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12話 B級クエスト

「そっち行ったわよツカサ!」

「ああ!」


 依頼先に向かう道中、3人はモンスターと遭遇し戦闘を行っていた。


「そらっ!!」


 兎型の魔物の蹴りを受け、即座に反撃を取る。


「うし…!」

「怪我は?」

「大丈夫、かすり傷だ」


 受けた右手の状態を確認し、少女2人に報告する。


「このモンスターは初めて見たな……」 

「パエラビットね。脚の力がすごいわ」

「そこそこ雑な解説だな…」

「動きも単調だし他に言うことないもの……」

「ツカサも普通に対応できてたしね」

「ええ」


 初見のモンスターにも後手に回らず、討伐することができた。そんなツカサの目を見張る成長にリサも喜んでいた。


「もうC級モンスターも倒せそうね」

「相手によるんじゃない? ツカサはまだ冒険者になったばかりなんだよね?」

「ああ。だからまだモンスターも全然知らない。けど今のところモンスター相手で苦戦したことはないな」

「まぁここら辺で見かける奴ら全員D級、よくてC級の下のモンスターでしょうし……」


 慣れのためにツカサの赴くクエストはD級の簡単なもの、またダンジョンも同様に危険性の少ないものを見繕って挑んでいた。


「でも俺でももうC級モンスター相手にいけそうなんだろ? 結構早くないか!?」


 リサが頷き、補足する。

 

「制度を考えるとDからCへの遷移は早い方なんだけど……にしてもツカサは早い方ね…」

「制度?」

「あ、ソニアさんからまだ聞いてないんだね」

「あの人マイペースだから……」


 リサがはぁ、とため息を漏らす横でガーベラが言う。


ツカサ(D級)がD級のクエストに挑むように、基本は同じランクのクエストに挑むの。つまりD級冒険者がD級モンスターを倒せるのは当たり前なのね」

「だからD級の冒険者はC級クエストをクリアできるようになるのが最初の目標なわけなんだよね」

「ほえー……」


 ツカサが感嘆の漏らす。そして話を聞いた上で沸いた疑問を質問した。


「ガーベラはB級だろ? じゃあもうB級くらいなら難なく倒せるわけだ」

「そうね。さっきの話に合わせるとA級モンスターに匹敵するくらい強いと考えていいんだけど……実際にはA級とB級にはかなり差があるというか……」

「A級とB級だけじゃなくて、B級の中でも差がかなりあるんだよね」


 ガーベラの言葉にリサが頷く。


「DからC、CからBまでは割とサクサク行けるんだけど、B級中位くらいの冒険者がA級下位の魔物を倒すのは困難なのよね」

「ん〜つまり、魔物も冒険者もそれくらいA級とB級で差があるってことか?」

「そうなるね」

「でもCからBも結構あるわよ? C級冒険者がB級モンスターを倒せる様になるまではかなり時間が掛かるもの」

「そう考えると2人とも凄いな……俺と年も変わらないのに…」

「……」


 無言で手を後ろに当てながら、頬を赤く染め照れるガーベラ。ただ一息ついてから苦言を呈す。


「凄いとは言ってもA級への道は本当に遠いんだよね……」

「そうなのか?」

「それだけA級のモンスターは危険なのよまあB級モンスターもかなり厄介だけどね」

「めちゃくちゃ硬いとかか?」


 リサは「もちろんそれもあるけど」と続けて。

 

「知能が高いのよ、高ランクの魔物は」

「……?」


 あんまり実感が湧かない、という顔をするツカサ。

 彼は今までDランク相当のモンスターとしかまともに戦闘していなかった為当然といえば当然である。


「例えばスライムなんかは死にそうになると魔力を一気に高めて捨て身で来たりするけど、B級にもなってくると逃げの選択肢が入ったり、私たち冒険者の能力に対応した間合いを取ったりしてくる奴らもいるわ」

