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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
三章 迷宮の入り口
47/134

24

【24】


 昼休みになり、勝利はちょっと出遅れて学食に行った。すると遙香が信じられない量の昼食を取っていた。

 親子丼、ネギトロ丼、カレーうどん、焼き肉定食。炭水化物過多なメニューが、テーブルいっぱいに皿が並んでいる。

 周囲の生徒は見慣れているのか、誰も気に留める者はいない。

(……あ、ハンバーガーをタッパーに詰めてるぞ。まさか夕食にする気か?)

「ショウくん、遅いよ。もうA定食なくなっちゃうよ?」遙香はもぐもぐしながら言う。

「う、うん……」

 呆気にとられていた勝利は、慌てて配膳カウンターに向かった。

 サンプルを見るに、さっき遙香が食べていた焼き肉定食が今日のA定食のようだ。しかし、彼の気分はコレじゃない。配膳係のおばさんへ、カウンター越しに注文を伝えると、勝利ぼんやりと遙香をながめた。

(学食って、なんでもタダで食えるからいいな。あ! だからハルカはバーガーをお持ち帰りするのか。これも生活の知恵ってヤツか……。ハルカってタフだなあ)

 勝利はコロッケカレー特盛りを持って、遙香のいるテーブルに戻ってきた。

「なあ、家で食事作ってないのか?」

 彼はコロッケにソースをかけながら遙香に訊ねた。

「うん。節約しないと。お父さんがこの学校に入れてくれて良かったよ。タダで食べられる学食なんて、他にはないもの」

 スプーンでふわとろの親子丼をかきこみながら、遙香は言った。

「え? ちょっと待って。学食ってどこでもタダじゃないのか?」

「え? まさか。そんなハズないじゃない。あ、でも……」

 ハルカはスプーンを咥えながら思案した。

「でも?」

「この学園は、ショウくんのいる教会と同じ経営でしょ?。で、全国各地に同じ系列の学校があるから、そこならきっとタダかもしれないわよ」

「本当に、本当に他の学校じゃメシはタダじゃないんだな?」彼は身を乗り出した。

「あ、当たり前じゃない。学校ごとに違うわよ。普通は有料だし、購買だけのとこもあるし、みんなお弁当なところだってあるわよ。……ねえ、どうしたの?」

 勝利は血相を変えて席を立つと、後からやってきたタケノコを捕まえて、同じ質問をぶつけた。一緒にいたタケノコの友達にも訊いた。

 ――でも、返ってきた答えは、全く同じだった。

『どういう……ことなんだ?』

 これまで彼は一切疑問を抱いてこなかった。

 それが当たり前だと思っていたからだ。しかし、本当は己の中の常識ってヤツは、世間の常識とは全く違うんじゃないか。そんな気が沸々としてきた。

 遙香の家で見た写真もそうだ。

 自分には全く身に覚えがないのに、彼女は知っている。

『俺は異常かもしれない』と。

 些細な掛け違いかもしれない。だが、大きな掛け違いだったら?

 小さなほころびから、色々なものが信じられなくなってくる。

 足元が急にゆらゆらし始めた。

 だがそんなのは気のせいだと分かってる。自分以外、誰もゆらゆらしてなどいない。

 ゆらゆらしているのは、自分の中の確たる記憶――

『俺って、一体?』


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