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30.窓の向こう




寝室へ戻ったカサンドラは、クローゼットから白とベージュの二色使いのエンパイアスタイルドレスを引っ張り出して身に付けた。


舞踏会ではないので着飾る必要が無いのが救いだ。

何故ならパーティー用の華やかなドレスは全てリュクス・ガーデンに置いてきてしまったから。


そもそも此処へ持って来ていたとしても、手伝って貰わなくては着る事は出来ないけれど。


簡単に髪を編み込んで結い上げ、ロバートがプレゼントしてくれた花束にあった白い花を髪に差し込んで飾ってみた。


後はローブを羽織るだけとなった時、カサンドラはエメラルドグリーンのローブがまだ完全に乾いていない事を思い出してがっかりした。

グリーンのローブの方が断然暖かいのだが、赤いローブも寒さを十分和らげると自分に言い聞かせながらローブを羽織る。




寝室を出て廊下を歩いていると、書斎の扉が開けっ放しになっている事に気が付いた。

扉を閉めるために近付くと、ドアの隙間から書斎の窓辺に立つロイスが見えた。


普段警戒心の強いロイスが、カサンドラの視線に気付きもしない。

もしかすると気付いているのかもしれないけれど、何時ものように此方を見つめ返してくれる事は無い。

どうやら窓の外を見つめているようだが、一人で佇む彼の姿が余りにも不憫で、カサンドラは無性にロイスに声を掛けたくなった。


けれど今の彼はそれを求めていない事も、善意も悪意も何もかもを拒んでいる事も分かっている。

まるで自分の運命を哀れんで、自暴自棄になっている時のカサンドラのようだった。



カサンドラは書斎の扉をそのままにして、静かに階段を降りて応接間へ向かった。


書斎の窓からは屋敷の裏手の丘、つまり以前カサンドラが散歩に行った湖の方が見える筈だ。



ロイスはいったい何を見つめているのかしら……‥?


カサンドラにはわからなかった



でも知る事が出来たら良いのにと思った




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




応接間へ入ると、肘掛け椅子に腰を下ろしていたロバートがパッと立ち上がる。


「待たせてしまってごめんなさい。準備出来たわ」


そう言ってみたものの、彼はまじまじと私を見つめているだけで返事が無い。

焦げ付きそうな視線が落ち着かなくて身動ぎした後、もう一度声を掛けてみる事にした。


「メリークリスマス、ロビー。

私の声が聞こえているかしら?」


「あぁ、聞こえてるよ。

‥‥カサンドラ、とても素敵だ」


「どうもありがとう」


「君の髪に飾ってある花はもしかして‥‥僕の花?」


「えぇ、そうよ。とても綺麗だったから。 ‥‥ダメだった?」


プレゼントとはいえ、せっかく美しく纏められた花束の花をこのように使うべきではなかった。

もしかすると彼の気に障ったのかもしれない。

そう思っていたのだが、彼は首を横に振って言った。


「いや、喜んで貰えて嬉しいんだ。

よく似合ってるよ、カサンドラ」


「ありがとう。 貴方もとても素敵だわ」


ロバートは優しく微笑むと此方へ腕を差し出し、私の手を取って自分の腕に掛けさせた。


「それじゃあ行こう。 大分雪が積もってるから、足元に気を付けて」


「雪は降っているのかしら?」


「少しだけね。 でも冬は何時もこうなんだ。

君も早く雪に慣れた方が良い」


「そうね」


ロバートに腕を引かれ、チラチラと降る雪の中をグレスティンの町へと向かって歩いた






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