表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回避出来た令嬢は?  作者: 明月 えま
第3章・南国リレイラ編
43/63

自由貿易都市リレイラ

今後の予定ですが。明日、リレイラ編終了。今後、帝国編で完結予定です。2月中には完結します。

これって、前作読んで無いと意味わからないよね?と思って、前作再録作業をしたら、間違えて開いてくださった方々がいらっしゃったみたいで、申し訳ないので1日分、前倒し投稿します。明日も朝、投稿します。

船に戻ったリオンは、会議室に戻ると、一気に属国となるリレイラの為の憲法草案を書き始めた。


その真剣さと、筆の速さと。


流れるように書き進められていく草案を横から見ながら、レイローズは正直、ちょっと引いた。かっこいいとか、頭がいいのレベルでなく。辞書でも書き写しているかのような勢いだ。

私はこの人の隣に並ぶのか。果たして、私でもいいのかと疑問が湧く位の能力差。


一体、この人の頭の中はどうなっているのだろう。


そして、夕方には王城に行くと言っていたが、私はどうしよう。留守番なのか、一緒に行くのかすら聞くことができないまま、30分は経過している。

そしてどんどん文書が積みあがっていく。


これでは、一向に尋ねることなどできそうにない。では、とりあえず、ついて行く方向で用意しよう。外交用衣装は2着用意してきた。リンゼイに手伝ってもらいながら、昨日着た衣装と違う濃紺の衣装に着替える。リンゼイはとても器用だ。髪もサイドはきれいに編み上げ、後ろから流すようにしてくれた。

着替えた後に、え?行くの?みたいな顔をされたら凹むな。

そんな事を考えながら、用意する。もっと王族との交流があるか?と考えて、贈り物にできそうな小物等も用意したけれど使わなかったな。まあ、あの王女にやらなくてよかったと本当に思うけれど。


もう15時を回った。

気合を入れてリオンがいる会議室に戻る。随分、仕事は進んだようだ。用紙の枚数が増えていた。


部屋に私が入って来たのに気が付いたリオンが顔を上げて少し驚いたような顔をする。

あ。お留守番でした??


そう思っていると、手招きされる。

「ローズ。よく似合ってますね。」

そう言って、優しく笑う。

「あまりにも一生懸命に書かれているのですもの。私、一緒に行くのかお留守番なのかお尋ねすることが出来なくて。一応、ご一緒する用意をしたのですけれど。どう致しましょう?」

そう尋ねてみる。

「あまりに綺麗で驚いたんですよ。あなたがよければ一緒に行きましょう。でも、危険があるかもしれません。絶対に私から離れないでください。」

「わかりましたわ。」

「もうすぐ終わりますから待っていてください。」

「ええ。何か用意する物は?」

「大丈夫。でも、少し遅くなるかもしれません。何でもいいので少し食べていてください。」

「はい。」

大人しくリオンの指示に従い、少し菓子を食べてお茶を飲んだ。



用意が済んだリオンとタリス、リンゼイと共に、昨日行った王城まで魔術で転移する。

王城前で、ルークスタッドとラナスとラオが待っていた。

「準備は?」

「滞りなく。」

リオンの問いにルークスタッドが答える。

リオンにエスコートされて王城に入る。


広間に案内され、昨日王が座っていた王座まで案内される。


ザワザワとしていた空気が一転、水を打ったように静かになる。リオンが立ったまま話し始める。

「ロイメール宰相、リオン・グラートである。ここにいるベゼル、ラオ両名から聞き及んでいると思うが、本日より、リレイラはロイメールの属国となった。暫定措置として、ここにいるルークスタッド・ベゼルに統治させ、ラオ・ダクルをリレイラ側の暫定代表者とする。」

一呼吸置くが、皆がこちらに注目し、誰一人として声を発する事がない。

「我々が把握している事で重要な一部を、王城で勤務していた君達に伝えよう。」


「このリレイラという国は、30年ほど前から水の精霊を不当に王城裏手につなぎとめる事で、水資源を手にして繁栄してきた国家だ。警備にあたっていた者、薬剤精製などに携わっていた者は、裏の崖に特殊なつる草が自生し、王家により管理されていた事を知っているものと思う。だが、術が綻び、精霊が自由を取り戻した事に伴い、つる草は消失した。精霊の気を帯びていた水もすでに、ただの澄んだ水になった。今後は溢れるほどの水量は確保できなくなる。年々、水量は低下していくものと思われる。昨日の市街地の異常は精霊の怒りによるものだ。皆が今までのように水を使えば、いずれ水が枯れる可能性もあることを、全員が頭に入れておくように。」

声は出ないものの、動揺で身じろぎしたり、顔を見合わせる者達がいる。市街地の異常って。陽動で噴水壊したのは、精霊の怒りにしてしまうわけね。


「それから。今後の君たちの処遇である。君達は薬剤の過剰使用をする王族を実際に見て、その禁断症状によって錯乱した王家の者達と接しただろう。今後、リレイラの王政は禁じる。このリレイラは自由貿易都市として、新しく生まれ変わる。ロイメールは新しい国を作るための協力を行う。直接統治や接収などはしない。安定化するまでは治安維持にも協力しよう。王城勤務者のうち、文官、警備を担う武官、料理人や洗濯人、庭師などはとりあえずそのまま残す。王族に直接仕えていた者は、しばらくこちらでその能力を確認し、文官や武官に転じる事が出来る者は転じてもらう。だが、現職の者も全員の能力を追って確認する。王城でできる仕事が無い者には、向こう3年分の給与を与えたのち、暇を出す。各自、どんな仕事がしたいか決めておくように。また、ベゼル、ラオ両名に色を使ったり、金銭によってここに留まることは不可能であるという事を先に述べておく。我々が必要としているのは、新しい国として成り立っていくための能力を持つ者だ。リレイラ王が、見目麗しい者を近くに置いていたことは把握しているが、今後、重視されるのは見た目ではなく、能力であることを強く心に刻め。」

