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053_病弱旅行記

蒼が色々とお疲れ様のようです。 実際、旅行ってかなり疲れますもんね。

日帰り旅行で一日の休養が必要。 一泊以上の旅行だと二日の休養が必要。

作者はそんな感じでした。 旅行翌日から仕事が出来る人って凄いですね。


ちなみに本話執筆時の体調がイマイチで、最終日の辺りから自分でも何を

書いているのか判らんという状態に。 結局後半部分の殆どが書き直し。

のんびりと温泉に浸かり乍ら、窓を開け露天風呂気分を味わってみようと思った。

広がる夜の海に街の灯りが星々の様に煌めき、幻想的な美しさを醸し出している。


・・・・・・・・・


自分が夜に浮かぶ煌めきの一つになった様な、夢幻的な感覚に呑まれそうになる。


・・・・・・・・・


そう、多分、その感覚が示すものは、そろそろ眠くなってきたという生理現象だ。


・・・・・・・・・


・・・実際瞼がどんどん重くなってきている。 温泉の温もりがソレを助長する。


・・・・・・・・・


ヤバい状態だろうが気持ちいい。 あまりの気持ちよさに流されてしまいそうだ。


・・・・・・・・・


・・・流されても、いいのかなぁ? いっつも我慢ばっかりしてるんだもんなぁ?


・・・・・・・・・


うん、実際いいんじゃない? なんとなれば、全ての生命は海から誕生したのだ。


・・・・・・・・・


だから海との同化は自然の摂理なのだ。 温かくて気持ちよかったら尚更なのだ。


・・・・・・・・・


・・・いかん! 本当にヤバい結論に達してしまいそうだ。 その前に緊急脱出!


先ずは姿勢制御だ! 人間の体は仰向けになったら水に浮かぶように出来ている。


だから仰向けに横になるのだ! そう、頭を後に反らして・ぶくぶくぶく・・・。




   ◇ ◇ ◇




「 美倉が湯船で居眠って溺れたって本当なの⁉ あんたが一緒じゃなかったの⁉」


「 はい! ばっちり撮影しましたよ! 眠気を必死に耐えている処から、寝落ち

  して湯船に沈む処迄。 言葉にならない程可愛いいが満ち溢れた一部始終を!」


大浴場から戻ったら美倉が湯船で溺れたと聞かされた。 突然の事に肝が冷えた。


・・・それなのに。


一緒に入っていた沢瀬を問い詰めた応えは、あまりにも予想を超えるものだった。


「 五十嵐先輩、戻られたのですね! 丁度いいタイミングです。 今からお姉様

  の超々可愛い動画の鑑賞会が始まりますので、宜しければご一緒しませんか?」


仁宮が予想外の駄目を押して来る。 どういうことよ? 美倉が溺れたんでしょ?


「 五十嵐・・・人の話は最後まで聞け 」 背後から藤堂の低音(バス)が伝わって来る。


そうだ、藤堂が言ったのだ。 妙に騒がしいから『 何かあったの?』と訊ねたら、

『 蒼が風呂で溺れた 』と言ったのだ。 つまり私の動揺はあんたのせいじゃない!


振り返れば、少し呆れた様な表情の藤堂が居た。 何でそんな表情を見せるのよ⁉


「 俺は、蒼が風呂で溺れた動画の鑑賞会を行うらしい。 と言いたかっただけだ 」


・・・・・・・・・


そうだ。 溺れたという言葉に驚いた私が藤堂の話を遮って、どうして溺れたのか

と問うたのだ。 それに藤堂が『 入浴中に居眠りしたらしい 』と答えただけだ。


・・・ということは。


確かに私の早とちりだ。 でも 「 ・・・でも? 」 いや、別に、何でもない。

動画の鑑賞会なら先にそれを云え! と言いそうになったが(とど)まることが出来た。


藤堂の話を途中までしか聞かずに、動揺して沢瀬に嚙みついたのは私なのだから。

ここで藤堂に迄噛みついたらそれこそ恥の上塗りだ。 藤堂へのクレーマー行為。


一旦冷静になって、言葉を選ぶことにする。 最低限確認したいことは何なのか?


