シーガイルへの旅路
ホムの運転するハ○エースは、順調にシーガイルに向けて快走を続けていた。
「調子いいねー」
「そ、そうだねホムちゃん。でももう少しゆっくりでもいいと思うよ」
ハイテンションなホムとは対照的なクリス。彼女は自動車というものに初めて乗ったのだ。馬車とはまるで違う速さに目を回している。
だが、当然ながらホムがその提案を受け入れることはなく、ハ○エースの爆走は続くのだった。
「ん、この先、盗賊がいるね」
「ホムちゃんやっぱりすごい。私まだ…あ、今感知できたよ。もっと訓練しないとダメだなぁ」
「クリスの気配感知もだいぶ良くなってるよ。あとは少しずつ範囲を広げていけばいいんだよ」
盗賊の気配を感知しても、2人はのんびりしたものである。というのも、ホムの気配感知は最大で5キロ、クリスも3キロの範囲で感知できる。これが一般的な冒険者だと、せいぜい500メートル程度なので、その異常さがわかるだろう。
3キロもあれば、十分迎撃の準備はできる。何しろ、このハ○エースにはホムの前世の知識にあった兵器が搭載されているのだ。
「ホムちゃん、今回はどれ使う?」
「うーん、対地ミサイルは地面に穴開けちゃったから、今回は三連装機銃にしようか」
「ねぇ、この車どんだけ武器積んでるの?」
ホムの操るハ○エースには、なんと機銃とミサイルが搭載されていた。可能であれば主砲も搭載したかったのだが、ハ○エースよりもでかい主砲はやはり無理だった。
なお、弾丸はホムの錬金術で大量にストックがあるし、火薬の代わりに爆発魔法を封印したカートリッジを用いている。ミサイルに至っては前世の知識だけではなく、こちらの錬金術もかなり駆使して色々なタイプを作り上げていた。
因みに、これらの装備はハ○エースの各所に異空間収納ボックスを配置し、通常はそこに格納するようにしておいた。流石に駆逐艦並みの装備をそのままハ○エースには搭載できなかったのだ。
「じゃあ、機銃をルーフトップに出して、と。クリスちゃん、盗賊達の手前でスピード落とすから、盗賊出てきたら掃射していいよ」
「うん、わかったー。あ、これでやるのね」
なんだかんだで、クリスもハ○エースには慣れてきている。助手席に現れた画面とスティックで残弾数の確認と、照準のテストを行った。
「よし、確認したよ。合図お願いね」
「じゃあそろそろはじめるよ。3、2、1、掃射!」
この日、とある盗賊団が壊滅した。この日、偶然現場を通りかかった隊商の一人は、「あんなにひどいのは初めて見た」と、顔色を青くしながら語ったという。
結局この盗賊団は全員首だけとなったのだが、実は半数以上が肉片になってしまって首なんて見分けもつかなくなってしまったという事はホムとクリスしか知らない事実であった。
こうしてハ○エースを走らせ続け、日が暮れる前にシーガイルとの中継点でもある街に到着した。そこで盗賊団の首を預けて報奨金を受け取り、手頃な宿に向かう。ハ○エースはホムのインベントリに入れるので注目を浴びることもない。
ホムとクリスはこの日、それなりに設備の整った宿で十分な睡眠をとり、次の日に備えるのだった。
目が覚めたホムは、隣のベッドにクリスが寝ているのを確認すると、音をたてないよう気をつけて着替え、ルートの確認をはじめた。街道を走って行けばシーガイルに着くが、どうせなら少しくらい寄り道してもいいかなと考えたからだ。
「ん…おはよう、ホムちゃん」
「あ、クリスも起きた?朝ごはんはもう少し後だから、顔洗ってきたらいいよ」
「ふわぁ、そうするー」
まだ完全に目が覚めていないのか、ふらふらしながら洗面所に向かうクリスを見送ると、再度地図に目を落とす。どうやら何度見ても面白そうな寄り道ポイントは無く、街道をひたすら爆走することになりそうだった。
出発する準備を終えて朝食もしっかりとった2人は、街の外でハ○エースを出し、シーガイルへ向けて走り出した。なお、今日の運転はクリスだ。
このハ○エースはAT車なのでMT車のようにクラッチやミッション操作がほぼ不要のため、それまで運転をしたことのないクリスでも比較的楽に操作を覚えることができていた。
そして、ホムは索敵とナビを担当していた。
「今日は暇だねぇ。ん?上空に感あり。ワイバーンかな?」
この世界で、空を飛ぶ生物はあまりいない。その中で一番ポピュラーなのがワイバーンだろう。実際森の中に生息し、あまり飛行距離の長くないグリフォンやヒポグリフ、ハーピー等と違い、この反応はかなり遠くから飛んできていた。
「対空ミサイルを使おう。皮や鱗なんかが勿体無いから、近接信管にしようかね」
「えーっと、じゃあ私は?」
「このまま走らせて。ワイバーンを落としたら直行するよ」
「わかったー」
このハ○エース、対空ミサイルもあるようだった。機構なんかは完全にホムのオリジナル錬金術で作られている。そしてどこぞの電脳戦機よろしく、どこにしまっていたという大きさのミサイルがいきなりハ○エースの両脇に発射装置と共に現れた。
「いっくよー。3、2、1、ファイア!」
冷静にカウントダウンしたホムが、ミサイルを発射する。2発のミサイルが、ワイバーン目掛けて飛翔していった。
突然現れた敵に油断していたワイバーンが、近接で爆発するミサイルを避け切れるわけもなくその餌食になるのは確定していた。
近接信管のミサイルは対象に当たってから爆発するのではなく、対象の近くで起爆する。
ただ、今回のように魔物が対象の場合、素材に傷をつけたくないホムがミサイルそのものの破片が飛び散らないように工夫していて、その衝撃波で仕留められるよう爆発力を上げていた。
そのため、ワイバーンは見た目上あまり傷付かず、爆風でバランスを崩し、衝撃波で意識を失う羽目になってしまった。
そしてクリス運転のハ○エースが急行し、脳天への一撃でワイバーンを手に入れることができたのだった。
「臨時収入だね」
「うん、良かったね」
2人はホクホク顔で次の街に行き、冒険者ギルドで臨時収入を手にすると、ギルド内で最高評価と紹介された宿へと向かうのだった。
少し古いゲームですが、バーチャ○ン2に出てたミサイル撃ちまくりなあの機体がモデルです。
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