流石に、衝撃を受けた者が多かったようで、 一瞬、ざわりとする。


「質問がある者は?」

リオンの言葉に、誰も質問できず、黙り込んでいる。


「質問が無ければ、今日は解散とする。それぞれ、持ち場に戻るがよい。王族直属だったものは、ラオの指示に従い、動くように。」


控室ではなく、リオンは文官が詰める執務室へ直行する。

執務室を確認し、数点指示した後は、ルークスタッドとラオに一任した。

先に広間を退出した私たちが、文官執務室にいることに、後から戻って来た文官達が驚いて目を回しそうになっていた。


その後、精霊を呼んだタリスと共に、王城内を回り、精霊の気を帯びたつる草を回収して回った。隠匿しようとしていた者は、王城勤務を即刻首となったことは言うまでもない。





そんな事をしていたら、すぐに17時になる。

王城前、城壁より下方に多くの民がいる。もちろん、旅をする商人などで、商機を判断するために集まった者もいるのだろう。


リオンは臆することなく、多くの民衆の前に立ち告げる。

「ロイメール宰相、リオン・グラートである。君たちはすでに噂に聞き及んでいるだろう。本日より、リレイラはロイメールの属国となった。王政を廃止し、ここにいるラオ・ダクルにリレイラを暫定代表とし、自由貿易都市リレイラと名を変え、暫定政府を立ち上げる。」

リオンの言葉を聞いて、一瞬、民衆は静まりかえった。徐々にざわめきが、広がっていく。


誰しも不安なのだろう。

続いて、ルークスタッドと、ラオが挨拶をし、詳しい説明をする。私は少し後ろから見ていた。


声は風魔法で、皆に届いているはずである。でも。やはり不安なのだ。明日への不安が、皆の足をすくませる。


どうしたら、皆が落ち着くことができるのだろう。


まだ、この地はこんなにも水に溢れているのに。精霊の姿が見えないのは、これまでの報いか?


お願い。水の精霊。誰か。この地に祝福を。

そう、心の中で願う。

ふわりと、あの、小さな精霊が現れる。


「皆は、まだ、出て来られないんだよ。」そう言う。

なぜ出て来られないのかはわからない。

「この島に、祝福をしてもらいたいの。」

「いいよ。大精霊様を助けてくれた君の頼みなら。」

精霊が簡単に言う。

「本当に?じゃあ、私が手を上げたら、空に大きな虹をかけてくれる?」

後ろでこそこそと話す私をリオンが振り返る。


ラオの説明が終わったのだ。


ハッタリかもしれないけれど。結婚式の奇跡を再現してやる!

なんて、自分自身で気合を入れて、リオンの横に並ぶ。少し驚いた様子のリオン。

リオンの手をとり、

「私の声を届けて。」と頼む。

静かにリオンが頷く。


リオンと手をつないだ右手が、緊張で少し震えているのが、自分でもわかるし、リオンにも伝わってしまっているだろう。ギュッと握られる。

大丈夫。行ける。私は出来る。

リオンを見て、強がりかもしれない笑みをつくり、前を向く。


大勢の人が見える。

かぼちゃと思え?違ったかな?

皆が、私に注目している。

「レイローズ・グラートでございます。リレイラの皆様に、新しい門出を祝うべく参りました。ロイメールは、リレイラの民と同じ目線で、リレイラの為に協力を惜しみません。大いなる水の精霊を失った皆さまに伝えます。常に、見えなくとも精霊は存在するもの。その加護をこの地に。皆さまに水の恵みが続きますように。」

そう言って、左手を上げる。

お願い。お願い。


サアーッと、明るい空から霧状の雨が降る。皆が上を見上げる。


良かった。


そこには、大きな虹がある。

小さなどよめきのあと、どよめきが歓声に変わる。


まだ不安な顔をしている人もいるが、親に連れられた子供がニコニコしているのが見える。

「自由貿易都市リレイラに幸あれ!」


そう言った私の言葉が、民衆に復唱されていく。

その熱気は、夕方の生暖かい風をさらに熱く感じさせる程で。


ハッタリかましてやったわ!って思っていると、笑顔のリオンに抱きしめられた。

耳元で、「ありがとう」と囁かれる。


民衆の興奮を聞きながら、私達はリレイラ城内に戻ったのだった。

2019/01/27失業保険と比べたら、退職金3年分って高すぎない?とご指摘を受けました。

リオンが転生者のため、日本風退職金イメージがあったこと。また、本文では書いておりませんが、設定的に、先進国と途上国のような関係上、王国とは賃金格差があり王国側からすると大した額面ではなく、給料3年分ぐらいで黙らせておこうという作戦であることをお伝えしておきます。


 しかし、現実世界では退職金はどんどん目減りしていて、世知辛いですね・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎明 ルークスタッドの後日談、連載中 不器用令嬢、騎士になる カイウスの恋愛話、主に嫁視点を書いてます。  こちらもよかったら読んで下さい。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