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060_頑固爺と十二支の長老

すみません、冒頭部分はやたらとヤクザ関連の説明が長くなります。

知ってる方には無意味に長く感じられると思いますがご容赦下さい。

書いた内容を知らない方に、変な誤解をされたく無いと考えたので。


・・・ということで、久しぶりの一万文字超え。 結構大変でした。

大反省ものの 027の 2/3 のボリューム。 話的に分割処が難しくて。

一言でヤクザと云ってもその成り立ちは様々だ。 古くは荘園や寺社が管理する市

の自警団、すなわち武士と同等の存在を祖とするものから、ただ単純にアウトロー

の寄せ集め集団まで。 俗に博徒を祖とすることが多いと云われるのは、自警だけ

では組織を維持出来ないので、収入の為に賭場を運営することが多かったからだ。




しかし相河(あいがわ)連合はそのどちらでもない。 太平洋戦争に敗れGHQ監視下に置かれた

日本。 そんな特殊な環境下で必要とされた自警団を祖とするヤクザなのである。


「 自警、ですか? 一体何から何を守る為の組織だったのです?」


俺は相河邸の広い庭でわんこたちと戯れ乍ら、皆の不安を取り除く為に相河連合の

成り立ちを話している。 街のチンピラ集団とは組織の性質が異なるのだと云って。


そんな俺に質問を投げ掛けるのは仁宮さんだ。 沢瀬は俺の撮影に夢中だし、田辺

は屋敷の造りが面白いとあちらこちらをスケッチして回っている。 小田部さんは

俺と一緒にわんこと戯れ、馬鹿女は出された座布団の上から動く気配を見せない。


・・・・・・そうそう、仁宮さんへの回答がまだだった。


「 進駐軍兵士による乱暴から、一般市民を守る為に創られた組織だったんだよ 」

「 進駐軍兵士による乱暴ですか? それは進駐軍MPや日本の警察の仕事では?」


流石は勉強家の仁宮さん。 試験に出ない様な内容でもしっかり頭に入っている。

ただ、それが教科書的な内容に留まっていて、現実とのずれが残ったままなのだ。


「 理屈の上では確かにそうなんだけどさ・・・現実はちょっとばかり違うんだね。

  考えて欲しいんだけど、終戦から80年以上も経って、日米両国の関係が大幅に

  改善されて、同盟国と呼ばれるようになっている現在でさえ、米兵による犯罪

  の取締りには地位協定という条約が障壁になってしまい、結局は泣き寝入りに

  なる事例が多いんだよ。 それは知っているよね? そしてその理由は彼らの

  根深い人種差別意識に有るんだ。 自分たち白人は黄色人種より上位の存在で

  あるという、自分勝手で中二病的な妄想癖がね。 それは高度な教育を受ける

  機会に恵まれなかった、下級層出身の兵士に特に多く見られる傾向なんだよ 」


「 はい・・・ 」 仁宮さんの生返事・・・少し回りくどかったかも知んないな?


でも、こういった基本的な情報こそが重要なんだよね。 歴史は背景を知る事で、

初めて学ぶ事に意味が生まれるものなのだから。 ということで続きを説明する。


「 現在でさえそんな状況なんだ。 それが終戦直後の、互いに殺し合った敵国

  といった関係の勝者と敗者の間で、どれ程の公平性が保たれるというのか?

  ・・・そんなの考えるまでもないよね、勝者側が圧倒的にしたい放題なのが

  現実だったんだ。 日本の警察は進駐軍には手出し出来ないし、MPも上層部

  だけは取締ろうと考えていた様だけど、現場レベルでは日本人の人権なんか

  どうでもいいと考えていた。 つまり自衛する能力の無い弱者は、一般市民は

  何をされても只管(ひたすら)耐えるしかないというのが、その当時の状況だったんだよ 」


「 尤も、全ての兵士が乱暴者だったという話では無いけどね。 ただ、一部の

  乱暴者に対する抑止力が、一部の兵士の良心しかなかったということなんだ 」


「 その良心が足りなかったから・・・代わりの抑止力が必要になったのですか?」


「 そういうこと。 それも言葉ではなく、力を持った抑止力、すなわち "暴力"

  が必要だったんだ。 言って聞く様な連中を相手にする訳じゃ無かったから 」


「 ・・・言葉では抑止力にはならないと?」


何時(いつ)の世でも、暴力的な問題を起こす連中には言葉だけなんて通用しないよ。

  必要なのは言葉とそれ以上の暴力、もしくは圧倒的な暴力による威圧と強制 」


「 そういえば・・・当時の日本は警察も武装解除をされていたんですよね?」


「 うん、よく勉強しているね。 日本の警察が非武装なのに対して兵士側は武装、

  それだけでも警察側が不利なのに、進駐軍側には敗戦国の公権力に自分たちが

  取締られる筋合いは無いという、そんな傲慢な考えを持つ人も少なくなかった。

  そしてその傲慢な考えを、ゴリ押しする実力が彼らには有った。 だから当時

  の警察は、進駐軍兵士の乱暴狼藉に対する抑止力には成り得なかったんだよ 」


「 それで警察に代わって実力行使をする組織が必要だった?」 「 そゆことね 」


「 そしてそれは公的な組織ではなく、私的な武装集団である必要があったと?」


「 うん、全くその通り。 そしてそんな集団を、兵の乱暴に頭を悩ませていた

  被害者である市民と警察、更には加害者側の進駐軍上層部までが求めたんだ 」


「 公的な取締りだと反発されるけど、個人の喧嘩で勝った負けたの話だったら、

  反発されない。 あくまでも暴れた当人だけの問題で済むという事ですね?」


「 そうそう、そういうことなのよ。 それなら、暴れた当人が馬鹿だった!

