仲間割れするくらいなら、来んな!
なんにも起きてないけど、つい聞き耳を立ててしまいたくなる
目が覚めた。
普通に考えて、一〇年間も眠るのはもったいないではないか。
仕方ない。
そろそろ勇者が来そうだという情報をもらったので、僕は玉座に座る。
ホント、いつまでこんなことをしていればいいのだろうか。
外から、何やら物音が聞こえてくる。
そろそろか?でも、廊下をあんまり傷つけないでくれよ。
僕はなんだかめんどくさく思えてきたので、玉座から立ち上がって、玉座に上るためのちょっとした段差があるのだが、その下で彼らを待つことにした。
「おい、お前勝手なことするなよ」
「は?お前こそ、俺の邪魔するんじゃねえよ」
あ〜あ、たまにいるんだよね。
仲悪いくせにパーティ組んでる奴。
僕、信じられないよ。まあ、その仲がいいのと実力は直結しないし、一人でも僕のことを倒せるくらいの勇者がいれば全然大丈夫なんだろうけど。
でもね、そういう奴に限って「本当は、みんなと仲良くしたいんだ」とか、ピンチの時に仲間を庇って「その、・・・本当は仲良くしたかったんだ」とか言い出すんだ。
そりゃ、死ぬ前にはそんなことも言ってみたくなるもんだ。
「は?なんだと、お前、もう一回それ言ってみろよ!!」
おいおい、そんなことでもなかっただろ?
「魔王なんか、俺一人で倒せる」
おい、それ僕と戦ってから言えることなのか?
「は?無理だ。だから、みんなで協力して倒そうっていう話をしていたじゃないか」
そうそう。
キミ一人よりは、よっぽど勝てる確率が高いよ。
僕は段々と会話が気になってきたので、扉の目の前に立って、扉に耳をつけたわけではないが、彼らの会話に聞き耳を立てた。
「俺ずっと思ってたんだけど、お前ら足手まといなんだよっ」
男が大声を出し、味方を威嚇する。
「まあまあ、こんなところで喧嘩だなんて、みっともない」
少し威厳のある声だ。
まあ、神官なのだろう。
この世界では、見た目で職業が決まるのか?
まあ、まだ見えないけど想像できるもん。
「一回、黙っててください。あのさ、お前のせいで、どんだけピンチに陥ってきたのか、わかってるのかよっ」
あら、大変な思いをさっきの男のせいでしてきたのね。
ちょっと、同情してあげよう。
不器用なタイプなのか、ただの嫌なやつなのかどちらかわからないけれども。
「それは、今こうして生きてるんだから大丈夫じゃないか!」
僕もどちらかというとそう思うタイプだけど、その「もしあの時にちょっとでも判断を間違えていたらやばかったな」って意味のないことを考える人って結構いるからな。
その、「自分はこう思う」じゃなくて「こう思う人がいる」っていうので考えないとダメなんだよ、わかってないね〜。
「そんなことを言ってるから、また同じようなことをしたんだろっ。わかってるか?」
まあ、自分がミスしていれば、言い返すことはできないもんな〜。
僕は、もう一歩扉に近づき、ついに額が扉に当たる距離まで近づいた。
「・・・わかってるよ、わかってるよ。でもさ、俺、突っ込んじゃうんだよ!!」
そういって、バン、バンと石でできた我が玉座につながる廊下を叩く音が聞こえた。
手で叩いて、聞いてるこっちが痛くなってくる。
「俺も、自分のことが嫌だよっ。本当に、みんなに迷惑かけてきて、申し訳ないと思ってるよ」
まあ、自覚していればいいって問題じゃないもんね。
「おい、その、落ち着けって」
みんな大好きな落ち着けが来ました〜〜!!
落ち着いたら、議論できるんですかね?その、落ち着いていないから彼のこの気持ちが伝わったんじゃないんですかね?
落ち着いたら、ちゃんと話せますか?むしろ、本心が隠れちゃったりするんじゃないの?そこんとこどうなの?
「いや、取り乱してすまない、それこそ、恥ずかしいところを見せちゃって、」
マジで、どっちが勇者でどっちがもう片方の前衛なのかわからないと困るんだよな。それに、多分もう片方の前衛にも名前ってあるだろうね。
僕ここから出ないからさ、なんにも知らないんだよ。その、やられた兵士を補充する役割しかしてないからね。
まあ、サブ勇者とでも言えばいいか。
サ者だな。そう呼ぶことにしよう。
でも、結局こいつらはどっちが今床を叩いてて、どっちが「落ち着け」って言ったやつなんだよ。
まあいい。
「あ、あの〜」
女の子の声だ。
なにせ、この城にいると女の子の声なんて滅多に聞かないんだよな。
今のうちに聞いておこう。
「その、いつも夜中とか素振りとかしてますよね?」
遠慮がちな声で、あっさりと秘密をバラした。
そういうのはさ、言わなくてもいいんじゃないの?
