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【15】
「あちゃあ……参ったな」
勝利は、構えていた二丁のサブマシンガンを、ぶらりと降ろした。
彼の追っていた血の臭いが、途中で別のものにかき消されてしまったのだ。
犯人は、発電機のまき散らす排ガスだ。
大量の照明を点灯させるため、発電機もまた閉鎖区画をぐるりと囲んでいる。それを今さら止めろとも言えず、勝利は苦虫を噛み潰したような表情になった。
「なんか今日は、仕事がちっともスムーズに進まねえなあ……」
少々イラつきながら銃を地面に置くと、背中の荷物を降ろした。
彼は嗅覚での探知を諦め、暗視ゴーグルを装備しはじめた。もう辺りには照明障壁からの光はおおむね届かなくなっている。ここからが本番だ。
「おっと、ワンちゃん相手にゃ、これも着けないとな」
重いから、と教会で身に付けてこなかったアームガードを腕に巻き付けた。
教団開発部ご自慢の物理防護装備の一種だ。軽くスイッチを入れると、ギュッと締め付けて腕にフィットする。拳銃程度なら難なく弾くほどの強度を持つが重量もあり、身軽さがウリの勝利にはすこぶる評判が悪い。
だが。
今夜の敵は『アギト』だ。何でもかんでも食いちぎってしまう、悪食の犬だ。このくらいの準備も、ヤツが相手なら致し方ないだろう。
「あの顎でばっくりやられた日にゃあ……腕の一本くらいすぐ無くなっちまうからな」
腕の一本、と口にしたところで、師匠のシスターベロニカを思い出した。
――自分の腕が無くなったら、あの人はどう思うだろうか。
――やっぱり悲しむんだろうか。多分。だろうな。
「俺ぁそんなドジ踏まないよ、ママ」
勝利はサブマシンガンを手に取ると、再び歩き始めた。




