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回避出来た令嬢は?  作者: 明月 えま
第3章・南国リレイラ編
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事後処理

一言で表すと、協議は難航した。


レイローズの護衛が出し抜かれた事は、正直、予想外であった。一流の影2名と、手練れの女性騎士が2名。御者と、表向きに見えるように配置された護衛4名が出し抜かれたのだ。

比較的安全と思われる高級住宅街王都1区でだ。

バイス公爵家へは、表向きはレイローズの体調不良とするように要請し、事の次第を伝えた。向こうも警備の体制を見直すだろう。


王都1区は貴族家が軒を連ねるため、各所に警備兵が配置されていてこのザマだ。

どうやら、女が魔術を使用したのは間違いないが、魔道具を使用していたとのことで、大した術者ではないのだろう。一瞬で姿が消えたように見えたとのこと。慌てて周囲を探したが、通りには見えず。他の警備兵の証言で、一つ通りを隔てた通りを問題の馬車は通り過ぎていき、立ち止まった様子も見られなかったと。


協力者がいた模様で、各所で出し抜かれて連れ去られた形だ。


特殊な魔道具については、犯人によって壊されたもの、または使用したら壊れるようになっていたものか?を回収してある。魔道具研究所にて解析にかける。


目的がはっきりしない以上、宰相執務室付きの文官で、独身の者はしばらく王城寮にて生活することですんなりまとまったが、家族がいるものはそう簡単にいかない。皆、自分よりも家族を守ってもらいたいと一様に訴える。それはそうだろう。

結論としては、各家に1~2名の護衛を派遣。不要不急の外出は避けることで妥協した。


王の警備についても全面的に強化。

必要以上の王城からの外出は当面避けるように調整をかける。


王に謁見し、ことのあらましを騎士団長と共に報告する。

遅れて魔術師団長も協議に参加。やはり、王国の魔術師は質が落ちている。魔術師団長と言っても、自分より魔力の低い男。参加しても空気だ。


さすがの王も渋面を呈す。

「それでは、余は軟禁状態に置かれると言う事か。もっと警備を厚くすればよかろう。」

未だ相手がわからず、目的が読めない事で、対策が取りにくい。自身の暗殺の可能性なども説明されると、一気に押し黙った。


子供ではあるまいに。報告を聞くだけで、自ら判断し、王城の中からしっかり指図できれば良いものを。1から10まで説明されねば理解できないとは情けない。


王将が取られたら国は終いだともっと理解すればよいものを。まあ、替えの王子は3人もいるが、な。



謁見が終わり、執務室に戻り、控室のレイローズを確認する。時刻は18時を回ろうとしている。

やはり、まだ薬は抜けきっていないか。


浅く、胸が上下するのを見て、寝ている彼女の額にキスをする。


執務書類を一日、ほとんど手を付けていない。決済に2時間はかかるか。

もう少し、寝ていてくれたほうがいい。


執務室に戻り、書類に目を通す。

いつも以上に、文官達の集中力が強い。ほとんどの書類が、抜けが無い状態で用意されており、いつもこれだと楽なのだがな、と内心で思う。

若いマークスだけは集中できなかったようで、誤記、計算ミスなど連発していた。気もそぞろになっているのだろうが。ここで集中できるようにならないとここでは使えないと副官が指導を入れている。昼間に会えなかった者が面会に来て、時間を取られる。


21時過ぎにやっと文官の持ち分が終わり、22時ごろやっと終わった。予定より時間がかかったな。


「タリス。来れるか?」

誰もいなくなった執務室で呼ぶ。

「呼んだ?」

ふわりと虚空からタリスが現れる。


「お前、いつも聞いているのか?」

「まさかあ。自分の名前が呼ばれた時には反応するようにしているだけだよ。誰に呼ばれても聞こえる訳じゃないし。リオンの声は聞こえやすいの。魔力も強いし、見えてないかもしれないけど、結構、風の精霊がリオンを気に入っているみたいで、周りをうろうろしてたりするんだ。」


「精霊が?」

「そうそう。訓練したら、レイちゃんが水の精霊が見えるように、リオンも見えるようになるかもよ。」


「まさか、全属性の精霊を見ているのか?」

「正解。見えるよ。」


「・・・それは、私でもさすがに驚くな。」

「ありがとう。でも、僕は僕だし。国には興味ないし、今まで通りだよ。リオンやカイウスは友達だから、協力するけどね。」


「助かる。」

「うん。役に立ててうれしい。レイちゃんには僕が魔防を張ってるから、悪意に反応してるだけで勝手に見たりしてないよ。安心してね。」

ニコリとタリスが笑う。


「首尾は?」

「女はやはり、リレイラの者だ。今、リレイラに向かって南下して帰国しようとしている。夕方、帝国の商人と接触したが、商人はただの使い走りで魔道具は帝国からの物だ。女もどちらかというと捨て駒に近いな。どこまで戻るか追っている。」


「雑魚はどうした?」

「ん~?宿の記憶を抜いて郊外に転がしておいた。リオンが手を折ってるし、もう、何もできないだろ。」


「甘いな。」

「甘い?でも、あのまま、生きていく方がずっと辛いよ。両手使えないなんて、仕事にもなりやしない。生き地獄なんじゃないの?自分らが悪事に手を染めた記憶だけは残っているし。」


「まあ、そうかもな。」

「で、どうするの?」


「カイウスと話して、調整がつき次第、リレイラに行く。」

「リオンが?」


「ああ。ホバルのクーデターは明後日には決行される。その中をデリア川を一気に南下して、リレイラまで行く。気が変わった。アーサーは勿体ない。ルークスタッドにリレイラを任せる。ルークを配置し、これ以上の帝国の関与を抑える。」

「僕もついていこうかなあ。」


「珍しいな。」

「うーん。なんとなく。勘かなあ。一緒に行った方がいいような。ね、レイちゃんも連れて行こうよ。一緒の方が安全。」


「一緒にか・・・。」

「距離的に遠すぎたらさすがに転移できないよ。近くに置いてた方がいいって。リオンもレイちゃんがいると安心できるよ。」


「わかった。それで調整する。まだ、薬が抜けていないようだから、起きたらローズにも説明しよう。」

「うんうん。旅行みたいで楽しいよね。これが冬だったら、南国バカンスみたいでもっと楽しかったのにねー。暑いときに暑い所に行くのが残念。」


「遊びに行くつもりか?」

「道中は楽しい方がいいと思うよ?」


「まあな。」

「じゃ、出発の準備出来たら教えて~。僕も用意しとく。」


「おい、どういう肩書で行くつもりだ?」

「フツーに、魔道具研究員でいいよ。」


「まったく。」


そう、呟いた時にはすでにタリスの姿は無かった。




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黎明 ルークスタッドの後日談、連載中 不器用令嬢、騎士になる カイウスの恋愛話、主に嫁視点を書いてます。  こちらもよかったら読んで下さい。
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