  という話になって、治安的にも政治的にも丸く収める事が出来たんだよ 」


うん、大体理解して貰えたみたいだ。 基本的な素地がある子は説明が楽だよね。


「 でもその場合、警察がその集団を取締る責任を負わされるのではないですか?」

「 武装解除させられた警察に、武装集団を取締れ!との要求は無理が有るよね?」


「 ・・・確かにお姉様の仰る通りですね。 でしたらそういった場合だと?」


「 動くとしたら進駐軍MPになるけど・・・MP相手にどんな事情説明をするの?

  て、話になるでしょ? 市民相手への乱暴狼藉が原因だなんて言えないよね?」


「 ・・・そういうことなんですね。 毒を以て毒を制す、暴力による自警ですか 」


仁宮さんが納得出来た事で、相河連合発足のお話は終了になった。


・・・・・・・・・


と思っていたら、保護者さんからの一言で事態が動く事になった。




「 犬好きのお嬢さんは、随分と相河(うち)やヤクザの歴史に詳しいんですね?」


「 そりゃあ初代さんに資金提供して此処を創らせたのは、俺の曽爺(ひいじい)さんだもん 」


「    えっ!?    」 保護者さん・・・吃驚顔で固まってしまった。


「 「 「 「 「 えええええええええっっっっっ!!!!! 」 」 」 」 」


にやこたとお座り馬鹿女、そして保護者さんに大男の五人が同時に絶叫を上げた。




   ◇ ◇ ◇




「 もう少ししたら祖父も戻ると思いますので・・・ 」


保護者さんは俺を、親分さんとの挨拶無しで帰す気は無いらしい。 美倉、いや御蔵

に対する礼儀だろうから俺も従う事にする。 てか、俺も話したいことがあるのだ。


・・・・・・・・・


ちなみに保護者さんの父親は病没されたとのこと。 元々丈夫ではなかったらしい。

御家族全員が健康に恵まれているらしいのに、一人だけ弱かったという話だった。


なんか・・・すっごく、親近感を感じてしまった。






「 そうですか、お母様は夜遅く迄スーパーマーケットの経営を?」


「 経営といっても、コンビニに毛が生えた程度の、小さなスーパーですけどね 」


「 それで、若い方の多くがそこのお手伝いをされているのですか?」


「 うん、先ずは知り合いの多い中で働く練習をして貰って、次に適性に応じて

  仕事をお世話するというのがうちの方針なんだ。 最終目標はヤクザ卒業だね 」


「 ヤクザ卒業ですか・・・今時のヤクザは若い方が不足していると聞きますが?」


態々(わざわざ)ヤクザになろうという子は確かに減ってますが、親から捨てられたりして、

  行き場を失った子というのは、どうしても一定数存在するんですよ。 うちは

  そんな子たちの駆け込み寺、というか避難所? そんな役割もあるんですよ 」


「 そうですか、ひょっとしたら多くの保護犬もやはり捨てられたとか、行き場

  を失ったとか、そんな理由で保護と里親さんの世話をなさっているのですか?」


「 そこは何といいますか、人と犬を一緒にしていい訳じゃないけど、境遇は同じ

  なんですよね、うちに来る子たちって。 そんな子たちの前で捨てられた結果

  処分を、殺されるのを待つしか出来ない犬を、黙って見過ごす事には抵抗が、

  というか社会の理不尽を ”仕方ない” で済ます姿を見せたくはないのですよ。

  後は単純に犬が好きだから放っておけない、というのもありますしね・・・ 」


「 それは組として? それとも・・・ 」 「 相河連合としての総意ですね 」


縁側でわんこを膝に載せている俺に代わって、仁宮さんが保護者さんと会話中だ。

その保護者さん・・・名前は何ていったか? わんこに夢中で聞き逃しちゃった。


・・・・・・・・・


ということで二人の会話に聞き耳を立てている。 なかなか名前が出てこないのが

少しもどかしい。 そしてスーパー、それも小規模のお店となると利益面で厳しい

ものがあるだろう。 スーパーの経営はスケールメリット頼りの時代なのだから。


・・・・・・・・・


尤も、相河連合の懐具合なんか、とっくに判っているけどね。


・・・かなりヤバい状況なのよ。


そこから、スーパーの経営状況を推し量る事も出来るけどね。


