長期休暇の準備
ホム達が通うトラディアル学園には、長期休暇が3回ある。
春休み、夏休み、冬休みだ。
そして季節は夏。明後日から夏休みが始まる。約1ヶ月という長期休暇だ。そしてホムはクリスと一緒に旅行へ出かける相談をしていた。
最初はトマス達も連れて行くつもりだったのだが、彼等自身が「このお屋敷を守るのも私達の勤めですから」と断って留守番をしてくれる事になったのだ。
「やっぱり海かなぁ」
「山も良いけど、ホムちゃんは海の方が好き?」
「そうだね、山で川遊びも良いけど、海水浴がしたいかな」
少女2人は行き先に悩んでいた。
山と海である。どちらもトラディアルから馬車で10日程度かかる距離に街があるのだが、どちらも魅力的なために決め切れないでいたのだ。
「そうだ、街道はどっちが走りやすいの?」
「海に行く方かな。山方面はやっぱりアップダウンがあるから」
というわけで、結局海の街シーガイルに行く事に決めたのだった。
だが、片道10日という日程では行った先で遊ぶ時間があまり取れなくなってしまう。そう考えたホムは、密かにあるものを作り始めるのだった。
「ホムちゃん、何探してるの?」
「家から持ってきた本に、錬金術大全ってのがあるんだけど、それどこにやったかなぁって。
あぁ、見つけた。これこれ、これでシーガイルへの日程もきっと短縮できるよ」
錬金術大全は錬金術で作成できるレシピをまとめた辞典である。ホムは、その中の一つと前世の知識であるものを作りあげるつもりだった。
「材料は、これは…ある。これも…ある。あ、これはないけど森で見たなぁ。あとこれはどっかで買ってこないといけないね」
「ホムちゃん、錬金術もできるの!?」
「うん、基礎的なのだけ」
実際は基礎的どころか、材料さえあれば錬金術大全に記載されたものは全て作ることができる。その上前世の知識と絡めて更に良いものを作り上げることもできる。
ただ、それを公にするといらぬトラブルを招きそうだった為、基礎的なものだけしか作れないという事にしていた。
そうして夏休みの3日前、ホムが錬金術で部品からコツコツ作っていたものが完成した。
「うーん、なんでハ○エース?ジ○ニーとかの方が走破性もよかったのに」
何故かハ○エースがホム達の前に鎮座していた。
因みにこのハ○エース、ホムが錬金術と前世の知識を元に、上位の魔物や竜種の素材をふんだんに使用して作り上げた逸品となっており、とても値段のつけられる代物ではなくなっている。
「さて、試験運転といきますか」
ホムは運転席に乗り込むと、ゴーレム技術を流用したゴーレムエンジンを起動させる。
この際、エンジンキーは存在せず、登録された魔力パターンでの起動となっている。理由は、キーを無くす可能性がゼロでない事と、他人が勝手に乗り込んだり運転して持って行ったりできないようにするためだ。
ホムはコラムシフトレバーをDレンジにしてアクセルを踏み込んだ。ハ○エースはゆっくりと動き出す。少し前進したところでブレーキを踏むと、ハ○エースはピタリと止まった。
「まずは低速での動作はいいみたいね」
まだ前進とブレーキの簡単な確認しかしていない。その後、ホムは速度を上げたり、急ブレーキをかけたり、スラローム走行したりして、ハ○エースの動作を確認していくのだった。
次の日、今度は助手席にクリスを乗せての走行試験である。
場所は流石に屋敷の庭では狭かったため、一旦ホムのインベントリにハ○エースを格納した後、街の外に出てから実際に街道を走らせる事にしたのだ。
「ホムちゃん、大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だ、問題ない」
不安そうなクリスに、キリっとした顔で返すホム。人はそれをフラグと言う。
「それじゃ、発車!」
