表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
6/10

第6話:世界一平和な「首都」で、最強の害虫駆除(?)が始まる

「最高評議会議長就任のご都城……じゃなくて、ご就任のお祝いに、これを!」


ガランデル将軍が持ってきたのは、なぜか純金でできた巨大な玉座――ではなく、世界樹の枝で作られた『最高級のロッキングチェア』だった。

さすがに玉座は恥ずかしすぎるが、ロッキングチェアなら縁側に置ける。俺は渋々それを受け取り、ため息をつきながら腰を下ろした。


「……ふう。まあ、座り心地は悪くないけどさ」


ここは、かつての『呪われし魔の森』。

今や両国の軍隊が警備を固め、世界中から集まった商人や観光客(?)が物見遊山で押し寄せる、大陸随一の『世界首都』である。

俺の家(世界樹の根元のログハウス)の周りだけは、相変わらずマイペースな空間が保たれているが、一歩外に出れば「神聖庭師様を一目見よう」とする人だかりで大賑わいだ。


「ねえレント、お腹空いた。今日はあのモフモフのクマくんと一緒に、甘い木の実のタルトが食べたい!」

ルルが俺の膝にぽふっと頭を乗せ、ぐりぐりと甘えてくる。

その傍らでは、かつてのSランク凶獣・モフモフ大先生が、すっかり大型犬のようになって尻尾をパタパタと振っていた。


「はいはい、今焼くから待っててくれよ」


俺が庭に新しく設置した『特製石窯オーブン(※世界樹の魔力を帯びているため一瞬で焼き上がる)』に向かおうとした、その時だった。


――ズズズズズ……ッ!!


世界樹要塞の空気が、ピシリと凍りついた。

首都の周囲を取り囲む結界の向こう側から、これまでにないほど禍々しく、おぞましい「邪気」がじわじわと這い寄ってくる。


「……ん?」

俺の手が止まる。

ルルがピクッと耳をそばだて、面倒臭そうにため息をついた。

「あーあ。せっかくのおやつの時間に、嫌な虫が湧いてきたね」


ゴゴゴゴゴ……ッ!!

地平線の向こうから現れたのは、漆黒の瘴気を纏った巨大な影の軍勢。

かつて世界を滅ぼしかけた伝説の厄災――『魔王軍の残党』、そして封印されていたはずの『太古の邪竜(ラスボス級)』だった。


「ククク……! 聞けば、この地に人間の小僧が調子に乗って『世界首都』などというお遊戯を始めているそうだな!」

邪竜の背中に跨った魔王軍幹部――骸骨の姿をした最高幹部・ネクロデスが、空を覆うほどの黒い魔力を放ちながら哄笑する。


「その神樹とやらも、我ら魔王軍の『暗黒の苗床』にしてくれるわ! 人間ども、絶望してひれ伏せ――!」


首都の周囲に陣取っていた帝国軍と王国の近衛騎士団が、一瞬で顔面蒼白になり、腰を抜かした。

「ば、馬鹿な……! あの邪竜は、かつて一国を滅ぼした伝説の……ッ! 我らの武器では歯が立たない!」


絶望の空気が、一瞬で世界首都を支配する。

――が。


「……あのさあ」


俺は持っていた泡立て器を置き、じっと眉間を押さえた。

せっかくの休日だというのに、いい加減にしてほしい。今からタルトを焼こうという最高のタイミングで、なんでわざわざゴミを撒き散らしに来るのか。


「せっかく綺麗に整えた庭に、そんな汚い泥を引っ掛けないでくれるか?」


俺が低く呟いた、その瞬間。


ビュオッ……!!


俺の怒り(というか面倒くさいという感情)を察知した世界樹が、怒涛の勢いでざわめいた。

それはルルが指示したわけでもない。世界樹自らが、「我が主(庭師)の庭を汚す雑草」を許さなかったのだ。


ドオオオオオオオッ!!


大地から無数の『黄金のツタ』が弾丸のように射出され、空を覆っていた邪竜の軍勢を瞬く間に包み込む。


「なっ……なんだこれ!? 魔力が吸い取られる……っ!? 動けないだと……!?」


魔王軍の幹部も、伝説の邪竜も、抵抗する暇すらなかった。

黄金のツタに絡め取られた彼らは、凄まじい「神聖緑化の光」によって、その身に纏っていた邪気が完全に浄化されていく。


数秒後。

空から降ってきたのは、真っ黒な邪竜……ではなく、なぜか「つやつやと光り輝く、とっても可愛いトカゲのぬいぐるみのような生き物(無害)」と、綺麗に丸洗いされて気絶した骸骨の幹部(ただの骨の置物)だった。


ドサッ、と俺の足元にそれが転がり落ちてくる。


「ふう……。庭の肥料には……ならなそうだな、これじゃ」


俺がやれやれと首を横に振る背後で、帝国軍も王国軍も、そして世界中から集まっていた見物客たちも、全員が完全に言葉を失っていた。

数秒前まで「世界を滅ぼす厄災」だったはずの魔王軍が、庭師の一瞥と雑草処理によって、一瞬で「庭の置物」に成り下がったのだから無理もない。


「……す、すげぇ……」

「神聖庭師様は、魔王軍すらも『ガーデニングの素材』として一瞬で仕留められたぞ……ッ!!」


再び、首都全体が割れんばかりの歓声と、信仰心に満ちた絶叫に包まれる。


「さあ、ルル。タルトの続きを作ろうか」

「うん! あのトカゲくんも、お庭のペットにしていい?」

「……まあ、大人しくするならいいけどさ」


今日も今日とて、底辺職『庭師』の平和なスローライフ(※ただしスケールは宇宙規模)は、穏やかな夕日の中に包まれていくのだった。


(第1部・完? いや、庭の手入れはまだまだ続く!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