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♦︎伝説の槍は、僕を殺せない♦︎  作者: Blueberry
『第九章』八年前のあの日
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《第二十七節》伝説の槍(1)

前回に引き続き遅れるという大失態を犯してしまい、本当に申し訳ございません。毎回事前に予約しておくのを忘れてしまうので、投稿の時間を決めずに二週間ごとの〝木曜日〟とだけ決めておくことにします……。何度も変更になってしまって大変申し訳ございません。以後気をつけます。

 ゼロたちがまだ執務室で王と話している頃。

 瘴気が発生した始まりの森に、一人足を踏み入れる者がいた。

 ゼロとそっくりな顔立ちに、特徴的な金色の睫毛。

 フード付きマントを羽織り、髪と目の色を変えていても、その溢れ出る気品までは隠しきれていない。

 彼のことをよく知る者が見れば、その姿は間違いなく、この国の第二王子──リヴ・ジョーカーだった。


「可哀想に。こんなに枯れちゃうんだ…」


 彼は森に入った途端、瘴気によって枯れ果てた木々を見て、あまりの凄惨さに息を呑んだ。

 地面に落ちた枯れ葉を拾い上げ、悲しそうに眉を下げる。

 しかしよく見ると、枯れているのは一部だけで、少し歩くと木枝をよく伸ばした元気な木々もあった。

 何かが波打ったかのように、枯れている部分とそうでない部分で分かれているものや、根の先だけが地面から出ているものなど、見たことのない木々も見つかった。


(えっと…これも多分、瘴気のせいなんだよね?)


 ほんの少し歩いただけでも分かるこの森の異質さに、リヴは思わず恐怖を覚えた。 

 しかし、瘴気という言葉にふとゼロのことを思い出す。


「もしかして、兄さんの身体もずっとこんな風に…?」


 リヴは森の様子とゼロを重ね、悔しそうに呟いた。

 ゼロの身体は、瘴気によって常に侵蝕と複製が繰り返されている。

 その侵蝕はおそらく、ここにある木々と同じだ。

 もし複製という性質が働かなければ、細胞が破壊され、内臓も機能を失い、最悪の場合は死に至る。


 ゼロは不死という特性を持ちながら、実際は常に死と隣り合わせで生きているのだ。

 それに、複製されるまでの間、少しも痛みや苦しみがないわけではない。

 ゼロは絶対に言わないが、リヴは彼が毎晩うなされているのを知っていた。

 侵蝕だけではない。過去の過ちへの思いが悪夢となり、彼を襲っているということも。


 ゼロが朝に弱いのは、そのためだ。

 毎晩侵蝕の苦しみと悪夢にうなされて、朝早くに気持ちよく起きられるはずがない。

 ようやく眠れたと思ったら、すぐに起きなければならないのだ。

 そんなの、寝ていないも同然だろう。

 リヴは、ゼロが王族でなければ、公務さえなければ、好きなだけ寝かせてあげたいと思っていた。


(これ以上、兄さんに負担を掛けるわけにはいかない。今回は絶対に、俺がなんとかしないと)


 リヴが森へ来た理由。それは、言うまでもない。

 今朝、王から呼び出しを受け、森へ行くよう頼まれたからだ。


『今回は…お前の〝力〟が必要なんだ』


 と、真剣な顔で。

 なぜ第二王子であるリヴが、瘴気が蔓延る危険な森へ行かなければならないのか。

 王の言う〝力〟とはなんなのか。

 それは、ゼロやルリ・サピロスのメンバーですら知らない、王とリヴだけの秘密だった。

   

♦︎♦︎♦︎


 八年前。

 当時六歳だったリヴは、一人王宮の大書庫を訪れていた。

 ここは王族や学者、一部の高位貴族のみが立ち入りを許される特別な場所で、数々の国家機密が保管されている。

 当然、王族であるリヴには立ち入る権利があるのだが、万が一のことがあるため、両親からは一人で行くことを禁じられていた。


 バレてはいけないため、管理人の目を盗んでとある本棚へと向かう。

 無事に目的の本棚の前に辿り着くと、リヴは自身の目と同じ高さの段を、扉を開けるように引き出した。

 すると、それよりも下の段も同時に引き出され、本棚の向こう側に地下へ続く狭い階段が現れた。 

 禁書庫へ続く、リヴはまだ知らないはずの階段だ。

 リヴはそこへそっと足を踏み入れると、引き出した段を丁寧に元に戻した。


 持ってきた蝋燭に灯をともし、真っ暗な階段を慎重に下りていく。

 しばらくすると、目の前に厳重に閉ざされた大きな扉が現れた。

 リヴはポケットから徐に鍵を取り出し、何の造作もなく正規の方法で扉を開ける。


「…よし、成功」


 扉の奥には、リヴの私室と同じくらいの大きさの部屋が広がっていた。

 大書庫に比べればはるかに小さいが、一面が本棚で埋め尽くされている。


 リヴは早速目当ての本を探し、中央に用意されていた机に向かった。

 机の上に分厚い本を数冊置くと、そのうちの一冊を開けて字の羅列を追う。

 すると、一つの単語に目が止まった。


「伝説の…槍?」

「おい」 


 その時。突然背後から声をかけられ、リヴは慌てて後ろを振り返った。

 威厳あるその人物を見て、リヴは絶句する。

 背後に立っていたのは、ガルシア王国国王、ビースト・ガルシアだった。

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