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実世界では、有名企業の経理課で働いている。頭を使うことは好きではないが、「お金」を数えることは大好きで、お金に関する資格など片っ端から取得していったら今の企業で働けるようになったのだ。

この企業は、日本国内でも超有名で就職希望率がかなり高いのだ。そんな企業で働ける私ははっきり言って親戚中に自慢できるほどなのだ。

そこには営業1課に素敵な男性がいた。

キラキラしてて、爽やかで、誰にも優しくて。

だから疑わなかった。

「これ、二葉の経費につけといて」

「あ、はい?でも、これって四十澤さんの経費では?」

「ん?いいんだよ、別に。あいつ何もしてないから、俺の役に立ってもらわないとな~」

この言葉を信じたのが始まりだった。

毎回毎回「これ二葉で」「あいつの経費で」と言ってくる時点で、気づいて上司に相談すべきだったのだ。

だけど、周りの同僚も何も疑わず、「二葉兵固」という名で経費を切っていく。だから、私も同じようにしただけなのだ。

一度、同僚が上司のいない隙に帳簿を書き換えているのを見たことがある。私は同犯と思われたくなくて、隠れて、誰にも言わず、自分の身を守ることにした。けども、それは一度だけですまなかったのだ。一度あることは二度も三度もある。しかも、毎回違う同僚なのだ。私は絶対これには関わらないと誓い、「四十澤 者頼」とは距離を持つことにした。

それでも、罪は免れなかった。

だって、「二葉兵固」の名に書き換えたのは、私もしたことだから・・・・・・・・・。

私たち経理課は実質解体されたようなものだ。経理課の上司からは冷たい目で見られ、決して話そうとはしてくれなくなった。そりゃそうだろう。信じていた部下たちに裏切られたのだから。

ただ私は途中で四十澤との関係を断ったことにより資材課に移されることはなかったが、給料は初任給より低くなってしまい、挙句、家族にそのことを知られ、家族からも冷たい目で見られるようになった。

口もきいてもらえず、今まで作ってくれていたお弁当も晩御飯もなくなった。私だけ家族じゃなくなったのだ。

お母さんは今まで財布を机に置きっぱなしにしていたりしたのに、私がいると隠すようになった。

通帳なども違う位置に移動され、今ではどこにあるのかさえ私は知らない。

父からは何もない。ただ、冷たい目を向けられるだけ。弟からは「なんで家にまだいんの?」と言われる始末。

だけど、自分のせいだから。あの時、「おかしい」と気づいてなぁなぁにせず、上司に相談していればこんなことにはならなかったのだ。自分の落ち度で済む話ではなくなった。

家族に迷惑をかけ、親戚からは縁を切るようなことまで言われているらしい。

そこまで大事になってしまったのだ。私の過ちが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

帳簿を書き換えていた同僚は、資材課に移され、給料ももちろんかなり下げられたらしい。反省する者もいれば、社長の事、総務課の一条先輩の事を悪く言う人もいれば、四十澤のことを貶す人、資材課の人に怒る人さえでてきた。もちろん怒る人には「厳重注意」ではなく「解雇」が言い渡された。しかも、著しく企業の名に傷をつけ、反省もないことから「退職金」などがない「懲戒解雇」になったらしい。懲戒解雇、つまり「自分の履歴」にそれが付きまとうのだ。

この人たちはどこでどんな職に就けるのだろう?考えるだけで怖くなった。この企業で社会的地位とまではいかなくても、企業のブランドを引っさげられていたのだ。それが一気にいわば「犯罪者」だ。どこに雇ってくれるところがあるのだろう。

だから、このままここで働くしかないのだ、今の私は・・・・・・・・・。

経理課でも、元々していた業務はさせてもらえなくなった。下っ端のするコピーやファックス送信などそんな仕事だけになってしまったのだ。

後輩にはクスクス笑われるのが日常で、悔しくて涙が滲む。

自分が悪いのはわかるが、「四十澤(あいざわ)者頼(ひさより)」を恨まずにはいられない!


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