバニラとストロベリーだろ? それくらいは自分でも判ってるだろ?」
「 同じくらい抹茶とバナナも好きだぞ。 問題はどれが一番なのか? なんだよ 」
・・・なんとなくだが、読めて来た。
「 それって、一番を選ぶのって、重要なのか?」 「 そういうお題だからな 」
毎度おなじみ沢瀬の蒼弄りだった。 こいつも真面目に悩む必要なんか無いのに。
何でもいいから適当に好きなのを云えば済むんだよ。 変に生真面目なんだから。
・・・しかしまぁ、それが蒼らしいといえば蒼らしい処、でもあるのだけどな。
「 蒼君はいつも食べ切れない程注文しては、藤堂君に助けて貰ってますからね。
藤堂君に迷惑だから絞り込んで注文しましょうね? 取り敢えず一番好きな
フレーバーだけでも把握しておきましょうね? そんな話から皆が一番好き
なフレーバーは何かを発表しましょう。 といった話題になったのですよ 」
「 今の処、女子 8人の集計はストロベリーとバニラが 2票ずつ、後はチョコと
抹茶とキャラメルとチョコミントが、 1票といった感じに別れてるのよね 」
「 ふ~ん、結構好みがバラバラなんだね。 ちなみに僕はラムレーズンかな。
藤堂は確か抹茶だよね? という事で抹茶も同率首位に並んだって事だね 」
五十嵐の話に伊藤が応える。 これまた伊藤らしいぼっちなチョイスを挙げて。
「 「 これで人気第一位はお姉様次第! という事になりましたね!! 」 」
「 蒼先輩! 大トリを飾る一言なのです! 」 「 いけ! 美倉先輩! 」
「 もう何でもいいから言っちゃって下さい 」 「 ・・・チョコ・ミン 」
「 ちょ! ちょっと待って! 今から常識人に相談してみるから・・・」
「 「 「 「 「 「 「 「 相談は無し(なの)です!! 」 」 」 」 」 」 」 」
・・・完全に面白がられている。 蒼は滅多に狼狽えたりなんかはしないからだ。
そして長考する事が基本無いのだ。 瞬時に答えを導き出す異能異才な奴なのだ。
それが、たかがアイス如きで真剣に悩んでいるのだから、面白がられても当然か?
「 でも美倉って、アイスに関しては好き嫌いなく何でも食べるって感じだよね。
だからきっと、一番を選び難い・・・自分でもよく判らないんじゃないかな?」
伊藤がナイスなフォローを入れる。 そう、アレだけ偏食家な蒼だがアイスだけは、
見境なく何でも食べようとするのだ。 アイス愛と好奇心が強烈なタッグを組んで。
・・・・・・・・・
今日だって新フレーバーや期間限定フレーバーの全て、計14種をリクエストした。
ボリューム的にはダブルが限界・・・子供並みの胃袋のくせに。 なのに14種だ。
・・・・・・・・・
茜さんもそうだが、美倉は姉弟揃って箍が外れ易い。 というか自分から外すのだ。
悩むなら全て買ってしまえ! 買ってから考えろ! との発想がこんな結果を生む。
特にアイスの場合だと、残しても保存が利くから、僅かばかりも考えることなく、
手当たり次第といった買い方になるのだ。 ・・・本当に考え無しの手当たり次第。
例えば「 そんなに悩むくらいなら、いっそキムチ納豆フレーバーにでもするか?」
「 いやいや、流石にアレだけは絶対無いわ!」 今、即答で否定したゲテモノを、
こいつは買ったことがあるのだ。 納豆もキムチも、両方共大嫌いなこいつがだ!
俺と沢瀬の猛反対を無視して、『 何事も挑戦することに価値がある!』と大見えを
切ったうえで、『・・・挑戦した 』の一言と共に、一舐めしただけのアイスを俺に
手渡して来たのだ。 ・・・あの時ばかりはアイアンクローを喰らわせてやったが。
アイアンクローを掛ける手前になった事なら・・・今迄に、何度でもあったのだ。
・・・・・・・・・
それ程にアイスは蒼を狂わせる。 アイスとわんこは蒼をお馬鹿な子に変えるのだ。
蒼が強い執着を示す食べ物なんて、本当にアイスクリームだけしか無い様に思う。
和菓子さえも、菓子を用意するなら洋菓子よりも和菓子がいいというだけなのだ。
どうしてそこ迄執着するのかは判らないけど、蒼にも執着する食べ物があるという
その事実が嬉しいのだ。 だから食べ残しの処理を任される事すら嬉しく思うのだ。
「 う~ん、う~むむ~ん・・・ 」 でもそろそろ・・・いいかげんに、決めろよ。
◇ ◇ ◇
結局俺はチョコを選んだ。 高カロリーで、たんぱく質と脂質が最も多いからだ。
つまり食品として最も優秀だったからだ。 味でも最上位クイントのひとつだし。
おまけにチョコはバイプレイヤーとしても優秀なのだ。 バナナ、ストロベリー、
バニラ、それらとチョコがペアを組めば、優れた合体フレーバーに進化するのだ。
そう、バナナ、ストロベリー、バニラ・・・バナナ、ストロベリー・・・バニラ?
