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回避出来た令嬢は?  作者: 明月 えま
第3章・南国リレイラ編
41/63

リレイラとの交渉2

本日から3話分、恋愛から遠のいている自覚があります。

ごめんなさい。

今週末でリレイラ編終了したら、帝国編で、振り戻しますので、お許しください。


リオンが絡むとこうなる・・・

…… 翌朝、私は寝坊した。

目がさめると、リオンはいなくて、着替えると廊下にリンゼイが待っていた。


「お食事はどうなさいますか?」

「軽食でいいので、用意できるかしら。」

「はい。お部屋でよろしいですか?」

「ええ。お願い。」


正直、昨日の疲れが取れない。

男性陣、仕事に行ったのねー。すごいわ。時刻はすでに9時になろうとしていた。3時ごろ横になったはずなのに。8時から交渉開始らしい。

コーヒーのような香りだが、全く苦みの無い南国のお茶とともに、パンを食べる。

やっぱり、身体に何か食べ物が入るって大切。


じんわりと身体が温まっていく感覚。


予定通り、今日の午後には帰路に就くのかしら。

上位精霊に会ったのが嘘のようで。


船の窓を開けて外を眺める。ぱっと見、遠くからでは何も変わりない町。


チラリと海に何か見える。何だろう?そう思って目をこらしていると、手のひらほどの小さな精霊が目の前に来た。

「ありがとう。」

そう言って、ペコリとお辞儀をする精霊。

「もしかして、あなた、私を大精霊様の所まで案内してくれた?」 

「そうだよ~」

そう言いながら、精霊の姿はまた、海に溶けるように見えなくなった。







リオンが目を醒ました時、彼の腕の中で、愛する妻はまだ夢の中にいた。

早朝5時。まだ、2時間しか経っていないか。6時に起きれば充分間に合うのだが。さて。どうするか。

青銀の髪を一房すくい夜明けの光の中で見ると、青なのに不思議な色合いがある。非力な存在でありながら、水の精霊とも渡り合ってしまった彼女の価値は限られた者しか知らない。大精霊と呼ばれる上位の精霊と取引をしながら、対価を求めないなど。彼女しかできまい。

実際、そこが精霊に気に入られ、精霊自身からの守護を受けた。しかも、個別の契約ではなく眷属総出で守る等、聞いたことがない。

彼女は元々、とても引きこもりぎみだ。出来る事ならば、自分以外の目に触れぬよう、ずっと籠の鳥のように閉じ込めておきたいと。あり得ない考えが脳裏に浮かぶ。

私に引きずられるように表に出してしまったが。私が引きずり出してしまった以上、何としても守らないといけない。そう思っているのに、昨夜のように、人外の者に一攫いで持って行かれるなど。

自分の無力さを感じたのは久しぶりだ。常に根回しして、準備を怠らずに結果を出してきた。彼女が自分の手の届かない所まで行って、焦燥と絶望を嫌というほど感じた。でも、彼女は自力で戻って来た。

ある意味、予想外な人だ。こんなに心をかき乱される存在は無い。昨日の精霊の守護で、守りが強くなったのは間違い無いだろう。


さて、リレイラだ。ルークに全面的に任せるが。とりあえずは、欲にまみれた王族は象徴程度に落ちてもらわねばならない。この国は商人から金を巻き上げすぎだ。このままでは、商人達が寄り付かなくなる。

港湾使用料を半額まで落とさせ、この国での関税を撤廃し、流通を一気にこちらに流そう。リレイラは東大陸の南方にあるが、船での貿易中の寄港地としてはとても便が良い。帝国との物流も勝手に盛んになるだろう。後は。帝国がどう動くか。クランガルドの意図を把握しなければ。


