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050_お別れ会ねぇ・・・

母親が横腹の辺りが酷く痛むというので、急遽病院に連れて行きました。

内臓疾患の可能性を考えましたが、検査の結果は運動不足による筋肉痛。

身体を動かなさ過ぎて筋肉が硬直してしまい、そんな状態で身体を捻るか

なんかしたのだろうとのこと。 なんというか、健康に恵まれた人間って、

不思議なくらいに苦痛に対する耐性が低く、しかも健康を気遣いませんね。


母親を病院に連れて行った結果、風邪を貰って帰宅。 三日寝込みました。

「 いつか君を迎えに来る。 そうしたら結婚しよう 」 どこかで聞いた様な科白

と共に櫻崎先輩は活動拠点である軽井沢に帰って行った。 年度末試験終了日に。


去年の秋以降は殆どを軽井沢で漫画三昧だった先輩だが、それでも卒業には関心

があった様だ。 そして卒業後はプロデビューを目指し乍ら大学にも通うらしい。


・・・漫画のネタを集める為に。 大学ってそんな処だっけ? 勉強しようよ?


・・・・・・・・・


まぁ、どうでもいいけどね・・・少なくとも四年は軽井沢に住み着くだろうから。


・・・それを思えば少しホッとする。 もう先輩と顔を合わすことは無いだろう。


好意を示してくれる先輩には申し訳ないのだけれど。 示し方に問題が有るんよ。


つまりは櫻崎先輩の問題。 ストーカー行為を嫌うのは当然の権利だと思うから。


・・・・・・・・・


多分は永遠の別れ。 でもこの程度は巣立ちの季節の風物詩といってもいいだろう。


・・・・・・・・・


だけど、春を過ぎても頻繁に顔を合わせることになりそうな先輩たちも存在する。


「 鹿原先輩は東大じゃなかったんですか?」 酒辺からそう聞いていたのだが?

関西(こっち)に居た方が色々と面白そうなのよね 」 との理由で京大に変えたらしい。


ちなみに次席卒業の筋肉も京大にしたらしい。 他の成績優秀者も揃って関西の

大学を選んだおかげで、今年は東大進学者がゼロになったと教職員が嘆いていた。


・・・・・・・・・


それよりも世界のTOP5へ進んだ者が、未だに皆無である事を嘆くべきなのでは?


・・・なんて思ったりもするのだが。


・・・・・・・・・


でもまぁどの大学に進んだか? よりも、何を学んで、どんな成果を残したかの方

が遥かに重要な事になる。 その一点で見るなら東大を選んだどの卒業生よりも

京大卒の母ちゃんの方が結果を残しているし、二流私大卒の糞親父が平成以降の

日本人で最も成功している事業家だと評価されているのだから・・・詰まる所は、

学校で他人から学べることなんかは、所詮(しょせん)は高が知れているということなのだ。


つまりはそういうこと。 どの大学かなんか関係ない。


結局の処、最終的には本人の努力と才覚次第という、身も蓋も無い話になるのだ。


いやホント、学歴が重要になるのは、使われる側の人間が就職する時だけだろう。


そして使う側の人間には、学歴なんか必要無いのだ。


鹿原先輩の場合はどんな大学を選んでも、恐らくは高卒や中卒でも問題無いのだ。


でも筋肉の場合は東大を選ぶべきだったのだ。 一応は合格圏内だったのだから。


「 筋肉・坂口先輩はどうして京大に? 東大目指して頑張っていたのでしょ?」


そんな話を聞いていた。 入学時は学年十位にも入っていなかったということも。


「 そっ、それはまぁ、あれだ! その、何となく気が変わっただけだ!」


焦る様に言い乍ら、ちらちらと鹿原先輩に目を遣る筋肉。 成程、そういうことか!


