表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君を想う  作者: 風海
PR
7/20

「お休みのところ、申し訳ありません。私、凶悪犯暗殺部隊に所属している木本雄一と申します。


「暗部か……夏樹のことでしょうか?」


 どうやら、部隊の存在を知っていたらしい。

 さすがに、アンドロイド対策特殊暗殺部隊に、所属していただけある。



 落ち着いた反応が、返ってきた。


「捜査に協力してくれませんか?」

「わかりました。協力しましょう」

「ありがとうございます」

「それでは、日本でお会いしましょう」


 携帯端末を切ると、香月はため息をついた。


「木本さんですよね?」

 

 香月の凛とした声がした。


「桐原君だな?」

「はい」

 

 雄一は夏樹に、握手を求めた。

 香月は雄一の手を、握り返す。


 握り返した手に、銃やナイフを使っている形跡は、残っていない。


「呼び出して、悪かったな」

 

 香月の不思議な色をした瞳が、まっすぐ見つめてきた。

 

 同年代の和葉より大人びて見えるのは、自由の国――アメリカで暮らしているからだろう。


 あとで、夏樹と知り合いだったことを知った。


 どちらにしろ、元アンドロイド対策特殊警察部隊のブランド名を、利用しないわけにはいかなかった。

 

 見逃すわけにはいかなかった。


「本題に入りましょう」

「難しい常用だな。夏樹君の手がかりを掴めない」

「私が夏樹に会いましょうか?」

「会えるのか?」

 

 どこにいるのか、わかるのかと。


 雄一の言葉に、香月は瞳を細めた。

 

 夏樹のことを、本気で心配していることがわかる。


「おそらく、次に姿を見せるのは、山口コーポレーションのところでしょう」

「どうして、そう言いきれる?」

「対策本部、元情報員からの話です。それに、組織の頂点に立つ者の言葉は絶対です」


 すでに、調べはついていると。

 いつでも、動けると。


「君を信じてもいいな?」


 裏切ることはなのかと。

 本当に味方になってくれるのかと。


「私は夏樹を助けたいだけです」


 あなたも同じでしょう?


 だから、頼ってきたのではないかと。

 協力をしてきたのではないかと。


「私も同じだ」

「絶対に許せません」

 

 香月の身に纏う空気が、冷たいものへと変わっていった。

 まだ、会ったこともない男に怒っている証拠だった。


「明日から動きます」

「ああ――頼む」

 香月は荷物を持って、立ち上がった。

 圧倒的な威圧感から解放され、雄一はため息をつく。

 

 窓から見えていた香月の姿は、雑踏の中へと消えていった。


「そっちはどうだ」

 

「変わりはありません」

 

「ただ、一つだけ気になることがあります。「桜」とは夏樹の両親のことですか?」


 組織内で使われているコードネームみたいなものだろう。


「そうだ」


「やはり、死亡していたのですね」


 隠していてすまない。


 何となく気が付いていたと。

 感づいていたと。


「いえ、予想はしていたことなので、謝らないでください」


「夏樹君には、会ったのか?」


 まだです。


「無理はするな。何かあれば、すぐに引き上げること。いいな?」


「わかっています。それでは、失礼します」


 香月は携帯端末を切ると、視線を外に向ける。

 今回、協力者として日本にきた。

 

 そして、自らの実力を示して、組織に潜入した。

 桐原空と愛も、日本に向かっていることだろう。


「降りだしたか」


 雨の滴が窓を濡らしていった。


 うっとうしい。


 香月は興味がないといいわんばかりに、瞳を閉じる。

 一人しかいない部屋に、雨の音が響く。


 それが、夏樹の叫びにも似ていて。


 悲しかった。

 寂しかった。


 きっと、今もどこかで孤独さと戦っているだろう。


 押し潰れそうな気持ちを隠して。

 

 誰にも素顔を見せないまま。

 助けを求めないまま。


 出口さえ見つけることさえできないまま。


 答えを探して、走り続けている。


 降り続く雨はなくことができない夏樹の変わりに、泣いてくれているのだろうか?


 泣くことを忘れてしまった夏樹のために。


 大丈夫。

 お前は一人じゃないよ。

 僕たちがいる。

 手を伸ばせば、届く距離に――範囲にいる。

 支えられる温もりがある。


 忘れないで。

 それだけは、覚えておいて。


 大切な人を傷つけた代償は重いよ。

 覚悟しおいてよ、ボス。


 香月は閉じていた瞳を、開いた。


迷いなどなかった。


 夏樹との再会が、近づいていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