第16話 貴方の心に寄り添う【ユウside】
本日更新遅くなりまして申し訳ございませんでした。
「今日の君は忙しないね」
俺はそう呟くカインに視線を向けた。
「いつもの君なら仕事もキリの良いところで切り上げてそそくさと屋敷へ帰るのに、どんな心変わりがあったんだ?」
俺はその質問を適当に流す。
「私用ができたので暇を作る為に仕事を手早く片付けたいだけです。それよりも早くそちらの資料仕上げてください」
俺が急かすとカインは手元の資料を纏めると済ました顔で俺に資料を突き出してきた。
「もう終わっているさ、それよりもその暇でもしやデートでもするのか?」
そう言いながらニヤニヤとしつこく俺のプライベートを掘り下げようとしてくるカインに俺は内心辟易していた。
「悪いですか?」
そう言い返すとカインは突如愉快そうに腹を抱えて笑い始めた。
「アハハハハ! 本当に君は変わったな。学生の頃なんて教室でイチャついていた同級生に向かって『色恋に現を抜かす時間があるなら勉学に励め!』とキレ散らかしていたじゃないか!」
「そんな大昔の話、既に時効なんですから掘り起こさないでください」
そして俺はカインのフルシカトし仕事を進める。
地域インフラの修繕費予算案、そして数ヶ月後に必要になる年間の税の支出等々。
「はぁ……」
まだ手すら付けられていない仕事の山に俺の頭はズシっと重くなる。
「早く片付けてしまおう」
そうして俺は仕事の山の一つから一番締め切りの近いものを取り出し仕事に取り掛かる。
「でもユウにはいつも助けられているよ、君みたいな優秀な仲間が居れば俺の将来は安泰だ」
そう言ったかと思うとカインは俺を尻目にポケットから簡易の輸血パックを取り出しチューチューと吸っていた。
(こいつ……)
そしてそんなカインの態度に俺は我慢の限界を迎えた。
「さて、カイン様もお仕事がひと段落された様なので、次はこちらの仕事を今日中に仕上げてくださいね」
そして俺はカインの目の前に仕事の山の一角をドサリと置いた。
その資料は俺だけでは完結することのできないものも勿論含まれている。
「君は鬼か! ……全くそんなに根を詰めていたら体調を崩すだろう。だから小休憩くらい容認してくれたっていいじゃないか」
「何を言っているんです? 元から俺は吸血“鬼”なんで鬼で当然です」
「その吸血鬼ジョークちょっと寒いぞ」
「雑談している時間があるのなら早く仕事をしてください」
そして無駄口を叩くカインの尻を叩き俺は再び仕事に取り掛かった。
そしてようやく仕事がひと段落する頃には俺は官邸で丸一週間を過ごしていたのだった。
***
そして訪れた涼香との約束の日。
「はぁ……なんだか落ち着かないな」
既に準備はできているというのに肝心の気持ちの方はかなり高揚しておりとてもじゃないが人様に見せられる様な顔をしていなかった。
「大丈夫だ……過去にも涼香と街を歩くくらいしていただろう」
俺は高鳴る鼓動を落ち着けるべく、大きく息を吸っては吐くを繰り返す。
(このまま格好悪いところを見せる訳にもいかないからな)
「……よし、行こう」
そして俺は涼香の待つ屋敷の玄関まで急ぐのだった。
その後、俺は涼香と合流し街へ向かう馬車に乗り込んだ。
やはり今まで男のフリをして生きていたせいか涼香の私服は女性らしさを一切感じさせないシンプルなものだった。
けれど不思議なことに共に過ごす日を重ねる毎、涼香の時折見せる何気ない仕草は何処か女性らしさと雪の様な儚さを連想させる様になっていた。
(けれど不思議だ、そんなミステリアスな彼女に俺はいつの間にか夢中になっていた)
そして俺の前に座り景色を眺める涼香の横顔をチラリと盗み見る。
月明かりに照らされ浮かび上がる陶器の様な白い肌、景色を追いかける度に揺れ動くアクアマリンの瞳、そしていつも俺の欲を刺激しては惹きつける香り高く何処か妖艶なその首筋。
(……駄目だこれ以上はいけない……)
そして俺は街へ着くまでの間、馬車の窓越しに涼香と同じ景色を眺め気を紛らわせるのだった。
to be continued……
本日から内容を改稿する兼ね合いから一度更新をストップさせて頂きます。
また連載再開いたしましたら報告させて頂きます。




