第59話 (コンフィの章)母との別れ、そして学園へ
第59話です。
休暇最終日――
母ビゼットとの別れ、そして学園へ戻るコンフィ。
騎士としての自分、淑女としての自分、
そして「コンフィ」としての自分。
揺れる気持ちを抱えたまま、新学期が始まります。
そして生徒会室には、新たな人物が――?
••✼••休暇最終日••✼••
・⋯━☞バリヤージュ邸玄関前☜━⋯・
「体に気をつけるのよ?」
「わかってますわ お母様」
「わかってますわー」
「あの、フリージアとメーべは?」
「もう、とっくに出ましたわよ?」
「そうだったのですね……」
「……あ……ん…………んん……」
ふと俯き、寂しそうな母ビゼット。
何か言いたげだったが、口をつむぐ。
「お母様……」
「奥様、ご心配は要りません!
わたくしが、いつも傍についておりますゆえ」
「……そうね。 うん!
コンフィを、お願いねディア?」
「お任せください!」
(拳をギュッ!と握りしめニヤるディア)
「怖いよ……ディア(汗)」
「怖いですわよ……(汗)」
「……あ……んん……」
(何か言いたげに俯く母ビゼット)
「どうかしましたか? お母様」
「どうかしましたか?」
「いえ、出来ることなら、魔王討伐なんて
貴女には……」
「お母様、きっとシェンブリィ王子と共に、
魔王を倒して、必ず戻ってきますから!」
「戻ってきますわ」
「……そうね うん そうよね」
「…………」
コンフィは、それ以上は何も言えなかった。
本当なら、魔王討伐なんて……
と、思う自分と、
必ず魔王を倒して、この国を平和に!
と、思う自分とがいて、
どちらが、本当の自分の気持ちなのか、
自分自身、分からなくなる。
だからと言って、新しく見つけた自分の可能性
「魔法騎士」になりたい気持ちは断然ある!
ところが最近……そう、母ビゼットに、
「コンフィ」と初めて呼ばれたあの日から、
また違った感情(?)なのかよく分からないが、
淑女(?)とはまた違う何かが芽生え、
「こんなはずじゃなかった感」が否めない。
コンフィの手を握る母ビゼットの手が、
確かに震えていた。
もしかしたら、我が娘を失うかもしれない。
これは、コンフィだって怖いに決まっている。
母ビゼットは、コンフィの手から滑らせるように
そして名残惜しそうに自分の手をスルリと離す。
「では、行ってらっしゃい! コンフィ」
「はい! 行ってまいりますわ、お母様」
「御者さん、お願いします!」
「はい! とお!」
パシッ!
「クワアッ!」(ライドリザードの鳴き声)
ガチャッ!……ガラガラ……
「……お母様!」
ガタタッ!
獣車が、母娘を引き離すかのように走り出す。
窓から身を乗り出すように後ろを見ると、
母ビゼットが、今にも泣き出しそうな、
悲しげな表情で自分を見送ってくれている。
ぶわっ!と、一気に涙が溢れてくる。
心臓を鷲掴みにされているかのように、
胸がギューと苦しくなる。
目の奥と鼻が熱くなり、口の中が涙で
いっぱいになる。
守ってあげたい!
もっと傍に居たかった。
もっと甘えたかった。
もっと母の温もりを感じていたかった。
母ビゼットは、もうほとんど見えなくなり、
小さな点になっても、まだ手を振り続ける。
「アンビジョーネお嬢様? そろそろ……」
「!……ええ、そうですわね」
「……グスン!」
カタカタッ……パタン!
コンフィが窓から身を引っ込めて、
座席に座ると、ディアは窓を閉めた。
「うぅうぅうぅ~~~……あぁ、ダメだ!
チクショウ、チクショウ、チクショウめぇ!」
バタバタッ! ダンダン!
コンフィは、駄々をこねるように、
足をバタバタさせて、そう叫んだ。
すると……
「どおおっ!!」
「クワアッ!」
ガタガタッ!
