ep6 - 焚き火の火花
少女がいきなり倒れ込んだ。
自分から、汗が吹き出すように感じた。
急いで駆け寄り、なんとか受け止める。
顔を覗くと、少女はグッタリとした顔つきで、なんとか目を開けようとしているのがわかる。
「大丈夫か?」
呼びかけても返事がない。
少女は震える手で手を動かす。
その手は少女の耳にある機械に、触れる。
そして、耳を凝らさなければ聞こえないほどの声で、自分に何かを言う。
「しんぱい…いらない……たすけをよ…んだ。」
そう言うと、少女は目を閉じる。
心配になった自分を置き去りにして、少女は寝息を立て始める。
──信じるしかないか。
自分の羽織って入る上着をたたみ、枕のようにする。
それをそこら辺の木の影に置き、そこに少女を寝かせる。
不幸中の幸いで、浮島はコンクリートではなく、小さな空き地で、地面も柔らかい。
どうしてしまったんだろうか。
暗くなってくる。そこら辺の木の枝でも集めて、焚き火でもするか。
◆
かみさまは、みている。
だから、せかいのためにも、がんばらないと。
がんばれば、むくわれて、きせきもおきる。
違う。
全ては自分の為に動いている。
神?奇跡?疑ったことすらないの?
かみさまはいる。
うんめいのみちびき。
あのおとこにであったのも。
わたしがうまれたのも。
真実を知らないようね、
まあ、無理もないわ。
いずれ解るはずよ。
だって貴女は私なのだから。
◆
焚き火が音を鳴らし、火花を散らす。
それを穴が吸い込んで、音もなく消える。
カバンに入れていた丸くてちっちゃいドーナッツと、穴の空いたドーナッツ。
どちらを食べようか迷ったから、子供の頃にした「どちらにしようかな天の神様の言うとおり。」をして決めた。
丸くてちっちゃい方にした。
十個のうち四つを食べ、残りはあの子にあげようと、紙袋にしまった。
その時、何個か前の浮島に、大柄の男がいるのが見えた。
その男は急いだようにこっちに向かってる。
恐怖した。
デカい男がこんなところまで迫ってくるのを見て怖がらない人はいないだろう。
「誰だ!」
大声で聞く。
すると返事が返ってくる。
「お前こそ誰だ?1145とどう言う関係だ?」
「1145?」
とりあえず穴の作り出した幻影ではおそらくない。
そう考えていると、男の姿が見えてくる。
角刈りの男で、優しそうな顔つきをしている。
服装は少女の着ているのと少し似ている。
寝ているあの子に何かされたら大変だ。
そう思った自分は、少女の近くによる。
その時にはもう男は同じ浮島に登っていた。
「名前を言ってくれ。」
自分なりの威圧的な話し方で言う。
「……すまん名前がないんだ。」
「すごく怪しいぞ。」
「あー…俺はその子の仲間だ。信じてくれ。」
「仲間?」
「ああ。SOS発信機で呼ばれたんだ。」
「その証拠を見せろ。」
「証拠?えーっとじゃあ、これは?」
男は腰からあの銃とは言えない銃のような機械を取り出す。
そして穴に目掛けて弾を打つ。
もはや見慣れたように、穴は消える。
「これでわかったか?」
「まだ完全に信用できていない。」
「じゃあ話をさせてくれ。信用するのはその後でいい。それと、俺はお前を信用しているからな。」
「わかった。」
男は座り込む。
それに合わせるように、自分も座る。
「どこから説明すればいいのかわからないが……あー…じゃあ、俺たちについて説明しよう。」
男は少し息を整えた。
「俺と、その子は簡単に言うと、世界各地に発生する穴を消すことを目的としている組織の一員だ。だから連絡が取り合えるし、服だって似ているだろう?これは制服だ。」
「……続けて。」
「それで、こんな事態になったのは初めてだ。いつもは少ししか出ない。」
「お前の仲間は?」
「ほとんどが吸い込まれちまった。残っているのが確認できたのは、俺とその子だけだ。」
「組織っていうのは、どういう人達でできている?」
男は、少し間を開ける。
少し苦しそうな、そうでもないような少女の寝息が響く。
男は驚くなよと言わんばかりに、真剣な趣で口を開く。
「人造人間だ。」




