第9話 臨時パーティー
護衛依頼当日。
俺は、ギルドに言われた集合場所に向かった。
馬車には、魔法・スキル習得所の旗が掲げられ、所属を示していた。貴族や大きな商会等は、貴族の紋章、商会の印を掲げるだけで手を出したら、全力で叩くぞという示威行為になるのだ。
俺は、その馬車を見つけると、そこに向かった。
「おはようございます。随分、お早いですね。本日は護衛よろしくお願いいたします。」
馬車に近づくとそう後ろから声を掛けられた。
「おはよう。今日はよろしく頼む。」
俺は、そう言って振り返ると、後ろには魔法・スキル習得所職員のレニーさんがいた。
「レオ君。今日はよろしくね。」
「ああ、レニーさん。改めてよろしく。俺が受けることは知っていたので?」
「うーん。名前だけだったし、Cランク冒険者と聞いていたから、魔法・スキル習得所であった時は、レオ君は若すぎるから、名前が同じだけで別の人と思ったのよ。それに守秘義務もあって、話して確認もできなかったし、ごめんなさいね。」
「確かに、依頼者と請負人として会っては居ないし、うかつなことは言えないか。」
そんな話をしていると、二人の女性冒険者が声を掛けて来た。
「失礼。魔法・スキル習得所の方ともう一人の冒険者でよろしいか?」
「あ、はい。私は、魔法・スキル習得所の職員でレニーと申します。よろしくお願いします。」
「ああ、冒険者のレオだ。よろしく。」
「名乗り遅れたな。私は、カミーラ。で、後ろのは、ジェイミーだよろしく頼む。」
「ジェイミーです。よろしくです。」
カミーラと名乗った女性は、年齢は20歳前後だろうか、いかにも気の強そうな顔つきに鮮やかな緑色の髪を後ろでまとめて、革鎧にバックラーシールドを背中に背負い、細身の剣を腰に差していた。
ジェイミーと名乗った女性も年齢は同じくらい、顔はかなり整っていて、ローブに隠れてはいるが燃えるような赤毛が印象的だ。髪の毛と対比するような紺色のローブを着込み、恐らく俺と同じ野営道具とかだろう、背中に大きな荷物を背負っていた。
挨拶を済ませ、馬車に野営道具等を置かせてもらうと、出発まで、冒険者同志で打ち合わせをしておくことにした。
「随分若いのね。人族よね?」
普通にランクを上げてたら、Cランクになるまで頑張っても3、4年かかる。だが、俺は、どう贔屓目に見ても18歳には見えない外見の為、長寿種の亜人の血が入ってるかと聞いて来たようだ。
「ああ、15歳になったばかりだ。」
「それでCランクって、貴族なんかなの?そうは見えないけど。」
それなら、貴族の推薦、通常は自分の息子とか身内に出すので、そう聞いてきたようだ。
「いや、平民だ。ちょっと分け合ってな。」
「すごいですね。」
「まぁ、いいわ。私達は、Cランクになって一年くらいなの、経験も上だし、今回は私が指揮を執るわね。いいかしら。」
ジェイミーは普通に驚いてくれたが、カミーラは、理由を言わない俺にこれ以上詮索をしても無駄だろうと諦めた感じで、経験が上の自分が今回のリーダーを務めると言ってきた。俺としても、問題ないので、同意することとした。
「構わない。おれは、パーティーに所属してないので、指示とかも慣れてないしな。」
「ソロでCランクて、相当の腕利きなの?」
「強そうですね。」
「どうだろうな?」
「それで、装備からして前衛職でいいのだな?」
「魔法も多少使えるが、基本はこっちだ。」
そう言って、腰にある剣を示した。
「それなら、馬車の後ろを守ってもらっていいか?私が前を受け持とう。ジェイミーは、レニー殿と御者台だ。」
「ああ、構わない。」
「わかったわ。」
そう今回の護衛の基本的フォーメーションを決めると、次にお互いの最低限の技能の確認を行うこととなった。
お互いが、どのような攻撃方法やどのような技能があるかある程度知っておかないと、指示出しや咄嗟の行動に支障をきたすからだ。
「後、最低限の技能確認だ。私は、見てのとおり盾職で、いくつかの武技スキルと身体強化の魔法、それと危険探知のスキルと言うのを持っている。」
「危険探知?」
「聞きなれないだろ。先天系のスキルだ。危険があると何となく感じられる。」
「便利なスキルだな。」
「どうだろうな?どんな危険かまでわからないのでな。」
「次は、私ね。見てのとおり術者よ。風と水系の魔法と補助魔法をいくつかと、身体強化スキルを使えるわ。基本攻撃は、アロー系が中心だけど、スピア、ボール系は扱えると思っておいて。」
