36
【36】
勝利が食い入るように廊下の民芸品を見ていると、奥から遙香の声がした。
「ショウくーん、ちょっと来てー」
「なにー?」
「画鋲に手が届かないから、こっち来てー」
(そういうことか。はいはい、今いきますよ)
「わかったー」
勝利は、怪しいグッズや本で足の踏み場もない廊下を慎重に進み、リビングに向かった。部屋の中では、遙香がうんうんと画鋲に手を伸ばしている。
「何やってんの。椅子でも使えばいいじゃんか」
「イヤよ。前に椅子に昇ってひっくり返ったことがあるんだから」とむくれながら、画鋲の入っていた、樹脂製の小さい透明なケースを勝利に手渡した。
(んートラウマかあ、それじゃしょうがないや。ここはひとつお兄さんが取ってやろう)
「はいはい。取ってやるから怒るなよ。あ、地図べろーんとなるからそこ押さえてて」
「うん」
勝利は、地図の上辺に点々と刺し込まれた画鋲を、一つ一つていねいに外し始めた。
「ここ、このあたり、教会あったよね」
遙香が急に、地図の一点を指した。
「あー知ってる知ってる。昔、大きな木があったとこだよね」
彼は外した画鋲をケースにザラザラっと入れ、パチンとフタをした。そして、遙香にポンと手渡した。
「ショウくん、いま、あの木どうなってるのかな?」
「あの木、古くて朽ちかけてたから去年切っちゃって今は母子家庭用施設になってるよ」
そう言いながら彼は地図を丸めて、足元に用意された樹脂製の大きな書筒に入れた。建築の図面等を入れるもので、ご丁寧にストラップもついている。
「それってさ……この場所だよね?」
遙香が勝利の目の前に、写真立てに入った、幼い勝利と遙香のツーショット写真を突き出した。何をか言いたそうに、勝利をじっと見ている。
「み、みたい……だな」
――ヤバイ。なんか俺、追求されそう。どうしよう……