・・・本当に、ヤバい状況になっているのよ。


つまり此処のわんこたち、結構深刻な状況にあるみたいなの。


・・・親分さんが何と言おうが、財務に口出しが必要なのよ。




   ◇ ◇ ◇




「 いくら嬢ちゃんの申し出とはいえ、美倉の支援を受ける訳には参りませんな 」


親分さん、相河正臣(まさおみ)さんの言葉は予想した通りのものだった。 筋を通したいのだ。


「 確かに御蔵からの支援が途絶えた事で、組の懐具合はずっと苦しいままですが、

  お嬢様が独立されて一番苦しかった時に、何の助けも出来ませんでした手前共

  が今更お嬢様から支援を受けるなんて事は許されません。 狗畜生(いぬちくしょう)にも劣る屑

  野郎に迄身を落としたくはありません。 御心だけ有難く頂戴させて貰います」


本物の任侠らしいといえばらしい発言なのだが、俺には納得出来る言葉(もの)ではない。


・・・・・・・・・


御蔵の資金で設立されて以降、ずっと御蔵の支援で地域の治安を守り、はみ出し者

の保護と更生を担ってきた相河連合だけど、御蔵の東京移転に伴う支援打ち切りで

一気に財政が悪化した。 支援打ち切りの理由は、表向きがヤクザとの黒い繋がり

を保てなくなった社会状況に因るものだが、実際は東京に移るのだから大阪の治安

なんかどうでもいいという、御蔵先代の身勝手と吝嗇が本当の理由だったりする。


父親の不義理を恥じた母ちゃんは、すぐに代わっての支援を申し出たのだけれど、

目の前の頑固者に拒絶された。 拒絶理由が納得せざるを得ないものだったので、

母ちゃんも無理を言えず黙って引き下がることになった。 そして今に至るのだ。


・・・・・・・・・


今現在、相河連合は困窮している。 母ちゃんはずっと気に掛け続けていたのだ。

破綻する未来しか見えない相河連合を、ずっと見守り続けて来たのだ。 だから

判っているのだ。 相河連合の財務状況がその隅々に至る迄把握出来ているのだ。


最早資産と呼べるものが何も残されておらず、この本部さえもが抵当に入っている

状況迄、完全に把握されているのだ。 嫁さんの実家迄は確認してなかったけど、

調べればすぐに判るだろうし、もし実家が太ければ今の様にはなっていない筈だ。


つまりは誤差の範囲。 どん詰まりの状況である事に変わりは無い。


・・・・・・・・・


俺はその事実を、当然判っているだろう目の前の頑固者に改めて突き付けるのだ。


「 単刀直入に申し上げますが、今のままだと相河連合は間違いなく破綻します。

  タイムリミットは2年、恐らくはそれが限界でしょう。 俺の母はその事態に

  備えて既に動き始めています。 具体的にはこの屋敷の抵当権入手と、若い衆

  の受け入れ先確保・・・母は親分さんが解散を宣言した後を想定しています 」


「 ・・・2年ですか。 いや、お嬢様の見立てなら間違いはないでしょうね。

  そうですか、2年が限界・・・若い衆の準備を急がせる必要がありますな 」


俺の前に座る老人は、諦観交じりの笑みを浮かべ乍ら、静かにそう応えた。

2年という数字はともかく、破綻する未来だけは予測出来ていたのだろう。


「 ・・・準備?」 「 勿論、独りでやっていける様、色々と教え込むんでさ 」


つまりは母ちゃんの予想通りに、組を "解散する" という道を選ぶという事だ。


「 ・・・ふざけんなよ、この糞爺が!」 「 ⁉ なっ! いきなり何を⁉」


「 何を?じゃねえんだよ! てめえ、相河連合を解散させるつもりだな!

  それがどういうことかをろくに考える事もせず、老い先短いてめえの、

  糞ちっぽけなプライドを守る為だけに、相河の初代が一番大切にした、

  それを守る為に御蔵が60年以上支援を続けて来た、その大切な宝物を、

  てめえの命なんかよりずっと大切なモノを、あっさり捨てるつもりで

  居やがるって事だよな! この、盆暗頑固爺が!! ふん、成程なぁ、

  母ちゃんも見限って組の解散を待つ訳だわ。 こんな糞爺に付き合う

  時間なんかは、全く、無駄でしか無いもんな! ホント、解かったわ 」


「 むぅ・・・いくら美倉のお嬢さんとはいえ、少し口が過ぎやせんかね?」


「 過ぎてねえよ! 飾ってねえだけで、言ってることは全くの事実だよ!

