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ネオンが煌めく夜。
東京某所。
私もこれで終わりか。
未だ、右腕から出血が続いていた。
両親がつけてくれた名前など使ったことなどない。
誕生日も血液型も。
全て、取り上げられた。
残っているものなんて、何もなかった。
小さい頃から、闇の世界に染まってきた。狙撃などの訓練を、重ねてきた。
ここでは、コードネームを与えられ、任務を遂行するだけだった。
今、あるのは殺伐とした風景のみ。
死に場所に、ふさわしいかもしれない。
「生きているのか? 戦神
目の前に人影が、落ちてきた。
着地した少年――桜井夏樹から、視線が逸らせない。
組織内でも、有名な少年だった。
「死にそこないの私に、何の用だ?」
笑いにきたのかと。
夏樹は瑠依の問いかけには答えず、慣れた手つきで、怪我の手当てをしていく。
夏樹が何を考えているのか、わからなかった。
「ここから、でたいか?」
組織から抜け出したいかと。
「無理に決まっている。お前まで殺されるぞ」
監獄と一緒だと。
逃げられるわけがないと。
「催眠術には、かかっていないようだな。大丈夫だ。僕が安心できるところまで、案内をする」
夏樹は瑠依のホルダーから、銃を抜き取る。
組織からいなくなる人間に、武器などいらない。
「見つけだぞ」
「黒蝶と戦神」
「ボスの命令により、抹殺する」
「殺せるものなら、殺してみろよ。お前らみたいなくずに、負けるわけがない」
「貴様……この世界を裏切って生きていけると思うなよ」
数人の男が夏樹と瑠依を、取り囲んだ。
命を奪わず応戦していく姿は、さすがといったところだろう。
数分もたたないうちに、男たちの呻き声が裏路地に響いた。
「こっちよ」
伸びてきた手に、別の裏路地に引きずり込まれた。
「やはり、日本にいた。愛さん」
愛たちが帰国していたことは、知っていた。
雄一が援軍として、呼んだことに気が付いていた。
「久しぶりね」
「夏樹君」
「ええ。お久しぶりです」
「挨拶はここまでにして、私はその子を預かればいいのかしら」
愛は瑠依の方を見る。
「お願いします」
「お前はどうするつもりだ? 黒蝶」
「僕はここに残る。まだ、やりたいことがある」
自分の中での復讐は終わっていないと。
夏樹は芽依を愛に任せて、その場を立ち去った。
「あの時はありがとうございました」
芽依は愛に頭をさげた。
「私はできることをやっただけよ」
「夏――桜井君の状況は、どうなっているの?」
和葉の質問に愛は携帯端末を操作した。
ある一か所に、赤い点が点滅している。
香月は元アンドロイド対策特殊警察部隊の仲間の力も借りたのだろう。
「これは、何?」
「夏樹君がいると思われる場所よ」
「もしかして、桐原香月?」
瑠依が納得といった表情を見せた。
香月は現在、プログラマーとして、空の会社で働いているらしい。
和葉と祐はまだ会ったことがなかった。
「確か、桜井と知り合いだと言っていたな」
「私も詳しくは知らないのよ」
「いずれ会えるわよ」
「私は会ったことがあるわ」
偶然か――必然か、芽依は香月に会っていた。
和葉と祐は、向き直った。
興味がありそうな眼差しを、芽依に向ける。
愛は知っていたのか、落ちついている。
瑠依は香月との出会いを、語り始めた。




