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回避出来た令嬢は?  作者: 明月 えま
第3章・南国リレイラ編
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苛立ち

どうしてこうも狭量になったものか。


レイローズを見ながらそう思う。


もう、片時も離れられないような気がしてたまらないのは、タリスにかけてもらった術の影響があるのか。

果たして。自分の欲望なのか。


仕事が終わって帰るよと声をかけて抱き上げると、やっと目を開けた彼女だったが、まだ、しっかり覚醒したわけではない。


馬車の中で、揺られていると、また腕の中で眠ってしまった。


屋敷に帰って、自室に軽食を運ばせる。


「ローズ。そろそろ夕飯を食べないと、体調を崩します。」

そう声をかけてかけると私を見てフワリと微笑む。


無垢な赤子のように。邪気の無い笑顔。


そんな彼女が眠らないように話しかけて粥を食べさせる。食べてくれるだけで安心出来る。


この無意識の中で、パニックになって怖がったりしない所を見ると、攫われても恐怖を感じる事が無かったのだろう。それぐらい、急に攫われた。


食べ終わった彼女に果実水を飲ませる。

唇から溢れてつたう果実水を舐めとる。


夢うつつだからか、会話しようとしない彼女をゆっくりベッドに寝かせる。


この湧き上がる苛立ちはどうすればいいのだろう。

ぶつけようのない怒り。


消して彼女が悪い訳でない。


守れなかった。

間に合ったから良かったものの。間に合わなかったらどうなっていた?


「リオン…」

不意にローズが私を呼ぶ。

彼女から私に伸ばされた細い腕。華奢な指。指を絡めて、顔を寄せる。

「大丈夫。ここにいますよ。」


私の声に、フッと笑った彼女が、もう片方の手で私に縋り付く。

覆い被さり、強く彼女を抱きしめる。


ゆっくり、キスをする。

「んっ…。」

その吐息を聞くだけで、脳がおかしくなりそうだ。


「リオン…?」

少し薬が抜けつつあるのか、少し驚いた表情のローズ。

更に深く口づける。

「んんっ…はぁっ。あのっ。あぁ。待っ…てっ。」

覚醒しつつあるようで、しっかりと私を見る彼女。

ああ。彼女が戻ってきた。その安堵感に満たされる。


自分が笑みを止められないのがわかる。

それから、自分の中の雄の本能が止められない。


首筋を舐め、愛を囁く。

真っ赤になって、私を受け入れる彼女が愛おしい。

「お帰りローズ。私をこんなに心配させたのですから、私の気がすむまで相手をしてもらいますよ。」

やや乱暴に服を剥ぐ。


彼女の白い肌が晒される。


ゾクリと背筋に何かが走る。

征服欲が湧いてくる。


その白い柔肌に舌を這わせ、彼女を味わう。

欲望のまま。彼女は自分のものだと、自分が愛した証を刻むようにその身体に跡を残す。今迄は壊れ物のように扱っていた。自分を刻むような事はしていなかったのに。


やはり。今日の自分は変だと思う。抑えが効かない。羞恥に頰を染める彼女を見るだけで興奮が高まる。


「どうしたんです。こんなにとろとろになって。本当に可愛らしい。私が欲しいのでしょう?」

涙目で見上げる彼女の中に溺れて行く。


本能で、彼女を欲している。

快楽の波にのまれる。


静かに夜は更けてゆく。








ふと覚醒して、少しの身体の気だるさと共に、脳がスッキリしているのを実感する。


ああ。やはり、自分はまだまだだな。


何かに執着するとすぐにこのザマだ。自分の余裕の無さにあきれる。隣に眠る愛しい人の髪をすくい、口づける。君からは、私はどんな人間に見えるだろうか。


完璧な人間などいない。だが。前世から、常に上を目指して来た。


上に上に。より高みへと。


何の為にそうしていたのかは解らない。誰の為に上を目指すということは無かったが。今は違う。


手に入れた愛しい人。


もう、2度とその手を離すような事はしない。


冴えた頭で考える。リレイラへの旅程は国の魔術船を使用しても通常往復10日。相手との協議に1日あれば充分だろう。私が少し不在となって揺らぐような体制では無いが。馬鹿が出て来ないとは限らない。


昨日中に、メイオス前宰相(今はメイオス公爵)へ連絡し、何かあった時のフォローは依頼した。


リレイラへの旅程は、ホバルの通過時間による。

日付が変わった。

ホバルのクーデターは明日、火がつく。

リレイラへ向かうにはクロー川を南下するが、上流にあり、まだ川幅が狭い我が国と違い、川幅が広がるホバルはその国家規模も相まって、川に橋を架ける事が出来ていない。


今のこの技術水準ではまだ当面無理だろう。


ホバルは現在、川の通行権を主張しているが、このクーデターで東西に分離されるだろう。栄えた東と比べて、西は元々、直ぐに山岳が迫り元々土着の騎馬民族を取り込んだ形だ。

彼等の関係を切り崩して、川の利水権を主張させないようにしなければ。


クロー川をどれくらいで抜けられるか。なるだけ早く戻りたい。


タリスの同行で、少し旅程が早まるのを期待しよう。彼の魔術で補助すればどれ程旅程は短縮できるだろうか。


レイローズに手を出した事を後悔しても遅い。リレイラは絶対に許さない。

次話はレイローズ視点に戻ります。



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黎明 ルークスタッドの後日談、連載中 不器用令嬢、騎士になる カイウスの恋愛話、主に嫁視点を書いてます。  こちらもよかったら読んで下さい。
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