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和葉は夏樹の動く気配で、目が覚めた。
虚ろだった瞳に、光が宿っていく。
黒色と濃紺色の瞳が、ぶつかった。
「私がわかる?」
「木本」
優しい茶色で統一された部屋だった。
任務で使っていた部屋ではなく、木本家の一室だろう。
ほとんど、使われていないにも関わらず、掃除してある。
「桐原君が、運んでくれたのよ」
「相変わらず、お節介な奴だな」
「友達思いのいい人じゃない」
「それより、何か用か? 無駄話をするために、いるわけじゃないだろう?」
夏樹の感情を抑えた声だった。
「起きたばかりで悪いけど、聞いてほしいことがあるの」
「何?」
拒絶に近い夏樹の反応に、和葉はひるみかけた。
負けるな、自分。
呼吸を整え――まっすぐ、夏樹を見つめ返す。
関係が壊れてしまったなら、最初から築き直せばいい。
修理していけばいい。
夏樹に甘えてばかりだった自分に、さよならしよう。
卒業しよう。
同じ位置にたてるように。
対等に並べるように。
「告白の返事よ」
「返事はいらないと言ったはずだ」
「私が嫌なの」
「同情なんていらない。それに、断ったのは君の方だろう?」
偽善の想いなんかいらない。
ほしくない。
「同情なんかじゃない。私は夏樹が好き」
お願い。
信じて。
今度こそ、素直な気持ちを伝えたかった。
聞いてほしかった。
「人の苦労を知らず、呑気な奴だな」
新しい人を見つけて。
結婚して。
子供を産んで。
ご飯を作って。
普通の家庭を作って。
女性なら夢見ることだろう。
憧れることだろう。
和葉には日の当たるところにいてほしかった。
笑っていてほしかった。
苦しい思いをさせたくなかった。
そのために、突き放したのに。
手放したのに。
彼女の幸せを願っていたのに。
「バカだ。君はバカだ。和葉」
「やっと名前を呼んでくれたね」
「傷つけてばかりでごめん」
夏樹はけだるさが残る身体を起こした。
ふらつく身体を、枕にあずける。
銃を扱っていたとは思えない細い指が、涙を拭っていく。
君に誓うよ。
ずっと、傍にいる。
だから、共に歩いていこう。
未来を見よう。
真っ白だったキャンパスに、色を塗ろう。
すれ違っていた分まで――。
距離がゼロになる。
二人は自然に唇を重ねていた。




