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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
四章 腭<アギト>に喰われる者
64/134

16

【16】


「ふぎゃッ!!」

 ブーツの底が宙を泳ぎ、あるはずの地面を踏み抜いた。

 サブマシンガンで両手の塞がっていた勝利は、再び前のめりに転んでしまった。粗めのアスファルトがあちこちに擦り傷を作り、見た目よりも痛みが激しい。

「……ッ、つつつつ。何でここ段差があるんだよ! ったく、3Dデータ間違ってんじゃないの? あたたた……」

 その高さ、およそ三十㌢。

 打ち所が悪ければ重傷を負っていたところだ。

「おかしいなあ……。こんな筈は……」

 勝利は小首をかしげた。

 無理もない。この都市の地形は十㌢単位で彼の頭に入っているはずなのだ。道路の縁石ですら踏み違えることは、ほとんどない。

(言ったそばからドジるなんて。あり得ないあり得ないあり得ない………………)

 擦り傷に消毒薬を吹き付け、気を取り直して歩き出すと、生臭い匂いが漂ってきた。

(ゴミの放置……、いや違うな)

 勝利は立ち止まり、周囲を伺った。

 気配は感じるが、姿は見えない。暗視ゴーグルにも映らないということは――。

(視界の、外か!)

 サブマシンガンを腰の磁力ホルダーに固定すると、勝利は側の中層マンションに向かってワイヤーを射出した。

 ガツン、と当たる感触。ぐっ、と手繰るとウインチのスイッチを入れ、一気にワイヤーを巻き上げた。勝利の体はするするとマンションの壁面を昇っていく。

 キュルキュルと耳障りな音が闇に響く。

 最上階のベランダに到着した勝利はワイヤーのフックを外し、屋上へと飛び上がった。

(どこだ……)

 高所に立つと、照明障壁の明かりが横殴りに視界に入る。両手で暗視ゴーグルの脇を覆うと、真下の地面を調べ始めた。だが、先ほどの気配の主が見当たらない。

「物陰にでも入ってしまったんだろうか……」

 屋上のへりをぐるりと歩きながら階下を覗き込んでいると、何かが視界の端で動いた。

「あれかッ」

 サブマシンガンを腰から外して両手に握ると、勝利はふわり、と体を重力に預けた。

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