第65話 (コンフィの章)わたくしは騎士だから
いつも「女装剤(ある女騎士の事情)」を
読んでいただきありがとうございます。
今回は、コンフィが大きな決断をする回です。
騎士としての覚悟、守る者としての覚悟、
そして少しの無茶と、大きな想い。
フリージアもメーべもいない。
騎士団もいない。
それでも――
「騎士だから」
第65話、よろしくお願いします。
・⋯━☞生徒会室☜━⋯・
コンフィのチビ化は、
もうとっくに治っているはずだった。
コンフィが、アザミ騎士団施設にて、
訓練を行っていたときに、少し怪我をした。
その時、ポーションを飲んだのだが、
どうやらそのポーションは、ヘレンシアが
「女装剤」の呪を解く研究の結果派生した中の
「1ヶ月チビ化」するものだったらしい。
これは、ヘレンシアの研究で効果の期間を
色々と設定した中で、「1ヶ月」の効果のはずが
なぜかコンフィは、もう2ヶ月近くにもなるのに
未だにチビに変身してしまうのだ。
その原因を知るべく、ヴェティーンは
ヘレンシアに話を聞くため、彼女の借りている
ストローム騎士団施設の一部屋へやって来ていた。
「ま、これはまた……」
「ほお? これがチビコンフィ化なのか」
「感心している場合ではございませんわ!
ヘレンシアさんを、お呼びくださいませ!」
「いや、それはできないよ……」
「なぜ?!」
「なにせ、父上……国王からの指示で、
ヘレンシアには、︎︎゛女装剤︎︎︎︎゛︎︎の呪を解く研究を
すること以外には、ストローム騎士団の、
研究室として貸し与えている部屋からは、
出てはいけないという決まりなんだよ」
「なんですのそれ?!
今すぐ国王をここへお呼びなさい!
わたくしが説教してさしあげますわっ!!」
怒とパニックで自分が何を言っているか
理解していないコンフィ。
「ええ?! アン、落ち着いて(汗)」
「おいおい、アンビジョーネ嬢、落ち着け!」
しかし、トラブルというものは、
起こってほしくない時に、起こるもので……
《ウォーン! ウォーン! ウォーン!
マイーヤ北部から地龍が2体接近!》
「「「「はっ?!」」」」
《學園全ての門を緊急閉鎖!
退魔結界をワンランクアップ!》
ポン!
(コンフィのチビ化が解けた!)
「「「「?!……」」」」
「地龍ですって?!」
「アンビジョーネ嬢! 元に戻ったんだね!」
「おおっ! 元に戻った!」
「はい! それより、騎士団の出撃要請が
されないのはなぜですか?!」
「はっ! ラスト、ストローム、オルデン、
そして、ピオニー女騎士団の、
全騎士団は現在マイーヤ南部に出現した、
炎龍討伐に出払っています!」
(シェンブリィ王子の護衛が報告する)
「なんですって!!
正反対の場所ではないですか?! 」
「マズイな……王都には騎士団が残っていない?
これじゃあ、王都が無防備状態じゃないか」
「どうするんだシェン!?」
「ううむ……だが、結界が守ってくれるはず」
「そりゃあそうだが……」
「我ら、アザミ女騎士団が出ます!」
「なっ?! アンビジョーネお嬢様?!」
「「「「はあっ?!」」」」
コンフィが、突然そう言い出す!
フリージアとメーべが居ない今、
アザミ女騎士団だけでは無謀というもの。
「まっ! 待て、アンビジョーネ嬢!
今日は、ライナー嬢、ベルドランデ嬢は、
ま、休みだから出られないんだぞ!」
「そうですよ、お嬢様っ! 危険です!」
「わかっていますわ! それでもです!!」
「「「「はあっ?!」」」」
「いやいや、待て待て! アンビジョーネ嬢!
ベルドランデ嬢が居なきゃ、バフと回復は、
できないのだぞ!!」
「それも、承知のうえです!」
「「「「ええっ?!」」」」
「お嬢様あっ! お考え直しください!!
フリージア様も、メーべ様も不在この時、
無茶すぎます! 自殺行為です!!」
「だから、なんだと言うのです!!」
「「「「はああっ?!」」」」
「バカを言うんじゃねぇよ! 正気か?!」
「アロガンス公爵子息こそ、お忘れですか?!
わたくしは女ではありますが、騎士です!
民を、街を、国を守るために命をかける!
それが、騎士というものです!」
「「「「!……」」」」
「しかしだな、アンビジョーネ嬢……」
「相手は地龍!
空を飛ぶワイバーンならともかく、
地龍なら、正面から戦えますわ!」
「「「「!!……」」」」
コンフィの決意は硬いようだ。
だが、地龍戦の経験は豊富とはいえ、
それは男騎士ドゥークの頃のこと。
女騎士となった今の経験からくる話ではない。
それでもコンフィは引くことができなかった。
「ディア! 學園の転移魔法陣から、
王都北詰の魔法陣へ転移依頼を!
