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魔王婚活転生 〜最強の魔力をすべて婚活スキルに注ぎ込んだら、なぜか聖女に「危険人物」としてマークされつつ溺愛され始めました!ついでに、世界が救われ続ける件~  作者: 藤台団二
新章2:侯爵の陰謀と、王国王都の大決戦

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第9話:魔の森のピクニック

ギルドでの騒動を平然と後にし、


ついに人類の禁忌とされる【未開の魔の森】へと足を踏み入れたゼノン一家。


一国を滅ぼすほどの災厄級魔獣が蠢く絶望の地で、


元魔王と元聖女が繰り広げるのは、命懸けの調査


……ではなく、ただの「優雅な夕食の買い出し(ピクニック)」でした。

登録を済ませたゼノンたちは、ギルド内の静寂を背に、そのまま街の巨大な城壁の門へと向かった。


門を守る国境守備隊の兵士たちは、重厚な鎧に身を包み、鋭い眼光で外の緑の深淵を睨みつけている。


その門の先にあるのは、陽の光すら遮るほどに巨大な樹木がうっそうと生い茂る、危険度SSSの禁忌の領域【魔の森】だ。


「おい、そこな三人連れ。


この先は国家指定の最重要危険地帯だ。


新人冒険者の立ち入りなど、自殺行為だぞ」


守備隊の隊長が、ゼノンたちのマントの奥を見定めようと声をかけてくる。


だが、

ゼノンは懐から先ほど発行されたばかりの冒険者プレートと、国王直筆のサインが入った強制命令書を提示した。


「私たちは王国からの特命により、


この森の『調査』を命じられた。


通してもらおう」


命令書の刻印を見た隊長は、驚愕に目を見開いた。


王都の政治の闇はここまで届いていないが、

こんな幼子を連れた家族に「死の任務」が下されたことの異常さは、一目で理解できたからだ。


「……正気か。


陛下も何を考えておられるのだ。だが、命令ならば通さざるを得ん


。……命を大事にするんだな」


重々しい鉄の門が軋んだ音を立てて開き、


ゼノンたちは一歩、人類の生存圏の外へと足を踏み出した。


一歩入れば、そこは別世界だった。


空気は濃密な魔力で満ち、数手先も見通せないほどの巨大な原生林が視界を埋め尽くす。


時折、木々の隙間から、人間の肉など一噛みで噛み砕くであろう肉食魔獣の赤い眼光が不気味に明滅していた。


だが、そんな絶望の森を進む三人の空気は、およそ命懸けの調査とは程遠いものだった。


「パパ! あそこに、おっきいイチゴがあるの!」


ゼノンの腕の中で、エルナが小さな指を差した。


その先には、

魔力を吸って通常の十倍ほどに巨大化した、燃えるように赤い魔真実イチゴ(マギ・ストロベリー)の果実が実っていた。


「お、見る目がいいな、エルナ。


あれはジャムにすると最高の甘みが出るんだ。


リーゼロッテ、少し摘んでいこう」


「ええ、素敵ですね。


明日の朝食のクロワッサンに添えましょう。


あなた、


その前に周りの『雑草』を少し刈っていただけますか?」


リーゼロッテが聖杖でトントンと示した先には、


巨大なイチゴの根元から触手を伸ばし、


今にもエルナの足元に襲いかかろうとしている


Aランクの肉食植物魔獣《大口捕縛草デス・トラップ・ウィード》が、鋭い牙を生やした花弁を広げていた。


「ふむ、


私の教育方針の第2項だな。


『害虫だけでなく、景観を損ねる雑草もまた、一瞬で駆除せよ』


だな」


ゼノンは視線すら向けず、空いた右手の親指と中指をパチンと鳴らした。


《超位空間消滅魔法《深淵の爪痕アビス・スラッシュ》。


肉食植物が潜んでいた半径数メートルの空間そのものが、


一瞬だけ黒く歪み、


次の瞬間には、


植物魔獣の姿どころか、


その周囲の枯れ葉や泥にいたるまでが完璧な球状に削り取られ、


ただの綺麗なクレーターへと変わっていた。


「わーい! パパのお掃除、やっぱりピカピカね!」


エルナが歓声を上げ、


ゼノンは優雅に巨大なイチゴの果実だけを空間収納ストレージへと仕舞い込んだ。


「さて、デザートの確保はできた。次は本命の肉だな」


ゼノンが

探知魔法《深淵のアビス・アイ》をさらに深く森の奥へと浸透させると、


この魔の森の生態系の頂点に君臨する


、ある規格外の魔力の塊がこちらへ向かって猛スピードで直進してくるのを捉えた。


ズズズズズン……!


