057_好きと嫌いと相性と
第一回病弱あるある~!! (第二回の実施は不明)
職場で『 あー、しんどい!』と声を出す人に ”元気だなぁ”と感じてしまう。
無駄口を叩く元気があるという事だから。 何度も云う人は相当に元気よね!
帝山学園二大イベントと称されているのが、二学期に行われる体育祭と帝山祭だ。
共にイベントを盛り上げる為の餌として、成績上位クラスには賞品が贈呈される。
体育祭は生徒一人一人に食券2000円分・1000円分・500円分が上位の3クラスに。
帝山祭では遠足用の補助金10万円・5万円・3万円が同じく総合上位の3クラスに。
昨年度帝山祭総合一位を獲得した俺たちのクラスは、補助金でバスを借り切った。
補助金をどう遣うかは任意だけど、バスでなければ行けない目的地を選んだ為だ。
バスは美倉交通が学園に特別料金で提供している豪華二階建ての大型バスを使用。
夏の水練合宿や冬のスキー合宿、修学旅行でも使用されている帝山仕様のバスだ。
その豪華バスにしたのは単純に安いから。 格安な料金設定になっているからだ。
燃料費他込々で、飲み放題のソフトドリンク迄付いて1日10万の破格過ぎる設定。
このクラスのバスの場合、通常料金だと半日借りるだけで20万くらいはするのだ。
ソフトドリンクは疎か、燃料費や高速料金、人件費等一切を別途追加の扱いでだ。
・・・どれくらい破格か解かるだろ?
それでも美倉が学園を私物化してるとか、癒着だとか色々言われてたりするのだ。
・・・・・・・・・
どうせ見るなら上辺だけでなくて、きちんと数字迄見ろや! と強く主張したい。
・・・脱線した。 そんな話をしたかった訳ではない。 俺が言いたかったのは、
「 何でお前らが此処に居んの?」
俺たち3年A組一同は、現在神戸市の舞子公園に居る。 此処で海上プロムナードと
橋の科学館、ついでに孫文記念館を見学する予定なのだ。 そしてこの公園に沢瀬
や高梁、2年の田辺たちも居たのだ。 つまり3年D組と2年D組が一緒だったのだ。
「 居てはいけませんか?」 「 いや、そういう訳じゃないけど、電車で来たの?」
沢瀬の応えに戸惑い乍ら問い直す。 確かに居てもおかしくないし、問題も無い。
ただ予想外だったのだ! 遠足は電車移動が基本だから。 何故なら遠足の目的が
自分で切符を買って電車に乗る。 という前時代的な、お嬢様学校時代の名残とも
いえるものだから。 そういうことで電車代が実費で支給される。 しかも現金。
そして電車代以外は全部自腹。 各クラスが自由に目的地を選ぶ以上それが必然。
幾らお金持ちの子弟が多いとはいえ小遣いは有限だ。 だから交通費タダを選ぶ。
選びがちになる。 これも必然だろう。 そんな理由で此処は不人気と予測した。
一応此処迄なら電車でも来れるが、此処迄来たら橋も渡りたくなるだろうからだ。
そんなことを考えたから、沢瀬や田辺たちが此処に居ることに疑問を感じたのだ。
「 いえ、電車でなくてバスですよ。 でないと淡路島迄追えませんから 」
沢瀬は当然だと言わんばかりに、俺たちへのストーキング発言を繰り出して来る。
田辺に聞いても同様、やはりバスで来たようだ。 安いとはいえ10万、ひとり当り
3334円の出費になる。 反対意見は出なかったのだろうか? 圧力で抑え込んだ?
「 圧力なんか掛けてませんよ。 蒼君にはコレが目に入らないのですか?」
いつもの様にカメラを構えた沢瀬からの質問。 視線で ”コレ” はカメラだと判る。
ヤバい動画を撮って脅迫! は無いよな、圧力を掛けてないなら? んじゃ何だ?
「 映画の撮影(という名目)ですから、映研部がバス料金を負担しただけです 」
・・・凄いな、映研の屁理屈と資金力。 本当に ”何でも有りっ!” て感じだな!
そんでもって、今回も俺独りだけ蚊帳の外だったよ。 俺以外は全員知ってたよ。
「 だからクラスチャットは消すなと・・・ 」 やだよ。 SNSって疲れるもん!
