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君を想う  作者: 風海
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第七章1

 生きていることを、諦めるつもりか?


 親友を見捨てるほど、僕は薄情じゃないよ。


 信じている。

 きっと、来てくれると信じているから。


 今日、全ての過去を終わらせる。



「ご無沙汰しております。ボス」

 

 夏樹は座っている椅子を、回転させた。


 冷え切った気持ちとともに――。


 組織にいた頃、使っている銃をボスに向けた。

 刻まれているシリアルナンバーを見てボスが固まる。


 焦点が定まっていない。


 死んだと聞いていたのに、なぜ生きている?

 自分の目の前にいる?


「あなたに会えることを、楽しみにしていました」


 再び合間見えることを。


「生きていたのか?」

「ええ。戦神も生きています」

「あの情報は、嘘だったというのか?」

「心理戦も必要でしょう?」

「誰だ?」

「ボスも知っている人です」

「組織の中に、裏切り者がいるというのか?」

「あともう少しで、わかることです」

「高い地位を用意してやる。戻ってこないか?」

「命令に従うつもりはありません」


 勘違いするなと。

 もう、あなたの部下ではないのだと。

 

 ここにいるのは、桜井夏樹という一人の人間だと。


「堕ちたものだな。消えてもらおうか」

「その台詞、お返しします」


 金と権力に溺れた男に。

 

 こんな男のもとで、働いていたのかと思うと吐き気がした。


「生意気な」

 

 夏樹は暗闇でも鋭い光と放つ銃口を確認した。


 天国から地獄へ――。


 偽りの栄華は、もうすぐ終わる。


 さぁ、始めようか?


 崩壊へのカウントダウンを。


「勝ち目はありません。投降してください」

「夜蝶!?」

 

 香月はボスの銃を、銃弾で弾いた。


 乾いた音をたてて、銃が遠くに飛んでいく。

 

 ボスは隠している銃を向けるが、震えて撃てる状態ではなかった。


 逃げようとするボスを、香月はナイフを投げて――服ごと壁に縫い付けた。

 

 予想もしない人物の反撃に、ボスは混乱していた。


 そんな……バカな。

 味方ではなかったのか?


「私を見捨てるつもりか?」

「見捨てるも何も、僕は夏樹の味方です」


 親友を助けて何が悪いと?

 心配したらいけないのかと?


「では、改めて自己紹介をします。元アンドロイド対策特殊警察部隊、桐原香月です」

 

 いつまでも、香月に縋ろうとするボスを、絶望に叩き落とした。

 ボスが連行されていくのを見届けて、香月は夏樹の銃を奪い取った。


 やはり、気が張っていたらしい。

 

 夏樹は力が抜けたらしく、その場に座り込んだ。


「僕の寿命を、短くするつもりか?」

「――た」

 

 香月は夏樹の言葉が聞き取れずに、首を傾げる。

 その中には、安堵の色が見てとれる。

 

 香月の手をとって、夏樹は立ち上がった。

 

 香月が夏樹を捜していることを、知っていた。

 

 知らないふりをしていたのは、作戦を無駄にさせないためだった。


「来てくれると思っていた」

 

 信頼していたと。

 

 信じていたと。


「作戦のこと知っていたのか?」

「何年の付き合いだと思っている?」

「そうだよな。香月」

「――ん?」

「来てくれて、ありがとう」

「どういたしまして」


 過去から未来へ。


 これからは、前を向いて歩いていくしかないだろう。


 進んでいくしかないだろう。


 もう、ここに来ることはない。


 夏樹はかつての家――自宅ともいえる場所に、別れを告げた。


            

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