「 ・・・それで、美倉は大丈夫なのね?」 「 当然だ。 沢瀬だぞ?」


勿論それは判ってる。 一応確認しただけ。 でもこの不愛想な応対は流石美倉の

親友だわ。 悪い意味で。 まぁこいつが伊藤みたいに外交的だったら、四六時中

女子に囲まれて大変なことになりそうだけどね? それに関しては沢瀬も同じか?


・・・・・・・・・


やっぱ・・・この三人って、本当に面白いわ。


・・・・・・・・・


そういうことなら、ま、可愛いいが満ち溢れた動画鑑賞会に参加するとしますか!




   ◇ ◇ ◇




何か、面白動画の鑑賞会があったらしい。 俺が寝た後に。 笑えて可愛いとか?

仔犬や仔猫の面白動画だと思う。 帰ったら見せて貰おう。 旅行中は体力温存。

何時でも見られるような動画に振り分ける余剰体力なんか無いのだ。 俺だけは。


なんといってもこの旅行、俺的にかなりハードなスケジュールになっているのだ。


・・・母ちゃんの休みの都合で。 社会人は学生程休みに恵まれてはいないのだ。


大阪に戻った翌日から仕事に復帰するらしい。 ちょっと信じられないハードさ。


・・・マジ、母ちゃんは化け物だわ。


『 社会人ならそれが普通よ 』 とか言ってたけど?


・・・・・・・・・


まぁ俺には関係ないから、どうでもいいことだけど?


・・・・・・・・・


ともかくハードなスケジュールなのだ。 そして今は湯布院を目指して移動中だ。


さっき迄は別府で地獄めぐりを楽しんでいた。 最初は名前負けしてるだろうな?

なんて考えてたけど、予想以上に楽しめた。 青いのやら赤いのやら白いのやら、

泥みたいなのに間欠泉迄。 おまけに植物園が有ったり熱帯魚館が有ったりワニ園

があったりと、温泉地のおまけ娯楽枠を超えた楽しさの連続だった。 大満足よ。


大満足した後に、休憩を挟まず移動なのだ。 解かるだろ? どんだけハードか?


・・・・・・・・・


・・・クルマのシートで寝そべってるだけだけど。 それだけでも疲れるんだよ?


そういうことで、余計な作業は全て先送りが正解なのよ。


「 蒼君、そろそろ湯布院に着くそうですよ 」 はや! 1時間も経ってないじゃん!




   ◇ ◇ ◇




湯布院の魅力といっても色々あると思うが、街を散策しただけの俺たちには街の

魅力だけしか知り様が無い。 それも体力の無い俺の行動範囲に限定された話だ。

具体的にはJR由布院駅から金鱗湖の間、距離にして2kmにも満たない狭い範囲が、

駅を要として30度程に開かれた扇状の空間が、俺たちの観た湯布院の全てになる。


その狭い範囲に限った話をするなら・・・最高だった。 多くのわんこが居たから!


より具体的に湯布院の街を表現するとしたら、表通りと裏通りの二つの顔が有る。

新旧がちぐはぐに入り乱れたモザイク感溢れる表通りと、田舎情緒が豊かで静かな

裏通りという有りがちな形だ。 当然人通りもお店も圧倒的に表側に集中している。


それだけの条件で判断するなら、俺は終始裏通り、小川沿いの小道に面したカフェ

に身を(ひそ)めて、水草の揺らめきを眺め続けただろう。 それが陰キャの王道なのだ。


しかし現実には殆どの時間を表通りで過ごした。 わんこ連れの観光客が多かった

からだ。 つまりわんこが多かったからだ! これを超える幸福等あろう筈無し!


五十嵐たちはあちらこちらと立ち寄っていたみたいだけど、俺はわんこが全てよ!


俺同様にわんこ大好きな観光客も多かった様で、俺がわんこと(たわむ)れていたら、早く

代われと言わんばかりの人だかりが出来て大変だった。 通行妨害にならない様に

MSSの人たちが、押し寄せる観光客を捌いてくれなかったらどうなったことやら?


・・・そういえば。


なんか伊豆の女神さんとか、有名な家具屋さん、家具職人さん(?)とかも来てた

みたいだが。 そんな偶然も関係したのか人が一杯だった。 俺は興味無いけど。


でも、カリスマ家具職人さんという存在を初めて知った。 これは収穫だと思う。

伊豆の女神さんは・・・一般的には伊豆能売神(イズノメノカミ)の事なんだけど? 女神コスの人?