  てめえは御蔵に捨てられたことを根に持って、拗ねてるだけの大馬鹿

  なんだよ! 先代や相河への義理を忘れて、相河連合が存在する意味

  を忘れて、高々10億ぽっちをケチった御蔵の先代と同じレベルの盆暗

  なんだよ! そうでなかったら泥を啜ってでも相河連合を残すんだよ!」


「 黙って聞いてりゃ小娘が偉そうに! 俺たちがどれだけ頑張って来たのか

  を知りもしねえくせしやがって! 苦労知らずの金持ち嬢ちゃんが理想論

  を振り回して偉そうな顔すんじゃねえ! ちったあ現実ってもんを考えて

  から「 お爺さん、落ち着いて!」 「 親父さん、相手は()だガキですぜ 」


頭に血が上りかけた爺さんを(なだ)める為に、保護者さんと大男が間に入ろうとする。


「 二人共邪魔すんじゃねえよ! 俺と頑固爺との話がまだ終わってねえんだよ!」


俺はその二人を制止する。 ここで止められたら今迄の時間が無駄になるからな。

そして爺さんだが俺が二人を止めたことが意外だったのか、興奮が収まった様だ。


「 爺さん、俺が金持ちの理想論を語ってるって言うなら、てめえの発言はどう

  なんだよ? 『 俺たちがどれだけ頑張って来たのか 』 だと? 完全にガキの

  言い訳じゃねえか? 現実社会じゃ頑張りなんか意味はねえ、結果が全てだ。

  無意味な言い訳より理想論の方がずっとマシだ。 それに俺は理想を現実に

  すべくちゃんと考えているんだよ。 理想論を理想的に変えようって話だよ 」


「 ・・・理想論を理想的にだぁ? それは一体どういう意味なんだい?」


「 それを今から説明するんだよ。 耳かっぽじってよーく聞きやがれ!」




   ◇ ◇ ◇




銀行で追加融資の話が纏まらず、むしゃくしゃした気分を、少しでも解消しようと

銀玉を弾いていたら孫の義貴(よしたか)から電話が入った。 本当に丁度いい頃合いだった。


あれ以上粘っていたら、むしゃくしゃが倍増する処だった。 小遣いもヤバいし。


そんな最悪だった気分に電話が一本、それだけで一転、弾んだものになっている。


何よりも電話の内容が嬉しいものだったのだ。 あの御蔵のお嬢様の娘さんが遊び

に来ているというではないか! 義貴の犬道楽も意外な形で福を呼び込む事がある。


こないだも若い連中が、ご近所さんから声を掛けられる事が増えたと喜んでたな。


・・・お犬様様って処か?


ふふふ・・・なんにせよ、あのお嬢様の娘さんだ。 もの凄い別嬪さんだろうな。


・・・・・・・・・


むしゃくしゃ気分を晴らしてくれる、目の保養になってくれたらいいなと思った。



・・・重い筈だった帰りの足が、随分と軽くなった様にも思えた。




   ◇ ◇ ◇




もの凄い別嬪さん処じゃなかった。 TVCMで巷をお騒がせ中のKAGUYAちゃん。


・・・まさかの、生・KAGUYAちゃんだったぜ。


サインを求めなかった自分を褒めてやりたい。 恥ずかし乍ら隠れ大ファンなのだ。


・・・・・・・・・


落ち着いて座卓を見る。 置かれているのは洒落たケーキじゃなくて扇屋の栗饅頭。

誰だか知らんがよく解かってるじゃねえか! KAGUYAちゃんは和菓子党なんだよ。

おかげで組の若いもんも、洋菓子党から和菓子党に乗り換える奴が続出する有様。


・・・少数派だった元祖和菓子党員としては、全く嬉しい限りだよ。


何といってもヤクザの親分が、茶菓子なんかに注文付ける訳にはいかねえからな。


・・・・・・・・・


信楽焼きの皿に置かれた、狸の(へそ)みてえな丸い菓子を見る。 コレが美味いんだ。

その菓子を指でちょいと摘まんで丸ごと口に放り込む。 楊枝なんかは要らねえ。

直接摘まんでも汚れないのが和菓子のいいとこだ。 味も素材重視でくどくない。


今は控えてるが、酒との相性もいいんだな。 和菓子ってもんはよ。 何て具合に、

少しばかり自粛 ( させられ ) 中の酒を思い乍ら、KAGUYAちゃんの所作を眺める。


CMを見る度に思うが動作の一つ一つが美しい。 まるで道を究めた武道家の様だ。

その美しい仕草で菓子を食べ、茶を飲み終えた後にKAGUYAちゃんは口を開いた。


「 挨拶が済んだところで・・・親分さんにお聞きしたいことがあります 」




   ◇ ◇ ◇




「 ・・・理想論を理想的にだぁ? それは一体どういう意味なんだい?」


流石はお嬢様の娘だ。 綺麗な顔して辛辣な科白をこれっぽちも遠慮せずに吐いて

くれやがる。 しかも全部理に適っていやがるもんだから、耳が痛くて仕方ねえや。


・・・・・・・・・


あまりにも耳が痛いもんだから、実を測ってやろうと怒気を放ってみたがこっち

が驚く位に平然と()なされちまった。 てっきり、俺も老いたか?なんて思ったり

もしたが・・・義貴や田倉(たのくら)の、マジの慌てぶりからそうでは無いと知らされたわ。


・・・単純にKAGUYAちゃんの胆力が学生離れしてるという事だ。 良く見りゃ

デカい姉ちゃんなんか、涙目になってガタガタ震えてたもんな。 悪い事をした。


本当に・・・流石は御蔵・じゃねえ、美倉のお嬢様の血を引きなさったお方だよ。

胆力に美貌に口の悪さ。 最後のはちょっと頂けねえが、それでも母娘で瓜二つ。


体格だけは正反対って感じだけどな。 KAGUYAちゃんの可愛い事、愛らしい事。


・・・・・・・・・


そうじゃねえ。 確かにソレも大事だが、今大事なのはKAGUYAちゃんの知恵だ。


理想論を理想的にって事は、現実にするって事になる。・・・筈だよな? 俺らの

年代からすりゃあそういう意味に取っちまうぞ? 今はどうかはよく判らんがな?