「 抹茶が居ない!」 思わず声が出てしまった。 昂輝たちを驚かせたみたい?
でも俺だって驚いたのだ。 チョコチップ抹茶や、チョコ抹茶というフレーバーを
食べた記憶が無いのだ。 というか、そんなフレーバーを見た記憶すら無いのだ!
そんなフレーバーが市販されてないのなら・・・自分で作る! しかないのだ!!
◇ ◇ ◇
蒼が業務用アイスクリーマーを買った。 しかも三台。 三台で 225万円だとか。
アイスとわんこは蒼をお馬鹿な子に変えるからだ。 お馬鹿な子・・・少し怖いわ。
けれどもそれが、無駄な買い物だったとは断言出来ない現状がある。 連日の様に
三種のオリジナルフレーバーを楽しめているからだ。 この場の全員が、思い付く
限りの希望を集めた結果から、選んだ三種を毎日日替わりで楽しめているからだ。
高い買い物であった事には違い無いけれど、無駄な買い物にはなっていないのだ。
既に過去に食べた事が無いレベルの、極上フレーバーが多く開発されているのだ。
・・・・・・・・・
大抵はコスト度外視の、商売だったら出せないレベルの超高級フレーバーだけど。
食の煩悩を暴走させた様な、我儘フレーバーだったりするけども味は最高なのだ。
そしてその最高のフレーバーが・・・形を変えて新たな進化を始めてもいるのだ。
・・・・・・・・・
「 今日はまた・・・凄い事になっているねぇ 」 伊藤が何かを悟り始めている。
伊藤の言葉通り、本当に凄い事に成ってしまっている。 これはもう、フレーバー
がどうのといったレベルの話では無い。 完全に三種のアイスが入ったパフェだ。
・・・それも器は二つに切ったマスクメロン。 器だけで並のパフェを超えている。
もう既に三種のオリジナルフレーバーさえもが、完全に霞んでしまっているのだ。
「 ・・・何でこうなった? 俺のせいなの? 」 蒼は事態の変化に困惑している。
そう、事態は蒼の行動と予想を超えてしまったのだ。 蒼が始めたアイスクリーム
作りから、アイスクリームを使った夏のスイーツ作りへと進化してしまったのだ。
・・・・・・・・・
蒼のアイス熱に触発された女子軍団のスイーツ熱が、蒼のアイス熱を呑む混む形で
暴走した結果が、目の前の原価が一個五千円を超えるだろう豪華スイーツなのだ。
敢えて原価を挙げたのは、そのボリュームからは、目を背けてしまいたいからだ。
・・・・・・・・・
俺・・・これを、実質二個食う事になるのか? 一個 900g の巨大スイーツを?
・・・実質、二個も?
・・・・・・・・・
アイスとわんこが蒼をお馬鹿な子に変える様に、スイーツは・・・スイーツの魔力
というモノは、女子をお馬鹿な子に変える危険な力が在るという事なのだろうか?
・・・とても怖い・・・お馬鹿な子に変えてしまうという事だろうか?
・・・・・・・・・
最初はアイス三個だけ、普通のトリプルサイズだった。
それが一週間後には一個 900g の巨大スイーツに進化。
更に一週間後の試験最終日にはどうなってしまうのか?
・・・・・・・・・
いや、女子がいくらスイーツ好きだからって、きっと限界はある筈だ。
過去の記憶を遡ってみる。 幸い限界はあった。 五十嵐の限界は俺より少ない。
沢瀬は俺より少し上で、田辺はかなり上。 でも五十嵐は俺より少し少ないのだ。
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ということは、スイーツの肥大化は俺の限界より少し少ない位が上限になる筈だ。
それなら何とかなるか・・・いや、ならんな! 俺は約二倍食う必要があるのだ!
更に言うなら、田辺以外の 2年生や 1年生の限界が、想定される上限が未確定だ。
・・・つまりは、今心配してもどうにもならないという事だ。
成るようにしか成らない。 そういう事だ。 うん? 蒼は早くもギブアップか。
・・・・・・・・・
目の前のスイーツが、初期値の 0.7倍から 1.5倍へと・・・二倍以上に増加した。
勉強会 :映研部では山田と手島君が不参加です。 山田は常の事で、
手島君はバイトがあるという理由で、泣く泣く不参加です。
結果はともあれ:にやこたの二人も、それなりには客観視が出来ている様です。
アイスだけは :昂輝の認識間違い。 蒼は偏食が激しい割に、初めての食べ物は
何でも興味を持ちます。 全てに於いて好奇心だけは強いのです。
ただ匂いを嗅いだ時点でギブアップする事が多いだけなのです。
アイスは匂いが強くない為、取り敢えず口にするだけなのです。
抹茶が居ない :チョコバ〇キー抹茶はありますけどね、サーティーわんとか
だと作者は見た記憶がありません。 過去にはあったのかな?