◇ ◇ ◇
去年の春は11クラス合同になったから大混雑って感じだったけど、今年は僅かに
3クラス。 余裕があって開放感たっぷり・・・じゃない。 寧ろ去年より酷い。
その理由は簡単。 奈良公園は広いけど、舞子公園はそれ程には広くないからだ。
しかも見所は僅か三ヶ所に集中しているから、必然的に人口密度は高くなるのだ。
更には三ヶ所の内の一つがまるで人気が無いから、実質二ヶ所に集中したからだ。
何処が不人気だったのかは敢えて示さん。 外見はいいんだけどね。 中身がね。
そして二番目人気も秘密だ。 言ったら不人気が確定するから。 VRは面白そう。
上記の二ヶ所はざっと見ただけ。 単純に並ぶのが嫌いだから。 あと煩いのも。
そして何よりも、一番面白そうな海上プロムナードに投じる体力を集中する為だ。
これはもう、外観からして圧倒的だ。 単に橋の橋脚なのだがスケール感が凄い。
そして中身が更に凄い。 此処だけは混雑を我慢出来た。 それくらい凄かった。
特に回遊式遊歩道から見える景色が最高だった。 ここから見える舞子は奥行きが
あって遊び応えもありそうなのだが、今日は時間の都合で舞子公園からは出ない。
また来る機会があれば、浜の方を散策してみたいかも?
・・・そんな機会は、無いだろうけど。
・・・・・・・・・
五十嵐と江澄さんは、遊歩道内の丸太橋でキャーキャー騒いでた。 そんなにか?
ちょっとガラス越しに海面が見えるだけじゃん。 通天閣の時より低い位じゃん。
やっぱり、高所恐怖症を楽しんでるのかな? 何か二人共、楽しそうに見えるし?
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俺的には足元の海面より、巨大建造物の内部構造の方が面白くて堪らないのだが?
・・・・・・・・・
そんな訳で大満足の、俺としてはずっと舞子でいいんじゃない?と考える程魅力的
な本州側から、明石海峡大橋を渡って淡路島に移動する。 時間の都合で淡路SAは
スルーして、最初の目的地は道の駅 ”あわじ”。 海に面した場所でランチを摂る。
岩屋漁港のすぐ側だから、海鮮ばかりと思っていたら肉とかハンバーガーもある。
昂輝なんかまさかのトリプル食い。 相変わらずだ。 俺はミニシラス丼で十分。
それをささっと流し込んで橋の下に移動。 出発時間ぎりぎり迄橋と海を眺める。
この道の駅は舞子公園の真向かいにあって、橋も海も直ぐ前という好立地なのだ。
◇ ◇ ◇
道の駅を出た後の目的地は二択、アニメのテーマパークかミニチュアの世界旅行。
どっちも興味無いから『 タクシーで舞子に戻っていいか?』と聞いたら、昂輝と
五十嵐に拒否された。 二択が絶対らしい。 仕方ないので空いてるミニチュア。
先にアニメ組を降ろしてから、バスはミニチュアのテーマパークを目指して移動。
帰りは逆ルートでアニメ組を拾うらしい。 そんなら最初から舞子を含む三択で
選べたら良かったのに。 等と考えてしまうのは、多分疲れて来たからだと思う。
もう、“何か“ を楽しむだけの余力が残っていないのだ。 正直言えば帰りたい。
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ちなみにアイアイコンビと江澄さんはアニメ組だ。 江澄さんが好きなアニメの
アトラクションを楽しみたいと言い、五十嵐が付添いをして伊藤が便利役担当。
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便利に使われるのは伊藤の宿命かも知れない。 人も性格も大人し過ぎるんよ。
・・・だから性癖がぶっ飛ぶのかな?
可哀想だから伊藤に押し倒された時には、出来るだけ好きにさせることにしよう。
そんな可能性は殆ど無いだろうけど?
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「 何を考えているのです?」 沢瀬からの不意打ち。 呆けていたらコレがある。
「 アニメ好きの田辺がこっちに来るとは思わなかった 」 「 ・・・そうですね 」
これは本当。 田辺は江澄さん以上にアニメ好きなので、アニメ組だと思っていた。
だけど『 こちらの方が参考になりそうなのです!』ミニチュアワールドを選んだ。
・・・参考になりそう・・・か?