・・・取り敢えず聞いてみるとするか? 話すKAGUYAちゃんも可愛いくて堪らん。


「 長話は嫌いだから簡単に説明するぞ。 解からん処はその都度質問してくれ 」


ふむ、どうやらKAGUYAちゃんは言葉足らずの様だ。 こんなとこ迄お嬢様似とは。


「 先ずはそうだな、親分さんが母ちゃんの支援を断ったのは正解だ。 あの内容、

  御蔵時代同様の支援じゃあ相河連合の為にはならない。 一方的な援助といった

  内容の支援に()れた結果が今の体たらくだ。 自主経営能力の無い組織はいずれ

  破綻する。 だから今の相河連合に、本当に必要なのは支援じゃなくて投資だ 」


「 !?、待ってくれ、じゃあKA・じゃねえ、蒼嬢ちゃんはお嬢様の、

  いえ御母堂の、手前共への提案は間違っていたと言われるので? 」


信じられねぇ・・・(しょ)(ぱな)からアレだけ成功なさっている自身の母親を否定する処

から入りなさった。 浪速の魔女と称される天才実業家を否定する処から・・・。


「 そうだよ。 母ちゃんも判ってたんじゃないかな? アノ内容は良くないと。

  でも御蔵が不義理を働いた直後だから、条件を変えられなかったんだと思う。

  あそこで支援の内容を落としたら、親分さんを安く見たと思われたろうから 」


それも何とあっさりとした、平坦な口調で、まるで何事も無いと言わんばかりに。


「 あのね、兵法なんかである天地人って経営でも同じなのよ。 簡単に言うと

  天は資金で地は経営地盤、そして人は人材、つまり文字通り人そのものだね。

  そんで相河の初代は人以外は何も無かった。 当時はソレが当たり前だった。

  だから曽爺さんは天と地を与える形で支援した。 ソレが必要だったからよ 」


何だろう? この淡々とした言葉から発せられる重圧感は? 一言一言の重みは?


「 曽爺さんと初代さん、頃合いを見て支援内容を見直すべきだった。 そうして

  相河連合の自立を促すべきだったのだけど、そうしなかったのは多分両者共が、

  何も変えずに、ずっと変わらない関係を保ちたかったからだと思う。 そんな

  個人的感情を優先した結果、相河連合の組織としての成長を妨げたのだと思う」


何という重さと深さ・・・これが、本当に高校生の口から出てくる言葉なのか?


「 二人は友達だったんじゃないかな? 個人的な? だったら仕方ないけどね。

  仕方ないから・・・後継者が気付いて見直すべきだったんだ。 ソレを怠った

  のは実よりも形に拘ったから? それとも必要性に気付かなかったからかな?

  そんな事はもうどうでもいいけどね。 これから変えていけばいいのだから。

  相河連合を自立した組織に変えていけばいいのだから。 だから投資なんだ 」


あぁ、そうだ。 形に拘った。 ただ軽んじられたくなかったという思いだけで。

おまけに必要性にも気付いていなかった。 自立出来る組織に変わる必要性にも。


・・・・・・・・・


それを御蔵に捨てられた・・・なんて思い込みで拗ねて、ひねて、頑なになって。


俺は・・・本当に、何をやってたんだか。


切り売りするだけで、20年も喰ってこれただけの資産を溜め込める程の、それ程の

支援を受けておき乍ら、自らの足で立とうとせず、ずっと支援に甘え続けて来た。


ソレが切れた途端に裏切られた等という愚かな思い込みに、勝手に悩み苦しんで。


俺の何処が親父に劣った⁉ 俺がどんな失敗を仕出かした⁉ 俺の何が悪いんだ⁉


・・・俺なりに、精一杯頑張って来た? やれることはやって来た? 努力した?


・・・・・・何処がだ! ただ資産を食い潰して来ただけじゃねえか!!


身体を壊す迄酒を飲んで、人生を諦める迄愚痴を零して来ただけじゃねえか!!!