・・・・・・・・・


鹿原先輩へのライバル意識だ。 タイプが違うのだから対抗しても意味は無いのに。


「 ふふっ、そういうことなんですね 」 と、沢瀬が柔らかな表情で話し掛けると、

「 おっ、お前、何を想像してるんだ! そんなんじゃ無いぞ! 絶対違うからな!」


と、顔を真っ赤にして否定する筋肉に、そんな筋肉をにやにや見守る卒業生たち。

下級生にガキっぽい対抗心を指摘されて焦る筋肉が、本当にガキ丸出しに思える。


「 そんなことより美倉! お前、居眠りするのも時と場所を選べ!! 」


うわっ、強引に話題を変えてきやがった! しかも沢瀬に直接返すのでなくて俺に。

そりゃあ沢瀬と殴り合うのは怖いだろうけどさ。 でも何で俺に振ってくるかな?


「 卒業式で爆睡する生徒会長なんか前代未聞だぞ! おまけに送辞はアレだし!」

「 はぁ? 暇な行事で居眠りしたら悪いか? 原稿無視の送辞に何か問題でも?」


居眠りをされたくないなら、最初から希望者のみで卒業式をやりゃあいいんだよ!

興味ない者迄強制参加させるから寝るんだよ! 何でそんなことが解かんないの?

そんで他人が書いた原稿なんか無視して当然じゃん! 心にもないことを言えと?


「 そうね、美倉君の寝顔は前代未聞の可愛らしさだし、送辞も可愛かったわねぇ」

「 「 そうです、お姉様の寝顔と寝ぼけた御言葉こそが最上の送辞なのです!」 」

「 いや、お前ら何を言ってるんだ? 特に仁宮と小田部? アレが最上って?」


・・・何だ? 俺の送辞ってそんなに寝ぼけてたのか? 確かに記憶は曖昧だが?


・・・・・・・・・


まぁいい、済んだことだ。 気にしても仕方ない。 それよりもだ。


「 お別れ会って何なの?」 伊藤に質問。 一番真面(まとも)な答えが期待出来そうだから。


「 卒業する先輩たちを(ねぎら)い乍ら、愚痴を聞かされたりする生徒会最後の行事だよ」


ふ~ん、つまりは最後の懇親会ってことになるか?


「 伊藤、愚痴って言い方は無いだろう?」 「 ふふっ、確かに愚痴になるわね 」


筋肉と鹿原先輩・・・意外と息が合ってるのかも?


筋肉に突っ込ませて、自分が纏める。 鹿原先輩らしい腹黒さが垣間見えて来る。

・・・いや、筋肉が単純だから使い勝手がいい。 それだけのことかも知んない?


「 そーゆー事なら先輩方はとっとと愚痴を吐き出してくんないかな? そんで

  とっとと解散してさ、各自自由行動に移んない? 俺も友達を待たせてるんよ 」


そうなのだ。 卒業式が終わった後に昂輝たちと映画に行くことになっているのだ。


それなのに《 お別れ会 》等という生徒会行事に引っ張り出されてしまったのだ。


一応の予定では一時間ということなので、一時間だけ待って貰っているのだけど、

こんな意味も面白味も無い会合なんかは、一秒でも早く解放されたいものなのだ。


「 意味も面白味も無い会合って・・・思っていても口に出すんじゃねーよ!」

「 はい、筋肉先輩の愚痴は受理されましたぁ。 それでは次の方、どうぞ~ 」

「 それじゃあ次は私ね 「 待て三沢、俺はまだ 「 坂口君はもう済んだでしょ 」


・・・やはり筋肉は三年生の中で玩具にされていたようだ。 扱い易いもんな。




   ◇ ◇ ◇




「 最後は私ね。 私の愚痴は、やっぱりアレかな!」 鹿原先輩で最後になった。


これまで聞いた愚痴は筋肉の分も含め、どれもどうでもいいとしか言えない様な、

ただの雑談としかいえないモノばかりだった。 勿論そういう場だからだろうが。


・・・・・・・・・


今更、こんな処で、深刻な話を持ち出されても、誰も、どうにも出来ないもんな。


・・・おっと、鹿原先輩の話が始まった様だ。


「 私の愚痴はとても困った、どうにも手に負えない問題児が居たことかしら?」


やはりソレか・・・恐らくは櫻崎先輩。 いや、山田や田辺の可能性もあるか?