「他のモンスターを使役したりする奴もいるねー」

「なるほどな……」


 不安げな表情を浮かべるツカサにリサが落ち着き宿る声色で語りかけた。


「ま、今回は私とガーベラがいるから大丈夫よ。私たちならなんとかなるわ」

「うん。やばそうだったらすぐ撤退するしね」

「頼もしいな!」


 ♢


 道中歩くこと数時間。依頼主のいる村が目視で見える場所までに辿り着いた。


「今回はB級クエストなんだよな?」

「ええ他の冒険者もいるみたいよ。」

「ああ、ソニアさんの知り合いのギルドなんでしたっけ…」


 最初の依頼内容はC級モンスターを狩るだけの簡単な仕事だった。

 実際危なげもなく、出向いた冒険者がその対象モンスターを討伐し終えたのだが、そのモンスターは群れの1匹に過ぎず、残った群れのモンスターたちが村を襲撃したらしい。


「冒険者がなんとか食い止めているみたいだけど、人手が足りないとのことで村の人たちがさらにお金を出して追加の救援を出したみたい」

「そろそろ着きそうだけど…荒れた気配もそう感じないな……」

「とりあえずその冒険者と合流して情報を得ましょう」

「そうだね」


 ♢


「初めまして。俺はゴーヤ、あんたら冒険者にクエストを依頼した責任者だ。よろしく」


 各々が頭を下げると、ゴーヤは概要を説明した。


「始まりはパエラビットだった。奴が村の畑を荒らし初めたから冒険者の救援を出して、討伐してもらったんだ」


 パエラビット。ツカサたちが村にくる道中でも見かけたモンスターだった。


「そしたらよ、どうやらそいつは群れから逸れた一匹だったみてえで、今度は何匹もが村の畑や人を襲い始めたんだ」

「それだけじゃB級クエストにはならないでしょ」

「パエラビットを従えるモンスターがいたんだ」

「!」


 村を歩いていると、鎧を着た男と杖を握る少女がツカサたちの前に立ち声をかけた。

 

「そのモンスターは?」

「アルミラージだ」

「なるほど……少し厄介ですね」


 ガーベラが眉を顰めてそう呟くと、リサが問いただした。

 

「あなたたちが依頼を受けた冒険者ね?」

「その通り。ゴーヤさん、あとは俺たちに任せてくれ」

「ああ。何か聞きたいことがあったら来てくれ。必要な道具があったら可能な限り集めることもできる」

「助かるわ」

 

 リサたちはゴーヤを見送り、改めて挨拶することにした。


「俺の名はブライア。ギルド『麒麟の角』の冒険者だ。ランクはB級」


 いい体躯をした短髪赤髪の男が、挨拶の先陣を切る。

 屈強な肉体の通り、ランクはB級と高い。

 

「私はマタリー。ブライアと同じギルド所属よ。ランクはBね」


 長い帽子を被りローブを着他、いかにも魔法使いといった風体の少女も、同じくB級だった。

 