・・・・・・・・・


ホント、完全にガキの言い訳だぜ。




   ◇ ◇ ◇




「 初代さんに関しては詳しく聞いている。 戦争で身内を亡くした特攻崩れ・・・

  いったら国に捨てられたような人だったとね。 その人が似た様な境遇の連中と

  つるんで愚連隊を結成、市場の用心棒役を押し売りに行った先で、俺の曽爺さん

  に出会ったとか。 それが相河連合の始まりだ。 そんな成り立ちだから自然に

  此処は戦災孤児やら浮浪児やら、そんな社会から捨てられた連中の溜り場、安住

  の地になったんだよ。 ソレが今も続いている相河連合の在るべき姿なんだ 」


相河(うち)の在るべき姿・・・ 」 嬢ちゃんの言葉が胸に染み入って来る。


「 うん、そうだよ。 そしてソレこそが、相河連合の存在意義でもあるんだ。

  そうでなきゃ、サンフランシスコ平和条約の発効と共に、市民を守る必要

  が無くなると共に、意味を失って、消えていた筈なのが相河連合なんだよ 」


己の馬鹿さ加減に気付き、わだかまりを洗い流すことが出来た、真っ白な心に

染み入って来る。 少し粗いが優しい、そして暖かな言葉が染み入って来る。


「 そう、ソレこそが、相河の初代が一番大切にした、御蔵が支援する理由

  となった宝物なんだ。 だって御蔵には真似の出来ない事だったからな。

  御蔵には支援する事しか出来ない、相河にしか出来ない事だったからな 」


相河(うち)にしか出来ない事・・・御蔵には真似の出来ない事・・・?」


天下の御蔵には出来なくて、相河(うち)が出来る事なんか・・・本当にあるのか?


御蔵(おくら)美倉(びくら)も、雨風を凌げる家と温かな食事だったら用意することが出来る。

  でも捨てられた子が一番必要としているものは、相河で無ければ駄目なんだ 」


・・・捨てられた連中が、一番必要としているもの? そんなものが相河(うち)に?


「 そうだよ、温かく迎え入れてくれる家族が必要なんだよ。 面倒を看てくれる

  職員じゃあ駄目なんだよ・・・例えそれがどれ程の厚待遇であったとしてもね」


・・・あっ。


「 捨てられて・・・傷を負った心を癒してくれる、そんな家族が必要なんだよ。

  そして、そんな家族に成る事が出来るのは、捨てられた事がある人なんだよ。

  捨てられた悲しさや悔しさ・怖さを、誰よりも判ってやれる様な人なんだよ 」




     ・・・嗚呼、そうだった。 親父はいつも言っていた。


     『 俺たちは皆、家族なんだ 』 と・・・繰り返す様に。


     ソレが親父が一番大切にしていた相河連合の存在意義。




アレは・・・盃の絆を超えた・・・本物の家族なんだと、そう云っていたんだな。


俺はそんな大事なもんを壊そうとしていた、とんでもねえ大馬鹿野郎だったんだ。


・・・・・・この利発な嬢ちゃんが、ブチ切れてしまうのも無理はねえ。




   ◇ ◇ ◇




最早目の前の御方は美倉のお嬢様の娘さんでも、可愛いKAGUYAちゃんでもねえ。

浪速の魔女の後継者。 より強く、大きく、美しく育つだろう未来の大魔女様だ。


心機一転、気を取り直して、大魔女様の相河連合再建策に耳を傾けることにする。


・・・傾けることにしたんだが。


「 ・・・初っ端が、ドッグカフェですかい?」 「 そうだよ、ドッグカフェ 」


いや、犬っころなら沢山居やがるから、そいつらにも働いて貰おうって考えるのも

判るんだが・・・スーパーでさえ焼け石に水なんだ。 カフェの売り上げ程度じゃ?


「 そうだよ。 目的は利益じゃなくて栄養補給なのよ 」 「 栄養? ですかい?」


カフェには利益を求めないのだそうだ。 それにしても栄養とは?


「 捨てられた事に拠る、心の傷をケアする為の栄養だよ。 一番大切なのがコレ。

  利潤の追求なんかは、完全に立ち直って、元気溌剌(はつらつ)になってからの話なんだね」


「 成程ね、メンタルケアってことですかい? それで栄養といいますと?」


「 お客さん達の、見せ掛けじゃない、本心からの笑顔に触れて過す事だよ。

  それが一番の心の栄養ね、人への不信感や恐怖を和らげてくれるんだよ。

  ドッグカフェって、お客さんが笑顔になりたくて来る処だから最適なの 」


「 ・・・そいつはまた、何というか 」


嗚呼・・・本当に、何てお人だよ、このお嬢さんときたら。

金を払ってくれるお客まで、悦ばせ乍らも利用するなんて。

お客に犬っころに若い衆、見事に三方良しに纏めなさった。


「 いいでしょ? わんこのお世話が仕事を兼ねて、しかも全員ハッピー。

  上手くいったら餌代に加えて、医者代くらいの利益は出せるだろうし 」


いや、相河(うち)の負担が減ったりもするんで、全部合わせたら四方良しだぜ。


・・・圧倒されるな。 今日いきなりで、何でここまで知恵が回るのか?

本当に、今日偶然に、犬っころに釣られて遊びに来なさっただけなのか?