・・・正直言って判らん? どうでもいいけど。


つまり、結論を述べるなら、湯布院の街はわんこが多くて最高だったということ。


・・・後は知らん。 まともに観てないもん。 以上が俺の由布院観光レポート。




   ◇ ◇ ◇




朝一番で湯布院を発った。 やまなみハイウェイで阿蘇を目指すだけなら、それ程

急ぐ必要は無かったのだが、大きいモノ好きの五十嵐が九重“夢”大吊橋に行きたい

とリクエストしたからだ。 寄り道の時間分前倒しに出発することになったのだ。


ちなみにだが、昨夜は初めてグランピングというものを体験した。 ホテル並みの

設備とホテル以上の開放感の組合せは、なかなかに素敵なものだった。 唯一残念

だったのはペット同伴可な施設なのに、丸ごと借り切ったことによるわんこ不在。


仕方ないとはいえ、ペット同伴可の一文でときめく心に冷水浴びせはがっかりだ。


・・・・・・・・・


そんなことで俺たちは九重町に向かっている。 母ちゃんは今朝からスズキの隼。


バイクの好みはアメリカンじゃないらしい。


「 ホンット、秋帆さんって元気よねぇ・・・ 」 五十嵐の言葉には完全に同意。




九重“夢”大吊橋


吊橋以外は何も無い処だろうなぁ。 と思っていたら、本当に何も無い処だった。

添え物程度の売店とか食堂とか、産直品の販売所とかがあるだけ。 それだけよ。


・・・・・・・・・


でもそれなりには楽しめた。 特に橋から見る景色は正に絶景。 それだけだが

それだけで十分だった。 そして此処にも女神さんと家具職人さんが居たようだ。


・・・凄い偶然! ひょっとしたら、定番コースなのだろうか?


別に興味がある訳じゃないから、捜そうなんて思わんかったが。


俺が捜そうと思ったのはマムシ。 そう、クサリヘビ科の毒蛇。


橋の(たもと)にマムシ注意の看板があったから、『 捜してみようぜ!』 と、提案した。


賛同者は・・・まさかのゼロだった。 理由は不明。


・・・ワニ園では皆、結構楽しんでいたのに? 何でマムシだと駄目なんだろう?


そんな釈然としない思いを乗せて、クルマは一路阿蘇を目指して南下を開始した。




   ◇ ◇ ◇




阿蘇市街に入る迄、信号機が殆ど無いことに驚かされた。 一応は一般道なのに。


流石にハイウェイと呼称されるだけのことはある。 おかげで阿蘇まで1時間も

要らなかった。 腹を空かしていた昂輝たちには朗報で、居眠る俺にはやや悲報。


お昼は宮地という処で阿蘇の赤牛を食べる。 比較的脂が少なくて食べ易いお肉

らしいのだが・・・マジでメニューに肉しか無くて、一瞬逃げ出そうかと考えた。


でも無理なので、何とか食べられそうな赤牛の煮込みカレーを食べることにした。


味はまあまあ。 いったらカレーだもんね。 安心安全の安定感。

敢えて言うなら、肉の代わりにゴロゴロ野菜だったら最高だった。


・・・・・・・・・


健啖トリオは赤牛丼に赤牛のステーキというコンボ。 皆の人気は赤牛丼だった。

凄かった。 なんというか、血の(したた)るローストビーフって感じのビジュアルがね。


あまりに肉肉しくて、スプラッタ映画を連想してしまった。 これは内緒だけど。


・・・・・・・・・


食後は阿蘇パノラマラインで阿蘇山頂を目指す。 先ずは山頂偵察が基本らしい?


・・・母ちゃん的には? ところで、偵察って何なん?


・・・・・・・・・


論より証拠、行けば判った。 ガス濃度次第で火口周辺が立ち入り禁止になるのだ。


一応ガス規制に関してはネットでも調べる事が出来るそうだが、常に変動するガス

の状態をリアルタイムで知るには、直接行って確かめることがベストらしいのだ。


そして今は赤色点灯、立ち入り禁止だ。 残念。 翌朝再アタックを試みることに

して、周辺観光を楽しむことにした。 先ずは草千里。 次は・・・成行き任せ?


