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覚醒した人 まだ覚醒の機会が無さそうな人

「行ってらっしゃいませ。旅のご無事をお祈りしております。もう二度と来ないで下さいね」


 笑顔の白川支配人に見送られ、ニグル一行は王国ホテルを出た。

 もう二度とこのホテルには泊まれない。それは惜しいと、ニグルは思った。


 マグスを含むニグル一行は、王国ホテルを出たその足で冒険者ギルドに向かった。


「まだ鼻の奥にエルちゃんのおつゆが残ってる気がする…」

「ちょっ!ルルさん!」

「どうせ聞かれてたんだから隠す必要無いでしょ?」

「ルル、精神を解放し過ぎて本当の自分がダダ漏れてんじゃないか?」


 朝から全開のルルに、ニグルは違和感を覚えた。


「あんなに興奮してあんなに恥ずかしい思いしたから、もう気にするものが何も残ってない」


 表情はいつも通り自然体、発言は昨日までより開放的。


「エルちゃん、ニグルさんから私に乗り換えちゃうかも知れませんよ」


 ルルがニグルに耳打ちした。


「・・・」

「すっごく興奮してましたよ、エルちゃん」

「・・・」

「何回も何回も求めてきて・・・」

「もうやめてよ!俺の俺が反応しちゃうじゃん!責任取ってくれるの?」

「エルちゃんがどう思いますかねー」

「・・・」


 こうじゃない。

 二人で汗だくになったあの頃のルルはこうじゃなかった。

 ニグルはただただ戸惑った。


 エルがソエルから受け継いだ血の力で、ルルは秘めたる力を解放し、女戦士として覚醒していた。

 アドレナリンの分泌量が増え、筋力が飛躍的に強化され、優秀な女戦士としての下地が備わった。


「ルル、性格変わったよね。昨日の夜を境に」


 ニグルはマグスに囁いた。


「ニグル、ルルは使い物になるぞ。今まで引き出されていなかった能力が解放された」


 マグスはニグルに囁き返した。


「なんでわかるの?」

「大魔法使いだからだ!」


 マグスは突然、いつも通りの大声になった。


「そっか」

「エルとの情事によって引き出されたのだ。エルがソエルから受け継いだ淫婦の血にはそういう能力がある。私もイフォックもお前もその恩恵を受けている」


 マグスは再び囁き声になった。


「そういう事か。待て。イフォックも?」

「うむ。ルルを通してお前と穴兄弟の俺は、ソエルを通してイフォックとも穴兄弟だ!イフォックとお前も兄弟みたいなもんって事だ!」

「それは違う。エルは本当にマグスの子?イフォックの種って事はない?大丈夫?」

「身体能力の低さが俺譲りだから俺の子で間違い無い!」

「そっか」




「ニグル!この依頼を受けるのだ!」

「!?」


 いつの間に下見をしていたのか、マグスは冒険者ギルドに入るなり迷う事なく足速に掲示板に向かい、とある依頼書を手に取った。


 マグスが選んだ依頼は、悪魔討伐依頼である。

 依頼ランクは8。最高ランクではないが、ニグル達が受けるべきランクではない。

 ニグルとエルが討伐した悪魔はランク5相当であった事を考えれば、無謀なレベルと言わざるを得ない。


「俺らランク8なんて受けれるの?」

「お前達は無理だ。しかし俺は受けられる」

「マグスも一緒に行く気になったって事?」

「行かぬ!」

「それいいの?不正じゃない?」

「倒してしまえば問題無い!悪魔を討伐すれば問答無用に誉められる!それはお前とエルが実証済みだ!」

「待て待て。あれは生まれたての悪魔だったって話じゃないか。ランク5相当とは言われたけど、実際のところ何ランクかわかったもんじゃないだろ」

「お前はともかく、エルは少しは成長しているだろう。ソエルのもとで修行したと聞いているぞ。エル、大丈夫だな!?」

「大丈夫」


 どの口が言っているのかと、ニグルは思った。

 が、昨日から続く気まずさに負けて口を噤んだ。


「ルルも覚醒したしな!」

「私が?そうなんですか?」


 突然のマグスの言葉に、ルルが驚いた。


「そうだ!エルに流れる淫婦の血の能力でな!」

「娘を淫婦呼ばわりしないでよ…」


 デリカシーの無いマグスの言葉に、エルが落ち込んだ。


「あとはモリだな!今のところ、モリはこのパーティーの穴だ!」


 斟酌無し。

 これはいつも通りだとよく理解しているモリは、まるで興味の無い他人事のような顔で聞いていた。


「穴兄弟じゃないから穴か。皮肉なもんだな」


 ニグルは上手い事を言った手応えを感じていたが、誰も反応しなかった。


 しかし、表面的にはそうであったが、モリの脳だけは濃厚に反応していた。

 ニグルが発した穴兄弟という言葉から突然妄想を爆発させ、下卑た顔になり、その下卑た顔をエルに向けた。


「少なくとも、私は生理的に無理」

 

 察したエルは、モリの口を制するように、ピシャリと告げた。


「今から助け合って悪魔討伐に行こうってのに、僕だけ放ったらかしのままでいいんですか!」


 モリは受け入れられない惨めさで、怒った。


「モリもキゼト帰ってソエルに覚醒させてもらったら?」

「淫婦の血も相手を選ぶからな。ソエルもエルも受け付けないと言っているのだから諦めろ!」


 ニグルの軽口を引き継いでマグスが残酷に告げた。


「ソエルさんのは初耳ですけど!」

「覚醒する方法は他にもある。だから、諦めずに頑張るのだぞ」

「マグスさんの優しい言い方はなんか嫌いです!」


 モリは目に涙を浮かべながら、精一杯強がって見せた。

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