056_通天閣とタコさん
なんかタイトルがしっくりしないなぁ・・・と思い乍ら書き進める内に
意外なエピソードが発覚。 流石は成行任せ。 作者も知らなかった、
書き進める内に自然に表に出たエピソードでタイトルを変更しました。
最初は『 忘れた頃の第二回 』か『 通天閣と串カツ 』で悩んでました。
後悔している。 とまではいわないが、騒がしさに少しうんざりしてる俺が居る。
人も多いが、人の数以上に騒がしいと感じるのだ。 気のせいかも知んないけど。
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4月最後の休日。 俺たちは第二回ご近所の名所巡りとして新世界にやって来た。
目的は通天閣に上る事と名物の串カツを食べる事。 隣接する動物園にも行く事。
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いきなりそんなことになったのは、朝から気候も体調もすこぶる良かったからだ。
いつになく身体が軽く頭がすっきりしていたから、つい『 遊びに行きたいなぁ 』
等と零してしまったのだ。 俺が。 ぼんやりとゲーム大会を眺めている最中に。
その結果 ”誰も上ったことが無い” という事実が発覚した通天閣が選ばれたのだ。
いやホント、近場の名所ってスルーされ易いよね? 何時でも行ける安心感から。
ちなみに動物園には何度か行ったことがある。 癒されるもんね。 タヌキとか。
でも通天閣は初めてなのだ。 特に理由は無い。 強いて挙げるなら、来る理由が
無かった? うん、上ろうとも思わんかったし。 高さ比べをするならハルカスの
方がずっと高くて見晴らしがいいのだから。 通天閣に上る意味ある? って感じ。
そんで実物を目の前にしての感想は、『 小っさっ!』 本音が漏れた。 小さい。
別府タワーよりはマシだが、年末に行ったスカイツリーに比べたら遥かに小さい。
ハルカスに比べても遥かに小さい。 なんなら江澄さん家に比べても小さい位だ。
・・・成程と思った。
此処迄来て判った。 70年も前に造られた古びた鉄塔に、何ら魅力を感じなかった
から今日迄通天閣に来なかったのだ。 皆の様子を窺ってみても、やはり興奮の色
は見えない。 誰もが俺と同じ感想を覚えたのかも知んない。 こんなものかと。
造られた当時は画期的な、魅力溢れる建造物だったのかも知れないけれど、今では
凄みを感じない、レトロと呼ぶには中途半端に新しい武骨な鉄塔でしかないのだ。
《大阪のシンボル》と呼ぶには、少し物足りなさを感じてしまう華の無さなのだ。
見慣れているが故の日常感が、より一層その感想を強くさせるのかも知んないが。
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それでも取り敢えずは上ることにした。 チケットをオンライン購入済みだから。
「 跳ね出し展望台というものが面白そうですよ?」 沢瀬はそう言うが期待薄だ。
多分はアレだろうと思われる部分を見て考える。 絶対的な高さが足りないなぁと。
・・・そんなことを考え乍ら入場待ちの列に並ぶ。 流石は休日だけあって20分は
掛かる見込み。 それでも休日としてはマシらしく、1時間待ちもザラなんだとか。
遠方からの観光客が訪れ易い、土日でなくて良かったという事なのかも知れない。
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俺的には長いと感じる時間が過ぎて、いよいよエレベーターに乗り込む。 狭い!
随所随所に古さが窺える。 実際古いのだから仕方ないけど、人気の為にアレコレ
とアトラクションを追加したのなら、動線も見直せば良かったのに? 等と思う。
とにかくカオス過ぎる。 新世界の街並みも結構カオスだけど。 それが魅力かも
知んないけど。 俺個人としてはもっと清潔で開放的な空間設計が望ましいのだ。
通天閣・・・二度目は無いな。 それが俺の素直な感想。
◇ ◇ ◇
「 そういえば二人共、九重の大吊橋でも怖がってたよな?」
それなのに何故跳ね出し展望台から下を覗くんだろう? 怖いもの見たさなのか?
「 いつか高所恐怖症を克服したいのよ・・・これから多くの絶景を楽しむ為に!」
五十嵐の気合がよく解からん。 怖いものは怖いで素直に放っとけばいいのでは?
そして隣で頷く江澄さんも五十嵐と同意見なのだろうか? 二人共修行なのかな?
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狭くてごちゃごちゃしていて人の多かった通天閣。 屋外展望台を一回りした後、
売店はスルーしてスライダーで降りた。 実質滞在時間は40分程度? 全体的に
混んでたという印象しかない。 あと、展示物と土産物の意図的?なコテコテ感。
そこから出たというより、解放されたという感覚を味わっているのが正直な感想。
要するに俺の趣味じゃない。 けど楽しんでいたメンバーも居た。 それが幸い。
いやホント、皆が俺と同じ感想だったら、何の為に並んだのか判らなくなる処だ。
ちなみに楽しんでいたのは奇しくもゲーム好きグループ。 昂輝と沢瀬は屋外展望
だけは楽しんでいた。 終始お疲れだったのは俺と仁宮さん、人混みって嫌よね?