御者が、突然の音に驚いて、
何事かと慌てて獣車を停めた。
「どうかされましたか?!」
「いえ! 大丈夫ですわ!
お気になさらずに」
「……そうですかぃ? よっ!」
ピシッ!
「クォウ!」
ガタガタッ! ガラガラ……
御者は、ディアの声に首を傾げながらも、
再び、獣車を走らせる。
「……」
どうにもならない、どうにもできない、
自分へのやるせなさが無性に腹が立つ。
そんな、コンフィの想いとは……
「チクショウ……チクショウ……グスン!」
「大丈夫ぅ?」
「アンビジョーネお嬢様……ドゥーク様が、
また出てきていますよ?」
「……ディア? なんで俺は、始めから……
女に生まれてあげられなかったのかなぁ?」
「…………」
「もし、始めから女に生まれてさえいれば、
俺は騎士になろうとも思わなかったのかな?」
「…騎士になった事を後悔しているのですか?」
「そうじゃない! そうじゃないけど……
ダメだぁ~ 自分の気持ちさえわかんねぇ」
「…………左様でございますか」
ディアは、気の利いた言葉を、
かけてはくれなかった。
いや、今のコンフィには、どんなに気の利いた
言葉でさえ、心を癒す事はできないだろう。
「はぁ……」
ギシッ……ストン!
「!……なんだよ?」
ディアは、向かいの席を立つと、
コンフィの隣に腰掛ける。
「お泣きなさい……」
「もう、泣いてるってば……」
「はい 思い存分、お泣きなさい……」
「ふぇえぇ……苦しいよぉ~ディアぁ?」
「苦しいですね……悲しいですね……
寂しいですね……辛いですね……
ですが、思い存分泣けば、そのうち気持ちも
スッキリするものです」
「へぇえぇえぇ~~~ん……」
コンフィは、しばらくの間、
ディアの肩に頭を乗せて泣いた。
獣車が走り出して2時間もすると、
もう、學園に着いてしまった。
コンフィの屋敷は侯爵家であるため、
比較的王都の中心部に近く、
また、學園にも近かった。
・⋯━☞學園正門前☜━⋯・
「どお! どおーー!」
「くわぁー!」
ガタガタッ!……
「もう、着いたのか……グスン!」
「はい アンビジョーネお嬢様
そろそろ頭をどいてくれませんか?」
「あ、ごめん(汗)」
「ごめーん」
コンフィは、屋敷から學園に着くまで、
ずっとディアの肩に頭を乗せていた。
「ふっ……んっ……んん~~~」
ポキッ……ポキッ……
「…………あはは(汗)」
「あはぁー(汗)」
ディアは、首と肩をポキポキと動かして、
眉間にシワを寄せ、自分の肩を揉んでいた。
「……そんなに重かったかしら?」
「重かったかしら?」
「いえ…………あ、そうですね?」
「重いんかい!」
「重いんかい~~」
「ですが、萌匂アン様を、
じっくり堪能させていただきました♡」
「はぁい?」
「はぁい?」
「ごほん! いえ、こちらのことです……」
「なんだかディアから、メーべ要素が?
ディア、まさかメーべに汚染されてない?」
「汚染されてない?」
「アンビジョーネお嬢様? そういう発言は、
メーべ様に失礼でございますわよ」
「……あははっ そうね(汗)」
「そうね~~」
どうやらディアは、怒ってはなさそうだ。
だがしかし、ディアは教えてはくれなかった!
コンフィの目が泣き腫れていたことを……!
それはそうとして……
御者が、ドアを開けてくれたのだが、
その先には、シェンブリィ王子の姿が……
「!…………ははっ やっぱり居るよ(汗)
暇か? 君は暇なのか? あぁん?」
「暇かあぁーん?」
(本音がポロリのコンフィ
プチコンフィも真似して、あぁーん?)
「アンビジョーネお嬢様? ドゥーク様が……」
「わかってますわ!
