《第二十七節》伝説の槍(1)
前回に引き続き遅れるという大失態を犯してしまい、本当に申し訳ございません。毎回事前に予約しておくのを忘れてしまうので、投稿の時間を決めずに二週間ごとの〝木曜日〟とだけ決めておくことにします……。何度も変更になってしまって大変申し訳ございません。以後気をつけます。
ゼロたちがまだ執務室で王と話している頃。
瘴気が発生した始まりの森に、一人足を踏み入れる者がいた。
ゼロとそっくりな顔立ちに、特徴的な金色の睫毛。
フード付きマントを羽織り、髪と目の色を変えていても、その溢れ出る気品までは隠しきれていない。
彼のことをよく知る者が見れば、その姿は間違いなく、この国の第二王子──リヴ・ジョーカーだった。
「可哀想に。こんなに枯れちゃうんだ…」
彼は森に入った途端、瘴気によって枯れ果てた木々を見て、あまりの凄惨さに息を呑んだ。
地面に落ちた枯れ葉を拾い上げ、悲しそうに眉を下げる。
しかしよく見ると、枯れているのは一部だけで、少し歩くと木枝をよく伸ばした元気な木々もあった。
何かが波打ったかのように、枯れている部分とそうでない部分で分かれているものや、根の先だけが地面から出ているものなど、見たことのない木々も見つかった。
(えっと…これも多分、瘴気のせいなんだよね?)
ほんの少し歩いただけでも分かるこの森の異質さに、リヴは思わず恐怖を覚えた。
しかし、瘴気という言葉にふとゼロのことを思い出す。
「もしかして、兄さんの身体もずっとこんな風に…?」
リヴは森の様子とゼロを重ね、悔しそうに呟いた。
ゼロの身体は、瘴気によって常に侵蝕と複製が繰り返されている。
その侵蝕はおそらく、ここにある木々と同じだ。
もし複製という性質が働かなければ、細胞が破壊され、内臓も機能を失い、最悪の場合は死に至る。
ゼロは不死という特性を持ちながら、実際は常に死と隣り合わせで生きているのだ。
それに、複製されるまでの間、少しも痛みや苦しみがないわけではない。
ゼロは絶対に言わないが、リヴは彼が毎晩うなされているのを知っていた。
侵蝕だけではない。過去の過ちへの思いが悪夢となり、彼を襲っているということも。
ゼロが朝に弱いのは、そのためだ。
毎晩侵蝕の苦しみと悪夢にうなされて、朝早くに気持ちよく起きられるはずがない。
ようやく眠れたと思ったら、すぐに起きなければならないのだ。
そんなの、寝ていないも同然だろう。
リヴは、ゼロが王族でなければ、公務さえなければ、好きなだけ寝かせてあげたいと思っていた。
(これ以上、兄さんに負担を掛けるわけにはいかない。今回は絶対に、俺がなんとかしないと)
リヴが森へ来た理由。それは、言うまでもない。
今朝、王から呼び出しを受け、森へ行くよう頼まれたからだ。
『今回は…お前の〝力〟が必要なんだ』
と、真剣な顔で。
なぜ第二王子であるリヴが、瘴気が蔓延る危険な森へ行かなければならないのか。
王の言う〝力〟とはなんなのか。
それは、ゼロやルリ・サピロスのメンバーですら知らない、王とリヴだけの秘密だった。
♦︎♦︎♦︎
八年前。
当時六歳だったリヴは、一人王宮の大書庫を訪れていた。
ここは王族や学者、一部の高位貴族のみが立ち入りを許される特別な場所で、数々の国家機密が保管されている。
当然、王族であるリヴには立ち入る権利があるのだが、万が一のことがあるため、両親からは一人で行くことを禁じられていた。
バレてはいけないため、管理人の目を盗んでとある本棚へと向かう。
無事に目的の本棚の前に辿り着くと、リヴは自身の目と同じ高さの段を、扉を開けるように引き出した。
すると、それよりも下の段も同時に引き出され、本棚の向こう側に地下へ続く狭い階段が現れた。
禁書庫へ続く、リヴはまだ知らないはずの階段だ。
リヴはそこへそっと足を踏み入れると、引き出した段を丁寧に元に戻した。
持ってきた蝋燭に灯をともし、真っ暗な階段を慎重に下りていく。
しばらくすると、目の前に厳重に閉ざされた大きな扉が現れた。
リヴはポケットから徐に鍵を取り出し、何の造作もなく正規の方法で扉を開ける。
「…よし、成功」
扉の奥には、リヴの私室と同じくらいの大きさの部屋が広がっていた。
大書庫に比べればはるかに小さいが、一面が本棚で埋め尽くされている。
リヴは早速目当ての本を探し、中央に用意されていた机に向かった。
机の上に分厚い本を数冊置くと、そのうちの一冊を開けて字の羅列を追う。
すると、一つの単語に目が止まった。
「伝説の…槍?」
「おい」
その時。突然背後から声をかけられ、リヴは慌てて後ろを振り返った。
威厳あるその人物を見て、リヴは絶句する。
背後に立っていたのは、ガルシア王国国王、ビースト・ガルシアだった。




