↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

ep9 - 成長の兆し

「そろそろ行くか。」

そう言うと、自分と少女は立ち上がる。

「あとどのくらい登るんだ?」

「あのあなと、おなじたかさぐらい。」

少女が指を指す先には、大きな穴がある。

なんとなくあれが太陽を吸い込んだのかとわかる。

「結構遠くないか?」

「そこまで。ちつじょのないせかいでは、みえるもうたがわなければならない。」

「つまり、距離は見えてるままじゃないってことだな。」

「そういうこと。」


そこからは、最初の方と同じような方法で登って行った。

「どっこいしょっと。」

慣れた手つきで、浮島を登る。

そして手を伸ばし、少女の手を掴む。

引き上げて、また登る。

運動不足だった自分も、スムーズに登れるようになってきた。

……そういえば、穴の量が減っている気がする。

地上には銃みたいな装置で消さなければ一歩も進めないぐらい密集していたのに、今や少し避けるだけで難なく進める。

そんなことを考えていると、少女がじっと一つ上の浮島を睨んでいた。

またジャンプして登ろうとしているのか。温かい目で見守ろう。

「ふん!」

そうやって声を上げてジャンプする。

少女は腕をぐっと伸ばす。すると、指が段の上に引っかかる。

力を入れると、一つ上の浮島に登ることに成功する。

少女は自分が登れたことに驚き、少し黙ってから、喜ぶ。

「やった!」

「やるじゃん!」

なんだか、こっちも嬉しくなる。

成長を感じるなと、しみじみ思う。

自分も登ろうとして上を向く。

すると自慢げな顔をしながら少女が手を伸ばしている。

「引き上げてやんよ!」とでも言っているかのようだ。

それに甘えて、その手を握る。

が、流石に成人男性を引き上げることはできなかったようで。

両手を使って踏ん張ったあと、少女は諦めた。

自力で登ると、少女が地面に大の字になって転がってる。

「いつかひきあげてやる。」

「おう!がんばれ。」

そう言って励ます。

そこからまた、浮島を登って行く。

……宇宙に空気があるのは突っ込まなかった。


 ○


「これはまた……すごい光景だな。」

あの大きな穴を中心に、土星の輪のように浮島が漂っている。

その浮島にたちながら穴を眺めると、その巨大さを実感する。

秩序のない世界ではこの位置に太陽があったのか、とか色々想像できるが、やはり幻想的とも言える光景の前では考えるよりも凄いという感想が先に出てくる。

「で、ここから情報を広げるんだっけ?」

「よくおぼえてた。このそうちをつかって……。」

少女がそう言いながら、腰のあたりに触れた時だった。

大きな鼓動の音が聞こえた。心臓が脈打っている音だ。

「なんだ!?」

驚いて周りをキョロキョロと見渡すと、少女が前に倒れそうになっていることに気がつく。

焦りながら近づき、受け止める。

少女は俯いており、顔が見えない。

「おい!どうした!また何か……!」

「大丈夫。」

少女の話し方が、急に流暢になった気がした。

と、考える間もなく。

左腕に強い痛みが走る。

「うぐっ!?」

痛みがある方を見ると、深くナイフが刺さっている。

そのナイフを刺したのは、目の前にいる少女だった。

直感的に、その少女が今までの少女ではないことを理解する。

痛みに耐えながら、後退りをする。

「お前は誰だ!」

紅色の血が地面に染み込む。

少女はゆっくりと立ち上がり、振り返る。

「何を言う。」

少女は口を開く。

見えた顔の瞳は、今までの少女のそれではない。

純粋と言うより、狂気的。いや、純粋な狂気の目をしている。

コオオオオオオと、今まで黙っていた穴が風を吸い込み始める。

少女の長い髪が、暴れるように揺れる。

「本来の、私よ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。