わたくしたちアザミ女騎士団が向かうと!」
「ダメです! アンビジョーネお嬢様!
わたくし、お嬢様の侍女として、
お嬢様が危険だとわかっているのに、
これに従うことはできません!!」
「ま、そうだ! アンビジョーネ嬢!
アザミ女騎士団も、ま、出させないぞ!!」
「!!……そうですか、わかりました!
なら、わたくし1人でも出ますわ!!」
「「「「ええっ?!」」」」
「プチコンフィ! 今すぐ来なさい!!」
「「「「なっ!!」」」」
コンフィは、念話を通して、
プチコンフィに来るように告ぐ!
・⋯━☞學園寮コンフィの部屋☜━⋯・
「はっ?! コンママ?! 今行きますわ!」
シュポン!……
プチコンフィは、コンフィの居る側へ、
妖精空間転移をした!
・⋯━☞生徒会室☜━⋯・
シュパァン!
「コンママ! 来ましたわ!」
「「「「っ?!」」」」
「うん! では、わたくしを、
王都北部の門の外へ転移させなさい!」
「わかりましたわ!」
「「「「ええっ?!」」」」
「待ってくれ! アン!
頼むから落ち着いて……」
シュパァーン!!
「「「「ああっ!!」」」」
しぃ~~~~~~ん……
「「「「…………」」」」
コンフィは、
粘魔力化したプチコンフィと同化して、
空間転移して行ってしまった!
転移魔法陣が使えないのなら、
擬似妖精との粘魔力化による一時的な同化状態
となれば、空間転移は自由自在だった。
「なんだこれは?! マジ行きやがった!
アンビジョーネ嬢、いつのまにここまで……」
「「「「!……」」」」
「なんでだぁー! アーーン!!」
バァン!!
シェンブリィ王子は、机を叩き叫ぶ!
「落ち着けシェン!!」
「チッ! ったく、お転婆令嬢めっ!!
コナ! モカ! 出てきなさい!」
ポンポン!
「「はぁ~~~い!」」
「「「「?!……」」」」
バダーニャは、
自分の妖精のコナとモカを呼び出した。
いったい、何をする気だろうか?
「コナモカ! 私を王都の外へ
転移させられるか?」
「「無理無理~~~(汗)」」
「なっ?!」
「「「「えっ?」」」」
「なぜだ?! 有り得ないだろ!
擬似妖精のプチコンフィにできて、
なぜ純妖精のお前たちにはできないのだ?!」
「だって私たち、粘魔力化できないもの」
「うんうん! そうそう!」
「「「「え……」」」」
「なんだと? 粘魔力化は……できないのか?」
「だって私、粘魔力化する過程を知らないもの」
「うんうん! そーだねえー
それに私たちが粘魔力化すると死んじゃうし」
「「「「はあっ?!……」」」」
「なん……だと……死ぬ?」
そうなのだ。
自然発生した妖精は粘魔力化する記憶がない。
魔力溜まりから粘魔力化し、妖精としての
媒体となる体がつくられる過程で初めて自我が
生まれるため、粘魔力化の経験がないのだ。
なので、粘魔力化する方法を知らないし、
実際に純妖精には、粘魔力化ができないのだ。
純妖精が粘魔力化した場合、自我が拡散し、
事実上の妖精としての「死」を意味する。
「んんんーーああーくそっ!!」
「ま、これは、ま……盲点だったな……」
「影たちに告ぐ!! 緊急事態だ!
今すぐ王都北部へ向かい、
アンビジョーネ嬢を確保せよ!!」
「はっ!!」
シュタタッ!……
「?!……今のは?
アイツは、シェンの影か?」
「そうだ! 僕の影たちに、
アンの確保を命じたんだ!」
「なるほど…それより、俺たちはどうするよ?」
「僕も、アンを追うさ! 決まってるだろ!」
「ん?! そ、そうだよな! 俺も行くぜ!」
「待て! ま、お前たち! 勝手は許さん!」
「うるさい!!
僕の婚約者の命が危ないんだ!
黙って見てるだけなんてできるか!!」
バタバタバタッ!
「あっ! おい、待てよ!! 俺も行く!!」
バタバタバタッ!
「私も、行きますわ!!」
バタバタバタッ!
シェンブリィ王子が生徒会室を飛び出すと、
アロガンス公爵子息とディアも後を追う!
「くわあーー! ま、どいつもこいつも!!」
「んぐぐ……まったくだな」
「ま、ヴェティーン! 私たちには、
ま、何かできる事はないのか?!」
「ううむ……
私は、研究家の魔女だからなあ……」
「うぬぬ! なら、私も行く!」
バタバタバタッ!