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そして今、買い出しを男子二人に任せて、昼食の為てんしば広場に向かっている。
その最中に、五十嵐と江澄さんによる『 怖かったよね?』談義が始まったのだ。
これから多くの絶景を楽しむ為・・・か。
そう考えたら高所恐怖症の人って、少しばかり損をしている気がしないでもない。
無理をする必要は無いと思うけど、治せるなら治した方がいいのかも知んないな。
そういうことなら、まぁ二人共頑張れ。
でもどちらかといえば、二人共、 ”怖い” を楽しんでいる様にも見えるんだよね。
気のせいかも知んないけど。
◇ ◇ ◇
良さげな場所が有ったのでレジャーシートを広げて、そのままごろりと横になる。
沢瀬が行儀の悪さを咎めている様にも見えるけど、気持ちいいのだから仕方ない。
本当に気持ちいいのだから仕方ないのだ。 軽い疲労状態の俺が抗える訳が無い。
空の高さが、頬を撫でるそよ風が、青臭い春芝の香りが、とても気持ちいいのだ。
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横になったまま周囲を見回せば、そびえ立つハルカスとその他ビル群が目に入る。
その他呼びは失礼かも知れないけど、各々のビル名を知らないのだから仕方ない。
なんといっても天王寺には殆ど来ることが無いのだ。 映画もショッピングも難波
と心斎橋だけで用が済む。 後、たまに梅田にも足を延ばす程度。 それで十分。
天王子は動物園以外の目的が無いから。 俺にとっては。 何が在るかも知らん。
でも、”てんしば” は知っている。 というか知ってた。 此処に来て思い出した。
此処でレジャーシートを広げてお弁当を食べた記憶が、先程、不意に蘇ったのだ。
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あれは・・・そう、小学校二年生の春? 秋じゃなかったと思う。 夏でも冬でも
なかったから多分春。 寝込んだ俺は遠足に参加出来なかった。 目的地は牧場。
何処の牧場だったかは覚えてないけど、行きたかった。 だから少し落ち込んだ。
俺としたことが、遠足に行けなかったくらいで、珍しく落ち込んでしまったのだ。
牛やら山羊やら兎やら、そんな動物達と生で対面したかったのだ。 割と真剣に。
・・・でも寝込んだから行けなくなったのだ。
寝込んだ理由も症状も覚えてないけど、とにかく寝込んで遠足を休んでしまった。
・・・そんな時にあの人は連れて来てくれた。
休んでしまった遠足の代わりにと、俺たちを動物園に連れて来てくれたのが昂輝の
お袋さんだった。 三段重ねのお重に詰めたお弁当とレジャーシートを用意して。
そのお弁当を食べたのが此処だった。 大きな水玉模様のレジャーシートを広げて。
『 動物を見る前に荷物を軽くしましょうね 』 そう言って先に此処で食べたのだ。
昂輝の好物だったとりめしのおにぎりと唐揚げ、そして赤いタコさんウィンナー。
他にも色んなおかずが入ってたけど、俺が目を奪われたのはタコさんウィンナー。
あんな形をしたウィンナーは初めてだった。 昂輝と競争して食べたように思う。
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改めて敷かれているレジャーシートを見る。 微妙に色合いが違うようにも思うが
水玉模様。 沢瀬はこんなものまで買っていたんだ? いつ使うかも判らないのに?
・・・沢瀬にとっても、アレがレジャーシートでお弁当初体験だったのだろうか?
「 場所は確保したから、次は串カツ以外の食べ物と飲み物の調達ね!
二年生は一緒に来て。 で、美倉たちは何かリクエストとかある?」
五十嵐たちが ”串カツ” 以外の色々を買って来るという。 直ぐ傍に店があるのだ。
「 とりめしのおにぎり? 美倉にしては珍しいリクエストね?」
「 ”あれば” でいいよ。 あるだけ買って来て。 昂輝の好物なんだ 」
「 私はサラダをお願いします。 ドレッシングは和風で 」
「 了解したわ。 とりめしのおにぎりに和風ドレッシングのサラダね。
あとはそうね・・・飲み物なんかと一緒に適当に見繕ってくるわね 」
そういって、広場内の産直市場に向かう五十嵐たちを見送る。 ああいったお店は
コンビニには無い手作りのおにぎりとかお総菜とかがあるから、とりめしおにぎり
なんかが置かれている可能性もあるのだ。 それを期待してのリクエストなのだ。
「 昂輝たちには、赤いウィンナーも頼んどけば良かったなぁ・・・ 」
俺が頼んだのはアスパラとレンコンとシイタケ、串カツで食べられそうなメニュー
はそれくらいしかない。 それなのにタコさんウィンナーが食べたいと思ったのだ。
タコさんウィンナーが無理でも、せめて赤いウィンナーを食べたいと思ったのだ。
「 大丈夫ですよ・・・私が頼んでおきましたから 」
俺の呟きに沢瀬が応える。 やはり沢瀬もアノ日を覚えていたようだ。
「 きちんとお店も指定しましたし・・・ 」
しかもお店も指定済み? 沢瀬、お気に入りの串カツ屋さんでもあるのだろうか?
