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13話 知能

「ふっ!」


 パエラビット、その最後の一匹を討ち取る。


「ガーベラ! 相手は撤退したわ、一旦戻りましょう!」

「リサ! ……全員無事?」

「ええ。ツカサが魔法を受けたくらい、でも軽症よ」

「ならよかった」


 周りからは情報が入ってこない。ひたすらに、村への侵入を防ぐために戦闘を続けていたガーベラにとって、一時とは言え作戦の成功は心に余裕を生んだ。


「でもこの調子で来られると安定しないから、さっさと作戦を立てよう」

「ええそうね。次襲撃した際には仕留められるように入念にね」


 ♢


「すごかったなあ冒険者さん達」

「おお、今回はひとつも荒らされなかったよぉ!」


 わいのわいのと村の人たちが口を開け笑う。集会所にいた人間達の多くは安堵していた。


「ゴーヤさん、まだ倒したわけじゃないから、きっちりあとで警戒するように言っておいて」

「もちろんだ。それと、道具とかはいらねえかい? 罠とかもあるにはあるぞ。モンスターに効くかは分からんが……」

「必要になったら言うわ」


 そう言ってその場を後にしたリサが小屋に入る。

 その中には、冒険者が集まっていた。


「おう、戻ってきたな」

「もう作戦は立てたの?」

「ある程度はな」


 皆が座り資料を持っている中に、リサも混ざる。

 

「マタリーの準備してたものがもうすぐ出来上がる」

「出来上がる? 何が?」

「これよ……じゃじゃん!」


 ガラガラと音を立てながら、いくつもの道具を見せた。


「おー! おー、おー?」

「私の魔法で仕組んだトラップ型の魔導具よ。アルミラージには通じないかもしれないけど、周りのパエラビットには間違いなく機能するわ。これがあればアルミラージだけを孤立させることができる」

「なるほど。これで孤立させて、一気に叩くってわけね。魔法が機能してる間は他の取り巻きも村に入れないし…いいわ、これで行きましょう」

「これがあるならパエラビットは魔導具で妨害してもらって俺たちみんなでアルミラージを叩いた方が確実?」

「いいや、あくまで妨害にしかならん。避難、保護役は変わらず付ける」

「なら私が行きましょうか」


 ガーベラが自ら手を挙げ避難役を立候補する。


「アルミラージが来た側とは反対方向に避難させて守ればいいんだよね?」

「ああ、だがあの人数だ。もう1人いた方がいいだろう」

「なら俺が。戦力的にはリサはアルミラージ側にいた方がいいよな?」

「そうね。ブライアとマタリーの連携は是非とも活用したいし…それで行きましょうか」

「よろしくなガーベラ」

「こちらこそだよ」

「やばそうだったら狼煙を上げる形で」


 リサの一言に2人が頷く。

 

「よし、それじゃあ整理するぞ」


 ブライアが作戦をもう一度まとめ、それを聞いたほか全員が首を縦に振る。


 ♢

 

 次にモンスターが来たる時を待ち、ツカサは1人高台に登り、もの思いに耽っていた。


「高難易度のクエストで不安?」

「リサ……」


 後ろから、少女が声をかける。


「アルミラージの魔法、しっかり魔力で身体を強化してもあれだけ痛かったんだ」

「そうね、あいつはB級モンスターだから。かなり強力よね」

「ちゃんと討伐しないと……村の人たちは怖いよな」

「ええ。だから作戦を念入りに立てたのよ」


 B級冒険者達が考えて決めた作戦だ。まだ経験の少ないツカサにはその作戦内容を不安に思う理由はない。

 

 それでも、自分よりおそらく実力が上のモンスターとの対峙は怖かった。

  

「……緊張するな」

「頑張りましょ、大丈夫よツカサ。何かあっても誰かが必ずサポートするわ」


 うん、と頷いた時。開幕の狼煙が上がった。


「……来た!」

「ええ、ツカサは下のガーベラと合流、私は2人と討伐しに行くわ」

「ああ!」


 ♢


「ガーベラ!! 」

「村の人たちみんな集会所に避難を始めてるよ」

「ああ。とりあえず村に入りそうな奴らを順々に片そう」

「うん」


 集会所を起点に迫り来る魔物を討伐していく形を取る。

 だが。

 ツカサとガーベラの鼓膜は、信じられない言葉の振動を受け取った。

 

『殺セ! 囲んで殺セ!』


「……は?」

 

 マタリーの魔導具が作動する。

 村に接近するパエラビットの群れを切り裂くように、地面に設置された魔導具から風の魔法が射出される。

 

 だが。


「ちょっと待て……!」

「な、なんで…」


 最初の数体が死んだ後に、生存したモンスターたちは仲間の死体を盾にするように魔導具に接近し、協力して1つずつ確実に破壊していく。


「パエラビットだろあれ、あいつらあんなに連携取れるもんなのか!?」

「そんな訳ないでしょ明らかに特殊な個体だよ……!」


 だが、その行動を取るモンスターは一匹や二匹では済まず、群れの全てのモンスター達が連携をとっていた。

 

 問題はそれだけではない。先ほどの声。


「しかも襲撃してきたモンスターの中で人語を使えるほどの知能を持った奴がいる」

「……ああ。やっぱりおかしいよな、あれ」


 ガーベラは剣を抜き、防御の構えを取る。

 もう、罠を抜け侵入してきたパエラビットたちが目と鼻の先まで詰めてきているからだ。

 

「ツカサ、こっちも異常な状況なのは間違いないけど、あっちも戦力を削れるだけの余裕はないはず。ここは私たちで抑えるよ」

「了解!」


 罠を掻き分け、群れを成しパエラビットが接近する。

 多少知能を付けたことに驚きはしたが、所詮それだけ。


 2人はなんということもなく処理していく。 


「これならなんとかなりそうだけど……」


 ガーベラは反対側の戦力を気にかけていた。もし仮に自分たちの想定していない未知の敵が増援に来ていたのであれば、撤退も視野に入る。


 兎にも角にも、パエラビットの群れはいち早く処理し状況を確認しなければならないのだが、時間差で攻めてくるモンスターたち相手だと、まだまだ時間がかかることは必至だった。


「それすら作戦のうちかもしれない……」


 その可能性を考えると、胸が不安で埋め尽くされる。

 

「ガーベラ、まだまだ来るぞ……」


 村の外にいるパエラビットたち。その群れは目視できるだけでも、十を超えていた。


「上等! 一匹残らず討伐するわ!」

 

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