元生徒会役員の長期計画とその進捗状況
男達の友情回。リオン、黒宰ですから、もう、腹の中、真っ黒。
生徒会時代の役職名で呼ぶのは、アダ名みたいな物です。
ベタ甘が好きな方には申し訳ないです。
次回は、甘く振り戻します。
「さて。会長。久しぶりに、元生徒会役員会議でも開きましょうか。」
タリスが笑う。
「ああ。いつも通りに。」
会長と呼ばれたリオンが返答すると、タリスが結界を張る。
「ふん。変わらんな。」
カイウスがニヤリと笑う。
「本当。1番変わってないの、副長だよね。生徒会副会長から騎士団副団長。ずーっと副長でいる気?」
タリスが揶揄うように、カイウスをつつく。
「団長とか面倒だろ。団長やれる奴がいる間は、俺は下で好きに動くんだよ。」
「カイウスは暫くはそれがいいだろう。」
リオンが静かに言う。
「会長ー?解ってる?今日は、会長の為に来たんだけど。」
「ああ。」
リオンの腕の中で、レイローズは、静かに眠っている。
「まさか、お前が女に現を抜かすとはな。」
カイウスがニヤリと笑う。
「君に言われたくないな。奥方と、息子さんは息災か。」
「まあな。だが。ただの副長の俺の嫁と違って、お前の嫁は狙われるぞ。今は生徒会長じゃなくて、宰相様だからな。」
「そうだよ会長。嫁にするって事前連絡はあったけど、こんなに早く囲い込むなんてね。」
「うるさい書記。黙れ。」
「あははっ。」
タリスが笑う。
集まるのは久しぶりだ。約2年ぶりか。
同窓会みたいなものだ。
さて。学院時代の、元生徒会役員三役が揃った。会長はリオン。副会長はカイウス。書記にタリス。あの頃、3人でどう生徒会を運営するのか、学校の流れも考えて動いていた。幼馴染みのリオンとカイウスにタリスが後から加わった形だ。
そのうち、3人で集まったら、国の情勢の話しをするようになった。疑問点、改善できる事、改善する方法。そのうち、自国の事に留まらず、周辺国を見て議論を交わした。
勿論、主導はリオン。初めは軽い議論でしか無かったが、徐々に議論のレベルが上がって行った。
学生の彼らにとっては、机上の空論でしか無かった。しがらみに囚われたまま、為すすべも無く放置された問題を、大人達がどうして対処しないのか。自分等が卒業した折、どう動けば、この思いついた計画を実現できるのか?という話になった。彼らの目標は、特権階級に搾取され続ける市民の生活の向上と、さらに市民の下層に位置づけられる、低民と呼ばれる奴隷に近い扱いをされる民の解放。
学生であった彼らが目指すには、とても高い理想。
その長期計画の一つが、国の宰相にリオン。軍部を束ねる騎士団長にカイウス。魔術師にタリスが着くことで、権力基盤を作るという計画だったが、タリスは表に出ずに魔道具師として自身を普通に見せかけて魔道具の作成と諜報に回った。事実、それでもうまく機能している。国の筆頭魔術師は、彼の力量の1/10にも届くのだろうか。急激に変革は起こせない。自国だけの問題ではない。
「会長。それで、今後はどうするつもりだ?ここ2年、細かな話はしていないだろう。元々、愚鈍な王はそのままに、冴えない第1王子を後継に付け、第2王子は俺の部下の1団1番隊。第3王子はどこか隣国に出すつもりだっただろう。だが。第3王子はお前が知恵をつけ過ぎたな。」カイウスがニヤリと笑う。
「そこは、予定通りに動く。」
「予定変更して、第3に立太子させるのかと思っていたぞ。」
「アーサーが王か?ないな。少し勉学を教えただけだ。」
「では?」
「南方の小国、リレイラは跡継ぎに王女1人だ。そこに送り込む。」
「リレイラと縁づいて何になる?」
「リレイラの北、我が国の南に隣接するホバルは、海岸線が砂浜で緩やかすぎて、貿易船を着岸するに向かない。リレイラを整備して、貿易船並びに、移動航路の一大中継地とする。更に南方のリドラス諸島や、東西の貿易拠点とする。」
「リレイラの王が、他国の王子を婿に入れるのに首を縦に振ると思うか?乗っ取りと変わらん。」