◇ ◇ ◇
暫くして五十嵐たちが戻って来た。 嬉しい事にとりめしおにぎりをゲットして。
小さめのおにぎり二個入りパックが五つで計十個。 昂輝なら独りで喰える量だ。
「 藤堂たちは未だなの? 少し遅過ぎない?」
「 大丈夫ですよ、さっきお店を出たと云うメールがありましたから。
裏メニュー品を沢山作って貰ったから時間が掛かったのでしょう 」
「 「 裏メニュー?」 」 「 それは見てのお楽しみです ♡ 」
沢瀬の思わせぶり発言。 お店の指定といい裏メニューといい串カツマニアさん?
沢瀬と串カツの組合せ? あと10年もしたらビールとセットで凄くマッチしそう。
大ジョッキ片手に『 プハァッ 』とかやってたり。 そんで五十嵐に絡み酒すんの。
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うん、怒られるな。 こんな想像したら? でも沢瀬ってそんな感じがあるんよ。
お堅い後輩の仁宮さんに窘められても、『 アハハッ、気にするな!』とか言うの。
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ヤバいな⁉ 俺の中の沢瀬。 なんというか、何処かの糞親父に似てる気がする?
これ以上は考えない様に・・・何か江澄さんがポテチの袋とにらめっこしている。
食べたらいいんじゃない? 『 ぅっ・待つ 』 そう? 無理しなくてもいいよ?
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待ってる時間って長いよね、なんて思っていたら起こされた。 寝ていたようだ。
10分くらい。 それで昂輝たちと合流したばかりなのだから、どんだけ遠くのお店
だったのかと思う。 違った、ホルモン串も買ったから時間が掛かったのだそうだ。
「 すまん、匂いに釣られた 」 「 いいんじゃない! ホント、美味しそうだし 」
誰も文句を言わなかったのは、多分本当に美味しそうな匂いと感じたからだろう。
俺には刺激が強過ぎて、かなり苦手な匂いだけど。 肉が絡めばいつもこうなる。
でも、そんなことが気にならなくなるサプライズが・・・沢山買った裏メニュー。
「 タコさんウィンナー・・・しかも、赤いやつだ!」
まさかの赤いタコさん串カツ。 それが30本もある。 これは、食べ放題じゃね?
◇ ◇ ◇
結局俺はタコさんを三本も食べた。 他にとりめしおにぎり一個と注文した三本。
沢瀬や田辺に驚かれた程だ。 おかげで食後のデザートは諦めることになったが。
タコさんウィンナー、人気はそこそこだが沢瀬も三本、昂輝なんか十本も食べた。
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やはり俺たちにとってタコさんは、特別なごちそうだったのだ。 特に此処では。
春芝に広げた、水玉模様のレジャーシートの上では。
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昂輝のタコさん十本食いの次に目立ったのは、江澄さんのポテチ二種類並列食い。
家じゃあ出来ないんだろうなぁ・・・江澄さんの身体を見たら当然だと思うけど。
俺ですら『 そんな食生活だから成長しないんだよ 』 とか、注意したくなるもん。
人のことは言えないから、俺が口には出来ないけど。
それに五十嵐や田辺がアレやコレやを頻繁に、戸惑う彼女の口元に運び出したし。
「 みーちゃんはもう少し栄養にも配慮した方がいいわ!」
「 みーちゃん、コレなんかもなかなか美味しいのです!」
なんか、雛に餌をやる親鳥って感じ。 恐る恐る口にする江澄さんが微笑ましい。
「 「 お姉様、こちらもなかなかに美味しいと思いますよ 」 」
いや、俺はもう入らないから! これ以上食べたらマジお腹を壊すから無理なの!
◇ ◇ ◇
俺を含めた誰もがいつも以上に食べた昼食の後、いよいよ本日のメイン(俺的に)
である動物園に向かう。 タヌキ、アナグマ、マレーグマ、狼とか蛇も楽しみだ。
「 う~ん・・・第三回は何処がいいかなぁ? 」
動物園のゲートに向かい乍ら、五十嵐が気の早い事を口にした。
「 ( ぉお阪城・・・ ) 」
江澄さんがぼそりと呟いた。
彼女はお城が好きなのかな?
・・・いい傾向だと思った。
小さい。 :通天閣 108m、別府タワー 100m、スカイツリー 634m
阿倍野ハルカス 300m、江澄さんのマンション 142.83m
調べて吃驚、別府タワーはもっと低い印象がありました。
タコさんをメニューに載せている串カツ田〇は新世界周辺には無いようです。
実際に新世界周辺でタコさんを提供しているお店があるかどうかは不明です。
赤いウィンナーというだけなら、大抵のお店でメニューにあるのですけどね。