なんか、皆、スマホでアレコレ調べてるし? 俺は面倒だから皆にお任せを希望。


・・・なんなら、このままホテルに直行でもいいし。


・・・・・・・・・


・・・カドリー・ドミニオン? 何それ? 動物園? ふ~ん、動物園ねぇ・・・

何ですと⁉ わんことのふれあい!! 決まりじゃん! そこしかないじゃん!!




   ◇ ◇ ◇




昨日は大体そんな感じ。 わんことふれあった後は熊を見て、近くの牧場に行って。

宿泊は南阿蘇のリゾートホテル。 こじんまりとしてて、いい感じな癒し系のお宿。


そんなお宿で静かに夜を過ごし、穏やかな朝を迎えた。 ・・・母ちゃん以外は。


母ちゃんは夜明けと共に阿蘇一周ツーリングに出掛け、さっき戻って来たばかり。

今は全力でエネルギーの補給を行っている。 マジでタフだわ。 皆、驚いてる。


まぁ、そんなこともあったりして・・・。


いよいよ今日は旅行最終日。 昼過ぎまで阿蘇周辺を散策した後に、熊本空港から

伊丹に直行の予定だった。 だからのんびり出来る筈だった。 それが変わった。


またか⁉ と思うが、それが個人旅行の醍醐味なのだ。 最大の魅力であるのだ。


・・・・・・・・・


具体的には『 やっぱり熊本といったら熊本城よね!』らしい。 名城だもんね。


・・・・・・・・・


ということで、多分は江澄さんの希望を代弁したのだと思われる、五十嵐の提案

を採用して今回の九州観光最後の目的地として熊本城が追加されたのだ。 今朝。


そう、今朝。 具体的には1時間前。 もっと正確には午前7時8分と15秒くらい。


どうして江澄さんの希望で、それを五十嵐が代弁したと思うのかというと、熊本城

と熊本空港、そして現在地・阿蘇の位置関係から推測した結果だ。 熊本城は当初

の最終目標地点である熊本空港よりも遠い。 熊本城を目指せば回り道になるのだ。


少し脇道に逸れるだけで済む大吊橋と違って、熊本城は往復2時間もの時間を必要

とする大きな回り道になるからだ。 五十嵐は絶対にそんな要求を口に出さない。


五十嵐って一見傍若無人な勇者(猪武者)に見えるけど、実はとても繊細で謙虚な奴なのだ。


その五十嵐以上に謙虚なのが・・・謙虚を超えて遠慮がちなのが江澄さんなのだ。


恐らくは臆病さ故に、他人に要求することが出来ない彼女の為に、一肌脱いだ結果

が五十嵐による熊本城観光の追加提案になったのだ。 と、俺たちは推測している。


・・・・・・・・・


だから五十嵐の提案はすんなりと受け入れられ、朝一番の火口アタックとなった。


そして見事にミッションクリア。 絶好の条件に恵まれ火口を覗くことが出来た。


僅かに白みを帯びたエメラルドグリーンの湯だまりと硫黄臭。 火口の雰囲気は

以前に見た浄土平に何処か共通するものだった。 共に有毒な火山ガスに蝕まれ、

植物が育ち難い環境というものは、やはり似た様な景色を生むのだろうと思った。


この写真や動画では決して解からない、五感で感じる空気感が、旅の魅力なのだ。


・・・・・・・・・


火口周辺を暫く散策した後、土産物を物色してから熊本城を目指すことになった。


・・・結構タイトなスケジュールだ。 ホント、大変だと思う。 運転手さんが。


・・・俺たちは上質なシートに身を任せ、のんびり風景を眺めるだけで済むのに。


だから・・・しっかりと特別手当を要求してね。 MSSの職員さん。 ガンバ!




   ◇ ◇ ◇




豊後街道に面した道の駅・大津という処で休憩することになった。 弁当受取りの

()()()らしいが。 昼食を弁当と決めたのは恐らく今朝早くで、目的は時間の節約。

道の駅に併設された赤牛メインの郷土レストラン、やっぱり肉か・・・仕方ない。


だって、俺以外は皆、大絶賛だったもんね。 肥後の赤牛君。

食べ易いとか、カロリー低めとか、それなのに美味しいとか。


・・・俺にはイマイチ解からんが?


