俺が魔王なんだってば
「おい、開けろ!!」
ドアをゴンゴンと叩く音が聞こえる。
「開いてるよ。早く入りなって」
僕は玉座から大声を出す。届いているといいけど。それにしても、別に、開けてもらうほどデカい扉じゃないだろ。
「開けろよ!!」
「開いてるよ!!」
ようやく扉を叩く音が止まり、そして、扉が開いて、向こうからやけにムキムキな四人組がやってきた。
それも、全員タンクトップだし。
「はいはい。何の用なの?」
一応、申し訳程度に体のサイズに見合わないちっちゃい剣とか弓とかを持ってるけど、子供用のおもちゃにしか見えない。
「お前が、魔王か」
僕からすれば、どれも同じ顔、というかマッチョって皆同じ顔しているだろ。
「はい、そうそう。見ればわかるでしょ?」
「じゃあ、」
と言って、彼は彼の隣のマッチョを指さした。
「お前は魔王なのか?」
なんだよ、これは?
「俺は、魔王なのか?」
まあ、僕もこんな気持ちだったけどね。魔王になったときは。
「じゃあ、あいつは誰なんだ?」
指さされた男が、今度は僕のことを指さしてくる。
「あいつは魔王だ」
「そうそう」
一応、相槌を打っておく。
「じゃあ、こいつは誰なんだ?」
えっと、最初に指を指された男が、その隣にいる男を指さした。
「俺は、魔王だ。お前は、誰だ?」
もおーーっ。なんなの?これ。嫌な予感。
「俺も魔王だ。じゃあ、向こうのお前は誰だ?」
僕から見て一番奥にいた男を、二番目の男が指さした。
「俺は、魔王だ」
「じゃあ、あいつは誰なんだ?」
「だから、僕が魔王なのっ。君たちは、勇者なの?」
「ということは、俺も魔王でお前も魔王なのか?」
「違う、俺は魔王だが、お前は魔王ではない。そして、お前とお前は魔王なのだ」
「違う。俺は魔王ではない。お前が魔王だ」
「違う。俺達は全員魔王なんだ」
「だから、あんたたちは勇者なんでしょ?」
「勇者?魔王のことか?」
「ああ、俺達は魔王だったのか」
「なるほど。俺達は魔王だったのか」
「そうか、俺達は魔王なのか」
「いや、その、」
「俺達が魔王なら、あいつは誰なんだ?」
「違う、あいつが魔王なんだ」
「じゃあ、俺達は誰なんだ?」
「俺達は魔王だ」
「じゃあ、あいつは誰なんだ?」
「あいつは魔王だ」
「じゃあ、俺とお前も魔王なのか?」
「そうだ。魔王だ。俺達は魔王なのだ」
「じゃあ、俺と俺以外は魔王なのか?」
「そうだ。俺達は魔王だ」
「では、あいつは誰だ?」
「俺はわからない。お前はわかるか?」
「知らぬ。あいつは誰なんだ?お前はわかるのか?」
「あいつは誰だ?あいつは誰なのだ、お前はわかるのか?」
「俺達は魔王なんだ。そうすると、あいつは魔王ではない」
「魔王ではないとしたら、誰なんだ?」
「あいつは魔王だ」
「じゃあ、あいつが魔王なら、俺達はなにだ?」
「わからない。あいつが魔王なら、俺達はなにだ?」
「わからぬ。あいつが魔王なら、俺達はなにだ?」
「存ぜぬ。あいつが魔王なら、俺達はなにだ?」
「俺達は魔王だ。じゃあ、あいつは誰だ?」
「あいつは魔王だ。さっき言っていた」
「あいつが魔王なら、俺達は誰なんだ?」
「俺達は魔王だ。じゃあ、あいつは誰だ?」
「わかったぞ!!」
「どうしたんだ?」
「俺もわかったぞ」
「何があったんだ」
「俺は魔王だ。で、お前は魔王ではない。で、お前は魔王だ。で、お前は魔王ではない。すると、あいつは魔王だ」
「なるほど。確かに、あいつは魔王だ」
「ああ、じゃあ、俺達はなんだ?」
「俺達は魔王だ」
「でも、俺は魔王ではない」
「じゃあ、俺達はなんだ?」
「俺達は魔王だ」
おい、なんなんだよこれは。
勘弁してくれよ。なんて思っても、まったく止まる気配がない。
「じゃあ、あいつは誰だ?」
「あいつは魔王だ」
「じゃあ、俺達はなんだ?」
「俺達は魔王だ。でも、俺は魔王ではない。すると、あいつは魔王ではない。すると、俺達は魔王だ」
「でも、俺も魔王ではない」
「だが、俺は魔王だ」
「でも、俺は魔王なんだ」
「では、お前はなぜ魔王なんだ?」
「わからない。でも、俺は魔王だ」
「俺も魔王だ。では、なぜ俺は魔王なんだ」
「俺は魔王ではない。でも、お前は魔王だ」
「なるほど。お前は魔王ではない。では、俺は魔王だ」
「では、あいつは魔王か?」
「あいつは魔王だ」
「でも、俺とお前は魔王だ」
「しかし、俺とお前は魔王ではない」
「でも、俺とお前は魔王だ」
「しかし、俺とお前は魔王ではない」
「では、あいつは誰だ?」
え、何が起きてるの?
ものすごい馬鹿が紛れ込んできたのかと思ったけど、もしかして僕の方が馬鹿なのかな?全然追いつけないんだけど。
でも、なんとなくわかったのは、あいつらの中では魔王のとなりには魔王じゃない人がいるという扱いになっているらしい。
だから、僕が魔王かどうか揉めているんだろう。
いや、なに?それ?
「じゃあ、俺か俺以外は?」
「それは帝王ね。歌舞伎町の」
「毎週金曜日に来ていた男と遊ぶのはなんだ?」
「それは、女王の方だから。歌舞伎町の女王」
「一片の悔いなしはなんだ?」
「それは、ラオウじゃん」
「こだわり抜いた麺とスープはなんだ?」
「それは、袋麺の方のラ王」
「一本足は、」
「それは、野球の王でしょ?」
「雑種!!」
「それはギルガメッシュじゃん。英雄王ね」
「エクスカリバー!!」
「アーサー王ね。フェイトの」
「時には、誰かを」
「King Gnuじゃん。王繋がり?」
「二度と危険ってやつは訪れないのは」
「あ〜、獅子王司ね、はい、もう終わり!!」
ようやく、この馬鹿マッチョたちが黙った。
「もう、君たち魔王ってことでいいから、帰って帰って。僕は疲れたよ」
男たちは互いの顔を見合わせ、そして何が起きたのかわからなかったが、納得したみたいで、満足そうに帰っていった。
男たちは「俺は魔王だ」と言いながら一人ずつ玉座のあるこの部屋から出ていった。
なんなんだよ、こいつらは。
頼むから、二度と来ないでくれ。
最近は変なのが多い。別に、こういうのを望んでたわけではないんだ。
僕は落胆しながら部屋に戻った。
やっぱり、ベッドでないとうまく寝れなかったのだ。
部屋に戻ると、相変わらずセバスが、今日はベッドの下に潜り込んで掃除をしていた。
今日は馬鹿の相手をして腹が立っていたので、彼のことは無視して布団に入ることにした。
「もう寝るんですか?」
「そう。だから静かにしてて」
僕は、とりあえず目を閉じた。目を閉じれば、案外簡単に眠りにつけるm・・・・・・・・。




