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思い出に消されそうな君
名前は水瀬瑠璃。彼女の目は虚ろ。瑠璃は愁を見ても「初対面の調律師」として接してくる。
付きあっていた頃とはぜんぜん違う。すでに精神が限界で、顔を見ただけで分かってしまうほどだった。
「これを買い取ってほしいんです」
瑠璃が差し出したのは、特級品の輝きを放つあまりにも巨大で美しいキオクの結晶。
愁が査定のためにその記憶に触れると、脳内に流れ込んだのは、「愁と瑠璃が過ごした幸せな日々」そして「愁が瑠璃を傷つけてしまったあの日の悲劇」だった。
瑠璃は涙を流し訴えた。
「この記憶のせいで、毎日胸が引き裂かれそうで息もできない。この人が愛した記憶を消して、私を楽にさせて」
この言葉を聞いて、愁は自分の存在そのものが、瑠璃を殺しかけているトラウマだと知って愕然としたのだった。
(僕のせいだ。僕のせいで君の気持ちがずたずたにされてしまう。僕のせいだ)
あの時から、愁の性格は変わり、自分の気持ちより人の気持ち、人の記憶を大切にするように変わったのだった。