「え、それ知ってたの?」
文脈的に先程床を叩いていた方だろう。彼が驚きからなのか恥ずかしさからなのか、素っ頓狂な声をあげる。
「その、私、いつも頑張ってるの知ってましたよ。その、上手く行かないことだって、そりゃありますよ」
「そうそう」
ああ、
若い女の子の言葉に、神官が被せてきた。
「俺達、四人で勇者パーティじゃん。な?」
おそらく、みんなで頷きあったりしているんだろう。
一瞬の静寂が訪れる。
「その、・・・俺も、なんかごめん。その、俺だってお前の隣で戦えて嬉しいと思ってるっていうか、やっぱりお前が一番やりやすいから、」
またそんなこと言っちゃって。
まあ、いいと思うけどね。そう言わないと続かないし。
その、やりやすいっていいことなのかね?もしかしたら、やりづらくてももっと強くなるためには相性の悪い相手と組んだほうがいいのかもよ。
いや、相性はあんまりよくなさそうだもんな。
「その、すまない。俺、これからちゃんとやるよ。ちゃんと、みんなの言う事を聞いて、」
男のグスン、という鼻をすする音が聞こえてくる。
「おいおい、まだ若いんだし男が泣くんじゃないよ!」
そして、バン、という先程の床を叩く音よりも大きな、おそらく神官の男が床叩き男の背中でも叩いたのだろう。その音が鳴り響いた。
「ほら、立てよ」
おそらく、座り込んでいるであろう床叩き男に、もう片方の前衛が手を差し出したんだろうな。
で、多分その手をがっちりと掴んで男が立ち上がるんだ。
「ああ、本当に、すまん、」
まだ、床叩き男はしょぼくれているみたいだった。
おいおい、このままこっちに来るのか?
「おいおい、もう泣くなって」
「いや、・・・ヘヘ、すまん」
「大丈夫大丈夫。俺の方こそ、お前がそうやって頑張ってるのを知らなくて、それなのにあんなこと言っちゃってすまん」
多分だけど、床叩き男をもう一人が肩で支えているんだろう。
そんな気がする。
「いや、俺がみんなの役に立ててなかったのは事実なんだから、いんだよ」
「いや、俺の方こそ、リーダーとして」
あ、こいつが勇者なのか。じゃあ、床叩いてた方がサ者ね。
まあ、でも状況的にはそうなるのが自然か。
「仲間のことをちゃんと見れなかったのにも、責任はあるさ」
それって「そのくらいちっちゃいところにしか俺の責任は無いから、やっぱりお前が悪いよな」って言ってるのと同じじゃないのかな?
え、どう?
ちょっと、この城にいると公平性みたいなのが感じられない。
公平性じゃなくて、客観性だな。客観性みたいなのが、どうも欠けてきちゃうから、あんまりなんとも言えないんだけどね。
でも、僕はあんまり「俺も悪かったんだよ」って泣いている人には言わない方がいいと思うんだよな。
その、勇者が「心いれかえて、頑張ろうぜ」って言ってたら、「いや、お前だって仲間見てねえじゃねえか」って言えばいいと思うんだけど。
本当に、仲間がいるとややこしくなるんだ。
「まあ、今日は帰るか、」
勇者がそう言った。
・・・・・
・・・・・・・・・
ん?聞き間違いか?
「そうだな。泣いてたらな〜」
神官がそう言った。
「魔王を倒すのなんて、いつでも出来ますもんね」
魔法使いがそう言った。
「・・・俺も、腹減ってきたかも」
サ者がそう言った。
「おい、ちゃんと食べておけって言っておいたじゃねえかwww」
勇者がそう言った。
・・・え?
彼らの足音が聞こえてくるが、どうも、遠ざかっている?
「まあ、今日はパーっと飲もうぜ!!」
遠近法のカナタから、そんな声が聞こえてきた。
僕はつい、思い切り扉を開けて「ちょっと!!」と飛び出したのだが、そこにはもう彼らの姿はなかった。
いや、もしかしたら彼らは元々実体なんてなかったのかもしれない。
だって、少なくとも僕は彼らの姿を見ていないのではないか。
きっとそうだ。ここまで来るのも一苦労なのに、ちょっとした喧嘩だけで帰るなんて、あまりにも信じられない。
そうだ、きっと彼らなんて元からいなかったんだ。
そう、彼らは
僕の心の中にいるんだ!!
「あの、寝ないんですか?」
後ろから声がしたと思ったら、セバスだ。
「それと、勇者が帰っていっちゃいましたね」
・・・・・
「痛い!って、ちょっと勘弁してくださいよっ」
ついムカついたので、僕はセバスを一発殴った。
「履歴書書いておけよ」
まあ、いつもみたいじゃなくてよかったかもしれないな。
でも、今度は普通の勇者パーティ、頼むから来てくれよ
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