森の巨木がドミノのように次々となぎ倒され、


大地が激しく揺れる。


現れたのは、


体長十メートルを超える、全身が鋼鉄のような毛皮で覆われた巨大な猪——


災厄級魔獣《神鉄牙の大猪アイアン・タスク・ボア》だった。


一国を滅ぼすに足る災害とされるSSSランクの魔獣であり、


その突進の威力は城壁すらも一撃で粉砕する。


「ブモォォォォォォォッ!!!」


大猪は、

侵入者である人間たちを引き潰さんと、赤い目を血走らせて猛然と突進してきた。


その風圧だけで、周囲の並大抵の木々が根元から吹き飛んでいく。


「あなた、来ます!」


リーゼロッテが聖杖を構え、

その先端にまばゆいばかりの金色の障壁を展開した。


大猪の質量と速度のエネルギーが障壁に衝突した瞬間、


《ドォォォォォン!》


という大爆発のような衝撃音が響き渡る。


だが、

聖女の張った絶対結界は、一ミリのひび割れすら起こすことなく、


大猪の突進をその場で完璧に完全停止させた。


「ブモッ!? ブモモ……ッ!?」


自分の突進が人間の小娘の一枚の光の壁に止められたことが信じられないのか、


大猪が混乱したように鼻息を荒くする。


「リーゼロッテ、ナイスブロックだ。


……よし、肉の繊維を傷つけないように、


一瞬で仕留めよう」


ゼノンは大猪の前にゆっくりと歩み出ると、その巨大な鼻先に向けて、人指し指を一本だけ静かに突き出した。


「我が家の最高のステーキのために、


その命、

私に捧げる光栄を噛み締めろ」


極小圧縮消滅術式《深淵の穿孔アビス・ニードル》。


ゼノンの指先から放たれたのは、


針の先ほどの小さな漆黒の光点。


それが大猪の額に触れた瞬間、


大猪の巨体の中に流れる


「魔力」と「生命活動」のコアだけがピンポイントで完全に中和され、消滅した。


毛皮にも、


極上の肉質にも、


一箇所の傷すらもついていない。


ただ、

一瞬で完璧な『極上の食材としての死』を迎えた大猪が、地響きを立ててその場に横たわった。


外傷ゼロ。

しかし、魂と生命の活動だけを完璧に抜き取られた大猪の巨体。


これこそが、

魔王ゼノンによる、食材を最高に美味しくいただくための


「神速のざまぁ(調理)」の真骨頂であった。


「素晴らしいわ、


あなた!


これほど綺麗な肉質なら、ローストビーフにしても筋が全く残りませんね!」


「パパー!


おっきいお肉!


エルナ、お腹ペコペコ!」


「ああ、


今すぐ街に戻って、宿の厨房を借りて料理にしよう」


ゼノンは

大猪の巨体を片手でひょいと空間収納ストレージへ放り込むと、満足そうに頷いた。


国王たちが彼らを亡き者にしようと送り込んだ絶望の魔の森は、


最強の夫婦の手によって、


わずか数十分で「最高級の食材が集まるプライベートな庭園」へと完全にハックされたのだ。


人間の王国の浅はかな陰謀など、この家族の幸福な夕食の時間を彩るスパイスにすらなりはしなかった。

第9話をお読みいただきありがとうございます!


危険度SSSの魔の森へ送り込まれたゼノンたちでしたが、彼らにとってはただの高級食材の宝庫でしかありませんでした。リーゼロッテの絶対結界で大猪の突進を完璧に止め、ゼノンの無傷の暗殺魔法(調理法)で仕留めるという、息の合った最強夫婦のコンビネーションを楽しんでいただけましたでしょうか。


次回、第10話(第2章の完結編)では、この最高級の肉を引っ提げて辺境都市の宿へと戻ったゼノンたちが、街の住人やギルドの荒くれ者たちの度肝を抜く、圧倒的な「格の違い」を見せつける決着編となります!


もし「ゼノン一家のピクニックが無双すぎて最高!」


「エルナちゃんのローストビーフ楽しみ!」


と思って頂けましたら、


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