参考・・・多分は漫画を描くときの参考だろう。 田辺も将来を考えているのだ。
将来の為に “好き” よりも “参考” を選択したのだ。 自分自身の未来を見据えて。
『 こちらの方が参考になりそうなのです!』
今を乗り越えるだけで手一杯、泣き言を吐き出しそうな俺には眩し過ぎる言葉だ。
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沢瀬も昂輝も俺の状態を把握しているから、入場後は迷わず最短距離で足湯直行。
・・・そして今に至る。 目の前に広がる海と空を眺め乍ら、のんびり足湯満喫。
「 昂輝は高梁たちと一緒の方が良かったんじゃないの?」
隣に座る昂輝に聞いてみる。 昂輝の性格上のんびり足湯よりも、アニメパークで
アッパレ!戦国大冒険!のアスレチックやジップラインの方が楽しめた筈なのだ。
「 大人専用のアトラクションならともかく、120cm以上対象のサイズだから。
そのサイズだと俺には少し窮屈だろうと思うから、ならこちらの方がいい 」
成程、俺には思い付かない盲点だった。 大きいって不便なことも結構あるんだ。
・・・等と、簡単に騙されたりはしないけど、今は昂輝に甘えてもいいと思った。
・・・・・・・・・
今迄ずっと三人一緒だったのだから、あと少しの間、三人一緒で居たいと思った。
この二人だけには置いてけぼりにされたくないと、勝手なことを思ってしまった。
・・・でも、それくらいなら許されるだろう、とも思った。
◇ ◇ ◇
『 あぁー! やっぱりやぁ! KAGUYAちゃんやんかぁ!!』
俺たちが足湯を楽しんでいる時、唐突に声が聞こえた。 男の声だが少し甲高い、
騒がしいと感じる不快な声が頭に響いた。 邪魔者の襲来でいい気分が台無しだ。
『 ちょっと、兄さんら何やの? 何、人の仕事を邪魔してくれてるんや?
俺らKAGUYAちゃんに用があるんや! 後ろのカメラさん見えへんの⁉ 』
声の方に目を遣れば、MSSの職員さんに捕まっている誰かさんと、その誰かさんの
知り合いらしい一団が居た。 誰かさんの言葉通り、大型カメラを構えた人も居る。
昂輝は直ぐに立ち上がり、カメラを構えた人に歩み寄っていく。 俺を隠し乍ら。
「 誰? アレ?」 「 確か、おまーじんという漫才師です、相方さんも居ますね 」
全く意外なことに沢瀬が漫才芸人さんを知っていた。 そんなに有名な人なのか?
「 有名という程でも無いのですが、最近売り出し中の若手漫才コンビですね。
私が知っているのは、蒼君の寝落ち芸を無断で下品に改悪したからですよ 」
沢瀬が明確に不快感を示している。 いや、それ以前に俺の寝落ち芸って何なん?
・・・・・・・・・
そんな事を考えている間に、昂輝が誰かさんの知り合いからカメラを奪い取った。
『 ちょっ、そこのデッカイ兄さん! 何、勝手に撮影を止めてくれるんや!
俺ら、遊びやのうて仕事なんや! 営業妨害やで! 損害賠償もんやで!』
誰かさんが意味不明に騒いでいる。 肖像権という言葉を知らないのだろうか?
そんで誰かさんの知り合いのひとりが、昂輝からカメラを取り返そうとして逆に
アイアンクローの状態で持ち上げられている。 アレってかなり痛いんだよね。
・・・・・・・・・
暴力反対! と、止めに入ってもいいけど、先に言葉やレンズの暴力を振るって
来たのは相手の方なんだよね。 だから現時点ではお相子。 言葉の暴力が続く
限りアイアンクローを続けても問題は無いな? その辺は昂輝も判ってるだろう。
・・・うん、ちゃんと判ってた。 解放された知り合いさんが痛そうに蹲ってる。
『 ツトムゥ、大丈夫か⁉』 どうやら知り合いさんは、ツトムという名前らしい。
『 あんたら、ええ加減にせんと警察呼ぶでぇ!!』 誰かさんは何も判ってない。
馬鹿げた状況を見かねた沢瀬が、知り合いさん達と交渉する為に近付いていった。
◇ ◇ ◇
借りてきた猫というのはこういう状態をいうのだろう。 そこまで騒がしかった
誰かさんはいきなり大人しくなった。 ツトムさんを含めた知り合いの皆さんは
大人しくなったを通り越して、恐怖に震え上がっているといった状態にも見える。
沢瀬の奴・・・この人たちに、一体何を云ったのだろうか?
