↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
♦︎伝説の槍は、僕を殺せない♦︎  作者: Blueberry
『第九章』八年前のあの日
37/37

《第二十七節》伝説の槍(2)

 突然背後から声をかけられ、リヴは慌てて後ろを振り返った。

 威厳あるその人物を見て、リヴは絶句する。

 背後に立っていたのは、ガルシア王国国王、ビースト・ガルシアだった。

 彼はリヴの顔を見下ろし、低い声で言う。


「ここは〝禁書庫〟のはずだが?」


 ビーストの目には、怒りの色が浮かんでいた。

 普段温厚な彼の怒りに、リヴはびくりと肩を震わせる。

「申し訳、ございません…」

 分かりやすく萎縮する彼に、ビーストは荒くため息をついた。

「鍵はどうした。今も私が持っているが?」

 問いかけられたリヴは、気まずそうに目を逸らした。


「鍵穴の形状を調べて…合鍵を作りました」


 とても信じられない回答に、ビーストはしばらく黙り込み、残念そうに頭を押さえた。

「はぁ…そうか。作れたのか…」

 冷や汗を浮かべる彼に、リヴは言う。

「えっと…まだ世には出回っていない方法ですので、私以外の者は作れないと思いますよ?」

「いや、お前が作れる時点で大問題だ。…仕方ない、新しい施錠方法を考えておこう」

 ビーストはすかさず突っ込むと、呆れたようにリヴの方を向いた。


「それで、なぜここへ入ろうと思った?」


 リヴがわざわざ禁書庫へ赴くということは、必ず何らかの大きな理由があるはず。

 ビーストはそう思い、勝手に訪れたことはひとまず不問にすることにした。


「…これを、探していたんです」

「これ?」

「上では見つからなかったのですが、禁書庫にならあるかと」


 リヴは机の上に置かれた本を一冊、ビーストに手渡した。

 受け取ったビーストは、その本をまじまじと見つめる。

 本の表紙には、大きく〝The Legend of Garcia (5)〟と書かれていた。

 とても年季が入っており、他の本と違って、手入れすらされていないようだった。


「ガルシア伝説の続編…? あれは四巻までではなかったのか?」


 ガルシア伝説とは、主に瘴気について書かれた物語だ。

 一巻から四巻にかけて、瘴気の性質や習性、瘴気耐性者について事細かに記載されている。

 ゼロが瘴気を取り込んで間もないこの頃は、非常に役に立った書物だった。


「ええ。陛下の仰る通り、上にあるガルシア伝説は全部で四巻です。ですが、それだけでは内容が不十分だったもので…」


「……というと?」 


「四巻までは、瘴気について書かれていましたよね。瘴気とは何なのか、どういった特徴があるのか。そして、瘴気耐性者の存在についても、非常に詳しく書かれていました。……そう、詳しく書かれていたんです」


「それがどうした?」 


「つい最近まで誰も知らなかった〝瘴気〟という存在をここまで詳細に書けた者が、不死身であるはずの瘴気耐性者が消えた理由も、再び瘴気が現れた理由も書いていないというのは、おかしいと思いませんか? まあ、それを知る前に亡くなってしまったという可能性もありますが…」


「ほう。確かに言われてみればそうだな…」


「それで色々と調べた結果、ここに続きがあることが分かりました。もちろん、入ってみなければ分かりませんでしたが。今陛下が持っているものと、机の上にあるものが、そのガルシア伝説の続編です」


 リヴは手渡した本と、机の上に重なった本をそれぞれ指差した。

 ビーストは半ば感心したように頷き、それから口を開く。


「事情は分かった。だが、それなら私に一声かけてくれれば良かったではないか。なぜ一人で探そうと思った?」


「兄さ…ゼロ殿下に知られたくなかったからですよ」


 リヴは言った。


「今開いているページ、そこに〝伝説の槍〟というものが書かれています。それは、瘴気耐性者を唯一殺すことができた、とても神聖な槍なんだそうです」


「神聖な槍、か…。それはまたすごい武器だな」

「ええ」

 リヴは頷くと、少し悲しそうに目を伏せた。


「こんな話、もしゼロ殿下が知ってしまったら、きっと探しに行ってしまうでしょう? 第一王子という身分も、何もかも捨てて、ただ自分が死ぬためだけに探しに行ってしまうと思うんです。私は、彼にそんなことをさせたくない」


「だから一人で来た、と」

「それもあるのですが…」


 リヴは持ってきていた鞄から小さな瓶とガラスの板を取り出した。

 蓋を回して開け、ピンセットで中の物体を掴み、ガラスの板の上にそっと乗せる。


「これは散髪の時に譲ってもらった、ゼロ殿下の髪の毛です」

「……うん?」


 唐突な髪の毛の登場に、ビーストは真剣な表情のまま固まってしまった。

 リヴはそんな彼の様子に気づいているのかいないのか、得意げに目を細めると、ガラスの板に手をかざす。

 すると数秒後、手のひらから銀色の光が溢れ出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。