それはそうとして、だ。


ホント、この手際の良さには感服するしかないな。 誰の指揮かは知んないけど?


『 蒼君、この道の駅に熊本名物のお菓子があるそうですよ 』という沢瀬の言葉。

地元名物! しかも詳しく聞いたら和菓子らしい。 当然「 食べる!」と応えた。


・・・・・・・・・


伊藤が全員分を買って来てくれた。 やっぱ、こいつってマメに気が利くよな?

お礼におっぱいを揉ませてやろう・・・いや、冗談だから! だから、睨むな!


・・・・・・・・・


なんかね、沢瀬が俺を、にやこたが伊藤を睨むんよ。 減るもんじゃないのに?


とまぁそんなこんなで、クルマの発車に合わせるように、名物お菓子を渡された。


そのお菓子の名前は《 いきなり団子 》 でも全然団子っぽいビジュアルではない。

これは何というか、団子というより・・・白いたい焼きならぬ、白い大判焼きだ!


取り敢えず食べてみる。


・・・コレ、どっかで食べたな? 何処だっけ? 熊本に来たのは初めてだよな?


熊本名物、いきなり団子。


団子の生地で、粒あんと大きめにカットされたさつま芋を包んだおにぎりサイズの

饅頭(もど)き。 素朴な甘さとインパクト十分なボリューム感。 団子界のガリバー。


・・・これはおやつでもお茶請けでもない。 完全に食事になるじゃん⁉

こんなん喰ったら弁当なんか要らないじゃん! いや、喰えないじゃん!


・・・まぁ、昂輝が喰ってくれるから問題無い。 持つべきは大食漢の親友だな。


で、その親友が呟いた 「 ・・・のろし万十?」 「 それだあぁぁぁ!!」


親友の言葉で思い出した! 冬イチの時に赤坂?赤塚?PAで食べたのろし万十!


似ているなんてものじゃない。 同じなの、同じ味なの。 完璧なコピーなの。 


どっちがオリジナルかは知んないけど?


熊本県熊本市名物、愛知県豊川市名物。


・・・何でこれ程そっくり同じなのか?


・・・両自治体に一体どんな共通点が?


・・・???


ま、どうでもいいか。 何処で食べたか判ったらスッキリしたから。




   ◇ ◇ ◇




スッキリ気分で熊本城に到着した。 だけど俺と沢瀬は二の丸休憩所でのんびり。

本丸や天守に入らなくても、全容を遠目に観るだけで十分だ。 というのは建前。

しんどいし、人が一杯だしで天守には行かなかった。 というか、行けなかった。


ただ純粋に・・・無理だと思ったからだ。


遠目に観るだけで判る程に広大な城を、観て回るだけの体力が残っていないのだ。


ホント、マジで限界なのよ。


・・・・・・・・・


しかしそんな状況乍らも、休憩所に居るだけでも、意外な事実が耳に入って来た。


・・・・・・・・・


伊豆の女神さんとカリスマ家具職人さんの二人が、此処にも来ているらしいのだ。


ちらちらと二人の話が周りから聞こえて来るのだ。 本当に驚く程の偶然コンボ!


考えてみれば常に二人で行動しているようだ。 友人?恋人?いや、家族なのか?


・・・・・・・・・


流石にここ迄偶然が続いて来たら、一体どんな奴なんだろう? なんて思えて来る。


「 沢瀬は伊豆の女神さんとか、カリスマ家具職人さんの事を、知ってたりする?

  何か、俺たちが行った場所にいつも居たみたいなの。 此処にも居るらしいの 」


聞いてみた。 答えを期待することなく。 少し考えを纏めようと思ったからだ。


「 はい? 伊豆の女神にカリスマ家具職人さんですか? カグヤさんでなくて?」


予想外の言葉。 ファインダーから目を離し、俺の言葉に驚いたと言わんばかりの

表情を見せ乍ら、何らかの情報を持っていそうな応えが沢瀬から返って来たのだ。


・・・まさか! 心当たりが有るのか⁉


俺以上に世間一般の常識に疎くて、俺と同じくらいに流行り事に疎い筈の沢瀬が⁉


・・・俺だって驚きだ! 多分は沢瀬以上に? 驚き乍らも沢瀬の問いに答えた。


「 確かに、CMで有名な家具屋とか言ってたけど、それを家具屋の店員さんだと

  考えるよりは、家具を造る腕のいい職人さんだと考えた方が妥当じゃないか?