「 その子はとても我儘で、自己主張が激しくて、人の話を全く聞かなくて、

  そのくせ成績だけはずば抜けていいものだから、先生方も何も言えなくて 」


成績がいいとなると山田一択になるかな? 確かに帝山は成績が良かったら、何を

やっても許されるといった雰囲気が色濃く有るからな。 何せアレだけ好き勝手を

しているのに、一度たりとも停学になっていないのだから。・・・いや、待てよ⁉


我儘で、自己主張が激しくて、人の話を全く聞かない成績優秀者というなら沢瀬も

該当するよな。 斎藤だって人の話は聞くけども絶対に自分の主張は曲げないし。

言い換えれば人の話は聞き流すだけなのが斎藤だ。 ソレは聞かないのと同じだ。


「 見た目が反則レベルに愛らしいから、(ほだ)されちゃって怒る気が失せるのよね。

  しかも凄い病弱で直ぐに倒れたりするから、心配ばかり掛けさせられるのよ 」


ふむ、見た目が愛らしい? しかも病弱だと? 三人揃って候補者から外れたか。


・・・・・・・・・


参ったな、俺の知ってる生徒には該当者が居ない。 ただの愚痴だと聞き流すこと

も出来るが、卒業生でないなら、これから俺たちが悩まされることになる相手だ。

生徒会長として、同じ学校の仲間として、きちんと把握する必要があると思った。


「 そんな問題生徒が居たんだ?」 伊藤に確認を取ってみたが、何故か驚かれた。


「 おまけにその子の親は理事会に強い影響力を持っていて、学校側もその子には

  手を出し辛い、強く出られないという事情迄あるのよ。 殆ど治外法権状態ね 」


・・・驚きだ。


・・・それはもう問題児なんてレベルではない。 天災レベルの怪物じゃないか?


・・・・・・・・・


そんな問題児に対抗出来る様な生徒といったら、本当に俺しかいなかっただろう。

鹿原先輩が俺に拘った最大の理由はコレだったのではないか⁉ 女王云々でなく。


「 先輩も大変でしたね、そんな問題児を抱えて 」 「 ホント、こんな感じだし 」

「 ? 」 「 美倉・・・お前、ひょっとしたら判ってないのか⁉」 「 ??? 」


・・・何だろう? 鹿原先輩も筋肉も意味不明なことを口にする。


「 ちなみにその子だけど、修学旅行で倒れて救急搬送されたわよ 」 「 えっ⁉ 」


吃驚だ! 俺以外にもそんな奴が居たとは⁉ 何か、友達に成れそうな気がする。


「 俺以外で救急搬送された奴って、誰なの?」 「 はぁ、そんな奴は居ないよ 」


伊藤に質問したらまさかの回答が返って来た。 居ないだと⁉ どういうことだ?



・・・・・・・・・



・・・つまりはアレなのか?



・・・問題児って、ひょっとして⁉



・・・俺なのか?



・・・・・・・・・



・・・俺、そこそこには優等生だと思ってたんだけど?



我儘で、自己主張が激しくて、人の話を聞かないって・・・



倒れない為に注意して、自分の判断を優先するって、そんなに駄目な事なのかな?



まっ、どうでもいいけどさ。



でも、アレだな。



沢瀬の最高に楽しそうな笑顔が・・・なんか癪に障る。 おまけに撮影してるし。



・・・・・・・・・



何かムカつくから、今日は一緒に寝てやらん!



「 「 あぁ・・・ふくっれ面のお姉様も最高に可愛らしい!! 」 」



今日はそうだな・・・ヨシッ! 姉ちゃんと寝よう!!



今夜は久しぶりの姉ちゃんのおっぱいだ! わーい!!



「 「 あぁ・・・いきなり笑顔に変わるお姉様は尚更に可愛らしい!! 」 」




   ◇ ◇ ◇




生徒会の会合があるからといって遅れて来た蒼は、何故か楽しそうに姿を現した。


取捨選択の基準が明確で、とことん時間の無駄を嫌う蒼のことだ。 さぞや不機嫌

を露わにして来るものだと思っていたのだが? 何かいいいことでもあったのか?