ゴーレムエンジンの回転数が上がり、ハ○エースがゆっくりと走り出す。無段変速機構により、スムーズに加速していくハ○エース。運転しているホムのテンションはもうMaxだ。
「加速問題なし!操舵機構も大丈夫!」
「ひえぇ、速すぎるよぉ」
気分はハイなホムと、全身で不安を表現しているクリスを乗せたハ○エースは、街道を爆進する。当然街道には他の旅人もいるわけで、彼等を追い越す際には、流石に速度を落として(比較的)安全に通行していた。
そして、事故が起こったのは森の近くにさしかかった時である。
ホムは通常気配察知等を行なっていたが、この試験走行中はハイになっていたために怠っていた。そのため、盗賊達の出現に対応することができなかったのだ。
「へっ!何だか見かけぐわっ!」
「何だこいつぉっ!」
盗賊と認識したホムの判断は、そのまま轢いてしまうというものだった。街道とはいえ未舗装路だ。速度は40キロくらいだろう。だが、その速度で金属の塊が突っ込んでくるのだから、盗賊にとっては溜まったものではない。
結局、ホムは盗賊達を轢きまくって退治した。何とか命のあるものだけを縛り上げてハ○エースの荷室に放り込み、そうで無いものは首実験のために頭以外は穴を掘って燃やし、そのまま埋めてしまった。
そんな大荷物を抱えてしまったホム達は、仕方がないのでハ○エースのままトラディアルの門まで行くことにした。注目される事になるだろうが、散々街道を爆進した後だ。今更である。
そして、ホム達の順番がやってきた。
「こんにちは!盗賊やっつけてきました!」
「うぅ、早く引き取って下さい…」
元気なのはホム、盗賊のうめき声に耐えきれず、泣きそうになっているのがクリスだ。門番達は慌てて一人を詰め所に向かわせて、引き取る旨をホムに伝えた。
「捕らえた盗賊ってのは…あぁ、嬢ちゃんか。また捕まえたのか」
「ううん、今回は何人かは死んじゃったから、首だけ持ってきたの。生きてるのはそこの荷室に積んでるから、降ろしてね」
「お、おう。って何だこれ!?」
やってきたのは、ホムが初めてトラディアルに来た時に対応したジャックだった。ジャックもハ○エースを見るのは初めてだったので、かなり驚いている。
「嬢ちゃん。首は詰め所で受け取ろう。すまないがこの変な乗り物を詰め所まで移動させてはもらえないだろうか」
「いいですよ。クリスはジャックさんと詰め所に行ってて。私はこれを移動させるから」
「うん、わかった」
そして、詰め所で生きている盗賊達を地下の牢屋に入れ、首をジャックに預けたホム達は、面倒になったのもあってそのままハ○エースで屋敷まで戻って行った。
その道中でも注目の的であったのは当然だが、街中での評判の良いホム達である。殆どの人たちは物珍しさ以上の視線はなかったが、ごくわずかに欲に塗れた視線を感じていた。この事が後にとある事件を引き起こしてしまうのだが、この時のホムは全く気にしていなかった。
そしてシーガイルへの出発当日の朝、屋敷の前に停まったハ○エースに乗り込んだホム達と、屋敷の留守を守るトマス達がいた。
「それじゃ、連絡は前に教えた機械でできるから。帰る時もこっちから連絡するね」
「はい、承知致しました。ただ、なるだけこまめに連絡を頂けると我々も安心できますので、心に留めておいていただけると幸いです」
「トマスさん、連絡は私がこまめにしますので、安心して下さいね」
「「行ってきます!」」
「「「「いってらっしゃいませ」」」」
ハ○エースはゆっくり出発すると、シーガイルに向けて軽快に走り出したのだった。
とりあえず、荷物がいっぱい積めて、ゆったりできて、ロリ絡みと言えばハ○エースですね。
作者は乗ったことも運転したこともないので、乗り心地等は知りませんが。
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気にしぃなので、ちょいちょい見てて、少しでもポイントが増えるとやる気も上がります。