「わかった。俺は、剣と投擲、魔法が攻撃手段だ。魔法は、土系で飛礫(アロー系)とスピアだ。探査魔法や補助魔法も使える。身体強化はスキルと魔法両方扱える。」
「ほう、流石だね。手広く抑えているじゃないか。私も身体強化のスキルも習得したいけど中々、先立つものがね。」
「俺もここで、まとまった金が得られたので、習得することが出来た。ちなみに魔法の方の身体強化は、本当に習得したばかりで、実戦で使ってない。」
「それは、いきなり実践では、避けたいな。では、レニー殿の準備も済んだようだし、出発しよう。」
そう言ったカミーラの目線を追うと、レニーが積荷のチェックや馬車周りの点検を終えて、こちらを見ていた。
レニーさんに、俺達は合流すると、お互いの位置取りを報告して、了承を貰うと出発することにした。
リーンの町に野菜を売りに来た近郊の村の帰りの空馬車に抜かれながら、ゆっくりとこまめな休憩はさみながら、俺達は進んだ。
初日は、順調に進み、無事宿泊予定の村にたどり着いた。
俺達は、空き家を利用した木賃宿を押さえ、そこに宿泊することにした。重要な荷物は、家の中にしまい、馬は、村長宅の厩につながせ貰った。
そして、レニーさんと打ち合わせを終えたカミーラは、戻ってくるなり、俺に話しかけて来た。
「さて、食事だが、野営ならパンと干し肉と野草のスープでもいいが、今回はレニー殿も一緒に食事をすることになった。だが、私達は、野営以外自炊をしたことがない。依頼主のレニー殿に頼むのもな。それで、レオは、食事を作れるか?」
「一応、町じゃ自炊をしてるから作れるが。」
「おお、良かったでは、すまないが食事の用意をお願いする。これは、レニー殿から預かった材料代だ。」
俺は、その金を受け取ると、この村唯一の店で材料を買い込み、料理をした。
料理の方は、店で買った全粒粉の無発酵パンとアスパラとベーコンの炒め物、この地域の独自の青豆とチーズのオイルグラタン、それと葉野菜とオニオンのスープを用意した。
ありきたりな調理法の料理だったが、他の3人からは高評価を貰った。あまり人様に料理を食べて貰ったことはなかったが、高評価を貰えたことに安堵した。
女性3人は、そのまま片付けは自分達ですると言って、テーブルで話し込んでいたので、俺は、その間に外に出て、人のいない場所で、身体強化魔法を軽く試した。
体を軽く動かしたり、剣を振ってみたりしてみる。
感覚は、スキル使用と変わらずに使えそうだな。後は、魔力を上手く活用できるかだな。この辺は実戦で実際確認するしかないか。
村の中なので、軽く感覚を掴むだけにとどめ、宿にしている家の裏手でにある共用井戸で、水を汲み、汗をかいた体を拭いて、家に戻った。
家の中では、まだ女性陣がおじゃべりをしていたので、先に寝させて貰うと一言断って、ベットに体を沈めた。
魔法は、発動を止めれば魔力さえあればまた使えるし、30分くらい動ける分の魔力を温存しておけば、使い勝手はいいかな。そんなことを考えながら、眠りに就いた。
翌朝、俺は、起きて外で顔を洗っていると、村の女房達も朝食の準備に顔を出してきたので挨拶を済ませ、俺も朝食に取り掛かった。
朝は、麦粥と昨日から水で戻しておいた豆を使ったスープを用意した。麦粥は、ルーチェに案内して貰った店をまねて、野菜やベーコンを入れてみた。
「朝食もひと手間加えられて、おいしいですよ。」
「ああ、いまいち味気ない麦粥もこれなら食べられるな。」
「夕食も美味しかったけど、朝も手を抜かずに作るなんて流石ですね。」
「材料に余裕があったので、ちょっと凝ってみた。ただ、男料理だ、余りレパートリーはないぞ。」
「あとは、野宿と食事付きの宿に泊まれるので大丈夫ですよ。ああ、でも帰りまたこの村でお願いするかもですね。」
「それぐらいなら、同じものを出さずに済むかな。」
「それは楽しみだ。」
「期待しておきます。」
その後準備を整え、目的地へ向け歩みを進めた。
旅は順調に進み、特に何事もなく都合5日間掛けて目的の街に着いた。魔法・スキル習得所で荷物を下ろすと、俺達は一度お役御免となり、翌日の朝まで自由の身となった。
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