「 そんじゃあ、店舗の確保は任せておいてね。 なるべく近い処を見繕うから 」


「 いや、嬢ちゃんにそこまでして貰う訳には・・・ 」 いかねえよな? 流石に。


「 違うよ、好意じゃなくて必要だからするの。 俺が、というか美倉が資金を

  出しているということを表に出した方が、地盤の再構築に有利に働くんだよ 」


「 あー・・・成程、確かにそうですな 」


「 投資する以上は、相河さんには早く軌道に乗って貰いたいからね 」


またこれだ。 へらへら笑い乍ら先の先迄を見通して、有効な手を打ちなさる。

本当に、何も考えていない様な無邪気な笑顔で、何処迄も計算ずくで動かれる。


・・・怖くて、そして頼もしい御方だ。


・・・・・・・・・


やっぱり、御蔵のお嬢様の、血筋だわ。




   ◇ ◇ ◇




ドッグカフェの次に提案されたのが、柱と成る事業を立ち上げる為の人材育成だ。

目先の小銭を追う無駄な時間が有ったら、大きな事業の準備を整えろという事だ。


「 これだけは近道なんか無いからね。 最低でも5年、普通だと10年は掛かる。

  跡継ぎさんを含めて 5~6人位、根性と健康に恵まれた人を見繕って貰える?

  修行先は当てが有るから、そこに送り込んでみっちりと鍛えて貰おうと思う 」


「 嬉しい申し出ですが、あっしらみたいなやくざ者を受け入れて、経営の修行

  をさせてくれるなんか・・・そんな奇特な御方が本当に居らっしゃるんで?」


「 富士宮の堂匡(どうきょう)さん、知ってる? 清水の大親分の末裔とか云われてる人。

  現役ヤクザさんや元ヤクザさんとも親交が厚い、富士宮の大仏爺さんね 」


「 げぇ!!? 富士宮の堂匡さん⁉ まさか、そんな方とお知り合いで?」


・・・とんでもない御方の名前が出て来た。 富士宮の堂匡・・・その外観から、

富士宮大仏なんて異名もあるが、俺たちの業界ではもう一つの異名の方が有名だ。


その異名は ”東海の暴熊(ぼうゆう)” 。 大仏さんが見た目から生まれた異名なら、こちらは

堂匡さんの性格や行動から生まれた異名だ。 昔、或るヤクザ者が不義理を働き、

怒った堂匡さんはそいつの事務所にカチコミを掛けなさった。 そして鉄拳制裁

後に重機を持ち出して事務所を更地に変えたらしい。 4階建ての立派なビルが、

みすぼらしいプレハブに生まれ変わったという逸話(実話)はあまりにも有名だ。


つまりは・・・俺たちヤクザ者の師匠としては、これ以上は無い御方という事だ。


ヤクザ者相手に委縮することは絶対()えし、変な色眼鏡で見ることも無えだろう。

頭はいいが鼻っ柱が強過ぎる(そう)の野郎も、そんな方の言う事だったら従うだろう。


・・・・・・・・・


だが問題は本当にそんな御方が、東海屈指の大実業家でも在ろう御方が、相河(うち)程度

を本気で相手にして下さるかだ。 いくら美倉の口利きとはいえちと難しいんじゃ?


「 大丈夫だよ、俺が絶対に受け入れさせるし、一旦受け入れたら絶対に手抜き

  なんかはしないのが堂匡さんだ。 寧ろ心配は送り出した連中が、堂匡流の

  厳しさに逃げ出さないかどうか? だと思うよ。 そこんとこの人選は注意

  してね? 俺の観る処、後継ぎさんは大丈夫と思うから、同じレベルの人で 」


何ともすげえ自信だな。 でもこのお嬢さんの言葉なら何故か信じる事が出来る。

年恰好に全く不釣り合いな重みを感じさせる言葉には、真と信しか感じられねえ。




だけどなぁ・・・本当に不思議な話だ。




苦労なんかする筈も無え。 そんな生まれと育ちをなさり乍らもこの嬢ちゃんは、

年恰好に全く不釣り合いな、苦労と苦痛の人生を過ごして来た凄みを感じさせる。


この嬢ちゃんは、一体どれ程の苦難に遭われて来たというのか?

この嬢ちゃんは、一体どれ程の苦痛に苛まれて来たというのか?


捨てられた連中の、心の痛みを理解出来ている事といい・・・。


この嬢ちゃんは、一体どれ程の悲しみを堪えて来たというのか?



・・・・・・・・・



そんな益体も無い事を考えてしまった・・・ある筈も無い事を。




何でそんな事を考えちまったのか?・・・本当に不思議な話だ。




嬢ちゃんを見送り乍ら『 こんな()に義貴の嫁になって貰えれば本当に最高だな 』

なんて考えたのは、苦労を押し付けることになった孫に対する申し訳なさからだ。


・・・・・・・・・


嬢ちゃんを見送り乍ら『 こんな娘を義貴如きの嫁にするのはあまりに勿体ねえ 』

なんて考えたのは、俺がかなり熱狂的なKAGUYAちゃんの隠れファンだからだ。




   ◇ ◇ ◇




蒼たちが帰ってきたのは18時を過ぎた辺りだった。 公園に居なかったから何処に

居たのかを訊ねたら、相河連合とかいうヤクザの総本部で犬と遊んでいたらしい。


・・・一体、何をやっているんだ?


そして当然一緒に来ると思っていた花房だが、大人しく一人自宅に戻ったらしい。

何でもメンタルをガリガリ削られて、我を押通せる状態では無かったらしいのだ。


・・・一体、何をやらかしたんだ?


