第66話 (コンフィの章)初めての恐怖
今回はネームド地龍「二本角」との本格戦闘回です。
妖精融合でパワーアップしたコンフィでしたが、
ネームドの魔物は想像以上の強敵でした。
そして、コンフィは騎士人生で初めて
「恐怖」を感じることになります。
果たしてコンフィは、この強敵に勝てるのか――。
・⋯━☞王都北門付近☜━⋯・
《……それと、妖精融合には、
最長、御安眠(約10分)が限度ですわ!》
「わかりました! では、参りましょうか!」
「はい!!」
バシュン!……ギューーーン……
コンフィは、空高く舞い上がった!
飛び上がったコンフィは、一瞬で点になる。
まるでハヤブサのような速さだった。
妖精融合によって、全てのステータスが、
3倍近くにまで上昇!
しかも、妖精の羽によっての、抜群の軌道力。
しかし、妖精融合をしたとはいえ、
相手も常識を超えた存在。
コンフィ1人でネームドの地龍に勝てるのか?
・⋯━☞王都北門付近上空☜━⋯・
ビューー~~~……
バタバタバタバタッ……
「くっ! 空って……
こんなに風の音が強いなんて……」
耳を擦る風の音がビュービューとうるさい。
ドレスの袖口や裾などが風に当てられ、
バタバタとうるさく鳴る。
《人は空を飛ぶようには、
できていませんからですわ~》
「そうなのですか?」
《そうですわ! 空を飛ぶ鳥たちには、
風の音の中で余計なノイズをカットする
能力が元々備わっているのですわ!》
「へ、へぇ……そうなのですね!」
《はぁい! ですから、風の音と、
獲物の声や羽ばたく音とかも、
聞き分けられる能力などもありますわ!》
「すごいですわ! 羨ましい……」
《試してみますか?》
「えっ?!……できるのですか?」
《できますわ! では……
︎︎゛鳥の身耳スキル付与!》
キン!……
「トリノミミミスキル?」
「鳥の羽根と耳の効果や能力を付与する
スキルだと思ってくださいませ」
「わっ!…………わあ! すごぉい!!」
プチコンフィは、そう言って、
コンフィの耳に、「鳥の身耳スキル」を付与!
キン!……と金属音のような音が、
聞こえたかと思った次の瞬間!
さっきまでビュービューと、うるさく
鳴っていた風の音が、ふっ……と消えた!
「流石ですわ!
これでプチコンフィとの念話にも、
集中できますわ!」
《ふふふ これくらい当然ですわ!》
「でも、この体の痛みには、
あまり長くは耐えられそうにありませんわね
さっさと、片付けましょう!」
《そうですわね!》
「むん!」
ギュン!
コンフィは、速度を上げるために、
落下角度を直角に向ける!
更にスピードを上げて、
ネームドの地龍(二本角)に向かって迫る!
ギューーーン……
「いきますわよ!」
《はぁい! 大剣に魔力を集めますわ!》
「うん! お願い!!」
ブォン!……
コンフィは、背中の妖精の羽を、
真横から斜めにし、風の抵抗を減らす。
プチコンフィは、コンフィの構える大剣に、
魔力を集中させる!
二本角は、前を向き突進しているので、
上から迫り来るコンフィには気づかない。
チャンスである!
「つええいっ!!」
グルッ!!
コンフィは、両手で構える大剣を振りかぶり、
体をクルリと180度回転させ背面飛行!
そして、突っ走る二本角に合わせて
軌道修正しながら…
「ここです! つえええいっ!!」
ブォン! ガツン!!
大剣の一撃!
「なっ?!……」
《ええっ?!》
ビューン……
そのまま通過退避!
「つっ……なんて硬さですの?!」
《うそっ!……》
コンフィは、逆さまの姿勢で二本角の真上で
大剣を振り、二本角の背中を斬る!
だが、岩でも切りつけたかのように硬い!
有り得ない!!
コンフィは、妖精融合してパワーアップし、
更に大剣に魔力を込めた渾身の一撃なのに、
二本角の背中に傷を与えただけ?!
ギューン!……
「くっ!……」
コンフィは、そのままの速度で空へ昇る!
振り返ると、二本角は立ち止まり、
見上げて、真っ赤な目でコンフィ睨む!
どうやら、コンフィに注意を向けたようだ。
だが、普通サイズの地龍は、
未だに王都に向かって走り続けている。
「どうしてですの?! なぜ効かないの!!」
《どうやら最初からわたくしたちに、
奴は気づいていたようですわ!