まだ、6時前だが。帰る前にやる事は沢山ある。午前中までに交渉を予定通り終えて帰国したい。

抜かりなく潰すにはどうするか。

ああ。あと、岸壁のつる草という厄介な代物が残っていたな。


静かに起き上がって着替える。まだ、すやすやと眠るレイローズの頬に軽く口づけし、部屋を出た。


会議室にはすでにタリスがいた。

「おはようリオン。」

「ああ。おはよう。どうした?眠ってないのか?君にしては随分早いな。」

「ああ。水精霊が抜けた後の変化をずっと追っていたから。寝てない。」

「そうか。」


「あのつる草。精霊の力を奪って異常な状態に変化していたみたいだよ。多分、あれ、元々は普通の草だ。精霊が抜けて力の逆流が起こったみたいで、徐々に枯れて、今は砂のように崩れ落ちていった。風に攫われて海に落ちたのがほとんどだと思うが。多分、他の水の精霊もあれが残るのを嫌ったのだろうな。岸壁にはいつもより強く波が当たって、洗い流しているみたいに見える。」

「そうか。では、特段、対策は必要ないか?」

「いや。以前の採取分は使用できると思うから、処分した方がいいな。」

以前の物が使用できるか。帝国が持っていたら厄介だな。


「わかった。水源の状況は?」

「まだ大きくは変化は無い。まだ、水精霊の力が色濃く残っているから。年単位で水量は緩やかに落ちていくと思うよ。」

「そうなるとあまり長期に港湾施設としては使えないか。」

「そうだねえ。他の水精霊が住み着いてくれたらいいんだけど。こればかりはわからないね。」


「相変わらず早いな~。」

そう言いながらラナスが入って来る。

「おはよう、ラナス。」

「おはよう。」

タリスとリオンが挨拶する。

「先に食べてから話さないか?」

ラナスの提案に同意し、食堂室へ移動する。


朝食を食べているとルークが遅れてくる。

「おはようございます。」

「「「おはよう」」」

静かにルークが席に着き、一緒に朝食をとり始める。

「なあ、リオン。8月夜会で正式に社交会に奥さんお披露目?」

ラナスが尋ねる。

「ああ。そのつもりだ。カイウスもそれまでには警備を整えると言っていたからな。」

「そっか。じゃあ、8月夜会には参加しようかな。」

「どうした?珍しいな。」


「なかなか会えないからな。夜会。8月末だっただろう?嫁と子供連れて行こうかな。ここから帰って準備しても間に合うなと思って。」

ラナスの言葉に、

「へえ。じゃあ、皆でまた集まろうよ。」

と、タリスがニコニコして笑う。

「もちろん、そのつもり。」

「タリス、今日も同行するのか?」

「そうだね。気になることもあるし。状況を自分の目で見た方がいいと思ってる。」

思案顔のタリス。

「嫌だな。お前が気になるとか言い出すと、碌なことがないと決まっている。」

ラナスの言葉に、そんなことは無いとタリスが抗議するも、

「いや。いつもそうだろう。」

と、リオンがラナスの肩を持つ。

「タリス、何が気になっている?」

「んー。水の精霊が抜けた後、王城に澱みが出来ている。澱みの原因が何なのかよくわからない。澱みは精霊達は嫌うから、様子が分からないんだ。でも、王が関係していると思うんだよね。王が来るなら、見に行きたい。」

「そうか。」

話を聞いていたルークが質問する。

「リオン様、可能性としてですが、リレイラ側の指揮系統が取れなくなっている場合、どうなさいますか?」

「それは、王が統治出来ない状態に陥っている事を想定してか?」

「はい。」

「リレイラ3部族代表を集めて、こちらとの交渉役を決めさせる。3部族間での内紛に介入する気は無い。」

「かしこまりました。」

「予定通りの日程消化が望ましいが、多少の遅延は構わん。」

「は。」



朝食中に、リレイラより、王城ではなく城下商館で交渉を行いたいとの打診がある。どうやら、王城の電源は復旧できていない模様。隠さずとも明らかな事を。これ以上の弱みは見せたくないのか。


