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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
四章 腭<アギト>に喰われる者
85/134

37

【37】


「あのね。この写真撮った日。その教会でこども会があったの」

 勝利の隣に並んで、壁に背を預ける遙香。

 先日のような、ひどい尋問を受けるのかと思ったら、遙香は昔語りモードに入っていった……。


「食事も終わって退屈していた私は、もらった風船を手に裏庭に遊びに行ったの。危ないから大人がいない時は入っちゃいけないって言われてたのに、無視して行ったの。それを見ていたこの子が私を追いかけてきて、先生に怒られるから戻れって何度も私を注意してたの。もちろん私はその子も無視してどんどん裏庭に駆けていった」

 遙香は、子どもの頃からずいぶんとおてんばだったようだ。勝手にあちこち入り込み、人の言うことを聞かないのは、今もあんまり直っていない気がする。

「裏庭で走り回っていた私は、そのうち何かに蹴躓いて転んで持ってた風船を飛ばしてしまったの。で、あの木の枝に引っかかった。私は風船を取るために木に登ったわ。でも、登ってはいけないって、下から男の子が叫ぶの」

(そりゃそうだ。あの木は子どもの身の丈からすれば、結構な高さだったはずだ……)

「男の子は、登ってはいけないって何度も何度も叫んだけど、私は無視して登った。あんまり私が無視するから、男の子も後から登って、私を注意しに来たの。すぐ後まで男の子が来たけど、枝に引っかかった風船に手が届きそうだったから、私は幹から枝の方に這っていった」

(俺じゃなくたって、普通は止めるだろソレ。落ちたら最悪死ぬぞ)

「男の子は半分泣きながら、降りよう、降りようって言ったけど、私はうるさいって怒鳴って風船に手を伸ばした。案の定、二人分の体重に耐えかねた枝がぽっきり折れて、私たちは落っこちた」

(ほれ見たことか。……って、俺も落ちたのかよ! ひでえ)

「その時よ。男の子が私を抱えて……というか抱きついて、背中から翼を出したの」

 ――ちょっと待て。

 ――俺が、翼を出した、だと?


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