しかも蒼、今度の土曜にヤクザの若い衆を引き連れて富士宮市に行くらしいのだ。

ヤクザ連中の仕事を斡旋する為に、清水の大親分の末裔に会いに行くのだそうだ。


・・・いや、本当に、一体、何をやっているんだよ⁉


「 う~ん・・・仕方ないんだよ。 わんこの平和と未来の為なんだ 」


言ってること迄、全く訳が分からん? 蒼らしいといえば、確かに蒼らしいが。


「 蒼君、あまり気乗りがしないみたいですね? 体調に不安があるのですか?」

「 うんにゃ、そっちじゃなくて堂匡さんがね、ホント言うとちょっと苦手なの 」


堂匡さんというのが、清水の大親分の末裔らしい。 最初はヤクザかと思ったが、

ヤクザみたいな一面を持った実業家で、十二支の長老らしいのだ。 蒼が苦手に

するくらいだから、四面四角の堅物爺さんなのだろうか? 男が髪を伸ばすな!


・・・とかいう次元じゃ無いな、蒼の場合は。 逆に女が俺とか言うな! かな?


・・・・・・・・・


ともあれ蒼がこれだけ他人への、特に大人への苦手意識を露わにするのは珍しい。


何といっても蒼の奴は、不思議な程の年上キラーで大人を誑し込む天才だからな。

自分の客相手にも不愛想な親父でさえ、蒼が来たら構いたがるくらいなんだから。


・・・堂匡さんという人は、それ程に付き合い辛い相手ということなのだろうか?


・・・・・・・・・


「 あの長老様は、逢う度に蒼を(もてあそ)んじゃう悪い癖があるのよねぇ・・・ 」

「 !? 蒼君を弄ぶ・ですか!? ・・・茜さん! それは一体!!??」


茜さんの言葉に沢瀬が過敏に反応し、剣呑なオーラを漏らす。 いや、落ち着け。

間違いなくお前が考える様な意味じゃあ無いから。 そうじゃ無かったら茜さんや

秋帆さんがブチ切れて、富士宮に殴り込みを掛けて、抗争騒ぎになっているから。


と、考えたのだが、仁宮や小田部からも剣呑なオーラが⁉ お前らも冷静になれ!

お前ら全員、蒼が絡んだ途端に情緒が乱れ過ぎで、理性の野生化が進行し過ぎだ。


・・・等と考えても仕方ないので、茜さんに誤解を解いて貰う様、強く見つめる。


「 ふふ、そうね、由佳理ちゃんだけでなく、他の皆も気になっている様だから

  蒼が弄ばれている写真を公開しましょうか?・・・瑠香、私のノートPCを!」


『 はいです!』の声と共に食堂を飛び出した田辺だが、茜さんのノートPCを手に

すぐに戻って来た。 むちゃくちゃ早い。 茜さんの部屋の、何処に何が置かれて

いるかを完全に把握しているのだろうか? どうでもいい事だが、少し怖いかも?


・・・そしてPCが開かれた。


「 「 「 キャーァァァ ♡ ♡ ♡ 」 」 」 クリック音と共に湧き上がる歓声!


女子に混じって、PCを覗きたくなる気持ちを抑えて蒼を見つめる。 何だアレは?


「 ・・・堂匡の野郎は、俺の顔を見る度にコスプレをさせやがるんだよ。

  そんで誰も止めてくんないのよ。 逆に皆して堂匡の味方をすんのよ 」


苦々しく語る蒼の言葉に納得する。 蒼のコスプレ写真、はっきり言って観たいぞ!

何の助けも  :出来なかったのでは無くて、本当は敢えてしなかったのです。

        ビジネス音痴の正臣さんは、秋帆の実家への反抗は直ぐに破綻

        すると予想していて、破綻後の和解の為に働くつもりでした。

        だから実家と秋帆の関係悪化が酷くならない内に、比較的早い

        段階で破綻させる為に、敢えて何の援助もしなかったのです。


狗畜生    :正しくは犬畜生ですが、狗には卑しいという意味もあるので、

        正臣さんは犬を避けて狗を使います。 発音は同じですけどね。


銀玉を    :銀玉を弾くというのは、パチンコで遊ぶことです。

        作者はパチンコ屋の音と煙の中には10分居られませんでした。

        ですが今時のパチンコ屋は禁煙が当たり前なんでしょうかね?


義貴の犬道楽 :保護犬ボランティアは小学生時代の義貴が発案したものです。

        おかげで組のイメージアップに成功、ついでに母親のスーパー

        でもペット関連商品を充実させ、固定客確保&利益率アップに

        成功しました。 ですが、組の内情を知った高校生以降の義貴

        であったなら、到底出来なかった提案だっただろうと考えます。


御蔵も美倉も :どちらも本来の読みは “みくら“ ですが、二つを並べる時は

        区別する為に “おくら“ 、 ”びくら“ と呼ぶことがあります。


堂匡さん   :本名は織宮堂匡 ( おるく・たかまさ ) “どうきょう” は自称。

        たかまさと正しく読まれる事が少ない為、どうきょうで妥協。

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