わたくしは、淑女アンビジョーネ!」
「わたくしは、チビコンフィ」
「おや? 女騎士ではなかったのですか?」
「あ、ん! そ! 女騎士でもありますわ!」
「ありますわ!」
「クスッ……♪
では、お荷物は寮へ運んでおきますね」
「あ、お願いね!」
「お願いねー」
そんな事を言っていると、
いつの間にか目の前までシェンブリィ王子が…
「やあ! アンビジョーネ嬢!
休暇は、どうだっ……?!」
(何かに驚いたような表情のシェンブリィ王子)
「これはこれは、シェンブリィ王子
ご機嫌麗しゅう御座いますぅ……か???」
(今度はシェンブリィ王子の顔を見て驚コンフィ)
「…………」
なんだ?
シェンブリィ王子が、わたくしを見て、
なぜか固まってる?!
わたくし、どこかおかしなところが、
ありますでしょうか?
と、思っていたら……突然!
「……!」
(シェンブリィ王子が手を差し伸べる)
「ありがとう御座います シェンブリィ王子」
(シェンブリィ王子の手に自分の手を乗せる)
カチャ!……トン…トン……
(シェンブリィ王子に身を預けるように手を
支えられながら獣車を降りるコンフィだが……)
コツ……コツン!……
ガバッ!
(いきなり抱きしめ!)
「きゃあ! な、なにを……
しぇ、シェンブリィ王子?」
「え? え?」
「……ずいぶん泣いたようだね?」
「ひゃあぃ?!……あ、あの……(汗)」
『何故わかったぁ~~~?!』
「こんなになるまで、目を腫らして……
母君のもとを離れるのは辛いよね」
(シェンブリィ王子は、
コンフィが泣いた理由をだいたい察した)
「んなんっ?!……(汗)」
『ああー目かあっ! 泣いたから腫れてんだ!』
そうだった。
學園に到着するまで、ディアの肩に頭を乗せて
ずっと泣いていたんだったぁーー!!
こんなこと、予測できたはずなのに~~~
やってしまいましたわぁー!
ってか、いやだぁん! 恥ずかしー!
(男心と女心がぐちゃぐちゃなコンフィ)
「シェンブリィ王子!
他の生徒たちが見ていますわ!
場を、わきまえてくださいませ!」
「ほぉ? では、誰もいない場所なら、
構わない……って事なんだね?」
(自分んに都合良く解釈するシェンブリィ王子)
「はぁん?!……(汗)」
『そんな事言ってなぁーーーーいっ!!』
「「「「ザワザワザワザワ……」」」」
他の生徒たちに、まじまじと、
シェンブリィ王子に抱かれていることろを、
しっかり見られているコンフィだった……
・⋯━☞學園内大廊下☜━⋯・
トットット……
コツ…コツ…コツ……
「新学期の挨拶が始まる前に、
先に生徒会室へ来てくれるかい?」
「え、ええ……?」
なぜか、生徒会室へ連れていかれるコンフィ。
生徒会室に、いったい何の用事なのだろう?
・⋯━☞生徒会室☜━⋯・
カチャ!……
「やあ! 皆、待たせたね!」
「来たなのー!」
「なのー!」
「よっ! 元気してたか!」
「アロガンス公爵子息、ご機嫌麗しゅう」
(社交辞令カーテシー)
「へへん! まあな!
相変わらず、色っぺぇな?」
「んまっ?!」
「「「キッ!!」」」
(シェンブリィ王子とリアとメーべに
思い切り睨まれるアロガンス公爵子息)
「おっと! 怖い怖いっ(汗)」
「アンお姉様ん♡ お久しぶりですわん♡」
「え、ええ、朝会いましたけどね?」
「朝会いましたわねー」
見ると、初見の人が居ることに気づく。
「あら、そちらのお方は?」
「うむ 今日から新しく、
︎︎゛︎︎魔術師学部の生徒︎︎︎︎゛︎︎として中途入学となった、
バダーニャ・ディモン・ブローシュカ…様だ」
「……様?」
「ああ、実は彼女は、覚醒遺伝の準魔女でね!