  後はそうだな? 家具屋の社長さんを意味していた可能性もあると思うけど?」


可能性だけなら無限にあるけど、有名になるのは注目を受け易い立場の人だろう?

それぐらいのこと、沢瀬なら当然解かっているだろう。 なのに何でため息なの?


「 ・・・単純にCMで注目されて、有名になったKAGUYAさんという可能性を

  考えたりはしないのですか? KAGUYAという名前の芸能人に心当たりは?」


そうか! 家具屋のCMに出てる芸能人という可能性もあったか! 盲点だった!

でもなんだろう? 沢瀬が苛立ち始めている様に思えなくもない。 何があった⁉


「 盲点なんかどうでもいいです。 蒼君は本当にKAGUYAという新人芸能人に、

  KAGUYAという芸名で、CM出演している高校生に心当たりは無いのですか⁉」


芸名でCM出演している高校生? まるで俺みたいじゃん? 俺も芸名でCM・・・

待てよ? 俺の芸名って、なんていったっけ? 確かアルファベットでK・A・・・

成程。 心当たりはあった。 俺だ。 俺の芸名ってKAGUYA、カグヤだったわ。


「 でも伊豆の女神って・・・あっ⁉」 「 気付きましたか? 伊豆でないことに?」


そういや俺って、リズの女神なんて変な呼ばれ方もしてたわ! 渾名って嫌よね?


「 成程、俺という可能性もあるか?」 「 蒼君という可能性しかありませんね!」


俺の呟きを全否定する沢瀬。 そうなのか? そうなのかなぁ? どうだろう?

そんな想いを込めて、一番(そば)に居たMSS職員さんを(うかが)ってみる。 目が合った。


・・・・・・・・・


暫くの沈黙の後、無言で首肯された。






念の為に、戻って来た連中にも聞いてみた。 全員が沢瀬派閥であることを表明。



・・・・・・・・・



やっぱ、芸能人って面倒だわ。

湯布院の魅力 :湯布院は本当にいい処です。 騒がしい観光客が不在なら。

        処構わず子供におしっこをさせる迷惑な観光客が不在なら。

        わんこ連れの観光客も多かったし。 小川も綺麗だったし。


マムシ注意の :看板は作者が行ったときには在りました。 現在は不明。


理由は不明  :野生動物で遊んではいけません。


血の滴る   :お肉好きは食欲を刺激されるのでしょうが、蒼には・・・です。


俺たちは   :蒼と昂輝と沢瀬と伊藤、そして秋帆。 それが蒼の想定範囲。

        ですが、田辺もにやこたも五十嵐の気遣いを理解しています。

        蒼の知らない処で下級生と積極的に交流しているのが五十嵐。


誰の指揮か  :秋帆にお願いされた秘書Nさんの指揮です。 秘書Nさん(いわ)く、

        仕事のサポートより遊びのサポートの方が百倍大変! とのこと。


白いたい焼き :少し昔に流行ったお菓子です。 知ってる方も多いのでは?


大判焼き   :今川焼とか回転焼きとか色々呼ばれていますが、蒼が大判焼きと

        呼ぶのは高梁の実家、和菓子処吹屋が大判焼きで売ってるから。


俺以上に・・・:蒼の私見。 客観的にみれば似たり寄ったり。


K・A・・・  :サインの練習をさせられた為、音でなく文字で覚えたのです。


いきなり団子にのろし万十、調べてみましたが双方共に歴史も発祥も不明でした。

どちらかがコピーの可能性もあるし、両方がオリジナルという可能性もあります。

だって、饅頭にさつま芋を入れて嵩増し&味に変化なんて誰でも考えそうですし。


あと、どうでもいいことですが、蒼が頻繁に女子口調になるのは、幼少の頃から

女子に囲まれて育ち、女子の話から言葉を覚えたからです。 男友達も少ないし。

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