大剣の攻撃を受ける瞬間に、
魔力で皮膚を硬化させたようですわね!》
「なんですってぇ?!」
コンフィは、最初から二本角にバレていた?!
やはり、ただのネームドでもなさそうだ。
奴は、かつてグラムレスが捨て身で倒した、
「一本傷」よりも強いのかもしれない。
グラムレスは、かつて、「一本傷」と呼ばれる
ネームドに対し、片腕を失う覚悟で対峙し、
なんとか倒した事があった。
その時に、ポーションと間違えて、
「女装剤」を飲まされ女の子になってしまい、
今では、「ビオラ」という名の女騎士団長だ。
しかし、コンフィが対峙している、
今回のネームドの魔物の「二本角」は、
一本傷よりも更に巨体で、強力な存在だ!
ビオラは、片腕を失う捨て身でやっと倒した!
なのに、この二本角はコンフィに倒せるのか?
コンフィはビオラのそんな事情を知っていた。
だが、コンフィは一本傷を見た訳ではない。
なので、正確な力差は把握できないが、
絶対に二本角の方が圧倒的に強い!
と、思った。
「どうしてこんなに硬いのですの?!」
《きっと、魔物化して長いために、
魔力を使って硬化する事を覚えたのでしょう
つまり、賢い魔物ってことですわ!》
プチリアの言う「賢い魔物」とは、
負の感情や戦争などで出た過激な感情の乗る
魔力を多く取り込んだ魔力を吸い込み、
魔物化したという事である。
つまり、人の念を多く含むため、
賢くなったと言えるだろう。
「なるほど! 賢い魔物……って訳ですわね!
でも、確実にダメージは与えているはず!
このまま同じ攻撃を続けますわよ!」
《了解しましたわコンママ!》
ギューーーン……
コンフィは、できる限り空へ昇る!
上昇が止まるまで高く飛び続ける!
そして、上昇が止まったと同時に体を回転させ
真っ逆さまに降下し速度を上げる!
「んんんんーーーー!!」
ギュウウウウーーーーーーン!
《………………》
落下しながら二本角を見ていると、
二本角は何もしないまま落ちてくるコンフィを
微動だにせずに睨みつけている。
「ふっ……不気味な奴ですわ」
《……何か変ですわね》
「!?……どうしました? プチコンフィ」
《コンママ!! アイツ何か狙ってますわ!!》
「はっ?!」
「ゴワアッ!!」
「!!??」
《!!??》
二本角は、突然口を大きく開けたかと思うと、
口から鳴き声に乗せた衝撃波を放った!
ボオッ!!
「ぬっ!!」
《避けてぇ!!》
「くっ!··········」
ブオオオッ!!
二本角の放った衝撃波は音速で迫る!
全速で落下するコンフィには、
避けられなかった!
バン!!
「ぎゃはっ!!」
《きゃあ!!》
ギュルルルルル··········
コンフィは全速で落下していたので、
音速で迫る衝撃波を避けようと体を捻るが
間に合わず、衝撃波を受けてしまった!
直撃は避けられたが、かすってしまったため、
バランスを崩し、きりもみしながら
投げ飛ばされてしまった!
として、地面に叩きつけられてしまう!
ドシン!!
「ぎゃふっ!!」
《ぎゃっ!!》
ギュルルル……
高速回転して飛ばされるコンフィ。
そして地面に叩きつけられた!
ドタッ! バタバタッ……ドササッ!!
「ぐはっ!……」
《ぎゃう!……》
かなりのダメージを受けてしまったコンフィ!
まさか、地龍に衝撃波が打てたなんて……
おそらく、ネームドと呼ばれるだけあり、
特殊なワザを覚えていたのだろうと推測する。
「ゔゔゔゔ……げほっ! げほげほっ!」
《痛い……んんん··········コンママ大丈夫ぅ?》
「ごはっ!」
びちゃ!
《コンママぁー!!》
コンフィは、吐血した!
思いのほかダメージが大きいようだ。
「肋骨が何本かやられましたわ……げほっ!」
《コンママ! コンママぁ!!》
ドドドドドド··········!
「はっ?!」
《きゃあ!!》
なんとか体を捻りうつ伏せになり、
上半身を起こして、視線を二本角に向けたが、
気がつけば、既に二本角はもうすぐ側まで
狂ったかのような勢いで迫っていた!
プチコンフィは、咄嗟にバリアを張るが··········
《ば、バリアー!!》
フォン!!……
ドシーン!!
「ぎゃはっ!!」
《ぎゃっ!!》
バサバサバサッ··········
二本角は、容赦なくコンフィに追突!!
