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回避出来た令嬢は?  作者: 明月 えま
第1章・新しい生活の始まり
19/63

披露宴

夜半から降り始めた雨は、朝にはスッキリと止んでいた。


すがすがしい空気と共に、湿度が高く、肌には優しいかも。


昨日、リオンと一緒に屋敷に戻ってからも、お祝いの手紙や贈り物がひっきりなしに届いていた。


今日、招待している方は、お祝いは今日持参される。昨日届いた手紙やお祝いの品は、今日の披露パーティーが終わったら、明日から仕分けして、お礼状の作成をしないといけないだろう。でも、この世界にはお祝い返しという風習がないので、お礼状だけでいいのでとっても楽。


今日、披露パーティーで日本式披露宴よろしく、引き出物の準備をしているが、これはリオンの領地で採れる銀を使ったティースプーンのセットだ。彫りに凝って精巧に作られているため、稀少となるだろうと思われる。それに私の生家、ファシエ伯爵領で採れる上質な小麦を使った焼き菓子を添えた。もちろん、外見を重視する貴族の為に、紙でありながら、上質な小箱に入れ、すかしの入った紙に包むなど、前世のちょっとお高めギフト感満載の出来だ。


朝早くから、広さの都合で本邸で行われる披露パーティーの準備は着々と進んでいた。9時頃、一度見に行ったが、もう、いつお客様が来ても対応できるのではないだろうかという出来。なんてよく出来た使用人達!!


今日のために作った新しいドレスを身に纏い、準備をしていく。


「ああ。ローズ。今日も美しいね。」

気がつくとリオンが部屋に来ていた。3人ぐらいのメイドが交互に色々な準備をしていくので、声をかけられるまで、全く気がつかなかった。

リオンの今日の衣装は、薄いベージュに濃い茶と金のデザインの正装だ。髪の色にあっていて、美しい。どうしても、私の髪が水色(リオンは青銀と言うが)なので、ドレスは白にした。腰からのドレープに薄いベージュが入り、リオンの衣装に合わせてある。だが、どうしても、濃い茶の髪と水色では、並んだ時にちぐはぐな気がしてならない。これは、前世感覚なのだろうか。


リリスティールとクロードみたいに、黒髪同士の2人なら、並んだ時にもっと絵になるのだろうな、なんてふと思う。


「よく、似合っていますよ。大丈夫。」

なんだか、心を読まれたような声をかけられても困ってしまう。


「ありがとう。」

私の心を気遣ってくれて。本当に、優しい人。


今日の屋敷の警備も厳重だ。

今日1日の流れを再確認した後、リオンは執事と忙しく出て行ってしまった。


そうこうして、準備をしている間に、お客様が徐々に到着される。

今日は、私より使用人が大忙しの1日だ。


出迎えて、挨拶しているとあっという間にパーティーの予定時間となり、義父がパーティー開始の挨拶をすると、次々に料理が運ばれて来る。

歓談に忙しくて料理を食べる時間など無い。これは、前世の披露宴でも、主役の新郎新婦はそんなものだろう。ゲストをもてなすのに忙しい。


私が考えたちょっと日本式披露パーティーは、物珍しく楽しんでいただけたようで、各々、ゲストはゆっくりと料理を楽しみ、時間が流れた。


ああ。私がスカウトした洗濯婦のマリアンナの祝い歌は、本当に美しく、聞く者を感動させた。使用人であると知ると皆、一様に驚いていたが、是非ともまた歌ってほしいなどと声がかかり、他家でも祝い歌を披露する事になったようだ。


残念ながら、リリスティールとゆっくり話す機会は持てなかった。高位貴族が揃うという事は、魔力持ちが多く集うということになり、会場入りした彼女はすぐに他の魔力に当てられて体調を崩してしまい、挨拶もそこそこに帰る事になってしまったからだ。会場に入るだけでそんなに影響を受けるなんて、申し訳なかったと心から思う。クロードの守り様が素晴らしく、絵になる2人であり、そのリリスティールと友人関係にあると言うことも、周囲は非常に驚いていた。


宰相の妻が1公爵令嬢と友人というだけで、そう勢力図が変わることは無いのだが。


正直、多くの人と話して疲れたとしか言いようがない。


終わった。ただ、それだけだ。


パーティーは楽しかったけれど、あんなに時間をかけて用意したのに、終わりはあっという間で。

でも、ゲストが皆、一様に楽しそうに、近いうちの再会を約束して帰られると、とても充実感があった。


終わった、頑張ったと言っても、片付けは使用人がしてくれるし、更衣後も、何でもメイドが手助けしてくれて、ちょっと申し訳ない気はする。


屋敷の使用人達は、皆、この後の片付けやら何やらで忙しく、1人、自室のソファでウトウトしていると、急にリオンに抱えられ、寝室に連れて行かれた。

「疲れがたまっているんですよ。ちゃんとベッドで休まないと。」

そう、優しく言って頬にキスを落とされる。

抱きしめられたぬくもりに、幸せを感じる。本当は、リオンの方がもっと疲れているだろうに。体力が無いのだろうか。


起きて、会話をしなきゃと思っているのに、まぶたが開かない。


目が覚めると、もう翌朝になっていて。リオンはいつも通り、早くに王城に登城していて軽くショックを受ける。だが、過ぎてしまったことはしょうがない。しかし・・・。寝落ちしてしまうなんて。




いつも通りの1週間が始まる。


何の変哲も無い1日。

ドラマティックではない1日。


今日はお祝いのお礼状を書いて、明日からは8月夜会のための刺繍をのんびりと。


国政を動かす要職にいるリオンは忙しく、彼はヒーローのように色々なことをしているのだろうなと、お礼状の束を見ながら考える。


悪役令嬢の取り巻きではなくなった私。魔力持ちの私。水の精霊が見えて、会話ができるというだけの特技。


自分が知らないところでも、この国が動いている。

そんなに愛国心が強い訳ではないが、貴族としての義務と、宰相であるリオンの妻である事への責務は果たさなければ。


私が彼の役に立てることがあるのだろうか。


守られているばかりではいけない。でも、現状これといって何か出来ると言うことも無い。変わらないなあ、と、思う。


去年、6月夜会でつぶやいたあのセリフ。

チートで無双とか、所詮モブには夢のまた夢

全くもってその通りで、全然変わった気がしない。


回避する事ばかりを考えていた。


でも、破滅フラグはリオンによって叩き折られた。

モブはモブなりに。

今日から私が出来ることを1つ1つ、やっていくのだ。


きっと、これからの方が長い。何もしないで守ってもらうなんて、よく考えたら性に合わない。

8月夜会には、私は彼の横で、彼の存在感に負けない位に悠然と並び立ってみせるわ。

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黎明 ルークスタッドの後日談、連載中 不器用令嬢、騎士になる カイウスの恋愛話、主に嫁視点を書いてます。  こちらもよかったら読んで下さい。
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