16
【16】
「ふぎゃッ!!」
ブーツの底が宙を泳ぎ、あるはずの地面を踏み抜いた。
サブマシンガンで両手の塞がっていた勝利は、再び前のめりに転んでしまった。粗めのアスファルトがあちこちに擦り傷を作り、見た目よりも痛みが激しい。
「……ッ、つつつつ。何でここ段差があるんだよ! ったく、3Dデータ間違ってんじゃないの? あたたた……」
その高さ、およそ三十㌢。
打ち所が悪ければ重傷を負っていたところだ。
「おかしいなあ……。こんな筈は……」
勝利は小首をかしげた。
無理もない。この都市の地形は十㌢単位で彼の頭に入っているはずなのだ。道路の縁石ですら踏み違えることは、ほとんどない。
(言ったそばからドジるなんて。あり得ないあり得ないあり得ない………………)
擦り傷に消毒薬を吹き付け、気を取り直して歩き出すと、生臭い匂いが漂ってきた。
(ゴミの放置……、いや違うな)
勝利は立ち止まり、周囲を伺った。
気配は感じるが、姿は見えない。暗視ゴーグルにも映らないということは――。
(視界の、外か!)
サブマシンガンを腰の磁力ホルダーに固定すると、勝利は側の中層マンションに向かってワイヤーを射出した。
ガツン、と当たる感触。ぐっ、と手繰るとウインチのスイッチを入れ、一気にワイヤーを巻き上げた。勝利の体はするするとマンションの壁面を昇っていく。
キュルキュルと耳障りな音が闇に響く。
最上階のベランダに到着した勝利はワイヤーのフックを外し、屋上へと飛び上がった。
(どこだ……)
高所に立つと、照明障壁の明かりが横殴りに視界に入る。両手で暗視ゴーグルの脇を覆うと、真下の地面を調べ始めた。だが、先ほどの気配の主が見当たらない。
「物陰にでも入ってしまったんだろうか……」
屋上のへりをぐるりと歩きながら階下を覗き込んでいると、何かが視界の端で動いた。
「あれかッ」
サブマシンガンを腰から外して両手に握ると、勝利はふわり、と体を重力に預けた。