「 問題児扱いされた!」 それの何処が楽しいのか? 相変わらず解からん奴だ。

「 最初はショックを受けてましたよ 」 笑顔の沢瀬が情報不足を捕捉してくれる。


情報の捕捉は出来ても、蒼が楽しそうにしている理由は解からないということか?

伊藤を見ても肩をすくめるだけだ。 無理もない、蒼は本当に意味不明な時がある。


それにしても、蒼が問題児か。


・・・実際に問題だらけだがな。 本人には責任のない処で。


・・・・・・・・・


「 何やってんだ? 先に行くぞ?」 カフェで寛いでいる俺たちを、蒼が急かす。


人を待たせておいて、あたかも自分が待っていたかの様に、ごく自然に振る舞う。


・・・・・・・・・


・・・この果断さだな。 これが誤解を生む原因だ。 これが理解されないのだ。


・・・・・・・・・


蒼が住んでいる世界は厳しい。 リアルに死と隣り合わせといった厳しさがある。


そんな厳しさに鍛えられた果断さだ。 緩い世界の住人には異質で理解出来ない。


・・・だから、蒼の言動はただの我儘としか思われない。


ギリギリ迄無駄を削ぎ落す必要のない、余裕だらけの世界の住人から見るならば。



「 もう、ホント、早くしろよぉ! 次の上映に間に合わないじゃん!」



諸々のしがらみを剥ぎ棄て、只管(ひたすら)に急ぐ蒼の姿は、ただ異質としか思えないのだ。

蒼の送辞 ( 本人が云いたかった言葉 )

「 日本の高校生は世界でも最高レベルの学力を持つと評されていますが、大学

  入学以降はその評価を落とし続ける傾向にあります。 その結果卒業する頃

  には立派なポンコツに成り下がり、就職先で再教育を受けることでようやく

  社会復帰を果たすという情けない有様です。 単純に大学在学時の勉強不足

  と遊び過ぎを原因として。 今、此処に居られる卒業生の皆様には、そんな

  集団ポンコツ化には染まらないで欲しいと願っています。 私たち在校生が

  誇れる様な存在で在って欲しいと願っています。 望んだ大学に進学出来た

  というだけで安心する、そんな愚か者にならないで欲しいと願っています。

  勿論私たち在校生一同も皆様方に恥をかかせない様、懸命に努力致します。

  お互いに努力して、皆で力を合わせて素晴らしい社会を築く。 そんな未来

  を目指す先達者としての、責任と覚悟を示し続けて頂くことを切に望みます。

  ・・・・・・在校生代表、2年A組、美倉・蒼!」


蒼の送辞 ( 実際に口から出た言葉 )

「 にょんの・ほうせいわ・へかいでにょ・いこねベルにょわくにょくもちょ・

  れてます・ぐぁ、だいばくじゅうばくいこ・にょ・うかうぉとしづける・け

  いこにゃる。 にょけか卒にょうるこにゃ・にっぱなパンツにさわり、少食

  きで、シャイきょうくを・ケルトでにゃっ会っきを足すにょうにゃあしゃま。

  たじゅに、んんんんんー・・・職と守備女院都市・て、にゃんこにょれる・

  行政にゃにゃ、んなしゅーだんん国家にゃまらないれにょい・がってる。にゃ

  いこう生わうーにゃんでにゃってもっしいにゃってん。 にゃんだいぐぅに・

  んがっくきったとーんでぇんする、にゃろかもんなーいんでにょい! 地論わ

  ちざっこ制度もにゃーに字を貸せないにょ、んんめーに呂氏ます。 おがいに

  にょくって、ニャーでちょー・をってバラしいかぁいをづく。 ニャーらいお

  まーっすんだっ者ちょっしの、しぇんのくごもしけてたぁっくのにょにょむん。

  ・・・・・・ジャイ子っぴょう、にゃんえぇぐ、ミューら・わお!」


蒼は自分のことを問題児だと思ったことがありません。 身体にこそ問題が有るが

( 自分なりに )真面目な努力家で、十分に優等生の部類に入ると考えてました。

蒼の我儘は偏食以外は倒れないが為のもので、責められるものではないからです。

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