「おお、どっちもB級。凄いですね」

「B級のクエストに手こずってるけどね……」


 ははは、と苦笑いでツカサと握手するマタリーとブライア。


「リサよ、『阿吽の花』所属」

「! じゃあソニアさんが救援を受けてくれたのね」

「ええ」

「俺ツカサです!」

「ガーベラです」 


 各々の自己紹介が済んだところで、再びクエストの現状をブライアが告げる。


「アルミラージは部下のパエラビットを先に戦わせて、手薄になったところを襲撃し食糧を奪う、っていう行為を繰り返してる」

「私たちだけじゃ村民を守るのに手一杯で深追いすることができなかったの」

「まあパエラビットたちを相手にしながらアルミラージを倒すのは無理よね」

「そんなにやばいのか? どんなやつ?」

「アルミラージは角の生えた兎型のモンスター、パエラビット以上の力に加えて、角から電撃を放つの」

「電撃か……」

「ツカサは闘ったことがないのか?」

「ええ、まだ経験が浅いから……」

「大丈夫なのか?」


 ブライアの疑問にリサが答えた。


「近接戦闘ならB級モンスター相手でも通用すると思うわ」

「ならいいが……」


 そうこう言ってるうちに、絶叫が村に響く。


「きゃあああ!!」

「出たぞ!! モンスターだ!」


 村人が、一方向へと逃げていく。


「パエラビットね! 今まではどうしてきたの!?」

「あっちに一番でかい建物があるだろ! あの集会所を避難地にして保護してた!」

「ブライアとマタリーはそこに行って! 私たちで見えたモンスターたちを片っ端から倒す! 村には入れないわ!」

「了解した! こっちでアルミラージが見えたら俺かマタリーが報告する!」

「ええ!」


 急な襲撃に動じることなく、即座に作戦を立てる。


「アルミラージを倒すために、まずは周りの戦力を削ぐ! パエラビットはまとめてここで仕留め切るわよ!」

「はい!」

「ああ!」


 ガーベラとツカサがリサに続く。

 そして出現したパエラビットを狩っていく。


 8を超えた辺りで後方から魔法の炸裂音がした。


「リサ!」

「ブライア! きたのね!?」

「ああ、アルミラージだ!」

「今行くわ!」

「リサ、私は残るから、そっちは任せるね」


 頷き、すぐに3人は駆ける。

 そしてブライアの案内で、マタリーとアルミラージが戦闘を行っている場所に着く。


「みんな!」

「! あれがアルミラージか……」


 マタリーとアルミラージ、そしてそれを取り巻くパエラビットの群れ。ブライアは膠着していた戦闘状況を剣の一振りで動かした。


「リサ!」

「私たちはサポートしましょう。周りのパエラビットを削りつつ、アルミラージの負担を大きくする」

「合点!」


 2人は端のパエラビットたちを削る。


「むん!!」

「──風伐!」

 

 ブライアの攻撃をかわし出来た隙を、マタリーが風の刃で攻撃する。

 息の合った連携は、明確にモンスターを追い込んでいた。


「2対1ならお前も訳ないな……!」

「ブライア、横!」


 マタリーの合図に即座に対応し、身を引く。

 少女はそのまま魔法をモンスターに直撃させた。


 声と同時に放った速攻の魔法。ブライアに直撃してもおかしくないはずなのだが、2人の経験がその高難易度のコンビネーションをモノにしていた。

 

「すごいわね……とんでもない練度だわ」

「…あ!」


 戦闘を継続するのは不利と感じたのか、アルミラージは距離を取り、他の魔物達に撤退を促す。

 

「逃げた……!」

「深追いしなくていいわ。一旦戻りましょう」

「ふぅ……!」


 マタリーがため息をつく。


 意図的か否か──定かではないが、アルミラージは角に魔力を貯め、雷撃を放った。


 狙いはマタリー。

 

「!」

 

 撤退したこと、仲間が複数いること、その2つが大きかった。マタリーは咄嗟に魔法で相殺することができなかった。

 

「マタリー!!」


 だが。

 

「ぐっ……!」


 ──身体に魔力を込める!


 不意を打たれたマタリーの前に身体を乗り出したツカサが、身を挺して雷撃を受けた。


「ツカサ…! ごめんなさい!」

「ってて……大丈夫。これぐらいならなんともない……こともないか…!」


 アルミラージ達が撤退していく。そしてツカサは自分の容体に目を向けた。

 雷撃を受けた右腕を軽く振ってみる、その軌道はぐらついていた。


「まともに受けたらダメだな…まだ痺れてら」

「それでいて雷撃も早いからね…警戒しないと」

「本当にごめん、ツカサ」


 申し訳なさそうに頭を下げるマタリー。だが、ツカサは笑いながら宥める。


「気にしないでください。それよりそっちが怪我しなくてよかった」

「…ありがとう」


 もう一度、より深くマタリーはお辞儀した。そしてその横で。

  

「ツカサ!」


 ブライアが思い切りツカサの肩を掴む。

 何故か分からなかったため、ツカサは内心焦るが、ブライアの言葉でその焦りが杞憂だと気づく。


「俺の仲間を守ってくれてありがとう! 礼を言う!」


 一瞬、キョトンとした顔を見せたのち、笑う。

 その様子を見て笑った後に、リサが発言した。


「3人とも、そこまでにしてそろそろ戻りましょ。次に来た時はあいつを討伐するわよ」


 ♢


 アルミラージがパエラビットを率いて地面を駆ける。

 次なる策を頭で講じる。 


「……」


 その魔物達の群れの一匹が、何者かの接近に気づき攻撃をした。

 

「おや」


 杖の一振りでパエラビットの一匹が裂けた。

 ボスの兎は、それを見て逃げるでもなく、人間の前に立ち塞がり、対峙した。

 

「丁度いい、貴方達でも試してみましょうか」

 

 道化師の服装をした人間が、ひとりでに呟いた。

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