「なっ?! ちょっと! なんなのアイツ?
結局、自分も出るんじゃないの……」
結局、ヴェティーンを残して、
生徒会室からは全員がコンフィを追って
飛び出してしまった。
「ふっふっふっ……まったく
愛されているな、アンビジョーネ嬢?
さぁて! では、私も出るかな?」
タッタッタッ……
そう言って、ヴェティーンも、
生徒会室を飛び出した。
そして、その頃、コンフィは……
・⋯━☞王都北門前☜━⋯・
ヒュウゥウゥ~~~……
シュパァン!……フォオオン……
「?!……」
コンフィは、プチコンフィとの一時的な
瞬間融合で王都北門の前に妖精空間転移し、
プチコンフィとの融合を解く。
「ふぅ……転移、完了ですわ」
「ご苦労さま、プチコンフィ」
「どういたしましてですわ!」
ドドドドドド……
「「!……」」
ドドドドドドドド……
「あれですか?
ふっ……もう、猪突猛進ですわね」
「そのようですわ でも……」
「?!……大きい! なんて大きさですの?!」
「ええっ?! 有り得ませんわ!!」
王都北部に現れたという地龍は、
ただの地龍ではなかった。
もう一体は、普通サイズのようだが、
前を走る地龍は、後ろの地龍よりも、
一回りはデカイ!!
「もしかすると、あの大きな地龍は、
今、噂になっているネームドかもしれませんわ」
「ネームド? まさか、︎︎゛二本角︎︎゛ですの?!」
「そう! 普通、鼻の頭に1本しかない角が、
巨大化した地龍に限って、稀に2本の角を持つ
大物に育つ事があるそうですわ!」
「!!……なるほど
出し惜しみはしていられませんわね?」
「そういう事ですわ!」
プチコンフィの言う「出し惜しみ」とは、
最初から妖精融合にて、完全融合に近い融合、
つまり、100%に近い融合をするということ。
妖精融合では、融合率が高いほど、
強い魔法騎士に変身できるのである。
しかし、完全な妖精融合をしてしまうと、
自我が崩壊する可能性がある。
なので、本当ならやりたくはない……
でも、出し惜しみはしていられない!
「プチコンフィ! 完全融合を!!」
「わかりましたわ! ふん!!」
ブォン!!……ブゥウゥウゥ~~~ン……
コンフィの掛け声とともに、プチコンフィが、
粘魔力化し、光の玉へと姿を変える!
そして、コンフィの体に重なると、
コンフィの体も光の玉へと変化し、
等身大の妖精のような姿へと変わった!
コンフィの装備していたドレスアーマーは、
タイトなドレスアーマーに変化し、
スカートがミニスカートへ変わり、
背中には、大きな妖精の羽が生えていた!
「ぐぅ……体中が痛い……
これは、かなり体にキツイですわね」
《わ、わたくしもキツイですわ!
体があるようで無いような……》(念話)
「ふぅ………でも……
なんだか楽しくなってきましたわ!」
《コンママ! これだけは守ってくださいませ!
自分で自分を保てなくなる前に、
必ずわたくしに仰ってくださいね!
限界が来ましたら、融合を解かないと、
とても危険ですから!》
「ふん わかりましたわ!
わたくしが、私で、居られなくなる前に、
妖精融合を解けばよろしいのでしょう?」
《そうですわ! それと、妖精融合には、
最長、御安眠(約10分)が限度ですわ!》
「わかりました! では、参りましょうか!」
「はい!!」
バシュン!……ギューーーン……
コンフィは、空高く舞い上がった!
飛び上がったコンフィは、一瞬で点になる。
とてつもない速さだった。
だが、これは空を飛んでいるのではない。
空高くジャンプして、軌道修正しながら、
加速し落下しているのである。
いくら妖精の羽があるとはいえ、
空を飛べる訳ではないのである。
コンフィの腰の部分に、
空気と真空の混ざった笠ができる!
音速を超えた時に生じる衝撃波である。
地球でこんな事が起きれば、コンフィの体は、
真空の渦に巻き込まれバラバラにされるだろう。
だが、ここは剣と魔法の異世界。
地球での常識や、固定概念や、既成概念や、
物理的法則などは完全に無視している。
しかし、妖精融合をしたとはいえ、
相手も常識を超えた存在。
コンフィ1人で、ネームドの地龍に勝てるのか?
第65話を読んでいただき、
ありがとうございました。
ついにコンフィが、完全に近い妖精融合を
使うところまで来ました。
この力は強いですが、とても危険な力です。
そして現れたのは、ただの地龍ではなく、
ネームドの可能性がある巨大地龍。
果たしてコンフィは勝てるのか。
そして追いかけたシェンたちは間に合うのか。
次回、地龍戦です。
よろしくお願いします。