「もちろん。アーサーに王女を落とさせるさ。その他にも、ここ1年でリレイラの港の使用割合を増やして来た。もうすぐ、リレイラにおける船の寄港は我が国が7割になる。湾岸整備においても、補助している。拒否するならば、寄港補給地を一気に分散して変更し、リレイラの港湾使用料を落とす。立て替えている港の整備費用は一括請求する。」
「小国相手にえげつないな。」
「ただの属国扱いに決まっている。直接、統治すると面倒だからな。アーサー王子にも、貿易に関してはほどほどに叩き込んだ。だが、アイツは外交下手だからな。ルークスタッドをアーサーに同行させ、のちにルークスタッドをリレイラの外相に就任させる。アーサーも、気の知れたルークスタッドを重用する他あるまい。」
「なるほど。だが、そうなるとホバルが黙っていないぞ。」
「ホバルの王政は、軍部が牛耳っているからな。クーデターを起こそうとしている貴族や民衆がいるのは知っているだろう。時期を見て、民衆からクーデターとなるように煽る。そこに、軍部と対立しているクリード卿を支援し、旗印とすれば、立派な新しい国の誕生だ。」
「クーデターとなれば数年は落ち着くまい。ゴタゴタしている間にってヤツか。そう、上手くいくかな?」
「クーデターは時間の問題まで来ている。我が国が介入しなければ、失敗するだろう。既に、民衆は、クリード卿を持ち上げている。そこに我が国が費用と武器を提供して介入するからこそ、クーデターは成功する。クリード卿も、そこが解らぬほど馬鹿ではあるまい。卿とて、すでに軍部に命を狙われている。ここで踏ん張らねば、亡命者となる他ない状態だ。ホバルの凋落が明日だろうと、1年後だろうと、アーサーを送り込むのは2年後だ。欲を言えば、クリード卿に、我が国の者と政略結婚をして貰いたかったが。ホバルの者と既に結婚している上、仲の良さは有名らしいから無理強いはできないな。」
「ホバルの軍部の奴等はどうする?残党を残せば禍根を残す。」
「完膚無きまでに叩き潰す方がいいだろうな。だが、それはクリード卿がやる事だ。我々が手を汚す事はない。残党が残れば、国がうまく回せないだけだ。こざこざと内紛を起こすかもしれないが、その時は、クリード卿を支援して貸しを作っておけばよい。難民が出ないように、事は王都内だけで済ませて、なるべく無血開城に近い形に持って行く。
卿への援助の見返りに、ホバルが持つ、少ない港湾施設の使用権とホバル国内の通行権をもぎ取る。」
「わかった。では、国内の、パリッツアー公爵家が、西のスルホと繋がろうとしているが?西を治めるバルドー辺境伯と癒着した訳ではなさそうだぞ。だが、放っておくと公爵家だけに、面倒だ。」
「影の者から聞いてはいるが。どちらの目的もまだはっきりとしていない。スルホの目的は、バルドーの水源だと推測するが。タリス、何か聞いているか?」
「スルホの目的は水源で間違いないよ。パリッツアーは馬鹿だからね。君を怒らせた馬鹿息子、いたじゃない?アレをスルホの貴族に婿に出してしまいたいみたいだよ。でも、あの馬鹿、婿入り先が侯爵家で格下だと馬鹿にしてるみたいだから、このままだと上手くいかないね。第1、水源の管理権は国なのに。パリッツアーって、国の資産を勝手に売買しようなんて頭湧いてるんじゃない?」
クスクスとタリスが笑う。
そう、リオンとカイウスが議論し、そこにタリスが情報を提供し、また、3人で話しをする。これがいつものパターン。
タリスは情報収集は得意だが、分析と対策が甘いと自分で解っている。どれだけ魔力量が高くても、圧倒的に知識とそれを発揮するセンスが足りない為、自分より魔力が低いリオンに勝てる気がしない。敵に回すより、味方でいるほうがずっと楽だし、楽しいと思っている。
「わかった。パリッツアーの監視を強化する。スルホに水源を取られるという事は、バルドー辺境伯にとっても損失だからな。伯にも情報を流して、警戒に当たらせるようにしよう。伯の監視が強まるだけでも破綻しそうな、緩い計画のようだな。」
リオンが静かに頷く。
「ねぇ。でも、2人とも、今日の議題は、レイちゃんをどう守るか?なんだけど?」
議論が止まらない2人を止めるのは、いつだってタリスだ。
「ああ。そうだったな、リオンすまない。」
カイウスがやっちまったとばかりに舌を出す。
