魔力酔い
レイローズ視点
短めです。
気分が悪い。グラグラする。頭が痛い。吐きそう。何だこれ。
目が覚めて、一番に感じたのが、これ。もう、目覚め最悪。
周囲が薄暗い。今、何時なんだろう。
ここは・・・。自分の部屋だ。夫婦の寝室ではない、自室のベッド。
「奥様。目が覚められましたか?」
メイドのアリスが声をかける。
「ええ。」
のどが痛い。声がかすれる。
「お水を。起こしましょう。」
支えられて座る。カップを口元に持ってこられて、1口飲むが、もう、限界だ。
アリスの手を振り払うようにして、横になる。お世話してくれているのに、ごめん、アリス。
「今、何時?」
「6時半でございます。奥様は、昨夜より、丸1日、眠っておられました。」
丸1日???ああ。昨日、リオンと一緒に魂結びの術をかけてもらいに行ったのだった。それから、気分が悪くなって。そのまま倒れてしまったのかしら。
「リオンは?」
「旦那様はいつも通り、朝から王城に出仕されました。いつも通り戻ると話されておりましたので、もうすぐお帰りになると思います。」
そうか。リオンは仕事か。どうして私はこんなに気分が悪いんだろう。術の影響なのか。
自分の内に、自分では無いものの存在は感じる。グルグルと回るそれが、平衡感覚をおかしくしているようだ。横になっていても、部屋が回るような感覚が時折襲う。めまい?今まで、そんなこと、なったことない。これはキツイな。起き上がれそうにもない。
誰か助けて。胃の中は空っぽなのに、吐き気が込み上げる。
耐えるしかないのか。
意識が朦朧とする。何分経ったのわからないが、人の声がすると思ったら、リオンがいた。
お帰りなさいって、言いたいけど。声が出ない。
フワリと抱え上げられる感覚。それに続いて世界が回る。グラリとして、目を閉じる。手も足も、自分の物ではないように感覚が鈍い。
どこかに連れて行かれているようだが、わからない。
しばらくすると、吐き気とめまいが治まってきた。目を開けると、リオンの膝に乗せられている。
「リオン・・・?」
「気がついた?」
「ごめんなさい、私・・・?」
「謝らなくていいんだよ。むしろ、謝るのは私の方だ。ずいぶん、君に無理をさせた。タリスの会話を君がどこまで覚えているかわからないが。私は6属性だ。私の混じり合った魔力が、君と交わした術の中で、きれいに混じり合うまでは、副作用のように君を苦しめる。・・・すまない。」
「いいえ。・・・いいえ。ありがとう。リオン。」
「私はもう体内の魔力が安定しているから、私の近くにいることで、君の内にある魔力も安定させる事ができるとタリスが話していた。気分は、どうです?」
心配そうにのぞき込まれる。
「さっきより、ずいぶん楽だわ。」
「水を飲みなさい。何も口に入れていないと聞きました。」
リオンに水を飲ませてもらう。
「何か、食べますか?」
「まだ、無理かな。」
撫でられているうちに、そのまま眠ってしまったようだ。
朝、目が覚めると、リオンが横に寝ていた。と、言っても、横になって私を見ていた。
起きたときにリオンがいるなんて、初めてだ。
ふっと笑い、「おはよう」と、やさしく髪を撫でられる。
「おはよう。」
今日は、昨日と違って、ずいぶん調子がいい。そう思って起きようとすると、また、世界が回った。
「ローズ!」
あわてて起き上がるリオンに抱きしめられる。浮遊感が消える。
「離れると駄目みたいですね。」
ベッドの上で抱きかかえられる。甘やかされるのは、いつもの事だけれども。これでは、お手洗いに行くにも思いやられる。
結局。お手洗いの中、ギリギリまで連れてこられるという、恥ずかしい目に遭いました。
「休日でよかったですねえ。」
なんて、にこやかに言われながら、リオンの膝の上で朝食を摂った。
昼前に、カイウス副騎士団長と、昨日会ったタリスさんが来るらしい。
着替えもすべてにおいてべったりで。もう、今日は恥ずかしすぎる事ばっかり。
でも、お客様が来られるなら、ちゃんと座ろうと思っていたのに、リオンは膝の上から全然離してくれなかった。
「よお、リオン。ここに引っ越してから来るの、初めてだな。」
部屋に入るなり、とても親しげに話されるカイウス副騎士団長。
「そうだな。副長はここは初めてか。」とは、リオン。
「僕は1回だけ、魔道具持ってきたぐらいかなあ。」入室しながらタリスがのんびり話す。
「さて。久々にのんびり話そうとするか。」
勝手にどっかりとソファに座ったカイウスの声かけに、リオンもタリスも無言で頷く。
何だかとても、仲の良さそうな空気が流れている。挨拶をしなきゃ・・・。
「レイちゃんは、やっぱキツそうだね。」
と、タリスが言うと、リオンがギリッとタリスを睨む。
「何だ、その呼び方は。」
「んー。だって、リオンの奥様とか、奥さんとか毎回言うの面倒だし、君がローズって呼ぶなら、呼び方は変えないと、君もっと怒るでしょ?」
「当たり前だ!」
「レイちゃんは、まだ、キツそうだから、ちょっと寝てなよ。」
タリスさんの言葉に、えっ?私、まだ、挨拶も出来てないんですけど?って思ったのは覚えているのだけれど。どうやら私はそのまま意識を失った。