しかし、訪れた交渉の商館では、リレイラの未来を予感させる異常な事態が繰り広げられていた。


昨晩までの威厳はどこに行ったのか。元々、褐色だった肌は土気色で血色が悪く、目がギラギラとして落ち着きが無い。一目見て、誰もが異常を感じるほどに、その様子は変化していた。

「早く!早く!聖水を持って参れ!」

叫ぶ王。なだめる侍従。

ロイメールの到着に気づかぬほどの落ち着きの無さ。侍従に促され、ロイメールの到着に気が付くと、かろうじて挨拶をするが、視線はさまよい、手は震えている。


皆が交渉の席に着く。

「ロイメールでの今後の交渉権を任命されております。ルークスタッド・ベゼルと申します。本日から私が交渉の担当をさせていただきます。」

ルークスタッドが、挨拶後、予定通り、港湾使用料の半減と関税の撤廃を求める。


「ならん、ならん、ならん!!!」

王が興奮して叫ぶ。

「娘の無礼なら謝る。娘の首を差し出してもよい!だが、それはならん!」

リレイラ側の文官が色を失い、凍り付いている。


「それでは、リレイラ側からはどのような提案を?」

ルークスタッドの問いに、王が睨み返して叫ぶ。

「我が国は、ロイメールには売らぬ!」

「そうですか。では、交渉は決裂のまま、昨日のとおり、ロイメール撤退でよろしいですね?」

冷たく言い放つルークスタッドに、慌てて文官が止めに入る。

「おっ。お待ちください。どうか。王よ。ご再考を。」

そう言って、王を諫めようとした文官を振り切り、王は勝手に退出していく。慌てて侍従が追いかけていく。

「なんという事を・・・。」

色を失い、茫然自失として立ち尽くす文官。


ルークスタッドが口を開く。

「昼まで時間を与えましょう。王があの状態では、まともに交渉などできますまい。まだ9時前だ。リレイラの3部族で話し合うとよろしい。午後1時に、再度ここに来ましょう。」

ルークスタッドの言葉が終わると宰相であるリオンが席を立ち、この2回目の交渉は、決裂に終わったのだった。



帰りの馬車の中。

「薬物中毒か。」

リオンが呟くと、

「明らかにそうだね。」

とタリス。

「目がイっちゃってたな。あれはもうダメだ。かなりな中毒者だな。」

ラナスの言葉に、

「多分、裏の岸壁の薬草は水精霊の力が入っていたから、人間には強すぎたんだよ。だから、夜会でもあの水溶液程度で夢の花の睡眠作用が異常なまでに増強された。多分、精製する水は楔を打ち込んだ特殊な水を使っていたのだろう。水から精霊の力が抜けてしまったらふつうの水だから、今までと同じものはもう作成できない。水の中は霊気は常に流動している。彼らは聖水と呼んでいたようだが。精製した薬物も霊気が強い、新しい状況でないと効果を感じないほど使用していたのだろうな。」

そう言って、タリスは目を閉じた。




食後、のんびりと海を眺めていたら、すぐにリオンが戻って来た。

「まあ。早かったんですのね。」

「交渉は再度決裂した。午後から再度、交渉の席に着く。帰国が遅れるからそのつもりで。」

相変わらず忙しいこと。


「少し、お休みになった方がいいですわ。」

私がソファに座ると横にリオンが座る。

「私、まだ疲れが抜けませんの。帰国がゆっくりでも大丈夫ですわ。それよりリオン、あなたほとんど休んでないでしょう。お願いですから、休んでくださいませ。」

不意に、体勢を変えられ、膝に頭を置かれる。膝枕?でも、船のソファは狭い。

「ここでは、だめです。ベッドで横にならないと。」

「君が一緒なら。」

「・・・わかりましたわ。」

それから1時間ほど、私はリオンの抱き枕になったのだった。

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黎明 ルークスタッドの後日談、連載中 不器用令嬢、騎士になる カイウスの恋愛話、主に嫁視点を書いてます。  こちらもよかったら読んで下さい。
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