ちなみにこの人たち、TV局の下請けで関西近郊の穴場観光地を取材してたらしい。
そこそこ人が入っているので、本当に穴場なのか?とも思ってしまうが、TV番組
とはそういったモノなのだろう。 なんせスポンサー在りき!な世界なのだから。
・・・・・・・・・
そういったことだから、この人たちがこの場所を取材していたことは納得出来た。
納得出来ないのは、その番組に無縁な俺を巻き込もうとしたことだ。 下手すりゃ
俺が契約違反を責められることになるのだ! その辺りを判ってないのが意味不明。
計画性の無い挑戦が。 いや、冒険が、プロとして全くに意味不明な行動なのだ。
危険を冒すと書いて冒険なのだ。 つまり冒険には危険が付き物であり、冒険する
場合は前以てのリスク管理が重要なのだ。 それを為さない冒険は無謀でしかない。
・・・つまり、こいつら揃ってただの馬鹿。 加えて、数にも入らない小物ばかり。
TV業界でも芸能界でも、一定以上の地位にある者には、俺が “アンタッチャブル”
な存在であることが認識されているからだ。 それが判ってないから小物なのだ。
だから俺を番組にサプライズ出演させたら面白そう! 等と考えたり出来るのだ。
・・・・・・・・・
業界からの永久追放さえ考えられる状況に、ただ怯えるしかないお馬鹿さんたち。
俺の『 お互いに今日の事は忘れましょう 』の一言に狂喜していたけど、俺が引導
を渡さなくても、今のままなら、いずれ誰かに引導を渡されることになるだろう。
・・・・・・・・・
何度も頭を下げて去って行った、彼らの姿を見乍らそんなことを考えてしまった。
・・・本当に厳しい世界だ。 なのに何で、あんなのが平然と存在するんだろう?
・・・・・・・・・
やっぱり、芸能界って・・・謎だらけだわ。
謎過ぎて、俺にはさっぱり理解が出来ない。
・・・・・・・・・
何より俺は、お笑いって好きじゃないのだ。
笑える時と、笑えない時の二つがあるから。
・・・・・・・・・
人の感情というものは、その時々の体調に影響されてしまい評価がぶれるからだ。
だから感情で評価したくないのだ。 感情に関係なく評価出来る物が好きなのだ。
例えばTVドラマより映画の方が好き。 より多くの技術と労力による賜物だから。
例えばテーマパークの巨大ジオラマより巨大建築の方が好き。 全く同じ理由で。
例えば小説よりも自然科学の専門書の方が好き。 感情に頼らず評価出来るから。
だから俺はお笑いが嫌いで、お笑い芸人には関心が持てないのだ。
そして芸能界も嫌いで、芸能人に関心を持つことが出来ないのだ。
演者だけでなく、多くの制作者の技術と労力を結集した作品だけを評価するのだ。
・・・とはいえ、あの対応は非礼に過ぎたと思う。 少し反省する気持ちもある。
でもお疲れな時に頭に響く大声と、無礼な態度で迫られたから仕方ないとも思う。
ということで、どっちもどっち。 やっぱりお互い様のいい勝負。
・・・せめて午前中なら、俺ももう少し穏やかな対応が出来ただろうと思うけど。
撮影準備とかテーマパーク側の事情もあって、午後の撮影も仕方ないと思うけど。
・・・それでもだ。
やはり、俺と芸能界とは相性が悪いのだと思った。
1日10万 :運転手付き小型バス半日分に相当。 勿論燃料代や高速代は別。
運転手付き大型バス半日なら17万、アストロメガの貸し出し例は
無いからはっきりと判りませんが、30万以上でもおかしくない。
尚この額は大まかな数字で、バス会社や時期により変動します。
疲れて来た :旅行でもドライブでも楽しめるのは最初だけ。 午後には疲れた
が楽しいを凌駕する始末。 早く家に帰りたい、宿に戻りたい。
そして身体を休めたい。 そんな状態になります。 後になって
ここは良かった、あそこは楽しかったと思い出す時が一番充実。
でも同時に何であそこで足が止まった。 何故後もう少し先に
進まなかった。 なんて後悔を感じたりもします。 ということ
で、本当に気に入った処は何回も足を運ぶ事になったりします。
我乍ら勿体ない旅の楽しみ方だよなぁ、なんて思ったりします。
おまーじん :元は別のコンビ名で正統派漫才を目指していたが、限界を感じて
方針を変更。オマージュという名のパクリパロディと、時事ネタ
パロディの二本立てで攻めまくるしかないギリギリな漫才芸人。
攻めるボケ担当カケルと、守りのツッコミ担当ツトムの二人組。
現在はそこそこの人気だが、二年後には消えると見られている。
勿論架空の芸人ですし芸風も架空、モデル芸人も存在しません。
本文中には書きませんでしたが、にやこたの二人は田辺と一緒に行動しています。
二人共蒼がお疲れである事と、二人が居たら蒼が無理をする事に気付いています。




