ep7 - 少女の噂
「人造人間だ。」って言われると、絶対に驚くべきだろうか。
でもなんやかんやありすぎて、正直驚きが無い。
「それで?人造人間ってことはロボットなのか?」
聞き返すと、
「うぉい!今驚くところだぞ?!」
と、真っ当な返事が返ってくる。
「いやあ……なんか色々ありすぎて……。」
頭の後ろをさする。
「大変なんだな。まあ、いいや。人造人間って言ってもロボでは無い。人に機械で作られたってだけで、素材とかは一緒だ。あとは頭の一部が万能辞書みたいになんでもわかるようになってる。」
「なるほど。だからあんなAIみたいな返事を。」
「それはあの子がしたのか?」
「そうだ。」
「ならあの子限り、そんなことになってる。」
自分は首を傾げる。
「あの子は、ちょっと生まれるのが早かったらしい。」
「早かったっていうと……どういうことだ?」
男は少し笑う。
「そりゃあわからなくてあたりめえだ。まあつまり、未完成の状態でロボットができたみたいな感じだ。そのせいで色々不完全になってる。」
「あー…じゃあ文字に起こせばひらがなで喋ってそうなあの喋り方も?」
「そうだ。他にも人格が不安定になっているらしい。」
そんな感じに話していると、すっかり自分の警戒は説かれていた。
焚き火の煙がゆらゆらと揺れている。
「こんな凄いことなら、色々終わったあと小説にでもすれば売れそうだな。」
「いいじゃないか。でもちょこっと改変が必要だな。」
「なんでだ?」
そう聞くと、男は地面に枝で一本の線を引く。
「この線が穴についての話だとする。」
「うん。」
男はまたその下に一本の線を引く。
「これが俺たちのことについての話だ。」
「平行だな。」
その線は手書きとは思えないほど、見事に平行になっている。
これも人造人間だからこそできる動きなのだろうか。
「いい小説ってのはこの話が交わっていなきゃいけない。だが、これは繋がっちゃいない。」
「なるほど?」
「唯一の接点は……っと。」
その二つの線に対して、垂直な線を男はまた一歩書く。
「この線。穴を消す役割ってことだけだ。」
「なるほど。」
妙に納得した頃には、夜も深くなっていた。
○
翌朝、ぼんやりとした顔つきで、少女は目を覚ます。
キョロキョロと辺りを見渡すと、先日まで旅をしていた男と、おそらく助けを聞きつけてやってきた仲間の男が寝ていることがわかる。
「……。」
少女は無言でその2人に近づく。
徐に、落ちている枝を手に取る。
そして、いきなり枝を、旅の仲間に振りかざす。
目にでも刺さろうかと思えたその時、隣に寝ている男が素早く目を開け、何かを放つ。
針のように見えるそれは少女の首に刺さる。
「すまんな。」
目の下にクマができた男がつぶやくと、少女はパタリと倒れ、眠り始める。
男は少女を元の位置に戻し、座る。
「なぁ。そりゃあ本来のお前のほうがその体に相応しいなんだろうが、もうちょっと性格を治せないのか?」
鳥が囀っていた。
その鳥も穴にすぐに吸い込まれたが。