「なぁ。その娘の何に惚れたの?」
続けてカイウスが尋ねる。
「君に答える筋合いは無い。」
素っ気ないリオン。
「あーあー。本気だよ、コイツ。タリス、知ってる?リオンって、昔っから、大事な物は隠すんだぜ。」
「んー。知ってる。僕も一昨日、エライ目にあいそうになった。」
こういう時だけ、カイウスとタリスは結託してリオンをいじる。
「君達。解ってるだろうね?」
「おー、リオン怖っ。怒るなよ。騎士団から、女性騎士のリンゼイとルルーを専属として直接警護に寄越すよ。対外的にも守られているアピールは必要だぜ。」カイウスがすかさず返答する。
「僕としては。この新しい別邸に、魔道具を使った結界を張る事。彼女の体調が落ち着いたら、リオンにしたように、彼女も、魔防の刻印を身体に入れて欲しいけど。7月には入れられるといいなあ。そうしたら、守りも楽になるよ。」
カイウスとタリスの提案に頷く。
「ああ。あと、レイローズは薬剤耐性が非常に低いと思われる。タリス、何か無いか。」
「薬剤耐性は難しいよね。解毒作用のある魔石を身につけるくらいかな。」
「用意してくれ。」
「分かった。最高純度の物を、明日までに届けるよ。」
「リオン。しばらく。夜会には連れて来るな。人が多いと対策が取りにくい。王が開く8月夜会は必須だろうから、それまでには警護の準備を整える。解っているだろうが、俺の嫁は元、騎士だからな。8月夜会は、よそのご婦人とは挨拶程度で、お前が側を離れる時は、俺の嫁と待機させろ。」
「わかった。」
「今度の結婚式とパーティーに、嫁も連れて来るから、しっかり顔合わせさせろ。」
「そうだな。」
「それから。お前、王城内でレイちゃんからかってベタベタすんなよ。」
カイウスの言葉に、リオンが睨む。
「なぜ、君までそう呼ぶ。」
「タリスに合わせただけだし。」
「不要だ。」
「いいじゃねーか。俺の嫁にもレイちゃんって呼ばせてやるからよ。」
「幼児のようではないか。」
「カイウスは、リオンからかって遊んでるだけだけだと思うよ。」横からタリスが口を挟む。
「カイウス!」リオンが声をあげるが、
「何ー?僕も混ぜてよ。」と、タリスが会話を遮る。
「全く、君たちは。」
呆れたように、ため息をつくリオン。
「いいんじゃねーの?リオンが楽しいんなら。仕事の会話以外の事を話すリオンなんて、珍しいと思うぞ。やっと、リオンが好きなもの見つけたんだから、俺らは俺らなりに協力するさ。」
「そうだねー。」
カイウスも、タリスも穏やかに笑う。議論ではない雑談をしたのは、本当に、何年ぶりなのだろう。
「ただ、覚えておけよ。守られている奥さんより先にお前が死ぬ事は、絶対にあってはならない。お前は、俺たちの要だ。司令塔は安全圏で高見の見物でかまわない。絶対に害されるな。」
急に。カイウスの、視線が鋭くなる。
「そうだね。僕達は、まだまだ、やる事がある。」
タリスは優しいが、どこか冷たく言い放つ。
「解っている。私達は、まだ、定めた目標の1割程度しか達成していない。ただの過程だ。」
議論に夢中で、一口も口にしていなかった冷めきったお茶を、誰からともなく手に取り、3人で口にする。
やらなければならない事は、未だ変わらず、山積みであり、自分達が守らないといけないものが、護りたい物が、増えて行く。
どんなに策を練っても、手を尽くしても、絶対はあり得ない。だから、用心深く、蟻の一穴をも塞ぐように、一つ一つ積み上げていく。彼らの理想に近づいてゆく。
「おじいちゃんになる前には、やり遂げたいねえ。」
タリスがおどけて笑う。
「お前、じいさんと呼ばれたいなら、結婚しろよ。」
カイウスの突っ込みに、タリスは笑って返事を返さなかった。
個性もバラバラ。同じ方向を向いているようで、個々の生活を大切にしている。
集まると結束は固い。
何なんでしょうね?
あの、入り込めない雰囲気。女の友情とは違うもの。
彼らはもう、同志みたいなもので、腐れ縁です。
軽く流しましたが、タリスの話も番外1話ぐらいで書けたらいいなと思ってます。でも。時系列的にかなり後になるので。とうぶん陽の目を見る事がないなと。