コンフィは、為す術なく弾き飛ばされる!
高速回転しながら手足を遠心力に振り回され、
まるで操り糸の切れたマリオネットが
投げ捨てられたかのように空中に舞う。
そしてまた、地面に激しく叩きつけられた!
バサバサバサッ……ドササッ!!
「げはっ!!」
《ぎゃうっ!》
ドドドドドドッ……
「!!……ううう……(震)」
《いや……いゃあ!》
二本角は、まだ執拗に迫り来る!
もう魔物化しているので、動くものなら、
何でも攻撃するのが魔物なのだ!
この時、コンフィは、
今までの騎士人生の中で、初めて恐怖した!
そんな恐怖感がプチコンフィにも伝わる。
《いやあああああーーー!!》
ブォン!!……
突然、光の球へと変化するコンフィ。
「んなんっ?!」
フワッ……
光の球と化したコンフィは、
素早く空へ舞い上がると、
瞬時にかなり高い位置にいた。
ドドドドドド……ッ
「?!……」
突然、姿を消したコンフィに驚き、
キョロキョロとする二本角。
何が起きた?!
コンフィは、混乱した。
だが今コンフィは、二本角を下目に見ている。
どうやら、瞬時に上空に転移したようだ。
プチコンフィの咄嗟の判断で、
コンフィとプチコンフィは粘魔力化し、
短距離瞬間移動したようだった。
そして、一拍おいて、元の姿にもどるコンフィ。
フォン……
「げほっ! がはっ!
··········あ、ありがとうプチコンフィ」
《い、いえ··········》
恐怖でガタガタと震える手足。
こんなに恐ろしく感じたのは初めてだった。
魔物化した敵と対峙したのも初めてだ。
しかも、相手はネームドである。
また同じ攻撃では通じない気がしてならない。
どうしたら··········
二本角は、相変わらず真っ赤な目をして、
コンフィを睨み続けている。
マジ怖い··········どうしよう?
そうこうしている内に、
妖精融合が解けてしまった!
限界の10分に達してしまったのだ。
元のコンフィとプチコンフィに分かれる。
プチコンフィは、慌てて「浮いて」と叫び、
重力魔法で、コンフィの体を宙に浮かばせた。
パン!··········
「はっ?!」
「あっ!! 浮いてっ!!」
ふわっ··········
「····················」
(立ち止まったままコンフィを睨む二本角)
「もう、御安眠(10分)だなんて··········」
「コンママ! また融合するのなら、
御安眠の半分は待たなければ!」
「う、うん……」
どうしよう……どうしよう……どうしよう……
妖精融合した魔法騎士に変身しても敵わない!
男騎士ドゥークとして地龍と対峙したのは、
最低でも4人でだった。
なのに今はたったの1人。
しかも相手は魔物化したネームドの地龍。
完全に手立て無しであった。
それに、初めての恐怖心で、
大剣を握る手にも焦りと戸惑いが出ている。
と、その時だった。
「コンママ? 100%融合したなら、
アイツに勝てるかもしれません··········」
「100%融合?··········ううむ」
プチコンフィからは、以前にも聞いた事だ。
プチコンフィは、擬似妖精精製時では、
90%がコンフィ要素で、
残り10%はメーべ要素だそうだ。
なので、プチコンフィとの100%融合したなら、
とんでもなく強くなるのは分かっているが、
「拒絶反応」が、必出るはず。
これは、命懸けの100%融合となる。
コンフィは、大剣を握る手に力が入る。
「わたくし、100%融合に懸けますわ!」
「!!……いいの··········ですの?
これまでの融合とは違いますわよ!
きっと、体への負担も桁違いに··········」
「構いませんわ! 覚悟のうえですわ!」
「!!····················わかりましたわ
わたくしも、どこまでできるか、
わかりませんが、頑張りますわ!」
「ごめんね! プチコンフィ··········
プチコンフィにも、痛い思いをさせますわね」
「コンママ! わたくしたちは一心同体!
生きるも死ぬも同じですわ!」
「ええっ! では、プチコンフィ!
100%の融合をお願いしますわ!」
「はい!!」
こうしてコンフィは、プチコンフィとの、
100%妖精融合に挑むのだった。
第66話を読んでいただきありがとうございます。
今回はかなり戦闘中心の回になりました。
ネームドの魔物は、普通の魔物とは
まったく別格の強さという設定です。
そしてコンフィは、ついに
「100%妖精融合」という切り札を使う決意をします。
次回はかなり大きな戦闘の山場になりますので、
ぜひ続きも読んでいただけると嬉しいです。




