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君を想う  作者: 風海
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16/20

 

「雄一さん、桐原さん」

 

 夏樹の声には、僅かな怯えがまじっていた。


 叩かれる。


 持ち上げられた手に、夏樹は身体を震わせた。

 だが、頬に衝撃がくることはなかった。


 きつく閉じていた目を開ける。


 ふわり、と。


 頬を包み込む大きな手。

 心配そうな瞳。


 父――一樹と同じ動作。


「ごめんなさい」

  

 絞り出した自分の声は、情けないほど掠れていた。


「疲れているところ悪いけれど、夏樹に聞きたいことがある」


 一枚のチケットに夏樹は視線をそらす。


 知らぬ間に、瑠依が愛に渡していたらしい。


 答えはすでに、決まっている。


 夏樹は空から瞳を逸らそうとはしなかった。


「日本に残ります」


 どこにも、いかないと。


 逃げることはやめたと。


「なら、これは必要ないな?」

「ええ。処分してください」

 

 空はチケットを、破りすぎた。


 風に乗って、高く舞い上がる。


「二人は早く帰れ」

「でも」


 夏樹が不満そうな声をあげた。

メンバーの中で、組織のことを知っているのは、夏樹だけだった。


 最後の処理まで、押し付けるわけにはいかない。


「留守電を聞いてみろ」


 空が夏樹の携帯端末を、投げてよこした。


 俺は桜井の味方だから。


 夏樹のバカ。

 もっと、自分を大切にしてよ。


 早く帰ってきてね。

 皆、待っているよ。


 夏樹を気遣うメッセージが、録音されていた。

 雄一が夏樹の肩に、手をおいた。


 空も組織に戻り、指示をだしている。


「夏樹、帰ろう」

 

 本当の家に。


 夏樹は不意に、空を見上げる。


 泣きたくなるぐらい綺麗な三日月が、でている日のことだった。













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