僕の叔母上……」
「ま、シェンブリィちゃ~~~あん?」
「ひっ! あ、姉上と同じ準魔女でね、
若く見えるけど姉上よりも歳上なんだよ?」
「「シェンブリィ~~~ちゃあ~~~ん?」」
「ひえっ?!……も、申し訳ありませんっ!」
「「「「第一王子、形無し……」」」」
どうやら、シェンブリィ王子でさえ、
縮こまるような相手のようだ。
ヴェティーンの実年齢は200歳を超えている。
なら、バダーニャは250歳くらいだろうか?
念の為に、逆らわない方が良さそうだ。
「あーごほん! 失礼。
実は彼女は、姉上の先輩魔女らしくてね、
しかも、ベルドランデ嬢の研究していた、
︎︎゛擬似妖精︎︎゛について興味を持たれたようでね」
「なるほど……そうでしたのね?」
「貴女が、アンビジョーネ嬢なのね?
噂に違わず可愛いねぇ?♡」
(コンフィにヌルベタと擦り寄ってくる)
「ひっ!……なん、なに?!」
(流石に引くコンフィ)
「「「「「キッ!!
ちょった待ったぁーーーーー!!」」」」」
紹介されるや否や、いきなりコンフィに、
体をまとわり付けてきて、ヌルベタ状態に!
「なんなのこの人ーー?!」
シェンブリィ王子から始まって、
アロガンス公爵子息、フリージア、メーべ、
そして、ヴェティーンまでもが、束になって、
バダーニャをコンフィから引き剥がす!
「いきなり、なんですか!!
彼女は、僕の婚約者ですよ!!」
「ちょっ、お、王子?」
「そうだ! ま、いくら先輩魔女とはいえ、
ま、今のは見過ごす訳にはいかないぞ!!
ま、アンは、ま、誰にも渡さない!!」
「魔女?!」
「アンお姉様ん♡は、わたくしのものですわ!
ベタベタできるのは、わたくしだけ!!」
「これこれ……(汗)」
「ツンデレ萌女神令嬢アン様は、私の、
絶対的守護対象の絶対的な推しなのー!!
国家反逆罪なのーー!!」
「反逆罪なのー!」
「まぁた、んもぉ~~~(汗)」
「魔女だかなんだか知らねぇが、
アンビジョーネ嬢に気安く触んじゃねぇ!
こぃつぁ、俺ぇんだっ!!」
「はぁあい?!」
「「「「ちがぁあああああーーーう!!」」」」
「な、なんだよぉ?
別にまだ、いいだろう!
まだ、正式に婚約は発表されてねーんだから」
「ダメに決まってるだろう!」
「いいだろうがよ!」
「ダメだ!」
「いいだろ!」
「ダメだ!」
「いいだろおー!」
「ダメなものはダメだー!!」
顔がくっ付くくらい寄せあって言い合う
シェンブリィ王子とアロガンス公爵子息。
「ちょ、みなさん、落ち着いて……(焦)」
「落ち着いてー」
「くっくっくっ……愛されてるねぇ?」
「ええと……なんですか、まあ~~~はい
大変、有難いことですわね……(汗)」
『これ、愛されてるんじゃなくて
からかわれてるだけじゃあ?』
突然のことで何が何だか分からなかったが、
今日から新しく中途入学した、魔術師学部の
学生として活動する……魔女?
魔女と言うか、体型にピッタリな……
スリムな皮スーツ! 全身タイツ?
を着て、まるで怪盗ニャンコ目みたい。
全然、魔術師学部の学生らしくもないし、
まったく魔女らしくもない。
って、そんな格好のままで、
学生をするつもりだろうか?
「また、変なのが増えたなぁ……」
と、ゲンナリするコンフィだった。
第59話でした。
今回は少ししんみりしたお話から、
いつもの生徒会メンバー、そして新キャラ登場回でした。
バダーニャという、またクセの強い人物が
登場しましたが、今後いろいろ関わってくる予定です。
コンフィの気持ちも、少しずつ変化していきます。
第60話もよろしくお願いします!




